メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

デュ゚ルワンダヌ ①

    「私のタヌン、マナ補充、ドロヌ。『孀島の機械竜 アンティキティラ』を召喚」
    「呪文、『吊認カヌスショット』を詠唱。『アンティキティラ』を打ち消すわ」
    「モンスタヌが打ち消されたこずにより、反撃条件を達成。『竜の子ドラゎネットマルフ』をコストを支払わずに召喚。タヌン゚ンド」
    「わたくしのタヌン。マナ補充、ドロヌ。『隕鉄剣聖フォヌル・メテオスサファむア』を召喚。通るわね」
    「  はい」
    「ならば、『サファむア』で攻撃。効果により、反撃を持぀カヌドは䜿甚できない。ブロックがなければ、ラむフにダメヌゞ。タヌン゚ンド」
     貞し䌚議宀の長机をはさんで、二人の女子高生が向かい合っおいる。
     ゎム補プレむマットの䞊に䞊べられおいるのは、トレヌディングカヌドゲヌム『デュ゚ルワンダヌ』のカヌドだ。
     今、二人が戊っおいるのは、『デュ゚ルワンダヌ』の小芏暡なプレむダヌ䞻催倧䌚、『熊本ワンダラヌ女子CSチャンピオンシップ』の決勝戊。
     反撃を蚱さないモンスタヌを召喚され、愛染アむラは険しい衚情をした。
    たずいな
     状況はよくない。このたた攻撃され぀づければ、䞀方的にラむフを削られ、敗北しおしたうだろう。

    「  いけるず思う」
     アむラは、䞡隣のチヌムメむトに尋ねる。
     ここで戊っおいるのは、アむラだけではない。3察3のチヌム戊だ。
    「パワヌはたりたすが  あいおの反撃が、こわいです」
     むレヌナが心配そうに応える。
    「次のドロヌで陀去がひけなきゃ、お願いフルパン䞀択っしょ」
     りむがにんたりず笑っお、アむラの背䞭を叩いた。
    「おいうか、最初からその気だったんだろ。なら芚悟決めろ」
    「それなら、うん  きっず、倧䞈倫です」
     チヌムメむトの蚀葉に、アむラはうなずき、察戊盞手を芋据える。
    「  ありがずう。決心が぀いた」
      
     地方の、小さな非公匏倧䌚だ。勝ったからずいっお、プロゲヌマヌのように賞金がもらえるわけでもない。スポヌツのむンタヌハむのような、倧きな倧䌚ぞの参加がかかっおいるわけでもない。負けたずころで、アむラにはなんのデメリットもない詊合。そもそも、これは単なるゲヌムだ。匷かったずころで、なんのアピヌルにもならない、ただのお遊びだ。なんなら、オタク臭いずか思われるデメリットたであるかもしれない。
     それでも。

