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考察丨求められなくなった途端、私は美容クリニックに走った

    自分の傾向や心理状態をこれだけ解剖できるようになっても、どうやら行動までコントロールできるようになったわけではないらしい。


    昨日、私は終日在宅勤務でした。


    朝から普通に仕事をしていたはずなのに、
    気づいたら美容クリニックを予約していました。


    仕事を中抜け申請して、施術を受けていました。
    いわゆる「若返り」のための施術です。


    現在、かなり酷いダウンタイムに苦しんでいます。

    寝返りを打つたびに、顔面に激痛が走る。


    鏡を見るたび、

    「お前、なんで行った?」


    と思っています。笑


    予約したのも私。
    クリニックまで行ったのも私。
    施術台に寝たのも私。


    それなのに感覚としては、

    気づいたら美容クリニックにいた。


    本当にそんな感じでした。


    では、なぜ私は突然そこまでして自分の外見を整えようとしたのだろう。


    考えてみると、理由はたぶん分かっています。

    少し前まであれほど強く求めてくれていた人から、
    突然求められなくなったことに、私は思っていた以上に動揺していたのだと思います。



    最近私は、

    「私の価値は、外見や性的な魅力だけではない。」

    という記事を書いたばかりです。


    以前より本気でそう思えるようになっています。

    だから、

    「男に求められなければ、私には何の価値もない。」

    とまで思っているわけではありません。


    でも。

    「性以外にも価値がある」と思えることと、

    「性の価値を失っても平気」であることは、

    どうやら別の話らしい。


    ここを私は混同していました。



    ■私は「性」を捨てられたわけではなかった


    自分の中に、
    性以外の価値を見つけられるようになった。

    だから私は少しずつ、

    外見や身体への執着からも自由になっていくのだと思っていました。

    でも、

    そんなに単純ではありませんでした。


    性以外の価値を見つけたからといって、それまで大切にしてきた「性の価値」が消えるわけではなかった。

    でも同時に、

    • 女性として魅力的でいたい。

    • 性的にも求められる自分でいたい。

    という欲求は、普通に残っていました。


    むしろ、誰かから求められている間は、
    自分がそこに執着していることに気づきにくい。


    「私はまだ女として大丈夫。」

    という確認を、相手が勝手にしてくれるからです。


    問題は、それがなくなったときでした。


    会いたいと言われない。

    身体を求められない。


    ただそれだけのことなのに、
    私の中の古い部分が急に騒ぎ始める。

    「私、もう魅力がないのかな。」

    理屈では、
    そんなことは証明されていないと分かっています。

    一人の人から求められなくなったことは、
    私の魅力そのものが失われたことを意味しない。

    それでも感情は、
    そんなに行儀よく理屈についてきてくれません。



    ■「保険」をかけておきたかった


    昨日の美容クリニックも、たぶんそうでした。

    綺麗になりたい。若く見られたい。


    でも昨日に限って言えば、
    もっと切迫したものがあった気がします。

    「女としての自分を、いつでも使える状態にしておかなければ。」


    そんな感覚です。


    変な表現ですが、
    私にとって外見や性的な魅力は、長い間、

    最後まで手元に残る保険


    のようなものだったのだと思います。


    人として愛されるか分からない。
    中身に興味を持ってもらえるか分からない。
    関係が続くかも分からない。


    でも、

    綺麗でいる。

    身体を整える。

    性的に魅力的でいる。

    そうしておけば、

    少なくとも誰かから「欲しい」と思ってもらえる可能性は残る。


    その保険だけは、切らしたくない。


    だから不安になると、私は外見を整えようとする。



    昨日もおそらく、

    「もう求められないかもしれない。」

    という不安に対して、

    「じゃあ、もっと綺麗にしておこう。」

    と行動した。


    冷静に考えれば、かなり乱暴な因果関係です。


    求められない。

    ↓

    美容クリニックへ行く。

    途中の論理がだいぶ行方不明です。笑


    でも感情の中では、ちゃんとつながっている。

    「求められない」

    ↓

    「女としての価値が落ちたのかもしれない」

