
高速道路には主に2種類ある?~高速自動車国道と一般国道自動車専用道路
日本全国にある「高速道路」。都会上空を走っているものから山の中を走っているものや都市間をつないでいるものまで、何種類かあるように見える。名称も「~高速」となっているものもあれば「~自動車道」「~道路」となっているものもある。いずれも「(325)自動車専用」の標識が入口に設置されているが、これらは名称の違い以外に実質的に何が違うのだろうか?この記事ではそんな疑問を掘り下げる。

「高速道路」の背景にある法律・制度
「高速道路」という用語は、日本においては実は法律や制度に基づいた言葉ではなく、複数の法律や制度で定義されたいくつかの種類の道路にまたがってつけられた名称である。
以下の道路の名称 (通称) に「~高速(道路)」が含まれている。
● 東名高速道路
● 新東名高速道路
● 名神高速道路
● 新名神高速道路
● 中央高速道路 (1972年に中央自動車道に改称)
○ 首都高速道路
○ 阪神高速道路
○ 名古屋高速道路
○ 都市高速道路 (福岡、北九州の高速道路の呼称)
○ 広島高速道路
△ 東京高速道路 (2025年4月で廃止)
(これらの道路を管理する会社の名称に「~高速道路」という名称を含んでいるものもある。)
また、冒頭の記号は道路の背景にある法律・制度(整備体系)を分類したものだ。
● = 高規格幹線道路 (A/A'/B路線)。道路法上は自動車専用道路。道路構造令における第1種。
○ = 都市高速道路。道路法上は都道府県道または指定市道。国土交通大臣指定に基づく地域高規格道路。道路構造令における都市部の自動車専用道路(第2種第1級・第2級)。
△ = 道路運送法 (旧自動車交通事業法) に基づく一般自動車道。
✅高規格幹線道路 (高速自動車国道と一般国道自動車専用道路)~A/ A'/B路線

通常、高速道路というと全国的な自動車交通網を形成する「高規格幹線道路」、都市間高速道路のことを想像する人が多いだろう。東名高速、中央高速など、先に出てきた●印のついた「~高速道路」や、東北自動車道など「~自動車道」と呼ばれる道路名を持つものは、高規格幹線道路に分類される。これらの道路には必ず「高速道路番号」が割り振られており、「(118の3)高速道路番号」標識が案内標識等の中でも使われている。
国土交通省の資料「道路の種類」から引用すると、高規格幹線道路は全体構想が14,000kmあるうち、高速自動車国道 (国幹道道法に基づく高規格幹線道路、A路線)と一般国道自動車専用道路 (A'路線、B路線)の2種類に別れる。A/A'路線の延長は約11,520km、B路線は約2,480kmとなっている。ここでA'路線とは「高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路」のことで、A路線の規格で整備したかったものを、「国土交通大臣指定に基づく高規格幹線道路」であるB路線の規格で前倒しで整備したもので、A路線に(将来的に)編入するものである。
A'路線とB路線には「~道路」という名称がついているものや、正式名称は「~自動車道」となっていて別名「~道路」というものも多い。また、A'路線やB路線には国道番号もついている。
B路線の例
(C4)首都圏中央連絡自動車道 (国道1/126/468号: 横浜環状南線、横浜湘南道路、新湘南バイパス、千葉東金道路(二期区間))
(E63)日高自動車道 (国道235号: 苫東道路、厚真門別道路、門別厚賀道路、厚賀静内道路、静内三石道路)
(E70)伊豆縦貫自動車道 (国道1/136/414号: 東駿河湾環状道路、伊豆中央道(国道バイパス有料道路)、函南修善寺道路、修善寺道路、天城北道路、天城峠道路、河津下田道路)
A'路線の例
(E1A)伊勢湾岸自動車道 (東海IC-飛島IC間は並行する一般国道自動車専用道路名=伊勢湾岸道路 (国道302号)、路線名=第二東海自動車道および近畿自動車道 名古屋神戸線)
(E6)仙台東部道路 (国道6号)、仙台北部道路 (国道47号) (並行する一般国道自動車専用道路名は道路名称と同一、路線名=常磐自動車道)

