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テクノロジーの組織に、なぜ施工管理がいるのか NOTAのスマートホーム施工管理、ある一週間

    この記事は、NOTAのテクノロジー連載「Tech Behind the Scenes」です。

    目次


    はじめに:現場にいる時間を、現場でしかできないことに使う


    こんにちは。NOTA(旧 NOT A HOTEL)のスマートホームチームで、電気工事の施工管理をしている牧平(makihira)です。
    入社までの話、これからの構想の話などは入社エントリに書きました。よければそちらも、ぜひ。

    入社して4か月あまり。最近いちばん聞かれるのが、この質問です。

    「スマートホームの施工管理って、結局毎日なにしてるの?」

    たしかに、外から見ても中から見ても謎の職種だと思います。

    テクノロジーの組織に「施工管理」がいる、という時点でもう謎です。エンジニアでもないし、職人でもない。でも現場にはいる。

    まずは、なぜテクノロジーの組織に施工管理がいるのか。「毎日なにしてるの?」に答える前に、バックグラウンドから説明させてください。

    ひとことで言うと、スマートホームを立ち上げる現場が、これから一気に増えるからです。

    NOTAはこれから、拠点が全国に増え、住宅、移動、街づくりにも事業が拡大していきます。
    拠点ごとに建物も施工者さんも違うのに、スマートホームはどこでも同じ品質で立ち上がらないといけません。

    いまは1棟ごとに、僕らが現地で機器を1台ずつ確認しながら立ち上げています。でも、同時に何拠点も動く時期に、このやり方のままでは人が足りません。

    だから、スマートホームを「使える状態」にする工程そのものを、拠点が増えてもスケールできる形に変えておく必要があります。
    AIのおかげで、ツールを作ること自体は速くなりました。
    いま足りないのは、現場のどこに手を入れるかを選ぶ人です。

    それが、テクノロジーの組織に施工管理がいる理由です。

    先にネタばらしをしておくと、いまの僕の仕事のゴールはこれです。

    スマートホームチームが、現場で機器を1台ずつ確認しなくても、ちゃんと立ち上がる状態をつくること。

    そのためにやっていることは、大きく3つです。

    ① 施工者さんが自分で確認できる「道具」をつくる
    ② 誰がやっても同じ仕上がりになる「ルール」をつくる
    ③ 人の面を外に広げる「座組」をつくる

    誤解のないように言うと、「現場に行かなくていい」が目標ではありません。

    現場に行かないと解決しないこと、現場だから学べることは、数えきれないほどあります。現場代理人(元請側の現場責任者)や職長(職人チームのリーダー)の方と顔を合わせて関係をつくるのも、大事な仕事です。

    ただ、どの現場でも僕らが機器の確認に張り付いていたら、肝心の「現場でしかできないこと」に使う時間がなくなります。
    確認作業は仕組みに任せて、現場にいる時間は関係づくりや判断、開発に使う。そのための仕組みをつくる材料は、全部現場に落ちています。

    というわけで、毎週どこかの曜日は、せっせと現場に通っています。

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    青島の空

    ここからが本題です。
    「結局毎日なにしてるの?」に、この3つを並べて答えても、たぶん伝わりません。道具もルールも座組も、できあがるのは机の上ではなく現場だからです。

    なので今回は、一週間をそのまま切り取ってみました。どの曜日に、どの材料を現場で拾って、この3つのどこに戻しているか。それがいちばん伝わると思ったからです。

    ちなみに、切り取ったのは「通常運転」の一週間です。拠点の立ち上げ時期には、結線の指示や疎通確認、検査のために、1〜2週間現地に滞在しっぱなしになることもあります。

    ただ、この滞在期間そのものを短くするのも、チームの大きなテーマです。施工者さんが自分で進められる疎通確認、照明の設定作業を短縮するツール、品質チェックの自動化。現地で人が張り付いている時間を、工程ごとに削っていっています。そちらはそちらで、また別の記事に。

    そもそも「立ち上げ」ってなに?


