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【読書記録 -199】幸腹な百貨店

    落ち目の百貨店が舞台の物語

    Audibleで『東京バンドワゴン』を聴き終わって、次をどうしようかと思案していた。通勤のお供が欲しいからねえ。

    『東京バンドワゴン』は、以前からタイトルが気になっていて、読んで(聴いて)みたらホームドラマ系だったって感じだった。

    が、思っていた以上に面白かったので、次もホームドラマ系の作品を選んでみた。それが『幸腹な百貨店』だ。

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    本作は、落ち目の百貨店が、若手社員たちの奮闘や地域の祭り、トレーディングカードなどをきっかけに活気を取り戻していく物語だ。

    本作においては、百貨店の店舗と本部との関係などが精緻に描かれているが、それと同じくらい料理の描写に力が入っていたように感じた。百貨店部分では、店舗の表現だけでなく従業員の行動や休憩までも。料理部分では、食材や調理法だけでなく、器や食べ方まで細かく描かれている。それはおそらく著者の取材力の高さなんだろう。

    主人公は高橋伝治という52歳の男性。かつての百貨店の繁栄を知る管理職だが、現在の状況には半ばあきらめ気味だ。しかし、当初は反抗的に見えた若手社員たちや、モチベーションを失っていた店長たちが、いろいろなきっかけによって動き始め、結果的に地域を盛り上げていく。

    そんなストーリーの中で、伝治は(主人公的に)我武者羅に奮闘するという感じでもなく、超人的なリーダーシップで彼らをまとめ上げるという感じでもない。半歩下がって彼らを支える役回りだ。

    物語の案内係を誰にするのか

    『東京バンドワゴン』では、幽霊のサチがストーリーテラーを務めていた。『ノルウェイの森』はワタナベの体験と心情を中心に物語が進んでいく。そして、本作『幸腹な百貨店』では、実際に改善活動を推し進める中心人物ではない・・・・伝治の視点で物語が進んでいくのだ。

    物語には読者を案内するアテンダントが必要だ。そして、誰をアテンダントにするかによって、その小説の印象は大きく変わる。

    どこの百貨店にもメインエントランスのすぐ近くにインフォメーションが置かれているものだ。そこにはきちんと制服を着た女性スタッフが座っていることが多い。

    そう考えると、本作のアテンダントは52歳の高橋伝治より、古参の客から「堀内百貨店のマドンナ」と呼ばれる花村瑠衣のほうが適任だと判断してもおかしくなかったように思う。

    彼女が中心となって百貨店を変えていく物語であったとしても十分に魅力的だったと思うし、彼女をサポートするグルメな元上司として伝治を置くこともできたはずだ。しかし、著者は伝治をアテンダントに選出し、瑠衣を「伝治をサポートする優秀な元部下」というポジションに置いた。

    それは、バブル期の繁栄を知る50代の男性をアテンダントにすることによって、昔と現在の対比を描きやすかったのかもしれないし、ありがちな「キャリアウーマン奮闘記」的な展開にしたくなかったという理由だったのかもしれない。

    そのあたり、著者の解説を紐解いてみたいところだったが… 著者(秋川滝美)による本作の創作意図について詳しい情報が見つからない。それどころか、経歴や性別さえも。

    ああ、ちょっと残念だ。
    伝治をアテンダントに据えた理由が知りたかったなあ。

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