A'路線でも「ここから一般有料道路」と掲示がある場合がある。
A路線についても、政令による「路線名」と、「道路名称」の2つの呼称があり、同じ場合もあれば違っている場合もある。
A路線の例
(C3)東京外環自動車道 (路線名=東北縦貫自動車道、常磐自動車道および東関東自動車道)
(E1)東名高速道路 (路線名=第一東海自動車道)
(E4)東北自動車道 (路線名=東北縦貫自動車道 弘前線)
(E19/20)中央自動車道 (路線名=中央自動車道 富士吉田線/西宮線、旧称=中央高速)
このように高速道路の整備体系や名称が複雑で複数ある一つの要因には、日本の高速道路整備の歴史における、採算性や規律を重視する中央官庁と、道路を誘致したい地方の政治家との攻防がある。正確性を期して詳しく掘り下げるととても分かりづらくなるので、この記事ではこれ以上は掘り下げない。

日高自動車道(B路線) 沼ノ端西IC 国道235号
*
次に、車両を運転するドライバーの観点から、高速自動車国道と一般国道自動車専用道路の違いを見てみよう。
高速自動車国道 (A路線)は、多くの区間で設計速度が100~120km/hで想定されている。ただし比較的早期に完成した道路や山間部では設計速度が80km/hになっている区間もある。急カーブや急勾配が極力少ないように設計されている。法定速度は100km/h、最低速度は50km/hに暗黙的に決まっている。最高速度標識の設置で最高120km/hまで出すことができる。加えて、インターチェンジから本線に入ってすぐに、A/A'路線には下記のような高速道路番号入りの「道路の通称名」標識が設置されている。

一般国道自動車専用道路 (A'/B路線)も、設計速度は多くの区間で100km/hが想定されており、同等の仕様となっている。適用される道路交通法はA路線とは異なっている。一般国道であるため、法定速度は60km/hとなっており、最高速度標識の設置で最高100km/hまで出すことができる。比較的初期に整備された道路は、設計速度と制限速度が低めになっており、制限速度が60km/hの道路もある。最低速度の設定はないが、必要な区間には最低速度標識 (50km/h)を設置している。最低速度標識が設置されている道路は一般国道自動車専用道路 (A'/B路線)である、という判別ができる (ただし、設置は十分条件であるが必要条件ではない)。B路線には高速道路番号入りの「道路の通称名」標識は設置されていない。
私たちが利用する高速道路は、高速自動車国道と自動車専用道路の2つに分けられます。
という記載がある。ただし、後述するように高規格幹線道路 (高速自動車国道と一般国道自動車専用道路)以外にも、高速道路の特徴を持っている道路の種類が多く存在し、かならずしもこのようには言い切れない。

新潟西は北陸道のIC、新潟中央は磐越自動車道のICのため、道路名でなく「高速道路」での案内となっているようだ。
☑️地域高規格道路
高規格幹線道路14,000kmを補完し、地域の自立的発展や地域間の連携を支える道路として整備することが望ましい路線を「地域高規格道路」として指定し、自動車専用道路もしくはこれと同等の規格を有し、概ね60km/h以上の走行サービスを提供できる道路として整備する、としている。
地域高規格道路には「~高速道路」という名前はついていないが、主に「~道路」という名前で供用開始している自動車専用道路が存在する。規格や形態はまちまちで、単純に国道のバイパスとなっているものもあれば、高速道路番号がついた自動車専用道もある。後者の場合、高速道路番号入りの「道路の通称名」標識は設置されていないことが多いようだ。※
高速道路番号が振られた開通済みの地域高規格道路の例
(E6/E45)三陸沿岸道路 (主にB路線)の一部区間
(E80)あぶくま高原道路
(E81)日光宇都宮道路 (国道119/120号バイパス)
※「(CA)アクアライン」は「道路の通称名」標識の設置がある。
☑️その他の自動車専用道路
「高規格幹線道路」でも「地域高規格道路」でもない自動車専用道路も存在する。ここではこれらを「その他の自動車専用道路」と呼ぶことにする。
高速道路番号は振られているものも振られていないものもある。道路によって、「自動車専用」規制標識が掲載されていたり、相当する複数の規制の組み合わせの一部または全部が設置されている。

