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Photo byhiro_takii1111

雇用統計ひとつで、3日分の円高が消えた理由

    3日かけて155円台まで進んだ円高が、雇用統計ひとつで、1時間もかからず消えた。

    今日はその話をする。

    まず、確定してる事実だけ並べておく。

    9月3日、日銀の高田審議委員のタカ派発言をきっかけに、ドル円は160円台前半から155円台まで急落した。9月4日にはFRBのウォラー理事が「ディスインフレ傾向が続けば、政策金利の据え置きを支持する」とハト派寄りの発言をし、ドル円は一時155円29銭まで沈んだ。3日間かけて、教科書通りの"円高トレンド"が出来上がっていた。

    そこに9月4日21時30分、8月の米雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数は前月比+16万2000人。市場予想の+5万5000人を大きく上回るポジティブサプライズだった。失業率は予想通り4.1%、平均時給も前年比+3.1%とインフレの粘りを示す内容だった。

    発表直後、ドル円は156円00銭から156円75銭まで一気に買い戻された。この記事を書いている9月5日午前3時時点で156円14〜15銭。3日がかりで155円台まで沈んだはずの円高が、統計ひとつでほぼ丸ごと巻き戻っている。

    米国株も同じ夜に強く反応した。NYダウは907ドル高(+1.7%)、S&P500は+1.8%高で2カ月ぶりの高値。中東情勢の緊張後退も重なったが、土台には雇用統計の強さがある。日経平均も9月4日終値65,020円94銭(+806円46銭)と、前日までの続落から反発した。

    ここで俺が引っかかったのは、値幅の大きさじゃない。「3日かけて作られたものが、1時間もかからず消える」という、積み上がる速さと消える速さの非対称性の方だ。

    正直に言うと、俺はこの3日間、ドル円の下落を見ながら「これは本物の流れかもしれない」と何度か思いかけた。日銀がタカ派、FRBがハト派。方向は揃ってる。理由も二つ重なってる。じゃあついていくべきか——そこまで考えて、いったん手を止めた。

    昔の俺なら、たぶん途中でショートを増し玉してた。3日連続で同じ方向に動いてれば、「もうこの流れは本物だ」と勝手に信頼が積み上がっていく感覚は、正直よく分かる。パチスロ時代、3日連続で同じ台が光ってるのを見て「今日はもらえる日だ」と思い込んでたのと、根っこはあまり変わらない。

    でも中身を見ると、この3日間の円高は「日銀がタカ派っぽい」「FRBがハト派っぽい」という、まだ確定していない"観測"の上に積み上がっていただけだった。観測は事実じゃない。だから確定データ(雇用統計)が1つ出た瞬間、土台ごとひっくり返った。

    3日続いたことは、強さの証明にならない。その3日が「確定データ」でできているのか、「思惑・観測」でできているのかの方が、よっぽど重要だ。日数は証拠じゃなく、ただの経過時間でしかない。

    だから今の俺は、トレンドが何日続いたかでポジションのサイズを決めない。積み上がってる理由が"まだ数字で裏取りされていない観測"の段階なら、指標発表をまたぐ時間帯はロットを上げないし、新規で増し玉もしない。逆に確定データで裏取りされたトレンドなら、そこで初めて乗る枚数を増やす。日数じゃなく、土台の材質で強さを測るようにしてる。

    しかも今回はこれで終わりじゃない。この後には9月のFOMCが控えてる。ここからまた「利下げは近いのか、遠のいたのか」という新しい"観測"が、数日かけて積み上がっていくはずだ。今度もまた、確定データが1つ出るまでは、その観測に全部を賭けない。俺が決めてるのはそれだけだ。

    その"確定データかどうか"を毎回どう線引きしてるかは、手法noteのほうに詳しくまとめてる。

    155円というライン自体の話は、こっちの記事でも書いた。

    積み上げるのに3日かかったものが、消えるのに1時間もいらなかった。それを覚えておくだけで、次にトレンドへ飛び乗る前の一呼吸が変わる。

    関連記事:ドル円155円、"割れたら加速"と言われる線の正体


    手法note:

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