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仙厓のサイン、なんて読む?【落款と仙厓という人】

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    左:書道家タケウチ 右上:書道家板谷栄司with鯖大寺鯖次朗 右下:ジャズギタリストタナカ


    仙厓(せんがい)と言えば、気の抜けたようなゆるカワな書画で有名なイメージ。筆者も大好き!



    仙厓のコレクションは出光美術館が多く所蔵していますが、いつかの展示の際に買ってきた仙厓の『円相図』のポストカード。

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    ポストカード

    何とも気の抜けた円相と「これくふてお茶まひれ」という文字、そして赤い印の「仙厓」の文字は読むことができますが、印の上のサインと思しきものはなんて読むのだろうか・・・?とふと気になり始めました。

    「仙厓」とは読めないし、彼の僧名である「義梵」とも読めない・・AIに聞いても的を射た回答を得られず、他に調べてもなかなか出てこない・・・!

    ということで、今回は仙厓のサインを巡ってみましょう。


    落款(らっかん)とは


    落成款識(らくせいかんし)の略語。

    落成・・作品などが完成すること
    款識・・ 「款」:凹字(陰刻)/「識」:凸字(陽刻)※二字とも「しるす」の意味がある。元々は、鐘や鼎(かなえ)、灯籠などの金属製品に文字を鋳込むこと、またその文字。転じて、書画などにおける作者の署名や押印。

    精選版 日本国語大辞典を参考

    落成款識は、書画の余白部分に書く、
    ・筆者の名前や号
    ・書いた年月日
    ・書いた場所
    ・書いた理由
    ・何を書いたか(詩のタイトルなど)
    ・書いた方法(書、臨、倣など)
    ・筆者の印(落款印)
    これら全体のことを指します。

    つまり、
    いつ、だれが、何を、どんな気持ちで書き、私の作品ですよと証明する印を押す
    。それが落成款識(落款)です。

    また、印だけにフォーカスして、「落款印を押した印影」また「落款印そのもの」を「落款」と呼んでいることもあります。

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    巻菱湖 五言律詩行書双幅『五仙騎五羊』左幅
    最後のやや小さめの文字と印が「落款」


    仙厓という人

    仙厓 義梵(せんがいぎぼん) 1750-1837年 88歳没
    江戸時代後期  臨済宗、禅の僧侶

    ▼仙厓と同世代の有名人
    ・
    良寛(1758-1831年)僧侶・書家
    ・巻菱湖(1777-1843年)書家・漢詩人
    ・葛飾北斎(1760-1849年)浮世絵師『冨嶽三十六景』など
    ・喜多川歌麿(1753年頃-1806年)浮世絵師 美人画
    ・伊能忠敬(1745-1818年)測量家 日本地図制作
    ・杉田玄白(1733-1817年)蘭学医『解体新書』翻訳

    出家前の俗名は不明
    仙厓→道号
    義梵→僧名

    雅号は、
    莫妄想(まくもうぞう 禅語)・百堂主人(ひゃくどうしゅじん 博多・聖福寺のあった地名)・梵杜多(ぼんずだ)・洪厓(こうがい)・厓道人(がいどうじん)・厓山人(がいさんじん)・厓狂人(がいきょうじん)・虚白閑人(きょはくかんじん)・厓菩薩(がいぼさつ)・多羅菩薩(たらぼさつ)・無端厓(むたんがい)・陳衲(ちんのう)などかなり多数

    ※「雅号」についてはこちら

    美濃国生まれ、11歳で僧となり、40歳で博多・聖福寺の住職となる。その後1811年61歳で退任。40代後半以降に多く書画を描いたのではないかと言われています。

    軽妙、飄逸、洒脱などと評される仙厓の書画は、生前から人気があったのだとか。
    仙厓の書画には、「厓画無法(がいがむほう)」仙厓の絵画には法がない、という言葉がよく知られる。型にとらわれず、自由に遊び、絵画における悟りのような境地で描かれています。


    『円相図』の落款は何て書いてある?


