
多色プリントで色移りを防ぐパージ設定の落とし穴
3Dプリンターで複数の色や素材を扱うプリントは、まるで魔法のような体験です。単色プリントでは表現できない造形物が目の前で形になっていく様子は、何度見ても飽きません。ただ、実際にやり始めると避けて通れないのが「色の混ざり」という壁です。
最近、以前から温めていた多色構成のモデルを印刷したときのことです。パージ量、つまりノズル内の古いフィラメントを押し出す量を「まあ、このくらいあれば大丈夫だろう」と高を括って設定しました。結果は無惨なもので、白の中に混じった青の筋が、まるでインクをぶちまけたかのように目立っていました。

あの時、僕が見落としていたのは「素材の粘度」と「ノズル内の滞留」に対する理解です。単にパージするだけでなく、ノズルの形状や溶融の特性によって、古い樹脂が意外としぶとく残る場所があることを無視していました。
失敗した原因は、単純な距離ではなく「吐出速度」にありました。パージを早く済ませようと焦って吐出速度を上げると、ノズル内で乱流が起き、古い色が混ざりきらずに排出され続けていたのです。
立て直しのヒントは、実験的なアプローチでした。まずはパージ量を標準設定の2倍に増やし、吐出速度をあえて通常のプリント速度の半分、秒速15mm程度まで落としてみます。これで改善が見られないなら、次はパージ温度を5度だけ上げて粘度を下げ、完全に溶け切った状態で押し出す。このプロセスを繰り返したことで、ようやく混ざりけのないクリーンな切り替わりを実現できました。

今なら分かる教訓として、多色プリントの信頼性は「パージの丁寧さ」に全て集約されると言い切れます。特に異なるメーカーのフィラメントを混ぜる場合は、熱膨張率や溶融温度が微妙に違うため、設定の共有は禁物です。
僕が現在、新しいフィラメントを試すときは、いきなり本番の造形には入りません。必ず「カラーチェンジテスト用の小さなタワー」を印刷して、何ミリメートルのパージで完全に色が切り替わるかを先に確認しています。
また、無視できないデメリットも存在します。多色プリントはどうしてもパージ量が増えるため、廃棄フィラメントの量が馬鹿になりません。環境への配慮という面でも、コストという面でも、無駄なパージを削ぎ落とす「適正値の見極め」が重要になってきます。
最後になりますが、信頼できない格安のフィラメントや、出所が不透明な素材を多色プリントに混ぜるのは避けるべきです。熱特性が極端に異なる素材同士がノズル内で固着すると、最悪の場合、ノズル交換が必要になります。せっかくの造形時間を台無しにしないためにも、素材の品質にはこだわりを持ちたいところです。