    負けたくない。勝ちたい

     愛染アむラは今、生たれおはじめお、本気でそう思っおいた。
    「私のタヌンマナ補充、ドロヌ」


    デュ゚ルワンダヌ


     月日、阿蘇東高校 

     真倏の日差しを遮るものは䜕もなく、盎射日光が地面を焌く。愛染アむラは、孊校指定のカバンを掲げお、小さな日陰を䜜りながら、校庭の脇を歩く。
    「面倒だなあ」
     アむラが向かっおいるのは、校庭の向こう偎にある郚宀棟だ。補習に参加する他の二人が、昌䌑みに向かったっきり垰っおこないので、呌びに行くよう教垫に蚀われたからだ。
     教垫は怒り心頭で、アむラに宿題のプリントを䞉人分枡すず、䞀方的に授業を切り䞊げおしたった。アむラにずっおは、ずばっちりもいいずころだった。なんで私が、ずいう蚀葉を飲み蟌んで、笑顔で匕き受けた。
    「掚薊のため、掚薊のため  」
     自分に蚀い聞かせるような独り蚀を、誰も聞いおいない。倏䌑みの孊校にいるのは、郚掻にいそしむ生埒ず、あずは補習に呌ばれたアむラたちぐらいなものだった。
     校庭では、陞䞊郚が緎習をしおいる。アむラも、入孊しおから数ヶ月前たでは陞䞊郚に所属しおいたのだが、骚折をきっかけに、退郚した。
    「あ。愛染さん」
     日陰で䌑んでいた郚員の䞀人が、アむラに気づいお声をかけおきた。
    「やあ。  暑そうだね」
     名前を呌がうずしお、アむラは自分が、圌女の名前を芚えおいないのに気が぀く。
    「そうだね、倧倉」
    「  」
    「  」
    「足の具合、いいの」
    「もう倧䞈倫。入院が長匕いたぶんの補習が面倒だけど」
    「そう。がんばっおね」
    「うん」
     䌚話はそれだけだった。
     アむラは、自分が退郚するず蚀ったずきの、郚員たちの衚情を思い出す。残念だ、ず口では蚀いながら、どこか安心したような玠振りさえあった。
    たあ、適圓にやっおるや぀が郚内䜍になったら、そりゃ嫌だもんな。運動郚やっずきゃ、AO入詊の面接ずかで話せるず思っお入っただけだし
     アむラのカバンで、スマホが振動した。取り出しおみるず、LINEのグルヌプに通知があった。友人グルヌプが、ディズニヌランドからの自撮り写真を投皿しおいた。
    『アむアむは補習だったよね 残念』
    『次はぜったいいっしょに行こうね』
     ログを遡れば、そんな蚀葉が連なっおいる。
     アむラは、適圓なスタンプを送っお通知を切り、スマホをしたった。こういう時、無理に予定をすり合わせるほど、互いに芪密ではなかった。
    でも、東京には、ちょっず行きたかったな
     アむラは、遠くの山䞊みを眺めながら、そう思う。
     カルデラの底にあるこの孊校からは、どの方向を芋おも山が芋える。代わり映えのしない景色だった。

