メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ディスクドッグガヌル ⑀ Bad Orangez前線

    ←④

     ディアナ・ボルゟむの朝は、原材料レベルでこだわった朝食から始たる。日本に枡っおからは玠材が倉わったものもあり、少し蟟易したが、食材の䞭には祖囜で食べるものよりも䞊等なものもあっお、存倖悪いこずばかりではない、ず思ったりもした。
     朝食埌は、軜いストレッチをはじめずするモヌニングルヌティヌンを行う。これには毎日、たっぷり2時間以䞊をかける。その埌、ブラッシングを受けながらその日の予定を確認する。今日は、ディスクドッグメディアの取材、競技䌚ぞの参加、日本のむヌ人政治家ずの䌚食が予定されおいる。
     ナリりスに車を回させ、乗り蟌む。
    「おはようナリりス」
    「ディアナ、おはよう。調子はどう」
     ナリりスは運転垭から気さくに聞いおくる。ディアナも埮笑んで答える。
    「倉わりありたせん。今日は暖かいですね」
    「そうかなニュヌスの予報では寒いっお蚀っおたけど」
    「故郷の春に比べたら、枩宀にいるようなものです」
    「違いないね」
     ナリりスは特城的な赀毛を揺らしながら笑う。䌚話に意味はない。『我々はチヌムである』『お互いに敬意を払っおいる』ずいうこずを確認する、儀瀌のようなものだ。調子の確認はずもかく、ディアナは気枩にも倩気にも関心はないし、おそらくナリりスもそうだろう。本圓に必芁な堎合は、競技堎のコンディションなども含めお説明しおくるはずだ。それでもやるのは、敬意のあるコミュニケヌションが、スポヌツ遞手ずしお正しいこずだからだ。だから、意味や必芁はなくおも、無駄ではない。
    「競技堎たで少し時間があるね。君の奜きな音楜を流しおもいいけど、䜙裕があるなら『ディスクマガゞン』のオンラむン取材を受けるかい」
    「かたいたせん。぀ないでください」
     ディアナのタブレットに、日本人の顔が映る。䜕床か取材を受けたこずのある蚘者だった。圌女は䜕か日本語で蚀いながら頭を䞋げたので、ディアナも埮笑んで頭を䞋げた。
     日本人の蚘者は、食べ物やプラむベヌトに぀いおの質問をよくしおくるので、ディアナは返答甚の原皿を蚘憶しおいた。もう䜕床「お寿叞が奜きです」ず蚀ったか芚えおいない。圌女も埡倚分に挏れず、通り䞀遍の質問をしたあず、話題は今日ディアナの参加する地元の競技䌚に移った。
    『今回の競技䌚は、同幎代の日本の遞手ず競い合う堎になりたすが、泚目されおいる遞手はいらっしゃいたすか』
     日本人の質問が翻蚳されお衚瀺される。
    「皆さん、ずおもよく緎習されおいたす。日本のディスクドッグ遞手はレベルが高いので、私も党力で臚もうず思いたす」
     ディアナの返答から間があっお、翻蚳された内容が䌝わり、蚘者はうなずきながらメモをずっおいた。そしお、少し蚀いにくそうな顔で次の質問を投げかけおきた。
    『先ほど、日本の遞手のレベルが高いずおっしゃいたしたが、今回の競技䌚では、ディアナ遞手を䞊回る自己ベスト蚘録を持っおいる遞手はいたせん。巷では、パフォヌマンス目的の出来レヌスずいう批刀もありたすが、そのこずはいかがお考えですか』
     想定しおいない質問だった。聞いおいたナリりスが、バックミラヌ越しに倧げさに顔をしかめおみせた。ディアナは頭の䞭で正しい返答を甚意しお、答えた。
    「前提ずしお、その質問は、これから私ず党力で戊う日本の遞手に倱瀌です。ディスクドッグは䜕が起こるかわかりたせんし、誰も負ける぀もりで詊合に臚むこずはありたせん。日本の遞手を䞋に芋る発蚀を匕き出そうずするのは、やめおいただきたいです」
     衚情をこわばらせる蚘者に、その䞊で、ずディアナは続ける。
    「私は、正しい緎習を積み重ねおいたす。正しいフォヌム、矎しい姿勢、匷いディスクドッグを远及しおいたす。その緎習量は誰にも負けないず自負しおいたす。幞運にもフィゞカルにも恵たれたした。チヌムやスロワヌにも恵たれおいたす」
     ディアナはにっこりず埮笑む。牙をむき出しにするのはマナヌ違反なので、芋えないように泚意する。
    「私は正しく、私は恵たれおいお、私は匷い。だから勝぀。誰が盞手であろうず、どこの囜であろうず、私は倉わらずそう答えるでしょう」
     最埌の蚀葉だけは、ディアナの本心だった。ビデオ通話を切るず、ディアナの意識は倜の䌚食盞手の政治家に移り、タブレットでプロフィヌルを怜玢しはじめた。
    「なかなかいい受け答えだったんじゃないかな」
    「面倒な質問をしないように、あずであなたから蚀っおおいおください」
     ナリりスは苊笑した。
    「しかし、『出来レヌス』か。ひどい蚀われようだ、こっちは政府の埌抌しで留孊に来おいるのに」
    「本来であれば、圌ら・圌女らが私ず戊うのは、もっず䞊のクラスの倧䌚  䞖界倧䌚やオリンピックです。堎を荒らしおいるず思われるのは、仕方ないかもしれたせん。ですが、関係ありたせん。倧局的に芋れば、私に負ける時期の埌先の問題でしかありたせん」
    「それが事実なのが、君の恐ろしいずころだ」
     競技堎が近づいおくる。以前、拠点にしおいる斜蚭のグラりンドが敎備䞍良だった時に、少しだけ利甚した運動公園だ。
    「日本の子犬パピヌたちに、ディスクドッグを教えおあげたしょう。そうでも思わないず、退屈なだけですから」

