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存在がAIの歌手を、あなたは聴きますか?|AIは文化の夢を見るか No.1

    AIミュージシャンを、実際に聴いてみて感じたこと

    AIでつくった曲や、存在そのものがAIのアーティストが、音楽の世界で注目されている。

    ■何が起きているか
    ・IngaRose:2026年3月末に出した「Celebrate Me」が、4月に米国のiTunes売上チャートで1位になったと報じられた。制作にはAI音楽ツールのSunoが使われたとされる。
    ・The Velvet Sundown:2025年6月5日にアルバムを出し、約1か月でSpotifyの月間リスナーが100万人を超えた。7月5日に、AIを使った「合成音楽のプロジェクト」だと認めた。

    ■仕組みの側も動いている
    ・Spotifyは8月11日、「AI Persona」(日本語の画面では「AIペルソナ」)の表示を発表した。実在の人物ではなく、AIで作った人物像として見せているプロフィールに付ける表示で、9月中旬から順に出るとされた。曲の作り方を示すものではなく、アーティストの素性を示すものだ(作り方の開示は、「AI Credits」という別の仕組みで行う)。表示が付いたアーティストの曲は、フォローしていない限り、Spotifyのおすすめには出なくなる。
    ・オーストラリアのチャート団体ARIAは、8月25日、完全にAIだけで作った曲をチャートの対象外にすると発表した。8月31日の分から適用される。

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    ■日本の例
    日本には、ボカロ(ボーカロイド)の文化がある。音声合成ソフトに歌わせる曲を、人が作詞・作曲して発表する文化で、初音ミクは2007年に生まれた。ボカロPから、米津玄師さんのようなアーティストも出てきた(2009年にボカロP「ハチ」としてデビュー)。ボカロは声が合成で、曲は人が作る。いまのAI音楽は、曲そのものをAIが作るところが違う。この流れは、次回以降に詳しく書きたい。

    NEON ONI(ネオン・オニ)は、2025年9月ごろから配信を始めたメタルバンドだ。当初は「東京を拠点にする実在の7人組」と紹介されていた。ところが、SNSやメタルファンの分析で、曲はSunoで作られ、映像もAIで作られ、制作者の拠点もヨーロッパだと分かっていったという(KAI-YOU)。発覚のあと、制作者は人間のミュージシャンを集め、12月18日に新宿でライブを行った。世界最大級のメタルフェス「Wacken Open Air」の日本予選では、ファイナリストに選ばれた。Spotifyの月間リスナーは、報道の時点で約8万人だ。

    素性を伏せて話題をつくる手法は、覆面バンドや、アニメのキャラクターで見せるGorillazのように、昔からある。NEON ONIは「実在」と名乗っていた点が違うが、話題づくりの戦略としては、ありだと思う。ただSpotifyは、表示を作る理由として、人間に見えるプロフィールが実はAIだったと知るのは好まれない、という聴き手の声を挙げている。

    KLabの「ゆめみなな」のように、最初から「AIのアイドル」として出す例もある(2026年2月にデビュー配信)。同じ日本でも、AIであることを隠した形から出発した例と、はっきり打ち出す例の両方がある。

    ■実際に聴いてみた
    💿IngaRose:ハスキーな歌声で、表現力がある。ただ、人間本来の声かというと、少し作られた感じがして、僕の耳には違和感があった。

    💿The Velvet Sundown:アコースティックで、カントリーと70年代のソフトロックを思わせる。聴き心地のいい曲が多く、自分好みのバンドだった。AIだと分かっていても、人間のシンガーと同じように聴けた。

    💿NEON ONI:「Satori Sedai」を聴いた。メタルとアイドル文化を混ぜた「KAWAII METAL」と呼ばれる流れにある新進気鋭のバンドで、他の曲も聴きたくなった。

    💿Enlly Blue「Through My Soul」:AIが作った曲だ。ソウルフルで、息づかいまで人間的な温かみを感じた。この曲を人間のミュージシャンがカバーした版(Midnight Hourとシンガーのローレン・オーデン)も聴いた。ジャズ風の、いい意味で荒削りな演奏と歌声で、AIの原曲と並べると、人間味の違いがよく分かって面白い。ただ、僕は意外にも、AIの原曲のほうが好みだった。(このカバーは、「人間が演奏した音楽」を示す基準づくりを目指す「Played by Humans」というキャンペーンの一環だと、運営側が説明している)

    ■表示を確かめた
    Spotifyで、IngaRose、The Velvet Sundown、Enlly Blue、Xania Monet、Breaking Rustを検索すると、5組すべてに「AIペルソナ」のバッジが付いていた。聴き心地だけでは、AIか人間か、もう分からなくなりつつある。だから、素性を知らせる表示があるのは、いいことだと思う。

    ■僕の答え
    僕は、AIのアーティストと人間のアーティストを、今は分けて聴いている。どちらも楽しみたい。両者の違いは、売り出し方にあると思う。聴き心地では区別がつかないものもある(The Velvet Sundownは、人間のシンガーと同じように聴けた)。だからこそ、素性が表示で分かるのは、ありがたい。新しいジャンルとして区別する形なら、受け入れやすいと思う。専用のジャンル名は、僕が調べた範囲では見つからなかったが、「表示」という形で分ける動きは、もう始まっている。
    やがて、その垣根もジャンルの区別も、なくなっていくのかもしれない。そのときは、どう聴くかをリスナーが自由に選べばいいと思う。