    NOT A HOTELの建物では、照明・カーテン・空調・床暖房などを、アプリや声でまとめて操作できます。

    この仕組みを1棟ごとに「使える状態」に仕上げる作業を、社内では立ち上げと呼んでいます。
    流れはざっくり、こんな感じです。

    → 機器の設定データづくり
    → 制御盤結線指示
    → 現地で機器の初期設定(キッティング)
    → 機器が正しくつながって動くかの確認(疎通確認)
    → 品質チェック(QA、E2E)
    → 是正
    → 完了

    文字にすると7行ですが、実際には1棟に何十という機器があります。

    照明1灯、カーテン1本、センサー1個、それぞれが「正しい場所に、正しくつながって、正しく動く」までが立ち上げです。

    いまチームでは、この立ち上げにかかる社内の手間を大きく減らすことをひとつのテーマとして取り組んでいます。

    特効薬はなくて、工程ごとに小さな改善を積み上げるしかありません。
    その中で施工管理がいちばん関わっているのが、スマートホームの疎通確認、動作確認を誰でも簡単に迷わずに進めてもらう段取りと仕組みづくりです。

    そのためには、施工者さんが迷わず確認できるマニュアル・ツールと、「何をもってOKとするか」の共通ルールが要ります。
    入社当初、現場まわりの仕事はエンジニアが多く抱えていました。いまは結線の指示や施工指示書の更新、現場の窓口などを、少しずつ施工管理が引き継いでいます。

    エンジニアには、エンジニアにしかできない仕事に集中してもらう。現場の言葉を話せる人間が、その間に立ちます。

    では、月曜日から。

    月曜日|① 道具:説明会で質問を拾い、ツール定例で仕様に落とす


    ▶ 午前 新しく始まるプロジェクトの打ち合わせ。
    設計監理者さんや施工者さんに、スマートホームの基本設計と、施工者さん向けの基準書「Smart Home Code」を説明します。すると、だいたいこういう質問が出ます。

    「この信号線、極性ってあります?」
    「メーターは1台ずつ制御盤(スマートホーム盤)まで引く?それとも渡り?」
    「図面どおりのルートで通せないんですが、変えていいですか?」

    地味な質問に見えて、ここが勝負どころです。

    極性を間違えれば機器は動きませんし、メーターを渡りにするか1台ずつ引くかで、盤の端子の数も配線の量も変わります。ルートは現場判断で変えて構いませんが、変えたことが施工図に残っていないと、開業後に「あの線はどこを通っている?」が誰にも分からなくなります。

    ここで質問を出し切ってもらえるかどうかで、半年後の現場の手戻りがまったく変わります。説明会で出た質問は、そのまま基準書の「よくある質問」に足していきます。

    ▶ 15:30 ループチェックツールの定例。
    職人さんがiPadで機器を一つずつ動かし、OK/NGを写真付きで記録していくツールです。

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    ループチェックツール
    デモ画面

    これまで僕らが現地で1台ずつ確認していた作業を、施工者さん自身が進められるようにするためのものです。
    職人さんにとっても、「自分の仕事がその場で確認できて、終わったら終わり」になるので、後日の手戻りが減ります。

    定例では、ソフトウェアエンジニアと画面を囲みます。

    「進捗を、トップ画面でひと目で見たい」
    「写真に矢印を引いて、『この線』って補足したい」
    「床暖房のテスト、電源ONで終わってONのままになる。OFFまで入れよう」
    「温まるまで時間がかかる機器は、途中で保存して戻ってきたい」
    「困ったとき、メーカーの電話番号にどうたどり着く?」

