
石川雅規投手の話
あの登板と引退の決断
到底仕上がっているはずがない、コンディションが整っているはずがないと思ったあの登板。先走ったとしか思えなかったあの登板。心配した通りの大炎上、かつ左肩のケガ。こんな終わり方は納得できないと私は騒ぎ立てました。
石川投手は悔しくて逆に燃え上がるのではないだろうか。コンディションを万全にして来年またチャレンジしたいと思うのではないだろうか。そんな微かな期待を抱きながら私は悶々としました。
また、石川投手の道標となる先達も、どん底の1年を乗り越えて現役をつないだという事実を石川投手に重ね、来年も石川投手が神宮で投げる姿を見られることを私は願いました。
そんな一ファンの勝手な願いや諦めきれない鬱屈とした気持ちをすっかり洗い流してくれたのも石川投手その人でした。
あの登板の日にはもう引退を決断していたそうです。明らかに調整不足だと思われたあの登板も、8月中に一軍で投げられなければやめるという相当な覚悟のもと準備したマウンドだったのでしょう。
そして引退会見での晴れやかな表情。めちゃめちゃ楽しかった25年間、何の悔いもない大きな花丸の野球人生だったという言葉を聞いて、私は救われた気持ちになりました。
スワローズで良かった。スワローズを愛している。そうか、そうなんだな。石川投手が大好きなスワローズを私も大好きなんだな。
あれからずっと、私にとって石川雅規という存在は何だったのか考えています。今のところの結論は、いたってシンプルなものです。
石川雅規投手は私の憧れの人であった
でも高津さんや古田さんに抱いた憧れとは違います。ノムさん黄金期のスターたちは存在が大きすぎて、そしてずっと年上の大人であって、現実世界からは遠いところにいる憧れのヒーローでした。
石川投手はそうではありません。少し年上ではあるけれど、その存在を身近に感じさせてくれる同年代の憧れのヒーローです。実は私はずっと石川投手を「いしかわくん」と呼んでいます。近所のお兄ちゃんとか、部活の先輩とか、そういう感覚。畏敬や尊敬とはちょっと違う「敬愛」のまなざしで「いしかわくん」を見ていました。
同年代であることに加えて、石川投手が私の身近な憧れの人であった理由はたぶん次の二つです。
コンプレックスを強さに変える力が飛び抜けている
石川投手は超人的な選手ではありません。むしろ普通の人に見えます。野球選手としてはコンプレックスや弱点と捉えられるようなことも努力と工夫で乗り越え、誰も真似できないような実績を積み重ねました。
普通の人間である私、コンプレックスを抱える私にとって、その生き様が憧れだったのです。
・中学生みたいな風貌なのにドラ1。
・あんなに小柄なのに二桁勝って新人王。
・ぜんぜん速くないのに打者を翻弄できる。
・小さくて華奢なのにケガしない。
・普段は穏やかなのにマウンドではカッカしちゃう。
・投手なのにけっこう打つ。
・40歳を超えたのに勝ち続けられる。
・あんなに実績があるのにぜんぜん偉そうに見えない。
「~なのに」の先がかっこよすぎます。コンプレックスや弱点を乗り越えた先に、そして努力を続けた先に途方もない結果が待っているということを体現した人でした。
柔よく剛を制す。蟷螂の斧。虎視眈々。継続は力なり。私は石川投手からそんな生き方を教えられ、そうありたいと思いました。
分け隔てない人間性が溢れ出ている
私は石川投手と対面で言葉を交わしたことが2回あります。
1回目は2017年の浦添キャンプです。ライトポール際のスタンドにいた石川投手をつかまえて、背番号19のユニホームにサインをいただきました。初めて石川投手と対面して心躍りすぎたせいか、何かしら言葉を交わしたと思うのですが、今となってはよく覚えていません。
2回目はシーズンオフの石川投手のトークイベントです。「新神宮でも投げて下さい!」「いやあそこまでは…。」みたいな会話をしたことを覚えています。イベントではファンにも、共演者にも、スタッフにも気遣いを見せていた石川投手。全方向に自然と気を遣えてしまうその姿が忘れられません。
憧れの人を目の前にして私は緊張していたはずですが、この話しやすさはいったい何なんでしょう。威圧感や近づきがたいオーラとは対極にある、温かくて気持ちの良い空気。そりゃ「いしかわくん」って呼んでしまうよ。
各種メディアで伝えられる姿、私が対面した姿から想像するに、先輩にも後輩にも、メディアの方々にもファンにも、誰とでも分け隔てなく接するのが石川投手です。その姿がかっこいいのです。等身大のヒーローという言葉がこれほどぴったりくる人はいません。
石川雅規投手の話は続く
石川投手の足跡を追いかけることが私のライフワークでした。そしてnoteで石川投手のことを書くという楽しみを見つけました。私の半生は石川投手とともにありました。石川投手、めちゃめちゃ楽しい25年間をありがとうございました。
石川雅規「投手」の終わりが近づきます。もう石川投手の次の一勝を追いかけてハラハラすることはなくなります。
しかし、終わりは始まりであって、石川雅規とスワローズの、「いしかわくん」と私の歴史は続きます。私には見えます。
満員の新神宮球場で
絶対大丈夫と選手の背中を押す
背番号19を背負った小さな体が
夜空で1回転する姿
石川雅規投手の話を私はまだまだ書きたいです。