
ボサノヴァ人形 モノとルキ#9
玄関の棚に、三体の人形が並んでいる。
トム・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ジ・モラエス。
僕にとって作曲の神様、パフォーマンスの神様、詩人の神様だ。
毎朝、外へ出るたびに彼らと目が合う。
手に入れたのは2000年代の半ば。
イパネマにあるToca do Viniciusという小さな店で売られていた、
ボサノヴァのCDと書籍が並ぶその店の、カウンターの奥にそれらは並んでいた。どうしても欲しくて、所属していたサンバチームの仲間が
ブラジルへ旅立つときにお願いした。
その時はトム・ジョビンは手に入らず、後に探し回って、
何とか手に入れることができた。
地元の作家が一体一体手で作るから、少しずつそれぞれ違う。
ネットで別の子の写真を見かけるたびに、
うちにいる三体を眺めてひそかに誇らしくなる。
残念なことに、その店はもう営業していない。
僕はその頃、ジョアンを追いかけて、ギターを弾いて歌っていた。
次に作曲の時代が来て、今は詞を書いている。
気づけば、三体すべてが必要な神様になっていた。
ちなみに今作っているのはエレクトロポップ。
ボサノヴァはマイブームだったのか、と思わなくもない
でも、ボサノヴァとは「新しい傾向」という意味だ。
ジャンルではなく、そういう姿勢のこと。
だから彼らは今も、玄関で静かにぼくを見送ってくれる。
新しい何かへ向かって、行ってこい、と。