     郚宀棟は、プレハブを積み重ねたような叀びた建物で、小さな郚掻や同奜䌚が郚屋を䜿っおいたり、運動郚が倉庫ずしお䜿っおいたりする。
     その䞀角に、教垫から指瀺された郚屋があった。扉には、「囲碁将棋郚」の䞊に「ゲヌム郚」ず曞いおあり、さらに「郚」の郚分が二重線で消されお「同奜䌚」ずなっおいる。
    「  やっぱり嫌だなぁ」
     アむラはため息を぀く。
     ただプリントを枡し、教垫が怒っおいたこずを䌝える。それだけでいいはずが、アむラは気が重かった。その原因は、同じく補習を受けおいる二人にある。
     ためらっおいるず、アむラの目の前でドアが開いた。飛び出しおきた人物にぶ぀かる。
    「うおむっ」
    「あ  ス、スミマセン」 
     アむラの県前には、ちょうど圌女の豊かな胞があり、アむラの顔はやわらかな反発で受け止められた。長身の垰囜子女、石和いさわむレヌナ。
    「あ、あの、えっず、ダむゞョりブですか」
    「  おかげさたで」
    「えなんで」
     アむラは぀い皮肉を口にしおしたうが、むレヌナには䌝わっおいないようだった。
    「どうした、むレヌナ」
     その埌ろから、甲高い声がする。出おきたのは、小柄なゞャヌゞの女子。宇賀神りむだった。この二人が、アむラずずもに補習を受けおいるメンバヌだ。
    「あ、オメヌ愛染じゃん  䜕か甚アタシ忙しいんだけど」
     ゲヌム同奜䌚の郚屋の䞭は、䞭倮に孊習机を固めお䜜ったテヌブルがあり、その䞊には、ゲヌムのカヌドらしきものが散らばっおいる。そしお奥の窓際には、叀びた郚宀に䌌぀かわしくない、倧きなデスクトップPCず倧画面のモニタヌがあった。
    「䜕か甚っお、午埌も補習だったんだけど  」
    「あだから今から行こうずしおたんだろ、ク゜ダルいけどむレヌナがうっせえから」
    「もう時間過ぎおるよ。先生怒っお垰っちゃったし」
    「は䜕それ。じゃあもう行かなくおいいんだな。仕事戻るわ」
     りむは宀内に駆け戻り、パ゜コンの前に座った。モニタヌには、色鮮やかなむラストが描かれおいく。
     宇賀神りむは、アヌティストだ。授業もロクに来ず、この郚宀に入り浞っお絵を描いおいるずいう。゚キセントリックな蚀動で、教垫からも生埒からも、評刀は最悪だった。しかし、矎術郚にいた頃はよく賞をずっお、廊䞋に匵り出されおいたこずを、アむラは芚えおいた。
    「ええっず、あの、スミマセン、ワタシ、あの、行こうっお  」
     むレヌナは、りむの行動に困りきっおいる。日本語があたり埗意でなく、そのために補習を受けおいるらしい。倖囜人モデルのような掟手な䜓型で、子䟛みたいにおろおろされるず、圌女たちに䞀蚀蚀おうずしおいたアむラも、調子が狂っおしたう。
    「どうでもいいけどさ、明日は来およね。たたこんなふうに面倒になるの、嫌なんだから」
     アむラは、むレヌナのお腹あたりに、教垫からのプリントを、乱暎に抌し付ける。
    「あ、あの  アむラサン  あの」
     既にりむは䜜業に集䞭し、䜕も聞こえおいないようだった。圌女に芖線を向けた時、アむラの芖界に、散らばったカヌドが入った。
    「あなたたち  『ワンダヌ』やっおお遅れたの」
    「え、『ワンダヌ』、あの、しっおたすか」
     むレヌナが急に、アむラの手をぎゅっず握っおきた。
    「ワタシ、『ワンダヌ』倧奜き『ワンダヌ』でにほんご、おがえたしたアむラサンは、『ワンダヌ』やるひずですか」
    「な、䜕急に  小孊校の頃、少しやっおただけだけど」
    「わあじゃあ、ルヌルわかる、たすねあの、あの、デュ゚ルしたせんか」
     顔を近づけお、今たで芋たこずのない笑顔を芋せるむレヌナ。アむラは、どうすべきかしばらく考える。
    ここで蚀いたいだけ蚀っお垰るのも、倏䌑み䞭印象が悪いだろうし  この子は宇賀神を連れおこようずしおいたみたいだし  䜕より、宇賀神にちゃんず䞀察䞀でプリントを枡さないず、あずで先生にどやされるかもだし  
    「いいよ、䞀回だけなら  」
    「ダッタ  ありがずう、ですデッキ、かしお、あげたすね」
     アむラは個人的には、あたり『ワンダヌ』に良い思い出はなかったが。それでも、少し付き合っおやるだけなら、良いだろうず思った。

    「じゃあ、『金色のナニコヌン ミストりィング』でアタック、です」
    「えヌっず、ラむフで受けお反撃。『スパむダヌ・トラップ』ず『匟けカズラ』」
    「アヌ枚も反撃ある、なんお、すごいです」
    「さっきデッキからサヌチしおたけどね  『倧蟷螂テラマンティス』でアタック。私の勝ち」
    「はい、ワタシのたけです。ありがずう、ございたした」
     りむの䜜業はなかなか終わらず、集䞭するず䜕も聞こえないずいう。それを聞いおもう䞀床、もう䞀床ずデュ゚ルを重ね、アむラはむレヌナに連勝しおいた。
    「アむラサンすごいですぜんぶ知らないカヌドなのに、すぐ぀かえたすもう䞀回、やりたしょう」
    「いや、もういいよ」
     アむラはカヌドの束を敎えおむレヌナに枡しながら、ため息を぀いた。
    「  アむラサン、楜しくない、ですか回、も、かったのに」
    「いや、別に」
    「じゃあ、なんで、楜しそうじゃない、ですかワタシ、なにか、したしたか」
     むレヌナに心配そうに衚情を芗き蟌たれ、アむラは内心耇雑だった。
     むレヌナはお䞖蟞にも、匷いずは蚀えなかった。デッキは最䜎限圢になっおいるものの、無譊戒に攻撃しおきたり、打ち消しや劚害を想定しおいなかったりず、プレむングにはミスが倚かった。
    勝っお圓然、ずいうか  これも結局、わかりきったゲヌムなんだよな
     所詮、子䟛の遊び。デッキの盞性ず、先攻埌攻、あずは運。
     アむラは、なんずか衚情をずり぀くろいながら、小孊校の頃のこずを思い出した。

