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退院前にしておきたい住宅改修|PTが現場で伝えているポイント

    退院が決まると、ご本人もご家族もホッとする一方で、

    「家に帰って、今までどおり暮らせるかな」

    という不安が一気に大きくなります。

    退院前訪問でご自宅にお伺いすると、

    「ここに手すりがあれば」

    「この段差、どうしよう」

    と、不安なポイントが次々と出てくることがよくあります。

    この記事では、退院前に検討しておきたい住宅改修のポイントを、理学療法士の視点でまとめました。

    介護保険の住宅改修制度も含めて、できるだけ分かりやすくお伝えします。


    はじめに

    こんな悩みはありませんか?

    ・退院後の自宅生活が不安

    ・どこを改修すればいいのか分からない

    ・費用がどれくらいかかるのか心配

    ・介護保険って使えるの?

    ・賃貸でも改修できるのか

    ・改修と福祉用具、どっちがいいの?

    退院前は、何かと慌ただしくなります。

    その中で、住宅改修まで考えるのは、本当に大変なことだと思います。

    だからこそ、
    「優先度の高いところから順番に」という考え方が大事になります。


    退院前にしておきたい住宅改修ポイント

    理学療法士として、退院前訪問でよくお伝えしていたのは、次の5か所です。

    ・玄関まわり(上がり框)

    ・トイレ

    ・浴室

    ・廊下や階段

    ・寝室への動線

    この5か所が、
    退院後の生活で「転倒リスクが高く、改修の効果が出やすい」場所です。

    ここからは、それぞれについて、具体的にお伝えしていきます。


    ① 玄関まわり

    退院後、最初に直面するのが玄関です。

    玄関には「上がり框」と呼ばれる段差があり、ここを越えるときにバランスを崩しやすくなります。20~25㎝が一般的です。

    特に入院後で筋力が落ちている方は、要注意です。

    改修のポイント

    ・上がり框の横に手すりを設置する

    ・段差が大きい場合は、踏み台や式台を置き、段を増やす

    ・玄関の照明を明るくする

    ・滑りやすい床材は、滑り止めマットでカバーする

    費用の目安

    工事を伴う手すりの設置で、3〜5万円ほど。

    介護保険の住宅改修を使えば、所得に応じて1〜3割の自己負担で済みます。

    玄関は「家の入口」であり、「外出の動機」にもなる場所です。

    ここが整うかどうかで、退院後の生活の広がりが大きく変わります。


    ② トイレ

    トイレの改修は、退院後の生活の質を大きく左右します。

    トイレに行きづらいと、

    ・水分摂取を控えるようになる

    ・脱水や便秘になりやすい

    ・夜間のトイレで転倒しやすい

    といった、二次的な問題が起こります。

    改修のポイント

    ・便座の横に手すりを設置する(L字型が使いやすい)

    ・洋式便座への変更(和式の場合)

    ・便座の高さを補高便座で調整する

    ・ドアを引き戸に変更する(開き戸は介助しにくい)

    ・床を滑りにくい素材に変更する

    費用の目安

    手すりの設置:3〜5万円

    和式から洋式への変更:20〜50万円

    ドアの変更:10〜20万円

    介護保険の住宅改修の対象になるものが多いので、ぜひ活用してください。


    ③ 浴室

    退院後の生活で、最も慎重に考えたいのが浴室です。

    家の中で「最も転倒が起こりやすい場所」だからです。

    退院直後は、お風呂を控える方もいらっしゃいます。

    それくらい、入浴は身体に負担がかかる場面です。

    改修のポイント

    ・浴室の出入り口に手すりを設置する

    ・浴槽の横に縦型の手すりを設置する

    ・浴室と脱衣所の段差を解消する

    ・浴室の床を滑りにくい素材に変更する

    ・ドアを引き戸または折れ戸に変更する

    費用の目安

    手すりの設置:5〜10万円

    段差解消:10〜20万円

    床材の変更:10〜30万円

    ドアの変更:10〜25万円

    浴室は、改修の費用がやや高くなりがちですが、その分効果も大きい場所です。


    ④ 廊下や階段

    普段の生活で、最も移動回数が多いのが廊下です。

    1階のみで生活するのであれば必要ありませんが、
    2階建ての家であれば、階段の安全対策も重要になります。

    改修のポイント

    ・廊下の壁に手すりを設置する(連続して掴めるように)

    ・段差があれば解消する

    ・階段の両側または片側に手すりを設置する

    ・夜間用の足元灯を設置する

    ・滑りやすい床材は、滑り止めを敷く

    費用の目安

    廊下の手すり:1mあたり1〜2万円

    階段の手すり:5〜10万円

    足元灯:数千円〜

    階段は、「下りるときの方が転倒リスクが高い」場所です。

    下りるときに利き手側に手すりが来るよう、設置側を検討します。


    ⑤ 寝室への動線

    意外と見落とされやすいのが、寝室への動線です。

    特に、「夜中にトイレに起きる」場面は、退院後の転倒リスクが高い時間帯です。

    改修のポイント

    ・ベッドのそばに手すりを設置する

    ・寝室からトイレまでの動線に、足元灯を設置する

    ・敷居などの小さな段差を解消する

    ・寝室を1階に移す(2階で寝ている場合)

    費用の目安

    足元灯:数千円〜

    段差解消:数万円〜

    寝室の移動:内装次第(家具の配置換えなら無料)

