
「もし推理作家がカップ焼きそばの作り方を書いたら」by sanngo

しかし昔から「続」や「2」は第一作めを
超えられないものです(笑)
私の火付け役、大好きnoter、恩子さんにお許しをもらったので、↓性懲りもなく書いていた物を(笑)
ありがとう、恩子さん♡

松本清張風
『疑惑のソースと麺』
昭和四十年初冬、中央本線の夜行列車で男が買い求めたのは、普通の駅弁ではなく、味気ないカップ容器に入った「即席焼きそば」であった。
湯を入れて三分。刻一刻と刻まれる時間は、まるで暗闇のなかで張り巡らされた緻密なアリバイ工作のようである。
三分後、男は給湯室の湿ったシンクの前に立ち、静かに湯を捨てた。
湯気とともに立ち上るほのかな麺の匂いに、男の目尻がわずかに下がる。ソースの袋を切り、割り箸で麺をかき混ぜるその動作には、長年の捜査で培われた無駄のない正確さがあった。
だが、男はまだ知らなかった。
湯切りのあまさが残した、器の底のわずか一滴の湯が、のちに巨大な欲望の歯車を狂わせる、決定的な「不自然な証拠」を示唆していることを。
ソースの味がその一点により、男が期待していたものよりも薄かった。線のように一筋残った麺をその一点の薄いソースに絡め、男は苦虫を潰したような顔で、すすった。

桐野夏生風
『OUT(湯切り)』
夜の二時。薄暗いプレハブの台所で、女は静かに湯を沸かしていた。
目の前にあるのは、安いフィルムに包まれた四角いカップ焼きそば。生活の匂いと、逃げ場のない現実がそこに詰まっている。
やがて、シュンシュンと音を立てる沸騰したやかんの湯を乱暴に注ぎ込み、三分。女は壁の時計を睨みつけながら、ただ無言で煙草に火をつけた。
ーー時間なんてものは、いつも自分に不都合な速さでしか流れない。
三分後、女は容赦のない手つきでフタの端をむしり取ると、湯切り口から熱湯をシンクへぶちまけた。ジョバジョバと音を立てて流れる湯気の中に、自分の惨めな過去が溶けていく気がした。そのとき、バンと激しい音を立てて、薄いステンレスのシンクがへこんだ。
ーー人生なんて、そんなものよ。ある日突然、アクシデントに見舞われるのよ。
漆黒のソースを絡め、冷めた目をしたまま麺をかき混ぜる。
「……食うしかないのよ、どうせ」
女は割り箸を割ると、生き延びるためだけに、その濃い味付けの麺を口の中へ押し込んだ。

横溝正史風
『八つ首村のカップ焼きそば』
信州の山奥、深い霧に包まれた八つ首村。その旧家・犬神家に伝わる奇妙な遺言状が開示された夜、事件は起きた。
土蔵の冷たい畳の上で倒れていた男の傍らには、異様な品が残されていた。
四角いプラスチックの容器……そう、カップ焼きそばである。
「よしっ、分かったぞ!」
雀の巣のようなボサボサ頭を掻きむしり、着物の懐から手ぬぐいを取り出した金田一耕助が、興奮気味に叫んだ。
「警部さん、見てください! お湯を注いでちょうど三分……フタの角にある湯切り口が、何者かの指によってむごたらしく引きちぎられている。そしてこのシンクに捨てられた白濁した湯……これはただの湯切りではありません。犯人は、この三分という空白の時間を利用して、密室から姿を消したのです!」
わずかに残るソースと青のりの匂いが、暗い土蔵の中にどこか怪しく、血生臭い余韻を残していた。
「それにしても、仏さん、最期の晩餐のカップ麺、食べられなかったんだな」
金田一耕助は、そういうと再び帽子を被り、土蔵の外へ飛び出して行った。



この後は砂肝の串、梅しそとんかつなどが
出たけど、
ひたすら飲んで食べてたので、写真なし(笑)