
この人たちを同じ塔に住まわせたのは誰ですか?
空に原稿用紙が舞っている。
そこに住む人々は
言葉を積み上げ、
創作の塔を築いていった。
そして今日。
一人の男性が、
手帳に書いた願望を、
つぶやいた。
「サウイフモノニ
ワタシハナリタイ」
すると、
元教師だったという男性が、
「いいですか?
人という字は、
人と人が支え合って
立っているんです」
そう言うと、
長く伸びた髪を耳にかけた。
そこへ、
ひとりの男性が口を開いた。
「自分は人間社会に馴染めず、
ずっと恐怖を抱えながら
生きてきました。
私は、
恥の多い生涯を送って来ました」
それを聞いて、
「そうだよね。
いつの時代だって迷うし、
自分を好きでいることだって難しいよ。
だって、にんげんだもの」
みつをが言った。
今度は、
一人の女性が、
「そうよ。
私も自分に言ったことがあるの。
だって、なんでもかんでも
時代のせいにしたら、
わずかに光る尊厳の放棄でしょ。
自分の感受性くらい
自分で守れ、バカ者よ」
そう言って、
いつも自分を戒めてるの。
その言葉に、
ひとりの女性が頷いた。
「わたくしは、
元始、女性は実に太陽であった。
そう思っております」
禅を組み、
静かに言った。
そして。
一部始終をだまってきいていた
女性が口を開いた。
「みんな違って、みんないいのよ」
その一言で、
全員が納得した。
夕暮れ。
塔に明かりが灯った。
庭園にある知識の泉から、
言葉が水脈をたどるように
次々と現れる。
その様子を見ていた猫に、
名前はまだない。
空から降ってきた原稿用紙は、
まだ降り続いている。
後世まで残るとは、
こういうことなのかもしれない。
出典
宮沢賢治
「雨ニモマケズ」
TBS
『3年B組金八先生』
太宰治
『人間失格』
相田みつを
『にんげんだもの』
茨木のり子
「自分の感受性くらい」
平塚らいてう
「元始、女性は実に太陽であった」
金子みすゞ
「私と小鳥と鈴と」
夏目漱石
『吾輩は猫である』