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会社を大きくした社長が、最後に会社を売った理由――中小企業経営者の成功と失敗 会社を売却した創業者の話を聞いて



    会社を大きくした社長が、最後に会社を売った理由――中小企業経営者の成功と失敗

    会社を売却した創業者の話を聞いて

    先日、ある中小企業の創業者が、YouTubeで自分の会社を売却した経緯について語っている動画を見た。

    その会社については、以前から多少の事情を知っていた。

    従業員は数十人程度。一般的には小さな会社だが、その業界では比較的大きな会社だった。

    というのも、その業界では個人事業主として仕事をしている職人が多く、従業員を何十人も直接雇用する会社は珍しかったからである。

    創業者は、会社を大きくしたかったのだろう。

    仕事を増やし、従業員を雇い、設備を整え、売上高を拡大する。

    経営者としては、ごく自然な野心だと思う。

    ところが、会社を大きくすることと、会社が儲かることは必ずしも同じではない。

    今回の話を聞きながら、私はそのことを改めて考えた。

    売上高が増えても儲からない会社

    中小企業の経営では、売上高を増やすことが目標になりやすい。

    年商1億円の会社を3億円にする。

    3億円の会社を10億円にする。

    従業員も増え、取引先も増え、社長としての社会的な信用も高まる。

    ところが、売上高が増えたからといって、利益が増えるとは限らない。

    例えば、利益率の低い仕事でも、売上を確保するために引き受けることがある。

    仕事が増えれば人を雇う必要があるし、設備投資も必要になる。

    しかも、従業員を雇えば、仕事が少ないときでも給料を払わなければならない。

    社会保険料の会社負担も発生する。

    売上高は増えたのに、手元にお金が残らない。

    場合によっては、運転資金を借り続けなければ会社を維持できなくなる。

    これは、売上高の大きさだけではわからない問題である。

    もちろん、今回の会社が実際に低利益率の仕事を大量に引き受けていたかどうかは、私にはわからない。

    ただ、会社を拡大する過程で、こうした問題に直面する経営者は少なくないだろう。

    バブル崩壊とデフレの時代

    もう一つ考えなければならないのが、時代背景だ。

    日本はバブル崩壊後、長いデフレと低成長の時代に入った。

    かつては売上を増やし、設備を増やし、人を増やせば、会社も成長していくという期待があった。

    ところが、デフレの時代には値上げが難しい。

    取引先からは値下げを要求され、競争は激しくなる。

    その一方で、借りたお金の額面は減らない。

    売上や利益が伸びなければ、借金の返済負担は相対的に重くなる。

    もちろん、すべての会社が同じ環境に置かれていたわけではない。

    しかし、経営者がどれほど努力しても、景気や業界全体の構造まで変えられるわけではない。

    経営が傾いたからといって、すべてを社長個人の責任にするのも違うと思う。

    従業員を個人事業主にした会社

    私が以前聞いて驚いたのは、この会社が従業員の契約形態を大きく変更したという話だった。

    営業担当者は代理店契約に、製造現場の従業員は個人事業主としての業務委託契約に切り替えられたという。

    設備や材料の扱いも変わり、報酬体系も見直されたと聞いている。

    これは、会社の経営構造を根本から変える改革である。

    従業員を直接雇用していれば、仕事の量に関係なく人件費が発生する。

    しかし、独立した事業者に仕事を発注する形なら、発注量に応じて費用を調整しやすくなる。

    もちろん、契約書を変えただけで実態が従業員のままなら、労働法や社会保険の問題が生じる。

    また、経営改革によって働く人たちがどのような影響を受けたのかも、外部からはわからない。

    ただ、会社としては固定費を減らし、事業を存続させる方向に舵を切ったように見える。

    皮肉なことに、もともと個人事業主が中心だった業界で、従業員を直接雇用して会社を大きくした創業者が、最後にはその仕組みを見直したわけだ。

    会社を大きくするために作った仕組みを、会社を残すために手放した。

    そう考えると、なかなか考えさせられる話である。

    会社を売却した理由は相続税対策?

