
ぬし熊の曲げわっぱ モノとルキ#40
民芸に凝っていた時があり、
幾つか器を揃えているうちに曲げわっばに出会った。
その中で出会ったのが「ぬし熊」。
ちなみに僕はるき熊。だから、運命だと思った。
三重県尾鷲市の工房で、明治二十年創業。
尾鷲ヒノキを用い、四十五の工程を経て作られる。
そのロマンに、心惹かれた。
四代目の世古効史さんに連絡を取り、
オーダーを相談すると、快く引き受けてくれた。
そこからは僕の創作作業が始まる。
バッグに収納しやすいスリムな形。
縦、横、高さ。自分の食べる量も考えながら、
Adobe Illustratorで図面を作り、PDFで送った。
数か月後、待ちに待った荷物が届いた。
届いた箱を開けた時のことは、よく覚えている。
世古さんが作ったその曲げわっぱは、完璧だった。
そして、一点ものにもかかわらず、
白いボール紙で丁寧に誂えられた化粧箱に収納されていた。
よく見ると手作りなのだが、よく見なければわからない。
Dieu se cache dans les détails! (神は細部に宿る)
ギュスターヴ・フローベールになった気分でつぶやいた。
早速、僕は鎌倉の小町通りまで向かい、
お箸とお弁当包みを、時間をかけて選んだ。
これを手に入れて以来、
どこかに出かけるわけでもないのに、
朝、ご飯とおかずを詰めて、
お昼に食べることがある。
何気ないランチが料亭の仕出しに変わる瞬間。
