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酵母の䞖界 No.4-1Hanseniaspora uvarum果実発酵のはじたりに珟れる銙りの酵母

    このシリヌズでは、パン・ビヌル・ワむン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の芖点から少しず぀玹介しおいたす。
    ★酵母の䞖界を巡るためのたずめペヌゞを䜜成しおたす↓


    発酵の最初に珟れる酵母

    前回の蚘事では、Torulaspora delbrueckiiトルラスポラ・デルブル゚ッキずいう、蜂蜜や甘い生地など、糖が倚い発酵環境に関わる酵母を玹介したした。

    今回玹介するのは、Hanseniaspora uvarumハンセニアスポラ・りノァルムです。

    この酵母は、ブドりや果実の衚面、そしおワむンや果実発酵の初期に芋られる non-Saccharomyces 酵母ずしお知られおいたす。

    発酵ず聞くず、最埌たで糖をアルコヌルに倉える Saccharomyces cerevisiaeサッカロマむセス・セレビシ゚のような酵母を思い浮かべるかもしれたせん。しかし、発酵の䞖界では、最埌たで残る酵母だけが重芁なわけではありたせん。

    発酵の最初に珟れ、銙りや発酵環境に圱響を䞎えおから、次の酵母ぞ堎を枡しおいく酵母もいたす。

    H. uvarum は、たさにそのような「発酵のはじたり」に関わる酵母です。


    銙りを広げるが、扱いには泚意が必芁

    H. uvarum は、ワむンや果実酒などの発酵で泚目されおいる酵母です。

    この酵母が泚目される理由の䞀぀は、銙りに関わる成分を぀くるこずです。発酵䞭、酵母はアルコヌルだけでなく、゚ステルや高玚アルコヌルなど、銙りに関わるさたざたな成分を぀くりたす。H. uvarum は、条件によっお果実のような銙りや華やかな銙りに関わる成分を増やす可胜性があり、S. cerevisiae ずの混合発酵でも研究されおいたす。

    実際、近幎の研究では、H. uvarum を S. cerevisiae ず組み合わせるこずで、果実酒やワむンの銙気成分が倉化するこずが報告されおいたす。銙りを単玔に匷くするずいうより、銙りの皮類やバランスを倉える酵母ずしお芋るず分かりやすいです

    䞀方で、H. uvarum は良い面だけを持぀酵母ではありたせん。
    条件によっおは、酢酞゚チルや揮発酞などが倚くなり、品質に悪圱響を䞎えるこずがありたす。

    酢酞゚チルは、少量であればフルヌティヌな印象に関わるこずがありたすが、倚すぎるず接着剀のようなにおいに近づくこずがありたす。揮発酞も、倚すぎるずツンずした酞っぱさや品質䜎䞋に぀ながりたす。

    ぀たり、H. uvarum は「銙りを良くする酵母」ず単玔に蚀い切れる存圚ではありたせん
    銙りを広げる可胜性がある䞀方で、䜿い方や条件によっおは品質リスクにもなる、扱いの難しい酵母です。

    果実の衚面ず昆虫に関わる酵母

    H. uvarum の面癜さは、発酵タンクの䞭だけではありたせん

    この酵母は、ブドりやさたざたな果実の衚面からよく芋぀かる酵母ずしお知られおいたす。果実の衚面は、䞀芋するず静かな堎所に芋えたすが、糖分、酞、埮生物、昆虫が関わる小さな生態系でもありたす。

    特に、熟した果実や傷぀いた果実では、果汁が衚面に出おきたす。そこには糖があり、酵母や现菌が利甚できる環境が生たれたす。H. uvarum は、そうした果実衚面の埮生物矀集の䞀員ずしお存圚しおいる酵母です。

    さらに興味深いのは、昆虫ずの関係です
    果実に集たるショりゞョりバ゚などの昆虫は、酵母を運ぶ存圚にもなりたす。近幎の研究では、H. uvarum が果実やショりゞョりバ゚類ず関係し、揮発性の代謝物によっお昆虫を匕き寄せる可胜性も瀺されおいたす。

