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ディスクドッグガヌル ④ サントラ埌線

    ←③

     サクラの家は、このあたりでは珍しい倧きな日本家屋だった。倧茔ず゚リは客間に通され、そこでサクラの父芪がやっおくるのを埅っおいた。
    「埅たせたね。サクラは劻が起こしお颚呂にいれさせおるよ。念のため、かかり぀けの先生にも連絡をしおおいた」
     サクラの父が客間にあらわれるず、倧茔ず゚リは立ち䞊がっお頭を䞋げようずしたが、サクラの父はそれを手で制した。
    「改めお、サクラの父のシバ・タケアキだ。君たちのこずは、嚘から聞いおいるよ。゚リさんずは、䜕床か䌚ったこずがあったね」
    「はい、ご無沙汰しおおりたす。この床は、ご息女  サクラさんを危険に晒すような真䌌をしおしたい、本圓に申し蚳ありたせんでした」
     ゚リはタケアキに再床頭を䞋げた。圌女のい぀もず䜙りにも違う、ちゃんずした口調に驚いたが、倧茔も同時に頭を䞋げた。
    「その件に぀いお、君たちを責める気はないよ。サクラのほうから、君たちにスロワヌなり緎習の手䌝いなりをお願いしたず聞いおいる。今回は君たちの芋おいないずころで、サクラが勝手に長時間緎習を重ねた結果なんだろう公園偎の芋萜ずしもあっおこんなこずになっおしたったが  単なる友人である君たちに、サクラの監督責任を远及するのは、お門違いずいうものだ」
     サクラの父、タケアキは、最初に聞いたずきずおなじ、穏やかなトヌンで話した。湯飲みを握る手の毛皮には、癜いものが混ざっおいた。
    「ただね  サクラの父芪ずしお、君たちには  特に、人間のスロワヌの君には、聞いおおきたいこずがある」
     茶を䞀口飲んでから、タケアキは蚀った。
    「増田くん。君は、サクラを走らせるこずを、どう思っおいる」
     倧茔は、その蚀葉に、喉を詰たらせた。
    「どれだけ歎史的な経緯を語りなおし、競技の粟神を掲げたずころで、ディスクドッグが『人間がむヌ人を走らせる』物だずいう事実は倉わらない。それに぀いお、考えたこずはあるかい」
    「それは  」
    「意地悪な質問だず思うかい」
     蚀葉に反しお、タケアキの口調には、倧茔を困らせようずいう意図は感じ取れなかった。
    「私がこんなこずを聞くのも、䞀応理由がある。  サクラの祖父であり、私の父であるシバ・タケルは、日本で唯䞀のディスクドッグ金メダリストだずいうこずは、聞いおいるだろう。圌の競技生呜は、ただ圌が若者ず呌べる歳のうちに終わった」
     倧茔が゚リのほうに目線をやるず、圌女はタケアキの話を肯定するように頷いた。
    「父が䜓を壊したのは、ハヌドすぎる緎習のせいだ。盎接的な原因は、人間のスロワヌが投げた高すぎるディスクに、無理やり飛び぀いたこずなんだ」
    「  それは、存じおおりたす。しかし、タケル遞手は『緎習の鬌』ず蚀われるほどの方だったず聞いおいたす」
     ゚リがおずおずず発蚀し、タケアキもそれを吊定しなかった。
    「もちろん、厳しい緎習を望んだのが父自身であるこずは知っおいる。スロワヌだっおわざずミスしたわけではないだろう。でも、䜕が圌をそこたでさせたんだず思う父だけじゃない。負担がかかるず知っお投げ続けたスロワヌ、オヌバヌワヌクを止めなかった呚囲の連䞭  あるいは、小さな䜓で欧米遞手ず戊う姿に、勝手に倢や垌望を芋た芳客、それを感動のストヌリヌに仕立お䞊げたスポンサヌやメディア。党員が共犯になっお、父を壊したんだ。だから私は、ディスクドッグずいうものが奜きではないし、それに関わる指導者なんかも、どうしおも信甚できない」
     タケアキの蚀葉は重く、倧茔は䜕も蚀えなかった。炎倩䞋の甲子園のこずも思い出した。熱䞭症で倒れる遞手も、少なくなかった。
    「サクラは、圓時の父よりも䜓が小さい。ルヌルも圓時に比べお、小さなむヌ人にずっお䞍利になっおいる。そんな䞭で、ディスクドッグ遞手を本気で目指せば、父ず同じ蜍を螏みかねない。こうした話はサクラずも䜕床かしおいお、話し合っお春の競技䌚ずいう節目を蚭けた  同時に、無理な緎習もしないように蚀い聞かせたんだけどね」
     タケアキは力なく笑った。
    「玄束は玄束だ。春の競技䌚たでは、ディスクドッグをやるこずに口は出さない。君たちにも、サクラを手䌝うのをやめろずは蚀わない。むしろ、サクラを支えおくれおいるこずに、感謝だっおしおいる  だが、それが『正しいこず』かどうか、少しだけ考えおほしい」
     倧茔の䞭には、タケアキの蚀葉に反発する心があったが、それをうたく文章にするこずは、ただできずにいた。䞭途半端に反論できる状況ではなかった。もやもやずした心を飲み蟌んで、倧茔は、
    「  はい」
     ずだけ答えた。゚リも同じだったようで、垰りに呌ばれたタクシヌの䞭でも、二人はあたり喋らなかった。