    ラボや現場で拾った声を、そのまま仕様に落としていく。この秋の立ち上げからは実際の現場で使ってもらいながら、改善を重ねていきます。

    火曜日|現場の定例に、現地で出る


    ▶ 9:00 車で出発。首都圏近郊の現場へ。
    今日の最初のミッションは、高速代の領収書をなくさないこと。

    ▶ 午前 チームの全体定例に、現地からオンラインで参加。

    ▶ 午後 作業所の定例や分科会に、現地で出席。
    発注者、元請、設備、電気、ネットワーク。各社が集まって、工程や納まり(機器や配線をどう収めるか)を詰める場です。

    スマートホームの機器は、ほぼすべての設備とつながります。照明は電気、空調は設備、制御はネットワーク。だから、こういう話が出ます。

    「電気メーター、図面と違うメーカーのものが入りそう。信号の取り方が変わる」
    「空調の制御盤に、信号用の基板がもう一枚いる。どちらの範囲で用意する?」
    「分電盤の警報、どの端子で受ける?」

    あくまで一例ですが、上記を全員で認識合わせができるのが、現地参加の価値です。オンラインでも話はできますが、「ここです」と実物を指させるかどうかで、決まるスピードがまるで違います。

    ▶ 定例のあと 盤の前で、実際の線を見る。

    実際に配線されているケーブルをかき分けながら、線種とラベルを一本ずつ確認します。図面と合っているか。行き先が書いてあるか。
    ある現場で、ラベルに「スマートホーム盤」とだけ書かれた線が何本も並んでいたことがあります。

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    「SHバン」と記載されている配線済のケーブル

    スマートホーム制御盤は「どの機器の線を、極性を間違えずにどの端子に刺すか」まで決まっています。

    行き(刺し)先がラベルにないと、結線する人がその場で止まる。そう説明すると、「なるほどな」と納得してもらえました。こういう感覚の差は、図面だけでは埋まりません。

    ひとつ、大事にしていることがあります。

    現場では、僕らは発注者側でありながら「後から入ってくる別の業種」でもあります。

    短い訪問でも元請の現場ルールに従い、指示は決めたルート(商流)で出す。段取りを崩さないことが、結果的にいちばんの近道です。

    「発注者だから」で現場のルールを飛ばすと、その場は早くても、次から協力してもらえなくなります。現場の信頼は、積み上げるのに時間がかかって、崩れるのは一瞬です。

    水曜日|③ 座組:オンライン定例と、パートナーとの線引き


    ▶ 午前 各地の拠点の分科会や工事定例に、オンラインでつなぐ日。
    北から南まで、画面の向こうの現場が30分ごとに入れ替わります。

    同じ「スマートホーム」でも、拠点ごとに建物の形も、工事の進み方も、関わる会社も違います。登場人物が多くて頭の切り替えが追いつかないときは、AIに体制表を作らせて乗り切っています。

    ▶ 午後 外部のパートナー候補との打ち合わせ。

    冒頭で説明した通り、NOTAはこれから、同じ時期に複数の拠点が立ち上がるフェーズに入ります。そのピークを社内のメンバーだけで走り回ってさばくのは、たぶん現実的ではありません。

    だからいま、外部のパートナーと組む形もいくつか検討しています。
    たとえば、

    キッティングや疎通確認のような、手順が決まっている現地作業を、フィールドエンジニアとして一緒にやってもらう
    スマートホームまわりの弱電結線を、どの拠点でも同じチームが施工する座組みにする

    打ち合わせで話すのは、「何をお願いしたいか」よりも「どこまでをお願いして、どこからを自分たちが持つか」です。

    NGの原因を切り分けて直し方を決めるところは自分たちで持ち、手順とツールがあれば誰でも同じ結果になる作業はお願いしたい。その線引きを、機器ごと・工程ごとに書き出していきます。

    打ち合わせの後は、説明資料の更新、工事区分の整理、ラボでの体験会や現地見学の段取り。契約書面の作成など。社内で「どこまでを想定しておく?」を聞いて回るのも、この曜日の仕事です。

