
空中のオフィーリア
空が、白く濁っている。
雨が降っている。
その中に、身体がある。
濡れた髪が垂れ、白い布が肩にまとわりついている。
首は反り、顔は髪の奥に隠れている。
浮いているようにも見える。
落ちている途中にも見える。
けれど、そこには水面がない。
花もない。
草の匂いも、川の音もない。
白い空だけが、彼女の身体を取り囲んでいる。
私は、その手を見る。
腕は力を失い、手首はわずかに折れている。
手のひらは開いている。
何かを求めているのか。
何かを放したあとなのか。
私にはわからない。
ただ、雨がその手を通り抜けていく。
指の間を抜け、手首を伝い、滴となって落ちていく。
手には、何も残らない。
私は、自分の手を開く。
彼女と同じように。
手のひらに雨が入る。
指の間から、冷たいものが抜けていく。
彼女の手と、私の手。
そのあいだを、雨だけが落ちていく。
空は、まだ白く濁っている。