
【結婚できるかもしれない物語】5話
前の話はこちら
第5話 五股の証拠 #PR
水曜日の朝、綾香はいつもの通勤電車で吊革につかまりながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
密集した戸建。
開けた窓から手を伸ばせば、隣の家の外壁に触れてしまう距離。
隣の家から笑い声が聞こえているのならば安心だけど。
怒鳴り声が聞こえてきていたら…。
それも日常的に。
とても安心できるものでもないな…。
…そう、心の中は不安だらけ。
母からのLINEがまた一件増えていた。
「小林さんの息子さん、写真見た? 綾香に合いそうよ」
既読スルーのまま三日が経とうとしていた。
会社に着くと、営業部フロアはいつもより少しざわついていた。
「おはよ、綾香ちゃん。今日も綺麗だね」
金森がコーヒーカップを片手に、ニコニコと近づいてきた。
今日の彼は薄いブルーのシャツ。
袖をまくった腕が、女性社員の視線を集めている。
確かに…引き締まった腕は自分の腕と見比べて…安心感を感じる強さはある。
「金森さん、おはようございます」
「実はさ、昨日綾香ちゃんのことを考えてたんだ。
田舎育ちって聞いたけど、どんなところで育ったの?
今度、ゆっくり聞かせてくれない?」
金森はそう言いながら、綾香のデスクに軽く腰を下ろした。
距離が近い。
息がかかりそうな距離。
あからさまに距離を置くべきか、気にせずに作業をするべきか…。
その瞬間、総務部のあかり(27)が金森に声をかけた。
「悠斗くん、昨日の夜遅くまでありがとう。
また今週末、空いてる?」
金森はあかりに向かって親指を立て、すぐに綾香に視線が戻ってきた。
「仕事の相談だよ。綾香ちゃんとは全然別物」
綾香は微笑みを浮かべたまま、資料をめくる手が少し震えた。
午前十一時半。
喉が渇いた綾香が水筒にお茶を入れようと給湯室に向かうと、美香と真由美さんがいつものように集まっていた。
「聞いてよ、悠斗くんまた新しい子とLINEしてるみたい。
今度は人事部の莉子ちゃんらしいよ」
美香がスマホを振りながら興奮気味に言う。
真由美さんはため息をついた。
「私なんて、もう男のことはどうでもいいの。
昨日、病院でAMH検査したんだけど……値が低めだって。
35歳超えたら本当に終わりだって言われた気がして、夜中泣いちゃった」
美香がフォローするように言った。
「真由美さんなら大丈夫だよ!
私はアプリで年収1500万狙ってるんだけど、
プロフィール写真だけで十人くらいマッチしたの。
でも会うとみんな『家事分担希望』って……男ってほんと図々しいよね。
女性は家政婦じゃないっつーの」
綾香はふと、母がLINEに送ってきている小林さんについて思った。
どんなご家庭だったっけ?
そもそも論。
我が家だって父親は工場勤務、母親は先祖代々の土地で農業を営んでいる。
父親は工場が休みの日は、農地で働いている。
両親共働きだから、家事を誰かに任せている…というわけではない。
母親が家事を行っていて…寝る時間以外、ずっと働きいている。
そんな母親が紹介するのだから…自分の未来も…家事は私。
(『家事分担希望』なんて、難しいだろうな…)
綾香は心の中で深いため息をついた。
※AMH
AMH検査のこと。
AI調べにおいて、AMH検査でわかること
残された卵子の数の目安: AMHの数値が高いほど卵子の数が多く、低いほど少なくなっていることを示します。
不妊治療の予測: 体外受精の際、1度の採卵でどれくらい卵子が採取できるか、排卵誘発剤へどう反応するかの予測に役立ちます。
治療期間の目安: 数値が低い場合は妊娠できる期間(タイムリミット)が限られている可能性があり、早めのステップアップを検討する判断材料になります。
※参考に…なるかもしれない…noteはこちら
