一般相対論における重力の本質は等価原理にあります。これはアインシュタインがこの理論の構築するときの一番のヒントとなったものであり、任意の時空点において、その近傍ならば重力を消去できるという内容です。たとえば、地球上の重力で自由落下する観測者にとって重力が無くなり、宇宙空間をふわふわと浮いている体験をすることに対応します。また力がかかっていいない物体にも、座標系を変えるとみかけの力としての人工重力が現れますが、この人工重力は普通の重力となんら差異がないというのも、等価原理の主張になります。
一般相対論以前は、以下のニュートン方程式で重力下の物体の運動が記述できると考えられていました。
mdt2d2xk=−m∂xk∂Φ
ここでmは物体の質量であり、Φは重力ポテンシャルです。しかし重力が強くなり、また物体の速度も大きくなると、このニュートン方程式は正しく現象を説明できなくなります。代わりに、下の測地線方程式によって、重力下の物体の運動は記述されます。
mdτ2d2xμ=−mΓνλμdτdxνdτdxλ
ここで右辺に出てくる重力ポテンシャルの拡張項には、クリストフェル接続と呼ばれるΓという3つの添え字を伴った量が出て来ます。その定義は計量テンソルgを用いて、下記で与えられています。
Γνλμ=21gμα(∂xν∂gαλ+∂xλ∂gαν−∂xα∂gνλ)
この測地線方程式において、重力が弱く、かつ物体の速度が光速度cに比べて小さいという近似をすると、測地線方程式に寄与を与えるΓの成分は下記だけになります。
Γ00k≈c21Φ
そして測地線方程式は、重力ポテンシャルを伴ったニュートン方程式になることも確かめられます。この結果は、確かにニュートン力学での重力ポテンシャルΦが、一般相対論のΓと直接結びついていることを示しています。
ここでのポイントは、クリストフェル接続はテンソル量ではないことです。一般座標変換において、Γは下記のような擬テンソルの変換を受けます。
Γνλ′μ=∂xα∂x′μ∂x′ν∂xβ∂x′λ∂xγΓβγα+∂xα∂x′μ∂x′ν∂x′λ∂2xα
右辺第2項はテンソル量ならば出てこない寄与です。たとえば同じ数の添え字をもつテンソルTを考えれば、その一般座標変における変換則は次のものになります。
Tνλ′μ=∂xα∂x′μ∂x′ν∂xβ∂x′λ∂xγTβγα
この式から、ある座標系でこのTが零であるのならば、他の座標系でもこのTは零のままであることがわかります。
Tβγα=0→ Tνλ′μ=0
ところが、Γは擬テンソル量ですので、ある座標系でΓが零でも、他の座標系では同じ時空点のΓは非零になるのです。
Γβγα=0→ Γνλ′μ=∂xα∂x′μ∂x′ν∂x′λ∂2xα=0
Γは重力を意味しますので、特定の座標系で重力が無くても、他の座標系では重力が出現することを意味します。また逆に、任意に選んだ1つの時空点と1つの座標系でΓが消えていなくても、局所慣性系という別な座標系が、その時空点近傍に存在して、そのΓは零になります。
Γβγα(xo)=0→ Γνλ′μ(xo′)=0
これが等価原理の数学的な表現です。なおΓの微分も使って計算される時空曲率そのものは重力ではありません。時空曲率はテンソル量であり、それが特定の座標系で非零ならば、どんな座標系に取り直しても、その座標系での時空曲率は非零になりません。重力がこの時空曲率だと解釈しようとすると、任意の時空点で重力を消去できるという等価原理と矛盾することになります。