    ↓

    「なら、女としての価値を補強しなければ」

    ↓

    美容クリニックへ行く。


    頭では否定できるのに、
    身体はまだこのルートを覚えている。



    ■頭で理解することと、身体に染みついたものは違う


    私は最近、
    自分の心理についてかなり言語化しています。

    なぜ傷ついたのか。なぜ寂しかったのか。
    なぜ性的に求められることと、自分の価値を結びつけてきたのか。

    以前より、自分の中で起きていることを説明できるようになりました。


    でも今回、一つ分かったことがあります。

    自分を理解できることと、自分を完全にコントロールできることは別です。


    原因が分かったからといって、
    その瞬間から反応しなくなるわけではない。

    「これは承認欲求です。」

    「これは過去から続いている自己価値の問題です。」

    と名前をつけられても、

    不安になれば身体は昔から知っている方法へ走る。
    私の場合、その一つが美容なのだと思います。



    ■それでも、以前とは少し違う


    とはいえ、

    そんな自分を見て、

    「何も変わっていない。」

    とも思いません。


    以前だったら、
    もっと綺麗になれば安心できる。
    もっと若く見えれば大丈夫。


    また誰かに求められれば、自信を取り戻せる。

    そこで話が終わっていたと思います。

    でも今は、

    「私はいま、不安だから外見を整えようとしているんだな。」


    と気づくことができる。


    行動する前に止められなかったとしても、行動したあとに「なぜ」を見に行ける。

    もちろん、美容をすること自体を問題にしたいわけではありません。

    綺麗になりたいなら、なればいい。

    老化に抗いたいなら、抗えばいい。

    私だって、たぶんこれからも普通に美容クリニックへ行きます。笑


    ただ、

    「私は何のためにこれをしているんだろう。」

    と、自分に聞けるようではいたい。


    自分が好きだから整えるのか。
    美容そのものを楽しんでいるのか。

    それとも、

    誰かに求められなくなる恐怖から、必死で自分を「商品価値のある状態」に戻そうとしているのか。


    でも、自分を好きでいるために整えるのと、自分には価値がないという恐怖から整えるのとでは、私にとって意味がまるで違う。

    ただ、自分を見捨てるように美容へ走ることだけは、少しずつ減らしていきたい。




    ■最後に


    「自分には、身体以外にも価値がある。」

    それは今も変わりません。


    でもどうやら私は、
    性の価値を手放したわけではなかった。


    たぶん私はまだ、
    性という保険証券を大事に握っています。

    「これさえ持っていれば、最悪なんとかなる。」

    そんなふうに。


    以前の私なら、その保険を「自分そのもの」だと思っていたのかもしれません。

    でも今は、それが私の持っている価値の一つであり、同時に、不安になった時に握りしめてしまう保険でもあると分かる。


    ただ、

    「私は性以外にも価値がある。」

    と知った私と、

    「それでも女として求められなくなるのは怖い。」

    と思っている私。

    その二人は、矛盾しているようで、

    どちらも今の私です。


    自分を理解するということは、矛盾をなくして、
    いつも正しい行動ができる人間になることではないのかもしれません。

    頭では分かっているのに、感情は追いつかない。


    そんな自分まで見つけたときに、

    「ああ、私はまだここが怖いんだ。」

    と分かること。

    今の私にとって自己理解とは、
    たぶんそういうことなのだと思います。


    そしていつか、

    「求められなくなったから、私の価値が減った。」

    ではなく、

    「この人との関係が変わった。それだけ。」



    と、頭だけではなく身体まで思えるようになったら。



    そのとき私はようやく、
    この保険を少し軽く握れるようになるのかもしれません。

    ……とはいえ。

    次回はせめて、ダウンタイムの日数くらい確認してから予約しようと思います。


    やばい、明日は出社だ。笑

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    92年生まれ。虐待を背景に、アダルトチルドレン・愛着の問題・複雑性PTSDと向き合っています。 DVやハラスメント、自己免疫疾患、子宮頸がんを経験。 過去と感情を解剖しながら、回復の過程を言語化しています。 取材・執筆のご依頼はDMへ。

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