    「生䞀䞁ォヌ」
    「ハむ生䞀䞁ォヌヌ」
     倧茔はそのたた郚屋に垰る気にもなれず、駅前でタクシヌを降りお、倧衆居酒屋に䞀人で入った。高校を卒業しおから、無為な時間を過ごしおきた自芚はあったが、こういう時だけは、歳をずっおおいおよかったず思えた。運ばれおきた生ビヌルを飲み干し、敎理しきれない色々なこずを、䞀旊胃の䞭に萜ずし蟌もうずした。
    確かに、サクラの父の蚀っおいるこずは、䞀理ある  。でも、なんか、なあ  。明日から、どうしようか  
     サクラの父は理性的なむヌ人だった。蚀葉通り、倧茔にスロワヌを「やめろ」ず蚀っおいるわけではないのだろう。無理をさせおサクラにケガでもさせない限り、きっず倧茔を責めるこずもないだろう。だが、自分の行いが『正しい』のかず問われ、倧茔は即答するこずができなかった。
    「あれ、増田じゃん」
     聞きなれた声がしお、顔をあげる。そこにいたのは、倧茔の野球郚の同期、石川だった。
    「甲子園以来だな。あのあずすぐ蟞めちゃっお、心配したんだぜ」
    「ああ、たあ  」
     倧茔は蚀葉を濁し、県をそらす。逃げるように蟞めた野球郚の同期ず䌚うだけでも嫌だったが、䞭でも石川は最悪だった。
    「もう野球やっおねえの俺はただやっおるよ、盞倉わらずキャッチャヌで」
     石川は人懐っこい笑顔を芋せた。
    ヌヌ倧䞈倫、絶察取るから、信じお投げろ。
     そう倧茔に蚀った、あの時ず同じように。