    その後、会社はM&Aによって売却され、経営陣も交代したようだ。

    動画の中で創業者は、売却の理由として相続税対策に言及していた。

    確かに、非上場企業の株式を相続する場合、相続税の支払いが問題になることはある。

    ただし、相続人の人数や配偶者の有無、会社の株式評価額、事業承継税制の適用などによって事情は大きく変わる。

    そもそも会社の株式にどれほどの価値があったのかも、私にはわからない。

    そのため、相続税対策という説明がどこまで重要な理由だったのかは判断できない。

    ところが、動画を見ていると、創業者は別のことも語っていた。

    会社を残したかった、というのである。

    私は、こちらの説明の方に強く関心を持った。

    会社を残すために会社を売る

    中小企業の経営者にとって、会社の借金は深刻な問題になる。

    金融機関から融資を受ける際、経営者が個人保証をしている場合もある。

    会社が倒産しても、保証債務が当然に消えるわけではない。

    長年かけて築いた個人資産を失う可能性もある。

    今回の会社についても、多額の負債があったという話を以前聞いたことがある。

    ただし、正確な金額や財務状況を確認したわけではないので、ここでは断定しない。

    もし借入金や個人保証の問題を抱えていたなら、M&Aによってスポンサーを迎えることには大きな意味がある。

    買収する側が資金を投入し、会社の財務内容を改善する。

    創業者は経営から退き、会社は新しい経営陣のもとで存続する。

    さらに、債権者の同意を得て個人保証まで解除されたなら、創業者は老後の生活を守れる可能性がある。

    もちろん、実際にそのような条件で売却されたかどうかはわからない。

    会社を売却しただけで借金や個人保証が自動的に消えるわけでもない。

    それでも、こうした形の事業承継や経営再建は十分に考えられる。

    経営者が本当の事情を話すとは限らない

    ここで誤解してほしくないのは、私はこの創業者を批判したいわけではないということだ。

    そもそも、YouTubeで自分の経営経験を語る人が、すべての事情を正直に話さなければならない理由はない。

    正直者大会をやっているわけではないのだから(笑)。

    M&Aでは、買収価格や債務の処理、個人保証の解除条件などが秘密保持契約の対象になっていることもある。

    本人が話したくても話せない事情だってあるだろう。

    また、会社の売却には複数の理由があってもおかしくない。

    相続税対策も事業存続も、両方とも本当の目的だった可能性がある。

    だから、表向きの説明と実際の経営事情が多少違って見えても、それだけで嘘つきだと責めるつもりはない。

    むしろ、経営者の経験談とはそういうものだと思って聞いている。

    倒産していった経営者もいただろう

    この創業者は、長年にわたって会社を経営してきた人だ。

    同じ業界の経営者や取引先にも、多くの知り合いがいただろう。

    その中には、会社が倒産した人もいたかもしれない。

    借金を返せず、自宅や資産を失った人もいたかもしれない。

    経営者として再起できなかった人もいただろう。

    そうした人たちと比べれば、会社を存続させたうえで経営から退くことができたのは、悪くない結果だったのではないだろうか。

    もちろん、元従業員にとっても良い結果だったかどうかは別問題である。

    しかし、創業者自身の人生という観点から見れば、会社を売却して経営の第一線から退くという選択は、必ずしも敗北ではない。

    むしろ、適切な時期に撤退するのも経営者の能力の一つだと思う。

    会社を大きくする能力と、縮小する能力は違う

    私は、この話から一つの教訓を感じた。

    会社を大きくする能力と、会社を縮小する能力は違う。

    事業を拡大するときには、野心や行動力が必要になる。

    新しい仕事を取り、従業員を増やし、設備を導入する。

    しかし、会社を縮小するときには、別の能力が必要になる。

    自分が作り上げた仕組みを見直し、場合によっては従業員との関係を変え、経営権まで手放さなければならない。

    創業者にとっては、会社そのものが自分の人生の一部だったはずだ。

    それを他人に譲るというのは、簡単な決断ではなかっただろう。

    それでも会社を残すことを優先したのなら、そこには経営者としての一つの決断があったと思う。

    最後に――成功した経営者とは誰なのか

    世の中では、会社を何億円で売却したとか、何十億円の資産を築いたとか、そういう話が注目される。

    しかし、中小企業の経営者の人生は、それほど単純ではない。

    売上高を増やしても利益が残らないことがある。

    会社を大きくしても、借金が増えることがある。

    時代が変われば、それまで正しかった経営方法が通用しなくなることもある。

    そして、会社を守るために、会社を手放さなければならないこともある。

    今回の創業者が実際にどのような事情で会社を売却したのか、私はすべてを知っているわけではない。

    それでも、少なくとも会社は存続した。

    創業者も経営から退き、新しい人生を歩んでいるようだ。

    もしそれが本人の望んだ着地点だったなら、十分に成功したと言ってもいいのではないだろうか。

    会社を大きくすることだけが、経営者の成功ではない。

    最後に会社と自分の人生をどう着地させるか。

    それもまた、経営者の実力なのだと思う。


    特に創業社長の場合、会社は単なる収入源や資産ではないんだよね。

    自分で仕事を取り、従業員を雇い、取引先を開拓して、何十年もかけて育ててきた会社だからね。まさに自分の子供のような存在だと思う。

    今は起業して会社の価値を高め、売却益を得て、また別の会社を作るという連続起業家もいる。そういう人にとっては、会社の売却自体が最初から事業計画に組み込まれている。

    でも、昔ながらの中小企業の創業者は違うことが多い。

    会社を売るために作ったのではなく、一生続けるつもりで作った。

    だからこそ、経営が苦しくなっても簡単には手放せないし、従業員を減らしたり、事業を縮小したりする決断も難しい。

    今回の創業者も、もしそういうタイプだったなら、会社を売却するまでには相当な葛藤があったのかもしれないね。

    そして面白いのは、会社への愛着が強いからこそ、最後には会社を売るという選択もあり得ることだ。

    自分が経営を続ければ会社が立ち行かなくなるかもしれない。しかし、別の経営者に託せば会社は存続する。

    そう考えれば、経営権を手放すことは必ずしも会社を見捨てることではない。

    むしろ、子供が独立して親元を離れるのと少し似ている。

    「会社を愛していたから、会社を売った」

    ということかもしれない。


    ここまでお読みいただきありがとうございます。
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    お金持ちになる方法より、お金持ちになりたがる人の話が好きです。 政治、経済、投資、会社経営から日常のくだらない話まで。世の中の常識を疑いながら、思いつくままに書いています。 AIは文章整理の相棒。考えているのは人間です(笑)。

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