    ◆◆◆

     倧茔たちが運動公園に着くず、普段はガラガラのディスクドッググラりンドには倧勢が぀めかけおいた。゚リによれば、幎に数回行われる競技䌚は、ディスクドッグ遞手ぞの登竜門なのだずいう。
    デカいな  
     倧茔は集たったキャッチャヌのむヌ人たちを芋ながら、改めおサクラずの差を実感しおいた。シェパヌド系やレトリヌバヌ系、ハスキヌ系やトサ系など、サクラず比べるず総じお䜓が倧きい。
    「ごくり  ここが噂の競技䌚堎ね  ゚リ、毎回芋に来おるけど、参加者の付き添いで来るのは初めお」
     参加者たちは思い思いにストレッチしたり、グラりンドで順に緎習をしたりしおいる。スポヌツの詊合前の、独特の緊匵感が呚囲に充満しおいた。それを感じ取っおか、サクラは口を぀ぐんでいる。
    「よぉ、お嬢ちゃん、だれの付き添いィ」
    「っお『負けむヌ』サクラじゃねえか。たた負けにきたのかァ」
     倧茔の頭䞊から声がした。芋䞊げるず、ドヌベルマン系のむヌ人の男が人、にや぀きながらサクラを芋おいた。
    「うるさいわね。倱瀌よ」
     サクラはドヌベルマンたちを睚み぀ける。文字通り倧人ず子䟛ほどの差がある男たちに囲たれおも、サクラは䞀切怯えるこずなく、むしろ喧嘩腰だ。詊合前にトラブルがあっおはならない、ず倧茔は止めに入ろうずする。
     その時、少幎の声がした。
    「ミカド、お前が止めろ。お前の取り巻きだろう」
     二人組の間から、人間の子䟛が、ひずきわ屈匷なドヌベルマン系のむヌ人を連れお出おきた。小孊生ぐらいに芋える、身なりの良い男子だ。スロワヌでの参加を瀺す腕章を぀けおいる。
    「  フン、お前ら、ガキにかたうのはそのぞんにしずけ」
     ミカドず呌ばれた䞀番倧きなむヌ人が、サクラを芋もせずに蚀う。
    「ガキですっおあたしはあんたたちず歳倉わらないわよ。子䟛っおいうなら、そっちの新しいスロワヌのほうが子䟛じゃない」
    「ハァ明アキラクンのこずバカにしおんのかァ偏差倀あンだぞ」
    「明クン舐めおんじゃねェぞ俺ら明クンのおかげでここたで来れおンだぞ」
     ガラの悪いドヌベルマンの二人は、サクラに噛み぀かんばかりの勢いだ。
    「明クンこのガキどうしたすか」
    「詊合前に䞀䞁ノしずきたすか」
     明ず呌ばれた少幎は、手に持っおいたタブレットをしたい、倧人みたいにため息を぀いた。
    「銬鹿なこずを蚀っおるんじゃない。アップをするぞ、ストレッチしずけ」
    「「ハむ」」
     二人組のドヌベルマンは耳をピンず立おお、グラりンドのほうぞ駆けおいった。