    さて大方の知識を入れたところで、再度こちらを見てみましょう。
    (改めて見ても、円相の丸も、文字も実にのびのび書かれていて、気持ちの良い書画です)

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    『円相図』これくふて御茶まひれ
    「これを食べて、お茶を召し上がりなさい」という意味

    ▼円相(一円相、円相図)
    禅における書画のひとつで、図形の丸(円形)を一筆で描いたもの。
    悟りや真理、仏性、宇宙全体などを円形で象徴的に表現したもの、また、始まりも終わりもなく角に引っ掛かる事もない円の流れ続ける動きは、仏教が教える捕らわれのない心、執着から解放された心を表すとされる。

    落款部分のみ拡大⇓

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    一、千、平、三、華の草書・・・???
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    「華」草書体

    莫妄想・百堂主人・梵杜多・洪厓・厓道人・厓山人・厓狂人・虚白閑人・厓菩薩・多羅菩薩・無端厓・陳衲・・・この中にあるのか、ないのか・・・もしかしてそもそも名前を署名しているものではなかったりして・・・!?

    そんな不安を抱えながら考えていたのですが、多くの仙厓作品を所蔵し、多くの仙厓の考察を発表している出光美術館の「仙厓の雅号をめぐって」(八波浩一 やつなみひろかず)という論文から、ようやくコレだ!というものを見つけました↓↓

    「厓菩薩(がいぼさつ)」

    厓菩薩

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    「厓菩薩」どう書かれている??

    仙厓の「厓」に、悟りの修行者を表す「菩薩」。いやでも、どういうふうに書くとこれで「厓菩薩」になるの・・・!?!?

    ▼菩薩(ぼさつ)
    悟りを求める者。また自分だけでなく、一切の人々を悟りへ導くために修行し続ける存在。仏の位に至る前段階で、他者を救う慈悲の実践者という意味

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    まず「厓」は、雁垂れの左払いがとても短く、それに連続して「土」2つが草書の書き方で書かれます。「土」の横画は縦画に引っ掛からないくらいに書かれています。全体がとても縦長。

    そして、「菩薩」にあたる部分は、なんと「菩薩」の草冠2つだけを合わせた略字「𦬇」になっているのです。この「𦬇」の字はカタカナの「サ」を合わせたように見えることから「ササぼさつ」とも呼ばれます。
    ちなみに、仙厓が編み出したものではなく、仏書などでは時折見られる書き方のようです。

    仙厓は、とても多くの雅号を用い署名をしていましたが、晩年には、この「厓菩薩」と書くことが多くなったのだとか。自分のためだけでなく、他者の救済、悟りを祈ったものが、仙厓の書画の真骨頂でありましょう。


    その他の仙厓作品の落款

    「これく(具)ふて茶のめ」落款印のみ

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    『一円相画賛』出光美術館蔵
    (出典:美術展ナビ)


    「扶桑最初禅窟」(日本最古の禅寺・聖福寺)落款印のみ

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    『〇△□』
    (出典:出光美術館)


    「座禅して人が(可)佛に(尓)なるならば(八)」「厓𦬇(厓菩薩)」(たぶん)

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    『坐禅蛙画賛』
    (出典:Wikipedia)


    「きゃんきゃん」「厓𦬇(厓菩薩)」

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    『狗子画賛(くしがさん」)』
    (出典:美術展ナビ)


    「猫か(可)乕か(可)當て見ろ」落款印のみ

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    『虎図』永青文庫蔵
    (出典:TOKYO ART BEAT)


    「読める」は、快感!


    書道の文字、昔の文字は「読めない」から遠ざけてしまいがち。

    「読めない」理由は
    ・漢字のくずし字・草書体が使われている
    ・変体仮名が使われている
    ・合字や略字が使われている
    ・書き手のクセが強い
    というのが主な理由です。

    でも、丁寧に紐解いていき、読めたときには快感!文字はやっぱり「読みたい」というのが人間の性なのだと思います。

    もし読みたいけど読めない文字があったら是非教えてください^^



    参考:出光美術館「仙厓の雅号をめぐって」、東洋古美術天平堂


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