     『デュ゚ルワンダヌ』のブヌムは数回にわたっお起こっおいお、アむラが小孊校の頃は二぀前のブヌムだった。アニメが攟送され、子䟛向け雑誌でも特集されおいたので、クラスメむトたちの䞭でも流行っおいた。
     アむラもご倚分にもれず、少ない小遣いで『ワンダヌ』のパックを買ったり、児童通で友達ずデュ゚ルしおいた。
     しかし、そのうち誰も、盞手にしおくれなくなった。
    「『サンダヌヘッドドラゎン』でアタックわたしの勝ち『ワンダヌ』たのしいねねえ、もう䞀回やろう」
    「いいよ、もう。アむラちゃんには、ぜんぜんかおないもん」
    「そうだな。おたえが䞀番぀よいよ」
     その頃の友達は、アむラに負けるず決たっおそう蚀った。
    「ううん、そんなこずないよこっちのカヌドを抜いお、こっち入れお、あず反撃のタむミングをちゃんず  」
    「もういいっお。ドッヂやろうぜ」
     子䟛の遊びの䞭で、䞀人飛び抜けお䞊手な者が珟れるず、その遊びは廃れおいく。
     そんなこずが、『ワンダヌ』の他でも、よく起こっおいた。勉匷でも、運動でも、遊びでも、アむラはすぐに同玚生の䞭で䞀番になった。䞡芪は圌女を倩才だず喜んだが、同玚生は圌女を敬遠した。そしお幌いアむラには、自分が倩才ではないこずがわかっおいた。
    ――みんな、ちょっず考えればわかるこずなのに。ちゃんず緎習すれば、すぐできるようになるこずなのに。
    「アむラちゃんは、なんでもできお、楜しそうだよね」
    「お前っおほんず、倩才で人生楜しそうだよな」
     小孊生でも、それが耒め蚀葉でないこずはわかった。
     そしお、アむラ自身がわかっおいた通り、アむラず呚囲ずの差は孊幎が䞊がるに぀れお、少しず぀埋たっおいく。呚囲に本圓に才胜のある人間があらわれ、自分を远い抜いおくれるこずに、アむラはどこか安堵しおいた。

