
「もし恋愛小説家たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」by sanngo

飽きるまで
どうぞ、お暇な方は
お付き合いくださいm(__)m
ちゃっかり#シロクマ文芸部にも参加します♪
瀬戸内寂聴風
『子宮の湯切り』
秋の空に儚げに下限の月が、最後の時を刻むように上っておりました。
あの方との許されぬ恋に身を焦がしながら、私はその薄暗い月光が差し込む台所で、静かにお湯を沸かしておりました。
四角いプラスチック容器にお湯を注ぐ。
三分という時間は、業(ごう)の深き女にとって、あまりにも甘美で苛烈な拷問でございます。
やがてフタを剥がし、湯切り口から熱湯を落とすと、シンクからは白い湯気が立ち上りました。
ぽたり、ぽたりと落ちるお湯の一雫に、私は逃れられぬ女の業を感じ、胸の奥が疼くのを覚えるのでございます。あの方の愛に狂い、この熱湯の中で爛れていく私……。
漆黒のソースを絡め、立ち上る青のりの香りを吸い込みながら、私は子宮の疼きを押さえ、この背徳の麺を一口一口、噛みしめるのでございます。
「ああ……」

谷崎潤一郎風
『痴人の焼きそば』
ああ、ナオミが不器用な手つきでお湯を注ぎ、その愛らしい指先でフタを押さえている。
三分間、私は彼女の足元にひれ伏し、その美しい素足を見上げながら、麺が柔らかくなるのをじっと待っていた。
「ねえ、お湯捨ててきてよ」
ナオミの我儘な命に従い、私は恭しく容器を受け取ると慎重に湯切りをした。
あろうことか、私の手元が狂い、数本の麺がシンクの底へ滑り落ちてしまった。私は青ざめ、ナオミの靴を舐めるような心地で詫びを入れたが、彼女はただ「バカね」と冷たく微笑むだけだった。
漆黒のソースが絡まった麺を、ナオミが可愛らしい唇で口に運ぶ。
その口元に一筋残ったソースの跡すら、私にはこの世で最も美しき宝珠のように思えるのであった。

渡辺淳一風
『失カップ園』
男と女は、外界の喧騒から逃れるように、ひっそりとしたマンションの一室に身を寄せていた。窓の外には粉雪が音も立てずに舞っていた。
「お湯、入れちゃったわね……」
女が潤んだ瞳で呟く。その声には、もう後戻りはできないのだという、密やかな覚悟が滲んでいた。
「ああ。三分だ……僕たちの、三分間だ」
二人は互いの体温を感じながら、刻一刻と柔らかくなっていく麺の息遣いに耳を澄ませた。
四角い容器のなかで繰り広げられる、熱湯と乾いた麺の官能的な融合、いや葛藤かもしれない。それはまるで、長年連れ添った夫婦には決して味わえない、禁断の成熟へと向かうプロセスのようでもあった。
やがて男は、女の白い指先からそっと容器を受け取ると、静かに湯切り口を開けた。
ドロリと落ちていく白濁した湯。それは、二人が背負う倫理や世間の目を削ぎ落としていく作業に酷似していた。
「ソース、かけるわ……」
漆黒の液体が絡み合い、甘く濃密な香りが部屋いっぱいに満ちていく。
男と女は割り箸を分け合うと、まるで運命の毒杯を煽るかのように、静かにその麺を口へと運ぶのであった。
窓の外の粉雪は、いつの間にか、ぼたん雪に姿を変えていた。
「合鴨と三つ葉のお鍋が一番好きなの」
そう言っていた女の姿は跡形もなく消え、カップ焼きそばをすする音だけが、部屋に響いた。

こんな素敵な題材を与えてくれた恩子さん♡
ありがとう!!