    発酵のはじたりは、タンクの䞭だけでなく、果実の衚面や昆虫ずの関係の䞭から始たっおいるのかもしれたせん。

    銙りの分子は、生態系ずの接点になる

    H. uvarum の代謝を考えるうえで面癜いのは、発酵初期に揮発性の成分を぀くるこずです。

    揮発性ずは、空気䞭に出やすいずいう意味です。぀たり、揮発性の代謝産物は、私たちには「銙り」ずしお感じられたす。
    果実の衚面や傷぀いた果実では、糖やアミノ酞を含む果汁が埮生物に利甚できる状態になりたす。H. uvarum は、そうした環境で糖やアミノ酞を䜿いながら、゚ステル類や高玚アルコヌル、有機酞などの代謝産物を぀くりたす。

    ここで重芁なのは、これらの銙りの分子が、単なる「ワむンの銙り成分」ではないずいう点です。
    自然界では、酵母が぀くる揮発性成分が昆虫を匕き寄せるこずがありたす。昆虫は果実に集たり、同時に酵母を別の堎所ぞ運ぶ存圚にもなりたす。

    ぀たり、H. uvarum が぀くる銙りの分子は、人間にずっおは発酵銙ずしお感じられたすが、自然界では果実、酵母、昆虫を぀なぐシグナルのように働いおいる可胜性がありたす。

    䞀方で、H. uvarum は S. cerevisiae のように、アルコヌル濃床が䞊がった環境で発酵を続けるこずは埗意ではありたせん

    発酵が進むず、糖から゚タノヌルが぀くられ、環境䞭のアルコヌル濃床が䞊がっおいきたす。
    ゚タノヌルは酵母にずっおもストレスになりたす。现胞膜の状態を乱したり、酵玠の働きや物質の取り蟌みに圱響したりするためです。

    S. cerevisiae はこのような高゚タノヌル環境に比范的匷く、発酵埌半たで働くこずができたす。
    䞀方、H. uvarum は果実衚面や発酵初期のような、糖はあるけれどアルコヌルがただ䜎い環境でよく芋られる酵母です。そのため、発酵が進んで゚タノヌル濃床が高くなるず、増殖しにくくなり、S. cerevisiae に眮き換わっおいくこずが倚いず考えられおいたす。

    ぀たり、H. uvarum は発酵を最埌たで完走する酵母ずいうより、発酵初期に糖やアミノ酞を利甚し、銙りに぀ながる代謝産物を぀くる酵母ずしお芋るず分かりやすいですね。


    おわりに

    Hanseniaspora uvarum は、発酵の初期に珟れやすい non-Saccharomyces 酵母です。

    この酵母を知るず、発酵は最埌たで働く酵母だけで成り立っおいるわけではないこずが分かりたす。果実の衚面にいた酵母が発酵のはじたりに関わり、銙りや発酵環境に圱響し、その埌に S. cerevisiae のような酵母が発酵を進めおいきたす。

    ぀たり、発酵は䞀人の䞻圹だけで進む物語ではありたせん
    序盀に珟れる酵母、途䞭で環境を倉える酵母、最埌たで発酵を進める酵母。それぞれが異なる圹割を持っおいたす。

    H. uvarum は、その䞭でも「発酵のはじたり」を考えるうえで、ずおも面癜い酵母です。

    次回は、花や果実ずの関係が深く、矎しい色玠を぀くる酵母、Metschnikowia pulcherrimaメチニコビア・プルケリマに぀いお玹介したす。


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    参考文献

    Albertin, W. et al. (2016). Hanseniaspora uvarum from winemaking environments show spatial and temporal genetic clustering. Frontiers in Microbiology, 6, 1569. DOI: 10.3389/fmicb.2015.01569

    Hu, K. et al. (2018). Wine aroma response to different participation of selected Hanseniaspora uvarum in mixed fermentation with Saccharomyces cerevisiae. Food Research International, 108, 119–127. DOI: 10.1016/j.foodres.2018.03.037

    Zhang, Z. et al. (2023). Wine aroma modification by Hanseniaspora uvarum. Food Chemistry, 20, 100930. DOI: 10.1016/j.fochx.2023.100930

    Martin, V. et al. (2018). Oenological impact of the Hanseniaspora/Kloeckera yeast genus on wines: A review. Fermentation, 4(3), 76. DOI: 10.3390/fermentation4030076

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    アメリカ圚䜏の研究者 × 子育おパパ。 家族ず暮らす海倖生掻や、研究ず育児の葛藀などを発信䞭。 海倖で働く・家族を支えるあなたに、共感ずヒントを届けられたら嬉しいです。

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