
日本画らしくない世界の振り返り⑨
大学を出た直後、今振り返るとものすごいエネルギーで描いた、そんな1枚かもしれません。

作品情報
『鯰八の字昇天図屏風』 2014年作
パネルに水干、金属泥
絵金蔵 蔵
制作の意図
高知の絵師・金蔵(絵金)をご存知でしょうか。関東ではあまり知られていませんが、関西では比較的名の知れた江戸時代の絵師です。詳しくは絵金ゆかりの町・赤岡町にある「絵金蔵」の公式サイトがとても充実しています。
赤岡町では毎年7月、蝋燭の灯りの中で絵金の屏風絵を野外展示する「絵金祭り」が開催されます。
私が本作を描いたのは、この祭りで“絵金と同じサイズの屏風を、同じ条件で展示する”という企画に参加したためでした。自力で見つけ応募した企画でしたが、後から母校で美術史を教えていた教授が関わっていたことが判明し、妙な縁を感じたのを覚えています。
絵金作品の大きな特徴のひとつは、芝居絵であり、絵に物語があること。
その点を踏まえ、私は「巨大な鯰が八の字を描きながら天へ昇っていく」という物語を設定しました。
また絵金が用いた技法のひとつに、異時同図法(ひとつの画面に複数の時間軸を描く手法)があります。本作でもそれを踏襲し、画面に登場する鯰はすべて同一個体として描いています。
今の視点からの振り返り
制作したのは大学を出て3ヶ月、絵本賞を受賞した直後。「物語のある絵」に強く惹かれていた時期で、エネルギーだけは満ちていたのだと思います。
今見ると、物語を描いているわりに画面に妙なリズムがあり、キャラクター的な鯰が消えたほうが和風のコラージュのように見えて面白いかもしれない、とも感じます。
最近の作品にも、「生き物の止まっている姿と動いている姿を同時に描く」
という表現が自然と入り込むことがあり、当時の試みと地続きなのだと気づきました。

お題があると、良くも悪くも律儀に資料を集め、絵金の墓参りまでしたのに、最終的には自分の画風にこだわらず実験してしまう。そんな“我田引水”なところは、今も変わらない気質かもしれません。
几帳面なのか大雑把なのか分からない。
真摯なのにどこかあほう。
振り返ると、昔からずっとそうでしたとさ。

過去の絵
https://www.kobayashidaigo.website/artworks/nihonga/
オンラインストア(振り返り作品の取扱いはありません)