
Harrodsのミトン モノとルキ#34
冷蔵庫の横、マグネットフックに掴まって、
退屈そうに、いつもぶらんとしてるのは
Harrodsのミトン。
たまにグラタンを焼くとき、耐熱皿をグリルから出すとき、
出番ですか?と来てくれる。
でも、このミトンには、もうひとつの顔がある。
顔と言うか手なわけだけど。
旅に出るとき、僕はワインを持っていく。
旅先では当たりのワインに出会えたことはあまりない。
探すたびに、観光地価格が現実に引き戻す。
もちろんホテルのレストランで頼むのはコスパが良くない。
だから、持参して部屋で嗜む。
小旅行ならハーフボトル一本。
飲み切って、帰りは身軽になる。
ワインボトルを旅行バッグにそのまま入れるのは、
なんとなく気が引ける。
仕分けもしたいし、ちゃんと、守ってあげたい。
だから、ミトンをボトルにズボッとかぶせる。
手の形のモニュメントの完成。そこにハイタッチ。
ロンドンのミトンが、
ある時はフランスワインを抱え、
またある時はイタリアワインを抱えて、旅に出る。
そのちぐはぐさが、たまらなくかわいい。
ティーポットにはティーコージー。
ワインボトルにはミトン。それが僕のやり方。
部屋に到着して、ミトンからボトルを取り出す瞬間が好きだ。
ミトンの親指と握手して、ありがとうと感謝を告げる。
ミトンはこうこたえてくれる。
いつもキッチンで働いているわたしを、
旅に連れ出してくれてありがとう、と。
