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私の知らない地元の夏祭り

    1週間前、私が勤務する塾の生徒が言いました。

    「来週、塾休みます」
     
      「なんで?」

    「祭り行くから」

    別の生徒も、そのまた別の生徒も、同じ理由で休むと言いました。
    気がつけば、その日の私の担当生徒は「全員欠席」。

    塾の授業より、祭り。
    私の完敗です。

    そこまでみんなが行くなら、私も行ってみよう。
    どうせ仕事もなくなったことだし。

    会場に着いてから、ほんの一時間。
    担当している生徒の半分くらいに会いました。

    遭遇率が高すぎます。

    友達と来ている子。
    浴衣を着ている子。
    家族と歩いている子。
    塾ではあまり見せない笑顔で、友達と話している子。

    そして多くの生徒が、私を見つけると、

      「あ、先生!」
      「なんか買ってや!」

    と声をかけてくれました。

    友達と一緒なのに。
    ありがたいことです。

    ただ、一人だけ。
    こちらから声をかけると、恥ずかしそうに逃げていきました。

    よし。
    声をかけてくれた子には、来週からも優しくしよう。

    決めた。
    逃げた子には、少し厳しくしよう。

    ◇

    私は「地元の夏祭り」というものを、あまり知りません。

    私の地元の近くには福男で有名な大きな神社がありますが、
    全国から人が集まるため、地元の祭りという感覚はありませんでした。

    友達と待ち合わせをして、屋台を回る。
    知っている人を見つけて、手を振る。

    私は、そんな夏の記憶をほとんど持っていません。

    今回の祭りでも、私は本来なら部外者です。
    それでも、生徒たちは声をかけてくれました。

      「あ、先生!」

    そう呼ばれるたびに、私は少しずつ、
    この町に迎え入れてもらっているような気がしました。

    自分にはなかった夏祭りの記憶を、生徒たちから少しだけ分けてもらった。
    そんな気がします。

    自分の地元ではない祭りに行っても、みんなが声をかけてくれる。
    こういうとき、やっぱり先生をやっていてよかったな、と思います。

    人と人とのつながりは、やっぱりいい。

    そして、AIがどれだけ勉強を教えられるようになっても、この人と人とのつながりまで、AIに取って代わられることはないのだと思う。

    来年も、再来年も、その先も。
    あの日のように、生徒たちが友達と笑って祭りを歩けるように。

    私はまた教室で、目の前の一人ひとりと向き合っていこうと思います。

    私の知らなかった地元の夏祭り、
    今年からは少しだけ、私の夏祭りにもなりました。

    さあ、逃げていったあの子。
    次の授業、覚悟しといてな!(笑)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(後日談)
    厳しくしようと思っていたのですが、数日後、その子のお母さんから暑中見舞いとしてプレゼントをいただきました。

    やっぱり、優しく接します。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    夏祭り・第2段はこちら


     
     
    tkです。 20年以上、英語教育に携わっています。 教材・アプリ・小説・漫画を制作。 Project Traverseとして、 「読む・観る・学ぶ」をつなぐ 新しい学習体験に挑戦中です。

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