その他の自動車専用道路によって、「自動車専用」規制標識が掲載されていたり、右側の一部または全部が設置されている。
その他の自動車専用道路の場合、高速道路と異なるのは、入口に設置される案内看板が「高速入口」でなく「有料入口」になることである。そのため、これらの道路は規格は高速道路に近いものの「高速道路」に分類されないという考え方もできるが、高速道路に含めるのが一般的なのだろう。

「高規格幹線道路」や「地域高規格道路」の入口に設置されている場合がある。

「その他の自動車専用道路」の入口には「高速入口」の代わりに設置されている場合がある。
ただし、英語では「EXPWY」(Express Way)となっており、高速道路とも解釈できる。
その他の自動車専用道路の例
(E68) 東富士五湖道路
(E71) 関西国際空港連絡橋
(E84) 西湘バイパス (国道1号)
(E85) 小田原厚木道路 (国道271号) 厚木IC-平塚IC間※
(E87) 中部国際空港連絡道路 (知多横断道路)
室蘭新道
箱根新道 (国道1号)
宇佐道路 (国道10号)
☑️都市高速道路
東京(+横浜/川崎/さいたま等)、名古屋、大阪(+神戸等)、広島、北九州、福岡の6都市圏は、都市計画法に基づく自動車専用道である「都市(内)高速道路」が整備されており、都心部の交通円滑化を主な目的としている。名称にも「~高速」とつけられている。
一般の高速道路と比較してカーブが多い、本線に合流するまでの助走距離が短い、車線や幅員が狭い、制限速度が50~60 km/hの区間が多い、信号機つき交差点を持つ路線も存在する、など、通常の都市間高速道路と比べると低い仕様となっている。
道路法上は都道府県道または指定市道(政令指定都市内の区間)であり、地域高規格道路の概念ができてからは、地域高規格道路に自動的に指定されている。
都市高速道路には、独自の路線番号入りの「(119-D) 道路の通称名」標識が設置されている。


「首都高入口」の案内看板が設置されている。
「高速入口」の横断幕等が設置されている場合もある。

「都市高速 (Urban Expressway)」が固有名詞になっている。
☑️一般自動車道
高速道路の中には、いままでのどの分類にも入らない道路も存在する。2025年4月まで供用されていた「東京高速道路」などがこれにあたる。これは、道路運送法に基づく「自動車道」に分類される。これに対して、いままでのものは道路法に基づく「自動車専用道路」である。
「自動車道」は、道路運送法第2条第8項にて
「自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のもの
と定義されている。
「自動車道」には、「D」の自動車道番号がついているもの、ついていないものがある。名前は「~高速道路」のものは東京高速道路だけで、「~スカイライン」「~ターンパイク」「~自動車道」「~道路」など、様々な名前が付いている。
高速道路の案内標識は通常は「緑」であるが、「自動車道」の案内標識は「青」である。道路の入り口には「自動車専用」規制標識の設置は無く、規制内容に相当する複数の規制標識が設置されている場合が多い。(比叡山ドライブウェイ、白糸ハイランドウェイ等、自動車専用規制標識が設置されている道路もある。)

自動車道によってこれらの一部または全部が設置されている。
「自動車道」は有料道路が多く、償還期間が終わって無料開放している道路もある。東京高速道路は元々無料で、高架下の店舗のテナント料で費用を賄うという特殊な形態をとっていた。道路名の案内標識には、最初に「有料道路」という枕詞が付いた形になっていることが多いようだ。

