
行き先は、まだ知らない。|駅のホーム|地図にない灯り|ショートショート
Ⅰ|昨日行き
終電を見送った男は、ため息をついた。
今日もまた、誰かに追い越された気がした。
誰もいないホームに、
見知らぬ列車が滑り込んでくる。
行き先は「昨日」。
窓の向こうで、少年が笑っていた。
男は、その顔を知っていた。
Ⅱ|星空行き
少女は、窓の外を見つめていた。
夜空を走る列車の向こうに、
無数の星が瞬いている。
「あの星には、なりたかった私がいるの?」
車掌は答えず、一枚の切符を差し出した。
行き先は「明日」。
切符の裏には、
見覚えのない名前が書かれていた。
Ⅲ|始発駅
少年は、古いホームで二枚の切符を拾った。
一枚は「昨日」。
もう一枚は「明日」。
どちらにも、自分の名前が書かれている。
やがて、二方向から列車がやってきた。
少年は、どちらにも乗らなかった。
そのとき、足元に三本目の線路が現れた。
行き先表示が、静かに灯る。
「いま」
遠くで、発車ベルが鳴った。
――つづく、かもしれない。
次の行き先は、まだ誰も知らない。🌌
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あとがき
ゆきさん、
素敵なお題をありがとうございます!😊
今回、ゆきさんの企画に背中を押されて、
初めてショートショートを書いてみました。
ひとつのお題から、
三つの小さな物語が生まれました。
この先、どこへつながるのかは、
書いている私にもまだ分かりません。
またいつか、
どこかのホームで出会えたら……。
参加企画:ゆきさん「地図にない灯り」
今回のお題:駅のホーム