    ■ひとこと
    コロナ禍が明けて、音楽フェスやライブは盛り上がっている。ぴあ総研によると、2025年の国内ライブ・エンタテインメント市場(音楽・ステージ)は8,564億円で、3年連続で過去最高だった。音楽をサブスクで聴くだけでなく、会場でアーティストのパフォーマンスを味わう体験は、今後も残っていくだろう。
    AIの曲を聴く自由も、人が歌うステージに足を運ぶ自由もある。
    聴き心地が同じなら、作ったのが人でもAIでも、あなたは同じように聴きますか。それとも、知ったうえで分けて聴きますか。

    最後まで読んでいただきありがとうございます。
    今後もこのAIとカルチャーを深掘りしたシリーズを投稿予定です。
    興味があれば、次回もまたよろしくお願いします。
    この記事が良かったと思ってもらえたら、スキとフォローをいただけると嬉しいです。


    【2026年10月31日 追記】
    公開後に、Spotifyの次の動きが報じられました。ファンがAIでカバーやリミックスを作れる新機能です。5月にSpotifyとユニバーサルが発表した計画で、英FTは10月30日、2027年1〜3月の提供を目指し、月4〜5ドルの追加料金を検討していると伝えています。Spotifyはコメントしておらず、時期も価格も確定ではありません。
    参加するかはアーティスト本人が選べて、使われた曲の原曲側には収益が還元される設計だと報じられています。
    本文のAIペルソナは「誰が出したか」、AIクレジットは「どう作ったか」を示すものでした。今回はそこに「誰が許すのか」が加わる形です。

    利用者は許諾が得られた楽曲をもとに独自の音楽を作ったり、カバー楽曲を作成したりできる。それが、原曲の再評価や収益の還元につながるのであれば、個人的には良いシステムと思う反面、音楽業界を取り巻く環境に地殻変動が起きそうだ。時期や価格はまだ検討中のようなので、音楽ファンとしては、これからも注視していきたい。

    公式発表(5月21日)

    報道(ロイター配信、FT報道の要約)

    ※このシリーズは、AIとカルチャーの話題を、僕の言葉で読み解きます。
    前回までは「暮らしのAIニュース」として書いてきましたが、好きな音楽や本や映画とAIの関係を続けて考えたくなり、新しいシリーズにしました。
    #6の最後に「次の#7で書く」と予告した続きは、このNo.1として書いています。
    ※この記事の調べものには、AIのClaudeを使いました。「忖度なく調べてほしい」と、僕から指示しています。


    ■出典
    ・Wikipedia「IngaRose」、Techloy「10 AI Music Acts That Have Officially Topped the Global Charts」(2026/4/21)
    ・SAN「The Velvet Sundown band admits they're AI after weeks of speculation」(2025/7/11) https://san.com/cc/the-velvet-sundown-band-admits-theyre-ai-after-weeks-of-speculation/
    ・Spotify公式ニュースルーム「AI Persona」の発表(2026/8/11)。公式の文面を引用した報道:BetaNews https://betanews.com/article/spotify-to-launch-ai-persona-badge-to-help-identify-ai-artists/ 、Billboard Canada https://ca.billboard.com/business/streaming/spotify-to-label-ai-artists-on-the-platform-with-new-ai-persona-badge
    ・AP通信(ITV掲載)「Australia's music industry bans AI-generated tracks from official charts」(2026/8/25)
    ・KAI-YOU「月間リスナー8万人のメタルバンドがAIであると発覚→人間のメンバーを集めてコンペを勝ち抜く」(2026/3/17) https://kai-you.net/article/94909
    ・Fast Company「This AI-generated song got a very human makeover」 https://www.fastcompany.com/91554821/through-my-soul-ai-music-jazz-is-dead
    ・PR TIMES「AIアイドル『ゆめみなな』2026年2月15日にデビュー配信決定」(KLab、2026/1/15) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000885.000006348.html
    ・Business Insider Japan「米津玄師が、ハチとして帰ってきた」(2024/12) https://www.businessinsider.jp/article/299104/ (ボカロPの定義と、ハチ名義の活動)
    ・チケットカンパニー「米津玄師さんの経歴」(2009年に「ハチ」名義でデビュー) https://www.ticket.co.jp/entx/?p=1367
    ・共同通信「ライブ市場が3年連続で過去最高 公演回数もコロナ禍前の水準に」(2026/6/17、ぴあ総研の調査) https://kumanichi.com/articles/2003527

     
     
    生成AIと一緒に考えながら書く人、Mimaです。 「暮らしのAIニュース」(毎週水曜)と「AIは文化の夢を見るか」を連載中。 実際に試して、聴いて、読んで書きます。AIとライティング学習中。 はじめての方は、固定記事「案内と目次」へ。 アイコンは、僕の相棒の電気羊のエレップです。

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