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【結婚できるかもしれない物語】6話

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    第6話 五股の証拠 #PR

    …でも会うとみんな『家事分担希望』って……男ってほんと図々しいよね」 綾香はコーヒーを淹れながら、静かに聞いた。

    「……金森さんって、本当に何人くらい付き合ってるんですか?」 
    美香がニヤリと笑った。
    「噂だと今、五股だって。
     『真面目に君だけだよ』って言いながら、全員に同じ言葉使ってるらしいよ。
     綾香ちゃんも狙われてるんでしょ? 気をつけた方がいいよ」 
    綾香の胸が締めつけられた。 
    入社二年目の秋、金森に「君みたいな純粋な子、守ってあげたい」と言われたことを今でも覚えている。

     あのときは胸が熱くなった。
     でも一ヶ月後、金森が別の女性とレストランから出てくるのを目撃した。
    その一件で…綾香は疑問が胸に沸いてきて…距離を置いた。

     昼休み。
     四人でランチを食べていると、金森がまた現れた。

    「みんなでランチ? いいなー。
     綾香ちゃん、ちょっとこの資料見てもらえる?」 
    金森は綾香の隣に座り、肩が触れる距離で資料を広げた。
     その手が、さりげなく綾香の手に触れる。 
    綾香は小さく身を引いた。
    金森と綾香の間に流れる空気に甘いものはなく…美香も真由美も眉ひとつ動かすことはなかった。

    午後四時過ぎ。
     綾香がトイレから戻ると、デスクの上に一本のバラの花とメモが置かれていた。

    『綾香ちゃんへ。
     今週末、二人で食事どう? 
    真面目に君のことが気になってる。 悠斗』

     綾香は思わず口がオートで開いてしまった。
    頭が真っ白になる。
    何か…その気にさせるようなこと…しました!?
    口の中の空気が入れ替わったことに気が付き、慌てて口を閉じた。
    メモを握りしめたまま、ため息をつく。 

    ――真面目?
     五股の男が、よくそんな言葉を平気で言える。 

    退社後、綾香は一人で駅までの道を歩きながら、
     スマホの画面に映る母のメッセージをもう一度見た。 
    雨が、ぽつぽつと降り始めていた。

    結婚したい。

     でも、この会社にいる限り、
     「結婚」という言葉がどんどん汚れていく気がした。


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