
【療育探偵08】「廊下の住人」から「小さな航海士」|指示の荒波を乗り越える
はじめまして、emcOmi_in_progress です。
このページに立ち寄っていただき、ありがとうございます。
このnoteでは、療育を通じ、
息子の「個性」を紐解き、
家族の平穏を取り戻すため「仕組み」で戦ってきた
探偵(父)の記録を綴っています。
前回、
年長になって1カ月が経った5月の記録では、
言葉より大切なこと、
息子の「優しさ」の芽吹きについて綴りました。
※5月の記録をまだ読まれていない方は、
まずはこちらからお読みいただくと
息子の変化がより伝わると思います。
言葉を理解し、
園生活に見通しが立つようになると、
「迷い」が消え、「意思」が宿り始めます。
年長の6月。
かつて「廊下の住人」だった息子は、もはや
誰かに導かれるだけの息子ではありませんでした。
自らセンサーを駆使し、
園活動の波に立ち向かう、
「自律」の挑戦が始まっていました。
1. 「航海」を手にした日
息子は視覚優位の特性で、全体指示を聞き逃し、
園の活動の波が次々と移り行く中、
加配の先生からの個別の声かけや、
周りのお友達の様子をヒントに、
自分の行動指針を探していました。
6月。私のノートに記されたのは、
自分で現在地を確認し、園の活動の波をとらえ、
目的地まで1人で漕ぎ出す小さな航海士の姿でした。
「トイレの後、
椅子を出して、
絵本を読んで待っててね」
この連続指示を、
彼は先生の促しを待たずに、
すべて「自立」で遂行しました。
かつて、先生の全体指示をつかめなかった彼は、
療育で
「見通し」というコンパスを手に入れたことで、
波を越え、自らを目的地まで運ぶ
船長になれたのです。
2. 舵切り:視覚優位からの進化
視覚優位の特性を持つ息子にとっては、
音声指示は暗号のようで、
誰に向けたどんなメッセージなのか
自分宛ての情報をキャッチすることすら
大変な負担になっていたことでしょう。
年少、年中の頃、
視界に入るほど近くから声をかけられることで、
ようやく口頭指示をキャッチできる状態でした。
年長の6月、
彼は「クラス全体への指示」を
自分事として捉えられていたのです。
ある日のこと。先生がお友達に
「防災頭巾を椅子につけてね」と
声をかけました。
息子に向けた言葉ではありません。
しかし、その声を聞いた息子は、
パッと遊びを切り上げ、自分の椅子を確認し、
まだ付いていない防災頭巾を取りに行ったのです。
「自分も該当するのか?」
音声と自分の取った行動を照合して判断する。
かつて、指示の荒波の中ただ流されていた息子は、
今、先生の口頭指示、周りのお友達の動き、
自分の取った行動を「センサー」に、
自ら舵を切っていたのです。
3. カスタネット:「先生とのお約束」
園の集団活動でも、
その「観察と自律」は光っていました。
音楽の時間で、
先生からカスタネットを配られた時のことです。
「名前を呼ばれたら先生のところに取りに来てね」
「もらっても、合図があるまで鳴らさないこと」
音の出る楽器を手に、
わくわくする気持ちを抑えるのは難しい。
しかし、彼は先生とのお約束のとおり、
音を鳴らさずに待つことができました。
ピアノに合わせて鳴らす。
先生の言葉の数だけ叩く。
視覚優位の特性をもつ息子が、
頼りにできる視覚情報が少ない音楽の場で、
周囲のペースに合わせようと頑張っていたのです。
4. ぶんぶんゴマのSOS
一方、療育での
一対一のコミュニケーションの練習では、
「できないこと」と向き合う強さも見られました。
工作で「ぶんぶんゴマ」を作った時のことです。
紐を引いても思うように回らないコマ。
以前なら、苛立ちから
壁際でいじけたかもしれない場面でした。
しかし、息子は先生の目を見て、
「ねぇねぇ、くるくる回らない、やって」
「できない」という事実を言葉にし、
助けを求める。
SOSは、将来、
息子が社会の中で、一人で歩いていくために、
何より必要な「サバイバルスキル」なのです。
5. 結び:仕組みが「自信」に変わる時
園の先生が、
「次の目標をどう設定するか」という
嬉しい悩みを抱えている中、
療育の先生から園の先生に、療育では
「3語文で説明できる」ことを目標に
活動していることが共有されました。
息子を支えるため、園と療育がタッグを組み、
次のステップに向かってくれたのです。
今の園での課題は、お友達との話し合いの場で、
「自分の意見」を発信していくこと。
「前でカスタネット叩きたい人ー?」
「はい!」
真っ直ぐに手を挙げた前向きな輝きを、
自分の意見を発信する力に導いてあげたい。
「ねぇねぇ、先生。これ?」
自分のセンサー(理解)が正しかったのか、
先生にしっかり確認する息子。
「将来、家族以外と対話できるのだろうか」
かつて抱いていた不安は、もうありません。
息子が自分の足で立ち、
自分の言葉で社会と対話しようとする、
その確かな歩みを信じてみたい。
いまはそんな想いがあるだけです。
私の言葉が、
日々、大切な人を支えるため
不安と闘っている誰かの、
足下を照らす小さな灯火になりますように。
emcOmi_in_progress
✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
✔ パパの守り神
今回、息子が身につけ始めた「助けを求める力(SOS)」。この小さな芽が、数年後、どのようにしてパパを救ってくれる存在へと育ったのか。この物語の「未来」の姿を少しだけお見せします。
✔ 小学校進学を見据えた挑戦
親や先生という「通訳者」がいなくなった世界で、一人で生き抜くための挑戦の始まりです。
✔【療育探偵 07】言葉より大切なこと:優しさの芽吹き
今回の「自律」への躍進を支えたのは、その直前に見せた小さな「心の変化」でした。地味だけれど、私にとっては忘れられない年長の5月の記録です。
✔ 【療育探偵 01】すべてはここから始まった
なぜ私が「探偵」として記録を付け始めたのか、私たちの原点の物語です。