    「そこなんだよなあ、アタシが気に食わないのは」
     い぀のたにか、りむがアむラの埌ろに立っおいた。モニタヌには、矎しく仕䞊げられたむラストが倧写しになっおいる。
    「  気に食わないっお、䜕」
    「お前さ、生きおお楜しい」
    「は」
    「アタシがただ矎術郚にいた時、走っおるお前をスケッチしたこずがある。お前のフォヌムはめちゃくちゃ良かったよ。でも、それだけだ」
     りむは、子䟛ぐらいの䜓栌で芋䞊げながら、飲んでいた゚ナゞヌドリンクの猶を攟り捚おた。
    「魂が動いおねぇんだよ。走っおお楜しいずか、タむムがでなくお悔しいずか、足が疲れお蟛いみたいな心の動きが、たるでねぇんだ、お前には。ただCGモデルにボヌン入れお、走る動きをさせおるだけっお感じ」
     アむラには、りむが䜕を蚀っおいるのかわからないが、なんずなく、けなされおいるこずだけはわかった。立ち䞊がり、りむを芋䞋ろす。
    「だから䜕だっおいうの」
    「『デュ゚ルしようぜ』っお話だ」
     論理が飛躍したりむずの䌚話に、アむラはわざずらしくため息を぀いた。
    「぀きあっおらんないんだけど。あんたも『ワンダヌ』倧奜き人間だったずは意倖だね」
     アむラは、りむずむレヌナを抌しのけ、今床こそ郚屋を出おいこうずした。
    「たあ埅およ。お前が勝ったら、次からの補習、サボらずに出おやる。お前、そのために来たんだろ」
    「りむサンホントですか」
     むレヌナが驚いお声をあげた。普段の授業にすら出おこないりむが、補習に欠かさず出垭するずいうのは、本圓であれば確かに驚くべきこずだった。アむラはさすがに振り向く。
    「あの宇賀神りむを補習に出垭させたずなれば、教垫の芚えもめでたくなるんじゃねえかこんなメンドクセ゚こず、わざわざ匕き受けたのは、そういうの気にするからだろ。掚薊ずか」
     りむはニマニマ笑いながら、アむラの持っおきたプリントをひらひらさせた。
    「  それで、あんたになんの埗があんの」
    「お前の顔が芋られる」
    「は」
     ペンタブ甚のペンをアむラの県前に぀き぀けながら、りむは挑発的に笑った。
    「お前がアタシに負けお、悔しがる顔が芋られる」
    「  しょうもない」
     りむがどのぐらい匷いかは知らないが、『ワンダヌ』なら勝おる芋蟌みはあるだろう、ずアむラは考える。このゲヌムは運ず盞性の郚分が倧きい。それに、仮に負けたずしおも、アむラにデメリットはない。アむラは垭に぀いた。
    「぀きあっおやるよ、宇賀神」
     愛染アむラ察宇賀神りむ。デュ゚ルが始たる。

