メインコンテンツへスキップ
見出し画像

作者が本当に書きたかったのは、「年末という特別な時間の中で、人は何を見ているのか」ということです。



    『大晦日の闖入者』知りたがり向けへの深掘り解説

    この作品は一見すると、

    「大晦日にスーパーへ買い物に行った人の話」

    です。

    しかし、それだけなら数行で終わります。

    作者が本当に書きたかったのは、

    「年末という特別な時間の中で、人は何を見ているのか」


    ということです。


    ① 主人公はずっと「終わり」を見ている

    作品の冒頭から主人公が見ているものを並べると、

    • 蕎麦屋の行列

    • お年玉を楽しみにする子ども

    • 門松

    • スーパーの年末商戦

    ばかりです。

    どれも共通しています。

    それは、

    「お正月が近い」

    ということです。

    つまり主人公は、

    町の景色の中に

    もうすぐ今年が終わる

    というサインを見続けています。


    ② 店員は「時間」の象徴

    この作品で印象的なのは、

    緑のエプロンの店員です。

    主人公はなぜか彼を細かく観察します。

    声がかすれている。

    何度も

    「いらっしゃいませ」

    を言っている。

    主人公はその様子を見て、

    増えれば増えるほどに削られ続ける声と体力

    と考えます。

    ここが重要です。

    普通なら、

    店員さん大変そうだな

    で終わります。

    しかし主人公は、

    そこから

    あらゆるものが終わりへ近づいている

    と考える。

    つまり店員は単なる店員ではなく、

    一年の終わりそのもの

    を表しているのです。


    ③ 「大晦日か……果たしてそうなのか?」

    この一文は作品の中心です。

    主人公は

    ああ、これが年末か

    と思います。

    ところがすぐに、

    果たしてそうなのか?

    と疑問を持ちます。

    なぜでしょう。

    実は年末も元日も、

    地球が急に変わるわけではありません。

    時計が進むだけです。

    人間が勝手に

    • 年末

    • 正月

    という区切りを作っている。

    主人公はそのことを感じています。

    つまり、

    本当に特別なのは日付なのか?

    それとも人の気持ちなのか?

    という問いが隠れているのです。


    ④ 「闖入者」が意味するもの

    題名にもなっている

    闖入者(ちんにゅうしゃ)

    とは侵入者のことです。

    主人公は、

    いつもあるはずの豆腐や納豆が消え、

    代わりにおせち料理が並んでいるのを見ます。

    そこで、

    陳列棚の闖入者

    と呼びます。

    もちろん本当に侵入したわけではありません。

    でも作者はここで、

    日常を追い出す非日常

    を描いています。


    普段の棚

    • 豆腐

    • 納豆

    ↓

    年末の棚

    • 伊達巻

    • 昆布巻

    • 八幡巻


    つまり、

    年末という特別な時間が

    日常の世界へ入り込んできた。

    それが「闖入者」です。


    ⑤ なぜ男の子の場面があるのか

    この作品で唯一、

    はっきりした出来事が起きる場面です。

    男の子が走る。

    主人公がしゃがむ。

    母親がお礼を言う。

    しかし主人公は

    なんのことかわからない

    と言います。

    ここが不思議です。

    普通の小説なら、

    男の子を助けた

    と説明します。

    でも作者は説明しません。

    なぜか。

    それは、

    主人公自身が人生の意味を理解しきれていないから

    です。


    人は時々、

    自分が誰かの役に立ったことに気づきません。

    しかしその行動によって、

    誰かは助かっている。

    作者はその瞬間を描いています。


    ⑥ 白菜の意味

    白菜は何度も登場します。

    しかも異常に大きい。

    作者はわざわざ

    自分のカゴを難破船にした

    とまで言っています。

    白菜は単なる野菜ではありません。

    これは主人公そのものです。


    巨大で扱いづらい。

    持ち運びにくい。

    周りからも目立つ。


    主人公自身も、

    人生を上手に整理できていません。

    買い物計画もない。

    必要な物も忘れる。

    どこか不器用です。

    だから白菜は、

    主人公の分身のように見えてきます。


    ⑦ ラストシーンの意味

    最後、

    主人公は買い忘れに気づきます。

    でも戻りません。

    普通なら、

    失敗した!

    となります。

    しかし主人公はそうならない。

    夕日に背中を温められながら、

    ゆっくり歩いて帰ります。

    ここに作者の考えがあります。


    人生は、

    忘れ物をしないことが大切なのではない。

    完璧に生きることが大切なのでもない。


    少し失敗しても、

    少し抜けていても、

    今日を終えられればいい。

    そんな感覚です。


    この作品の本当のテーマ

    この物語は、

    「年末のスーパーで買い物をする話」ではありません。

    テーマは、

    「人間が作った特別な時間と、変わらず流れ続ける日常」

    です。

    世間は、

    • 年末だ

    • 正月だ

    • おせちだ

    と騒いでいます。

    でも主人公は、

    その騒ぎの中で

    • 疲れた店員

    • 走る子ども

    • 巨大な白菜

    を見ています。

    つまり作者は、

    特別な日にも、結局人はいつも通り生きている

    ということを書いているのです。


    知りたがり向けに一言でまとめると

    この作品は、

    「一年の終わりという大きな出来事よりも、その中にある小さな人間の営みの方が実は大切なのではないか」

    ということを描いた物語です。

    主人公は正月の準備をしているようでいて、本当は

    • 時間とは何か

    • 季節とは何か

    • 人とのつながりとは何か

    を静かに見つめています。

    だから読後には、

    「何も起きていないのに、なぜか年末の空気が胸に残る」

    そんな不思議な余韻が生まれるのです。

     
     
    スキにキス。好きなものが人生をめっちゃハッピーにする。日々の生活はそれをとことん味わうためにある。読書、映画鑑賞、写真撮影。親友と過ごす時間。妻の手作りハンバーグ。たとえ何があってもそこにスキがあればいつだっていつまでだって幸せだ。50代。サラリーマン。既婚。5人子持ち。都内在住

    あなたへのおすすめ