
『俺じゃない影法師』あとがき
こちらの企画に参加させてもらった。
今回のお題はこうだ。
第三者目線一人称のブロマンス〜BL小説
・主軸になる二人が一緒にいる場面NG❌
・視点キャラと主軸の2人のどちらか片方が一緒はOK⭕️
・電話、メールなどの通信手段を利用してのコミニケーションは可⭕️
・会話文にて「あいつら〜だよね』という話が出るのは可⭕️
・視点キャラの回想に登場するのはギリ可⭕️
・会話の盗み聞きも可⭕️
モブBLなるジャンルがあるかどうか、例によって知らないが、モブの一人称で書くということは、構造上はモブが主人公になるということだ。
しかし、モブとは主人公ではないことを指す概念なので、主人公になってしまったモブはモブではないのではないか。
この点に悩んでしまい、なかなか考えがまとまらなかった。
モブをモブのまま主人公にすることは原理的に不可能という結論に自分の中では至ったので、「どんなモブも、それぞれの人生においては主人公である」という、ある種のアンチテーゼのような方向でやらせてもらうことにした。
アイデアノートの中に、「学芸員と警備員の話」というメモがあった。
詳細はほとんど白紙の、シチュエーションだけのアイデアだ。花形の学芸員と、その美術館の警備員をしている目立たない男の恋愛を書こうと思っていた。
警備員は、失礼を承知でいえば、その施設でのモブである。RPGの、お城の衛兵に近い。「ここは〇〇の城だよ」と話すだけの役割(むろん実際はそうではない)。このモブを主人公にして、学芸員と警備員(この警備員は、だから主人公とは別の警備員、つまり同僚である)の物語を眺めるという話を書くことにした。
まだ書かれていない物語の、サイドストーリーを先に書いたようなものだ。
ちなみに美術館の警備員の仕事については、『メトロポリタン美術館と警備員の私』というたいへん素晴らしい本がある。今回、非常に参考になったので、参考文献として挙げておく。
佐伯と東山の物語において、後藤はモブであるので、ふたりの恋愛にとっては傍観者でしかない。しかし、すべての人間が、接点さえあれば、わずかにであっても影響し合うように、後藤の存在はふたりの関係にも若干の影響を与えている。そして後藤自身も影響を受けている。
モブBLというお題を、どこまでうまく消化できたか、出題の意図に添えていたかはわからないが、今回も楽しく書かせていただいた。特に、文字数が潤沢だったので、好きなだけ書き込みができたのが良かった。
だからといって、これしきの話に1万文字も費やしてよかったのか。もうお気づきかと思うが、僕は、だらだらくどくどと書き込むのが好きだ。そのように書くこと自体に快楽がある。読み手に負担を強いている可能性はあるが、プロではないので、合わない読者には読まれないだけと割り切っている。
それだけに、読んでいただいた方への感謝の気持ちは深い。いつもありがとうございます。
読んでいただいた方にとっても、ほんの少しでも、引っ掛かりのあるものであったなら嬉しい。