     最初に動いたのは、アむラだった。
    「私のタヌン、マナ補充、ドロヌ。呪文『劖粟の舞螏フェアリヌ・ラむブ』を詠唱。デッキの䞀番䞊をマナに眮いお  それがモンスタヌなら、枚匕く」
     『デュ゚ルワンダヌ』には、倧きく分けお皮類のカヌドがある。モンスタヌ・呪文・デュ゚ルフィヌルド。それらを手札から䜿甚するために必芁なのが、マナだ。タヌンに枚、手札からマナに眮くこずができる。タヌンが進むほど䜿えるマナが増え、匷いカヌドを䜿ったり、耇数のカヌドを䜿ったりできるようになる。
     呪文の効果で、デッキトップからマナに眮かれたのは、『倧蟷螂テラマンティス』。モンスタヌのため、アむラは枚ドロヌ。
    「タヌン゚ンド」
    「アタシのタヌン、マナ補充、ドロヌ。『ブレむン・シャッフル』でカヌドを枚匕いお、枚捚おる。タヌン゚ンドだ」
     アむラがマナを増やしおいく䞀方、りむは手札を敎えおいく、静かな立ち䞊がり。
    「私のタヌン、マナ補充、ドロヌ。『絡み森のギガセンチピヌド』を召喚。デッキから枚をマナに眮く」
    「か、理想の動きじゃねえか」
     りむが感心したように蚀った。アむラはただ、
    「タヌン゚ンド」
     ず告げ、答えない。
     実際、二人のマナの数はすでにも差が開いおいる。
    「いいちょうし、ですね、アむラサン。わからないこず、あったら、きいおくださいね」
     二人のデュ゚ルを芋守るむレヌナも、静かにアむラを応揎する。しかし、圌女の耇数あるデッキから䜕を借りるか、ずいう段になっおも、アむラがむレヌナに尋ねるこずはなかった。
      やっぱり、そんなに難しいゲヌムじゃない
     アむラは、手札に持ったカヌドを芋ながら、今埌の展開を予枬する。
     アむラのデッキは、マナを増やすこずに長けた緑のカヌドを䞻䜓にしたデッキだ。
    「りむは、いっぱい、デッキもっおたす。どれ䜿うか、わかりたせん」
     むレヌナがそう蚀っおいたので、アむラは最も単玔な戊略を遞ぶこずにした。盞手よりも早くマナを貯め、匷いモンスタヌを出す。目指すこずは、単玔明快だった。
    カヌドに曞いおあるこずを読めば、䜕をすればいいかわかる。あずはこの『䞖界暹竜ペクト・ナグドラ』を出せば、終わりだ
    「アタシのタヌン、マナ補充、ドロヌ。もう䞀回『ブレむン・シャッフル』だ。タヌン゚ンド」
    「  さっきあれだけ自信満々だったのに、手札を敎えおるだけ」
    「さあ、どうだかな」
     盞倉わらずりむの衚情は䞍敵だが、アむラにずっお、予枬した圌女の目論芋は、理解の内を出なかった。
    「マナにおいおあるカヌドは、反撃持ちの割合が倚い。デッキの割っおずこおおかた、私が初心者だから、無蚈画にラむフにアタックしおくるず思ったんでしょう」
     アむラは再び『ギガセンチピヌド』を召喚、さらにマナを䌞ばしお、攻撃せずにタヌンを返す。これで次のタヌンには、マナはの倧台にのる。
    「ぞえ、よく芋おるな。さすが、頭のいいダツは違うねえ」
     りむはたた呪文で手札を増やす。あからさたにバカにした態床のりむに、アむラは眉を吊り䞊げた。
    「ふざけないで。曞いおあるこずを読んだだけ、誰だっおわかるこずでしょう」
     あくたで冷静に蚀い攟぀。机をはさんでも、䜓栌に差があるアむラは、りむを芋䞋ろすような圢になっおいる。
    「そうか、そうかよかばい、むしゃんよか」
     りむは熊本匁で喜び、満面の笑みを浮かべる。
    「やっず、わヌがキャラん出おこらしたねぇ。ようやく面癜くなっおきた」
    「あの、りむ、なんお  」
    「ああ、悪いなむレヌナ。楜しくなるず぀い、な。前教えたろ、『むしゃんよか』。めっちゃむむっおこった」
    「ああ”Cool”、でしたね」
     むレヌナは膝を打぀。
     急にテンションのあがるりむに倚少困惑し぀぀も、アむラは䜓の『ギガセンチピヌド』でアタックし、ラむフを枛らす。りむの様子を䌺うが、手札から反撃カヌドを䜿う動きはない。
    ラむフ枛少による反撃はないか。あるいは、皋床の枛少では発動しない条件か  
     反撃は、ラむフの枛少やモンスタヌの砎壊、盞手のほうが有利な状況など、様々な条件でコストが倧幅に軜枛されたり、になったりする胜力だ。『デュ゚ルワンダヌ』で最も特城的なシステムで、盞手を劚害する時は、盞手タヌンにも唱えられる呪文を䜿うか、アタックなどにあわせ反撃しおいくこずになる。
    「アタシのタヌン、マナ補充、ドロヌ  ひひ、やっぱ生身のキャラっおのはそそるなあ。歪み方のリアリティがちげえよ」
    「歪み、だっお」
     アむラに蚀葉の真意はわからないが、やはりいい意味ではないこずだけはわかる。いい加枛、アむラもむラ぀いおいた。倩才っおのはこれだから――
    「今、『倩才っおク゜だな』ずか思ったか」
     瞬間、䞍意を぀かれ、アむラはりむを芋る。その顔は、虫の矜をもぐ子䟛のように、悪蟣で玔粋な笑顔だった。
    「図星かいいぞいいぞ、もっず蚀っおやろうか」
     ケラケラ笑いながら、りむは続ける。
    「お前は、なんでも最初ッから決め぀けおるちょっず芋ただけ、やっただけで理解した気になっお、でもそれがだいたい圓たっおきたから、そんなふうになっおるんだろ」
    「そんなふうっお䜕」
     アむラの怒気のこもった蚀葉を無芖しお、りむは続ける。
    「だから楜しめない  才胜はあるのに、わざず楜しんでない。『ワンダヌ』。陞䞊。人間関係。人生。みヌんな適圓にこなしおる。それができおしたうっおのが、お前の悲劇だな」
    「り、りむ、ちょっず、いじわるですよ」
     さすがにむレヌナが間に入っお止めようずするが、りむは小さな手で圌女の顔を抌しのけた。
    「なあ、愛染䞖界はめちゃくちゃ楜しいもので溢れおるんだ『ワンダヌ』も、他のゲヌムも、映画も挫画も音楜も芞術も飯食うのだっお運動すんのだっお楜しい補習はク゜ダルいが勉匷自䜓は楜しいし、アタシは嫌いだが人間関係や恋愛だっお、楜しさはわかるぜだのにお前は」
     りむはもう片方の手で、アむラを指差した。
    「楜しめる胜力があるのに楜しもうずしねえぶっちゃけ腹立぀が、キャラずしおは歪んでお面癜いッ」
    「わけわかんないっ、さっさずゲヌムを進めたら」
     蚀い返すアむラの声が、若干䞊ずった。わけがわからない、ず口では蚀いながら、心のどこかがギチギチず反応しおいる。
    「ひひひ、そうだったな、぀い楜しくなっちたった『爆匟秘宝パンドラ』を召喚、タヌン゚ンドだ」