    まだ検討中ですが、前職で全国の施工ネットワークを作ってきた業界にいた頃の人脈と経験が、いちばんそのまま使える仕事でもあります。

    木曜日|② ルール:基準書を育てる日


    ▶ 午前 オフィスデー。
    施工者さん向けの基準書「Smart Home Code」や、設備ごとの施工指示書を改訂します。

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    版数も約4ヶ月で2版増えました。

    配線の色、ラベルの書き方、どこまで終われば「完了」なのか、といった内容です。
    現場で質問が出るたびに改訂するので、版数はどんどん上がっていきます。

    なぜここまで細かく決めるのか。理由はシンプルで、全国どの拠点でも、どの施工者さんでも、同じ仕上がりにしたいからです。
    スマートホームは、配線1本の違いが、そのまま動作に影響します。「この現場ではこうだった」を許すと、後から確認する人が拠点ごとに別のルールを覚えることになります。

    大事にしているルールは、ひとつだけです。

    現場で起きたNGは、その場で直して終わりにしない。

    基準書やツールのどこかに必ず反映して、次の拠点に持ち越さない。
    基準書は、現場の失敗を次に活かすための置き場所だと思っています。

    ▶ 午後 工事定例に、現地の事務所まで出向くことも。合間に検図。
    ▶ 夕方 カジュアル面談。一次面接。

    金曜日|②の思想:安全も「仕組みで防ぐ」


    ▶ 午前 オフィス内のラボへ。
    新しい機器の配線を試したり、住まい向けの新しいプロダクトの制御盤を自分たちで配線したり。
    ラボで自分の手を動かしておくと、現場で職人さんに「ここが大変ですよね」と言える。指示する側が手を動かしたことがあるかどうかは、意外と伝わります。

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    LANの正端作業をオフィスで行なっている様子

    ▶ 午後 この日は、チーム向けの安全衛生講習の講師も担当しました。
    10月のチームのオフサイト(合宿のようなもの)で「安全講習を定期的にやろう」と決まり、その第1回です。

    講習の最後には、安全の分野で語られてきた考え方を紹介しました。

    「ヒューマンエラーは、原因ではなく結果」

    ミスした人を責めるのではなく、「大丈夫」と思ってしまった背景を、手順や仕組みで埋めていく。

    これは安全の話であり、そのまま今取り組んでいるテーマの考え方でもあります。
    「気をつけよう」では、同じミスがまた起きます。気をつけなくてもミスが起きない仕組みをつくる。安全も、立ち上げも、やっていることは同じです。

    おわりに:一週間で、少しだけ「現場に行く理由」が変わる


    振り返ると、この一週間でやっていたのは、ひとつのことでした。

    現場で見つけたことを、ツール・基準書・段取りのどこかに必ず戻す。

    月曜は道具に、水曜は座組に、木曜はルールに戻しました。火曜は、その材料を現場で拾ってくる日でした。
    それを毎週くり返すと、現場に行く理由が少しずつ変わっていきます。「確認しに行く」から、「決めに行く」「関係をつくりに行く」へ。

    自分の確認作業を減らすために働くのは不思議な感覚ですが、そのぶん現場でしかできないことに時間を使えて、次の拠点、新しい分野へと手を広げられます。

    現場に足を運ぶことの価値は、これからも変わらないと思っています。だからこそ、その貴重な時間を機器の確認で使い切らない。そこを目指しています。

    電気工事の施工管理をやってきた方。現場の困りごとをツールや仕組みで解決するのが好きな方。
    「自分の経験が、テクノロジーのチームで役に立つのか」と思っている方こそ、話を聞いてほしいです。

    いまのNOTAのスマートホームチームは、その経験がいちばん生きるフェーズにいます。

    少しでも気になったら、ぜひ一度お話ししましょう。


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    NOT A HOTELという会社のスマートホームチームで電気工事施工管理として働いています。

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