
2歳から3歳、親子で100回読んでも飽きなかった絵本3選
絵本は、読むたびに同じ話のはずなのに、少しずつ違って見える。
子どもが成長しているからなのか、読むこちらの心が変わっているからなのか。 たぶん、その両方。
娘が2歳だったころから、文字通り「100回」は開いてきたであろう絵本がある。 「またこれ読んで」と持ってくる本には、その時期ならではの理由があって、振り返ると、それはそのまま娘の成長の記録にもなっていた。
今日はそんな、司書として、そして一人の母として、親子でくり返し読んできた大切な3冊を紹介したい。
1冊目|『まり』谷川俊太郎
――「ことばの響き」から「世界」へ
2歳の娘がよく持ってきたのが、谷川俊太郎さんの『まり』だった。 ことばはとてもシンプルなのに、声に出して読むと、ころころ、ぽんぽんと、音まで転がっていくような絵本。
小さい子って、意味をぜんぶ理解する前に、まず“ことばの響き”を楽しんでいるのだなあと、この本を読むたびに感じた。2歳のころの娘は、ただただ楽しそうにページをめくっていた。
繰り返し読むうちに、私のほうもこの絵本のリズムが身体にしみこんでいって、読むたびに少し気持ちがやわらいだ。
そして3歳になった今は、同じ絵本を前よりも“考えながら”見ている気がする。 前は感覚で受け取っていたものを、今はことばとして、世界として、少しずつつかもうとしている。
同じ1冊なのに、去年の娘と、今日の娘がちゃんといる。そんなふうに思わせてくれる絵本。
2冊目|『ぷくちゃんのすてきなぱんつ』ひろかわさえこ
――暮らしのハードルをそっと下げてくれる相棒
トイレトレーニングの時期に、ぴったりだったのがこの絵本。 トイトレって、子どもにとっても親にとっても、なかなか一筋縄ではいかない。
うまくいく日もあれば、全然だめな日もある。焦らせたくないのに、ついこちらが力んでしまうこともある。そんな時期に、『ぷくちゃんのすてきなぱんつ』は、トイレを“がんばるもの”ではなく、“ちょっと楽しみなもの”にしてくれた。
「すてきなぱんつ」という響きだけで、もうなんだか嬉しい。 娘も、この絵本を読むと、トイレやパンツに少し前向きな気持ちになれたように思う。
生活の中の小さなハードルを、絵本がそっと低くしてくれることがある。 親が言葉で何度伝えるより、1冊の絵本のほうが、すっと届くこともあるのだなあと実感した。
“読んで楽しい”だけじゃなく、“暮らしを助けてくれる”絵本。 子育てのなかで出会えてよかった1冊だ。
3冊目|『からすのパンやさん』かこさとし
――「観察」が「会話」に変わる喜び
3歳の今、娘のブームになっているのが『からすのパンやさん』。 出てくるパンの種類がとにかく楽しくて、ページを開くたびに「あ、これがいい」「こっちもおいしそう」と大盛り上がり。
読んでいるこちらまで、空想のパン屋さんに入りこんだような気持ちになる。 子どもは、細かいところを本当によく見ている。 大人なら流してしまいそうなパンの形や、ページのすみの小さな描写まで、ちゃんと見つけて、嬉しそうに教えてくれる。
「ああ、この子はいま、こんなふうに世界を見ているんだな」
昔から愛されてきた絵本には、やっぱり理由がある。 にぎやかで、楽しくて、何度読んでも飽きない。そして、読むたびに親子の会話が生まれる。 『からすのパンやさん』は、まさにそんな1冊。
絵本をくり返し読むということ
大人はつい、「新しい本も読んであげたい」と思ってしまう。 でも子どもは、同じ絵本を何度でも読んでほしがる。
「またこれ?」と思うこともあるけれど、その“くり返し”こそが大事。
同じ話を何度も聞くことで、安心する。
前には気づかなかったことに気づく。
少しずつ、自分のものにしていく。
そして親のほうも、同じ絵本を通して、子どもの変化に気づいていく。 笑うところが変わったり、気になる場面が増えたり、問いかける言葉が深くなったり。
絵本は、ただ読むものではなくて、成長を一緒に見つめるための「小さな窓」なのかもしれない。
2歳のころのお気に入り。
トイレトレーニングの相棒。
3歳の今の大ブーム。
そうやって並べてみると、本棚には娘の“その時々”がちゃんと残っている。 くり返し読んだ絵本は、親子で過ごした時間そのもの。
今月から娘は幼稚園に通い始める。 新しい世界へ飛び込んでいく娘の背中を頼もしく思いつつ、帰ってきたらまた、お気に入りの1冊を一緒に開く。
これからも、この「窓」をのぞきながら、移ろいゆく娘の季節を大切に受け取っていきたい。
喜木 拝