色は「青」であり、最初に「有料道路」という枕詞が付いている。

「自動車道入口」という特徴的な看板がある。静岡県道路公社設置。
道路運送法に基づく「自動車道」の例
(D8) 東京高速道路 (2025年4月に廃止)
(D10) 伊豆スカイライン
(D18a/b) 箱根ターンパイク
(D28) 九十九里有料道路
(D29) 箱根スカイライン
藻岩山観光自動車道
羽黒山自動車道
蔵王ハイライン
白糸ハイランドウェイ
比叡山ドライブウェイ
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このように「高速道路」の概念は、高速道路でない道路との境界部分においては色々な種類の道路があり曖昧なところも多い。
道路管理者の観点からの分類
日本の「高速道路」を管理するために存在する組織・団体は、
NEXCO東日本・中日本・西日本 (東名高速、名神高速、東北道など)
首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社などの都市高速道路
本州四国連絡高速道路株式会社
である。一方、国土交通省国道事務所は一般国道のバイパスなど、高速に走れる幹線道路の管理を行っており、自治体による道路公社は有料道路の管理を行っている。
最初の3種類の会社が管理している道路を「高速道路」と考えることもできる。ただし、高速道路番号が付いている道路でこれらの会社が管理していない道路も存在するため、やはり直観的な「高速道路」の定義からはズレることになる。
有料道路とは?
高速道路というと日本では「有料道路」だというイメージがあるだろう。長大な道路、橋、トンネル等の莫大な費用がかかる施設の建設と維持費を利用者負担で賄うために料金を徴収する。車両や歩行者から通行料金を徴収して償還期間を終えたものは無料化される場合もある。
有料道路は高速道路だけではなく、橋やトンネル、観光地を走るドライブウェイ (観光道路) にも見られ、必ずしも自動車専用に指定された道路というわけでもない。
また、高速道路であっても一般道路のバイパスとして整備された区間は「新直轄方式」と呼ばれ、税負担で無料となっている。
このように、高速道路と有料道路の概念は重なるところも大きいが、高速道路であっても有料道路ではない道路、有料道路であっても高速道路ではない道路もある。

このネットワークが、いわゆる「都市間高速道路」にあたる。
出典: 国土交通省
道路法の自動車専用道路でも、道路運送法の自動車道でもないが、高速道路番号が振られて入口に「高速道路入口」と掲示されている有料道路の例もある。
特殊な有料道路の例
(E83) 横浜新道※

国際ゴルフ橋南側 横浜新道 今井IC
左側の東京方面入口は「高速道路入口」と「125cc以下の自二輪・原付・小特・軽車両・20歳未満又は自二輪免許3年未満の運転者」通行止めの規制がある。一方、右側の小田原方面は「高速道路入口」の掲示があるものの「軽車両」通行止めのみ存在する。つまり小田原方面は原付も通行可能なのだ。
🎯まとめ: 結局のところ、高速道路の定義は?
それでは、結局のところ、日本において高速道路とは何を指すのか?結論としては明確な定義はなく、いくつかの法律や制度が絡み合っており、一番格が高い「高速自動車国道 (国幹道道法に基づく高規格幹線道路、A路線)」は確実に高速道路で、「高速道路の属性」をすべて兼ね備えている。その他の道路も「高速道路の属性」をほとんど持っているもの、いくつか欠けているものが存在する。
道路の種類 (横軸) と高速道路の属性 (縦軸) の関係性を表にまとめてみた。

ここで、🟢❌とは、路線によって🟢の路線もあれば❌の路線もあるという意味である。この表で見ると、高速道路らしさがあるのは、高規格幹線道路 + 地域高規格道路の一部 (🟢の路線) と考えることもできる。
おまけ: 私有地にある「自動車専用」
ホテルや駐車場で車道であることを示し、歩行者に入ってきてほしくないときに「自動車専用」規制標識と同じ看板を設置している例がある。私有地のため正式な規制標識ではなく、あくまでもただの看板であるが、なかなか新鮮な光景である。

御殿山トラストタワー敷地内
主な参考資料:
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