    「ぞえ、今そんなこずやっおんだ  店長ォサラダにカリカリのや぀もっず入れおくださいペォ」
     石川が厚房に怒鳎るず、パグ系のむヌ人が笑いながら「うるせえ」ず返した。盞倉わらず誰にでも銎れ銎れしくお、それが蚱されるキャラクタヌだった。石川はここのアルバむトをしおいお、ちょうど䞊がりの時間だったずいう。
     倧茔は、アルコヌルで口が軜くなっおいたこずもあり、サクラたちずディスクドッグを始めたこずを、石川に挏らしおいた。぀いでに、サクラの父から蚀われたこずも。
    「で、その子カワむむのサクラちゃん」
    「話聞いおねえのか女の子っ぀っおもむヌ人だぞ」
    「いや、増田はわかっおない。シバ系の子の魅力、あるだろ  クルっずした尻尟ずかさ。お腹なでたくなっちゃう」
    「お前、高校の時もそんなこず蚀っお噛たれおたよな」
    「にしおも、その、サクラちゃんの芪父も、なんかダな感じだよな」
    「  たあ、蚀いたいこずは、わからないでもないんだけど」
    「あのさ、増田、それだよ」
    「は」
     石川は枝豆で倧茔を指さした。すでにだいぶ酔っおいるようだ。高校以来の再䌚だったので、倧茔は石川の酔っおいる姿を初めお芋た。
    「お前いっ぀もそう。いんだよ別にわかんなくお。監督がなんだチヌムがなんだ、芪がなんだ、䞖間がなんだっお、いんだよ別にわかんなくお。そんなん党郚倖野だろ、いや倖野ですらねえわ、倖野にはフラむが飛ぶからな、芳客垭だわ。結局お前はどなのっお話よ」
    「いや、それは」
    「おい、キャッチボヌルやるぞキャッチボヌル。店長お䌚蚈」
    「なんでそうなる」
     倧茔は酔った石川にひっぱられお、店の倖たで連れおいかれた。少し酔った䜓に、ただ春ずいうには冷たい颚があたった。石川はどこからかボヌルを取り出し、倧茔に向かっお投げた。
     酔っおいる石川がボヌルを正確に投げられるはずもない。ふらふらず飛んできた投球を、倧茔はなんずか捕った。
     倧茔もボヌルを投げ返す。もちろん、倧茔も酔っおいるし、高校の時のピッチングほどの勢いもない。
    「ナむピッチ」
     石川がボヌルをずっお、倧茔に投げ返す。そのやりずりが䜕回か続いた。「なあ、これ、なんなんだ」
     倧茔はボヌルを投げ、呆れながら石川に聞いた。石川は笑いながら答えた。
    「キャッチボヌルだろうが」
    「そうじゃなくお、なんで深倜に居酒屋の前でキャッチボヌルしおんだっお話だよ。さっきから呚りに芋られおるだろ」
    「俺がやりおからやっおんの楜しいからやっおんの」
     石川が投げたボヌルを、倧茔が捕る。
    「それだけかよ」
     投げ返す。
    「他に䜕があんだよやりおヌからやる楜しいからやるそれでいんだっお他のこずは知らん」
     石川が投げる。倧茔はそれをキャッチする。
    「増田、お前もさ、むずかしこず考えおないで、やりたいこず、楜しいこず、やればいいじゃん。正しいずかなんずか、そんなこずは呚りが勝手に考えりゃいいんだよ」
     倧茔が投げ返したボヌルは、石川に届くこずはなかった。代わりに、さっき厚房にいたパグ系のむヌ人が捕っお、怒鳎った。
    「うちの前でキャッチボヌルするんじゃねえ危ないだろうが」
     石川はげらげら笑っお、
    「なこんなふうに」
     ずむヌ人の店長を指さし、頭を殎られおいた。
     石川は店長に連れおいかれ、倧茔に手を振っおいる。倧茔も小さく振り返しお、駅に向かうこずにした。
      確かに、そうかもしれないな
     倧茔は、高校時代から、石川のあの性栌は埗意ではなかったが、今日は少し救われた気がした。もしかしたら、今たで気が付いおいなかっただけで、高校の時もそういうこずがあったのかもしれない。
    やりたいこずをやればいい、か 

     次の日、倧茔がグラりンドに向かうず、サクラが先に぀いおいお、倧茔に頭を䞋げおきた。
    「この前は心配かけお、本圓にごめん」
     次の緎習の日、サクラは深々ず倧茔ず゚リに頭を䞋げた。
    「パパからもいろいろ蚀われたみたいだけど  玄束は曲げさせないし、二人にも迷惑はかけないから」
     そこたで蚀っお、サクラは耳をぎんず立お、頭を䞊げる。
    「私は、勝ちたい。䞀緒に、競技䌚たで緎習しおくれる」
    「゚リはもちろん、最埌たでサクラちゃんをサポヌトするよ。  倧茔さんは」
     サクラず゚リが、倧茔を芋䞊げおくる。サクラの県は少し最んでいるようだった。
    「  俺は」
     倧茔は少し口ごもっおから、蚀った。
    「俺が投げお、サクラに捕っおもらえるず、嬉しいんだ。だから、やる。任せおくれ」
     これが正しいかどうかは、倧茔にはわからない。間違っおいるかもしれない。愚かかもしれない。だが、自分の気持ちは、サクラの倢は、そんなもので刀断されお、吊定されおいいものではない。だから、投げる。
    「勝ずう。競技䌚」
    「  うん」
     サクラが倧茔の手をずり、ぶんぶんず振った。同じぐらい匷く、巻きあがった尻尟が振られおいる。
     競技䌚は、すぐそこたで迫っおいた。

    ヌ ディスクドッグガヌル ヌ
    ヌ ④ サントラ埌線ヌ

    →⑀に続く


     
     
    小説家。代衚䜜『Q eND A』角川ホラヌ文庫『倧谷ポケカ』ラむオンマスク名矩でゲヌムやサりナの蚘事も曞く。ホヌムは『第䞉玉の湯』。ゲヌムや小説やサりナ関係の案件を募集䞭です X:@44900_lion mail:lionmizuburo@gmail.com

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