    「寝室を1階に移す」は、改修費用がかからずに大きな効果が出やすい方法です。

    2階の寝室にこだわらず、1階での生活に切り替えることも、ぜひ検討してみてください。


    介護保険の住宅改修について

    ここで、介護保険の住宅改修制度について、簡単にお伝えします。

    対象になる工事

    ・手すりの取り付け

    ・段差の解消

    ・滑りの防止、移動の円滑化のための床材の変更

    ・引き戸などへの扉の取り替え

    ・洋式便器などへの便器の取り替え

    ・上記の工事に付帯して必要となる工事

    利用できる金額

    「20万円まで」が上限です。

    所得に応じて1〜3割の自己負担で、残りを介護保険が負担します。

    要介護度が3段階以上重くなった場合、または引っ越した場合は、再度20万円までの枠が使えます。

    利用の流れ

    1. ケアマネジャーに相談する

    2. 施工業者を選ぶ

    3. 事前申請をする(工事前の申請が必須)

    4. 工事を行う

    5. 費用を支払う

    6. 市区町村に書類を提出し、保険給付分を受け取る(償還払い)

    「工事前の申請が必須」という点が、特に大事です。

    先に工事をしてしまうと、保険給付が受けられません。


    賃貸の場合はどうする?

    「賃貸だから、改修できない」と思っている方も多いです。

    でも、工夫の方法はあります。

    置くだけの福祉用具を活用する

    ・据え置き型の手すり

    ・突っ張り棒型の手すり

    ・段差解消スロープ

    これらは、工事不要で設置でき、介護保険でレンタル可能です。

    賃貸でも、退去時に原状回復しやすいのが大きなメリットです。

    大家さんに相談する

    長期的に住む予定であれば、大家さんに相談して許可を得られるケースもあります。

    特に、手すりの設置は許可が下りることが多いです。

    賃貸でも、工夫しだいで安全な環境は作れます。

    諦めずに、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してみてください。


    改修と福祉用具、どう使い分ける?

    「改修したほうがいい?それとも福祉用具で十分?」

    これも、よく聞かれる質問です。

    使い分けの考え方は、こんなイメージです。

    改修が向いているケース

    ・長期的に使う

    ・本人の身体状態が安定している

    ・賃貸ではない(持ち家)

    ・しっかり固定したい

    福祉用具が向いているケース

    ・短期間の使用が想定される

    ・身体状態が変わる可能性がある

    ・賃貸住宅

    ・お試しで使ってみたい

    どちらか一方ではなく、「改修と福祉用具を組み合わせる」のが、実際には多いです。

    「まずは福祉用具で様子を見て、長期的に必要なら改修に切り替える」という流れも、よくお勧めしています。


    退院前にやっておきたいこと

    最後に、退院前にぜひ整えておきたい流れをお伝えします。

    1. 退院前訪問を活用する

    理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、改修の必要性を一緒に検討する制度です。

    入院中に申し込めるので、担当の療法士や相談員に聞いてみてください。

    2. ケアマネジャーを早めに決める

    退院前に、ケアマネジャーが決まっていると、退院後の調整がスムーズです。

    要介護認定をまだ受けていない方は、早めに申請を進めましょう。

    3. 施工業者を選ぶ

    介護保険の住宅改修に対応している業者を、ケアマネジャーに紹介してもらえます。

    複数の業者から見積もりを取るのも、おすすめです。

    4. 事前申請を忘れずに

    繰り返しになりますが、工事前の申請が必須です。

    ここを忘れると、保険給付が受けられないので注意してください。


    ご家族にお伝えしたいこと

    ご家族から、こんな相談をよく受けます。

    「全部やったほうがいいんでしょうか?」

    答えは、「いいえ、全部はやらなくていい」です。

    住宅改修は、お金もかかるし、本人の生活にも影響します。

    「本当に必要な場所」だけを、優先度の高い順に整えていくのが基本です。

    迷ったときは、ぜひケアマネジャーや理学療法士に相談してください。

    「やるべきこと」と「やらなくていいこと」を、一緒に整理できます。


    まとめ

    今回は、退院前にしておきたい住宅改修のポイントをお伝えしました。

    ・優先度が高いのは、玄関、トイレ、浴室、廊下や階段、寝室への動線

    ・介護保険の住宅改修は「20万円まで」、所得に応じて1〜3割負担

    ・「事前申請」が必須

    ・賃貸でも、置くだけの福祉用具で対応可能

    ・改修と福祉用具を組み合わせるのが基本

    ・退院前訪問の制度を活用する

    住宅改修は、退院後の生活の土台になる大事な準備です。

    「全部完璧にしてから帰る」のではなく、
    「最低限の安全を整えてから帰る」という考え方で大丈夫です。

    退院後も、生活しながら少しずつ整えていけます。

    迷ったときは、ぜひ専門職に相談してみてくださいね。


    ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

    少しでも参考になれば嬉しいです。


    参考文献

    ・介護保険における住宅改修(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf


    私は、理学療法士として、病院・デイサービス・訪問リハビリの現場で働いてきました。

    このnoteでは、リハビリや介護に関する情報を、できるだけわかりやすくお伝えしています。

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    理学療法士|0歳児の父|回復期病棟→訪問リハビリ、デイサービス勤務 リハビリ・介護・デイサービスについて、患者さんやご家族に役立つ情報を発信。 現場でよくある相談や疑問を、専門職の視点から解説。 時々、育児やAI、勉強法も発信。 ※投稿内容には、私個人の経験や考えを含みます。

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