    ――
    爆匟秘宝パンドラ
    コスト黒
    モンスタヌ
    皮族ミミック、マヌダヌギア
    パワヌ 

    このモンスタヌのアタックたたはブロックの埌、このモンスタヌを砎壊する。
    このモンスタヌが砎壊された時、持ち䞻はダメヌゞを受ける。

    ”「オむラに觊れるず爆発するぜ」 ――爆匟秘宝パンドラ”
    ――

    なるほど、コストは䜎いのに砎栌のパワヌ。そのかわり、アタックしおもブロックしおも回限りで、持ち䞻にそれ以䞊のダメヌゞを䞎える  『ナグドラ』の召喚にあわせお、壁を぀くっおきたか
     『デュ゚ルワンダヌ』は、互いにあるラむフがになるず負けだ。ラむフぞのアタックが成功するず、パワヌぶんラむフが枛り、ダメヌゞずなる。アむラの『ギガセンチピヌド』はパワヌ。匷力な効果を持぀分、数倀は控えめだ。召喚した埌は、盞手モンスタヌの攻撃をブロックする壁ずなる。
    でも、この皋床なら突砎できるさっさず終わらせよう
    「私のタヌン、マナ補充、ドロヌ。『䞖界暹竜ペクト・ナグドラ』を召喚」
    「わあすごい、すごいモンスタヌ、です」
     切り札の登堎に、むレヌナが目を茝かせる。倚倧なマナコストを芁求する『ナグドラ』は、パワヌ・胜力ずもに芏栌倖のものだった。

    ――
    䞖界暹竜ペクト・ナグドラ
    コスト緑
    モンスタヌ
    皮族ミスティックドラゎン
    パワヌ 

    貫通このモンスタヌがアタックしお、ブロックされた時、パワヌが盞手モンスタヌを超えおいれば、その分だけ盞手にダメヌゞを䞎える
    このモンスタヌを召喚した時、デッキの䞀番䞊から枚たで、マナに眮く。その埌、マナから同じ数だけカヌドを遞び、手札に加える。

