
私が授業で大切にしていること⑤― 環境問題と良心
私が授業で大切にしていること⑤― 環境問題と良心
前回は、専門や立場の異なる人と「共に知る」ことについて書きました。今回は、その視点から環境問題を考えます。
技術士試験では、気候変動、水問題、生物多様性の喪失、汚染、廃棄物などを幅広く取り上げています。ただ、個々の問題への技術的な対策を知るだけで終わってほしくありません。
理工系の学生向けですが、『Laudato si’』をもとに、「総合的なエコロジー」という視点についてお話しています。環境問題を、貧困や格差、経済や人々の暮らしから切り離さず、相互につながった課題として捉える考え方です。
同文書は、環境の悪化が、とりわけ貧しく、被害を避ける手段を持たない人々に深刻な影響を与えることを指摘しています。
たとえば、安全な水をつくる技術があっても、料金が高く、必要な人が利用できないのであれば、それで問題が解決したとはいえないでしょう。
誰が恩恵を受け、誰が負担を引き受けるのか。私は、技術の性能だけでなく、その先にある生活や社会の仕組みまで考えてほしいと思っています。
さらに、『Caritas in veritate』を通して、人間の発展と自然環境の関係を考えます。この文書では、自然環境の利用には、貧しい人々、将来世代、そして人類全体に対する責任が伴うとされています。
資源についても、効率よく使えば十分というわけではありません。一部の国や企業によるエネルギー資源の囲い込みが、貧しい国々の発展を妨げる問題にも目を向けています。
また、科学技術を活用して人々の生活を支えることを認めつつ、資源を使い尽くした自然を次世代に引き渡さない責任を説いています。
私は、ここに技術者の良心が問われると思っています。
目の前の課題を解決するときに、別の地域や立場の弱い人、将来の世代へと、負担を移していないか。自分の専門だけでは見えない影響を知るために、他分野の専門家や地域の人々の話を聞くことが大切です。
「環境によい技術」を考えることと、「人々がよりよく生きられる社会」を考えることを、別々にしない。
自然と人間、現在と未来のつながりを知り、関係する人々と共に考える。そのような良心を、環境問題に向き合う際にも大切にしてほしいと思っています。

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