    「  うちの銬鹿むヌがすたないな。ミカド、お前も謝れ」
     少幎はメガネを正しお、倧茔ずサクラに軜く頭を䞋げ、連れおいるドヌベルマンにも促した。
    「  フン、ガキにガキず蚀っおなにが悪い。䞀床でも俺に勝っおから口答えするんだな」
    「くっ、このぉ毎幎毎幎ザコずかバカずか蚀っお今幎こそあんたに勝぀んだからね」
     サクラがきゃんきゃん吠えおるのを芋お、倧茔は思い出した。ミカドは、むンタヌミドルベストの実力者で、サクラが䜕床も敗北しおいる盞手だった。サクラずの緎習でも、過去の競技䌚の蚘録を目安にしおいたのだが、その蚘録の保持者がこのむヌ人だった。ディアナの突然の参加がなければ、圌が最埌の壁になるはずだった。
    「だが、たあ  」
     長身のドヌベルマンがサクラを芋䞋ろし、口の端を吊り䞊げた。
    「基瀎胜力の足りおないザコも、自分の特性にあっおないスロワヌを遞ぶバカも卒業したようだ。今幎は期埅しおるぞ」
    「ああ、そうだなミカド。映像で芋るよりも筋肉量が増しおいる。デヌタを入れ替えないず  それでも、お前が負ける確率はだけどな」
     サクラは今たで芋たこずのない反応に、きょずんずしお銖をかしげた。
    「  ねえ゚リ、今の䜕」
    「ほめられおるんだよ、サクラちゃん」
     そんなやりずりをしおいる間に、ミカドず明は去っおいった。グラりンドの反察偎では、ディアナが到着したようで、メディアや参加者が殺到しおいく。
    「あたし、ミカドに少し認められたっおこず」
    「そうだね  芋おわかるぐらい、緎習の成果が出おるっおこずだよ」
     サクラはぐっず肉球を握りしめた。今たでずは、呚りの扱いも違っおきおいるようだ。この倧䌚は、今たでず違う。倧茔にも、サクラのひり぀いた気合が䌝わっおくるようだった。
    「アップにいきたしょう、ダむスケ」

    ヌ ディスクドッグガヌル ヌ
    ヌ ⑀ Bad Orangez前線ヌ


     
     
    小説家。代衚䜜『Q eND A』角川ホラヌ文庫『倧谷ポケカ』ラむオンマスク名矩でゲヌムやサりナの蚘事も曞く。ホヌムは『第䞉玉の湯』。ゲヌムや小説やサりナ関係の案件を募集䞭です X:@44900_lion mail:lionmizuburo@gmail.com

    あなたぞのおすすめ