    ”竜によっお、䞖界は生たれ倉わる。”
    ――

    「アむラサン、あのね、『ナグドラ』は、モンスタヌ䞖界の、Great Five Dragonsのいっぎきで  」
    「ごめん、あずにしお」
    「ハむ  」
     むレヌナはアむラずデュ゚ルしおいた時も、『ワンダヌ』の䞖界芳の話をよくしおいた。日本語ず英語が混ざるので、アむラには少し分かりづらかったが。
    「召喚時効果で、デッキから枚をマナぞ  マナから枚を手札ぞ」
     増やしたマナのうち、『ナグドラ』の召喚に䜿ったカヌドを手札に戻すこずで、マナが再床䜿甚可胜になる。手札に持っおきたカヌドを、そのたた䜿えるずいうわけだ。フィニッシャヌず手札の補充、枚で耇数の圹割をこなす『ナグドラ』の存圚が、アむラがこのデッキを遞んだ理由だ。
    「぀よくお、手札もふえる぀よいモンスタヌ、ですね」
    「盞倉わらず枚で完結しおんな、『ナグドラ』は。いいもの匕いおるじゃねえか。ブン回りだな楜しめよ愛染」
    「デッキには枚入っおるんだ、確率的には圓然でしょ。『ナグドラ』でラむフにアタック」
     巚竜の攻撃が、りむのラむフに襲いかかる。しかしこのたたでは、『パンドラ』ず盞打ちだ。『パンドラ』の効果でラむフにダメヌゞは入るものの、りむの手札に反撃カヌドが枚あれば、しのぎきられるかもしれない。
    さっさず、終わらせる
    「ひひ、いいね『パンドラ』でブロック  その調子じゃ、なんかあんだろ」
     挑発的な芖線を向けるりむに、先皋マナから回収したカヌドを぀き぀ける。
    「呪文『もう䞀぀の波王』。『ナグドラ』のパワヌを倍にする  これでパワヌはだ」
     パワヌ。通れば䞀撃でラむフのほずんどを削り切るほどの、暎力的な数倀。さらにアむラの堎には『ギガセンチピヌド』が䜓。仮にこのタヌンをしのぎきられおも、手札には回収した枚めの『ナグドラ』がある。
    「あ、ダメダメです」
     アむラが呪文を䜿ったのを芋お、むレヌナがあわおお止めようずする。
    「なんでルヌル的には、倧䞈倫なはずでしょマナも足りおる」
    「えヌっず、あの、えず、それは、ダメなんです、『パンドラ』の砎壊は、もっずおおきなワザワむを  」
     むレヌナの蚀葉は、芁領を埗ない。負けそうなりむをかばっおいるのだろうか、ずアむラは䞀瞬考える。
    「どうする䜿うのか」
     りむがその様子を芋ながら、にやにやず笑っおいた。衚情の意味は気になるが、このパワヌなら抌し切れる。
    「もちろん、䜿う。さあ、早くラむフを枛らしお」
     『ナグドラ』の貫通ダメヌゞず『パンドラ』の自爆によるダメヌゞが、䞀気にりむに降りかかる。以前の『ギガセンチピヌド』のアタックもあり、りむのラむフは残りたで削られた。
    「ああヌ、めちゃくちゃ食らったやっぱパワヌは反則だな」
     ピンチにも関わらず、りむは䟝然䞍敵な衚情のたた。アむラは、いらだたしげにゲヌムを終わらせようずする。
    「『ギガセンチピヌド』でアタック  」
    「埅ちな。こっからはアタシの芋せ堎だぜ」
     りむが手札からカヌドを枚抜く。反撃だろうか。
    「なんでもわかっちゃうお前に、ワケのわかんねえもん、芋せおやるよ」
     そしお、りむは手札の、抜いたカヌド以倖党おをオヌプンした。
    「ひひ、䜿うぜ、反撃。枚だ」
     それは、アむラの知る『ワンダヌ』ではあり埗ない量だった。反撃にはそれぞれ条件があり、ばらけさせるのがセオリヌだ。ラむフが枛少しただけで枚も発動するなど、通垞の構築ではあり埗ないはずだった。
    「こっで、わヌの負けたい、愛染」
     アむラの心臓が、どくん、ず跳ねる。
     理解できないものが、目の前にあらわれようずしおいる。
     久しく感じたこずのない予感に、アむラは唟を飲み蟌んだ。


    【続く】

    画像提䟛阿蘇垂http://www.city.aso.kumamoto.jp/tourism/brochure/free_photo/

     
     
    小説家。代衚䜜『Q eND A』角川ホラヌ文庫『倧谷ポケカ』ラむオンマスク名矩でゲヌムやサりナの蚘事も曞く。ホヌムは『第䞉玉の湯』。ゲヌムや小説やサりナ関係の案件を募集䞭です X:@44900_lion mail:lionmizuburo@gmail.com

    あなたぞのおすすめ