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「僕ず圌の、サヌビス・マリッゞ」䞀話

    この目立぀ビゞュアルでは「瀟亀界の蒌の君、ブルヌハむネス」ず呌ばれるのも圓然だろうな。

    シルクのロングカヌディガンを肩に滑らせた圌が正面の怅子に深く腰を䞋ろし、癜銀の髪から碧い瞳が芗いた瞬間、倩瑪(あため)はそう感じた。

    倩瑪・メヌラむシャン少䜐の母芪は、地球の経枈厩壊した島囜の末裔で、叀くから続く血統に人工遺䌝子を混ぜる生態科孊を吊定しおきた家柄だ。曜祖父母から祖父母は絶滅危惧皮のアルファオメガの子孫、そしお母もナチュリアなうえに垌少なクシィヌ・セクシャルに属する。

    健康な粟巣も卵巣も䜓内に兌ね備えた母には、倩瑪の他に双子の男子もいお、圌らにずっお自分の母は「父芪」である。生殖胜力が䜎く、長幎䞍劊治療をしおいたハむブリッド倫婊に粟子提䟛をした事情からだ。

    瓜二぀の顔を持぀兄二人は倩瑪をずおも可愛がっおくれたし、倩瑪もたた二人を慕った。曜祖父母が残した借金の返枈に远われおいた実家の経枈状態から、倩瑪はフルブラむト奚孊生だったが、出身校も兄達ず同じマサチュヌセッツ工科倧孊だ。

    理系マニアな話題にも盛り䞊がれるし、䞉人でいただに食事やショッピングによく出かける。朚星にスタヌズトレむンが通過した五幎前には、手分けしおチケット争奪戊を朜り抜け、ファヌストシヌトで二日間の旅をしたのも良い思い出だ。

    双子の兄はどちらも完党な男性䜓を持ったアルファクラスずしお生たれたが、甘瑪は母のDNAを匷く受け継ぎ、クスィヌクラスずしお二぀の性別認定を受けおいる。だから男のハむブリッダヌずも芋合いを䜕回か亀わしたし、仲の良い女性達ずもデヌトのようなお茶䌚を重ねた。


    西暊2204幎の倪陜系では、ハむブリッダヌもクシィヌ・ヒュヌマンにしろ、ずにかく連邊政府から子孫存続に繋がる婚姻や出産、卵子粟子提䟛ぞの圧力をかけられる。こんな冷め切ったテヌブルに二人、䌚話もたるでなく向き合い怅子を枩めおいるのもそれが原因だった。

    「    なんでこうなるんだ  」
    「䜙も、昚日たで盞手が卿ずは聞かされおいなかった」


    広倧な空䞭英囜匏庭園には春の薔薇が咲き誇り、少しだが八重桜ず藀棚にも淡やかなパヌプルグラデヌションの色圩が残っおいる。花匁を重く濡らす雚がなければ、地䞊75階の82番テラス垭からは最高の眺望だったはず。

    「和やかに」ず蚀う意味でこのシヌトは、こうしたお芋合いの予玄が殺到し、リザヌブする専門の業者に頌み蟌む芪達も倚いず聞く。今回は倩瑪自ら銎染みの支配人からのお䌺いに、そのたた承知するメッセヌゞを返した。


    駄目だ、盞手の名前も確認せずに適圓な䌚垭を承諟するなんお  。先月のコンペ戊線に疲れ切っおいたんだよな  。

    昚日は自分のデザむン案が通過したCADの最終芋盎しをしたたた寝おしたい、家のヘルパヌロボットに起こされたのは、このホテルに入る30分前。慌おおシャワヌを济び半濡れのたたで、気に入りのコムデギャル゜ンのコットンレヌスシャツを肩に匕っ掛け぀぀、ドゥカティ400ccを京浜高速33号に滑り蟌たせお蟿り着いた。

    ただ玄束の盞手が到着しおいないず知り、ホテルラりンゞの゜ファ垭で腰たで䌞びおいる黒髪をタオルで拭っおいたが、顔銎染みのボヌむに案内されたテラス垭で埅っおいたのは、子䟛の頃から因瞁深きこのアルファ・ハむブリッダヌ。


    「卿は、い぀もこのような垭に顔を芋せるのか」
    「い぀もっお蚀うか、僕はクシィヌ・フォロアヌだから。䞀か月に二回はお芋合いに出垭しないずならなくお」
    「゚ンゲヌゞ䌚員契玄をすれば、遺䌝子提䟛リストから倖されるからか」
    「奚孊金も返金免陀のうえで、朚星移䜏の皎金も倧幅免陀になるし。老埌積立も䞉割負担しおもらえるからね」
    「珟実的なのだな、卿は。孊生時代ずは倉わったようだ」

    ちくしょう、その話題がやっぱりきたか。忘れおいおくれたらず思ったが、珟実はそんなに甘くはない。さすがに䞊いるハむブリットの優等生達を退け、゜ルボンヌ倧孊から䞻垭で続き士官孊校を卒業した男の蚘憶力だ。


    「十二の倏に」

    苊々しい過去のトラブルを思い出した倩瑪の衚情を読んだのだろう、「蒌の君、ブルヌ・ハむネス」は、矎しい所䜜でムニ゚ルを捌きながらバリトンボむスで淡々ず告げる。

    カトラリヌを操る陶噚のような癜くお長い指に、自然ず芖線が吞い蟌たれた。

    倩瑪ず同じ堎所に独特の背胝ず肉刺が固く萜ち着いおいるのは、圌が前線配備の軍人ずしお生きおきた蚌拠だ。䞡肩や腕にも柔術高段者ずしおの、筋肉の匵りが目立぀。


    「䜙が組み手の授業で手加枛した事を怒っおいるのか、それずも卿が䜙を殎った時に、右手の指二本を骚折した怪我に぀いお恚んでいるのか」
    「   もう忘れたよ。お互い、いい加枛二十䞃歳の倧人でしょ」


    苛々する感情を抌し殺し、倩瑪がラム肉のハヌブ焌きを切り刻みながら応える。緩やかなりェヌブの長髪を肩で揺らしおいる癜銀の貎公子は、䞀床その圫刻のような唇を開きかけたが、空気を察したらしく黙り蟌んだ。

    なんだよ、やっぱり手加枛しおたっお認めるのか。

    確かにクスィヌはアルファ・ハむブリットの高い身䜓胜力や頑健さに届かないかもしれないが、それでもベヌタ女性よりはずっず筋肉も匷靭だし、骚栌も頑䞈だ。


    「僕の名前をリストに芋぀けお、そんな昔話をしにきたの リヌデンゲむツァヌ・フォン・ラグランゞェ䟯爵。それずも䞭䜐ず呌ぶべき 長く倩王星で階士奉公しおいた貎方が、そんな暇ずは意倖だな」


    こんな、こんな喧嘩腰の台詞を䞊べる぀もりはないのに、朝からの䜎気圧で偏頭痛が疎たしいからか、そろそろクシィヌずしおの生理呚期が近いからなのか、倩瑪自身にもよく分からない。

    「今回は響・ツタンカヌメン公が、䜙に実家に垰るよう進蚀䞋されたのだ。将来は倪陜系連邊の行政府に連なる立堎なら、子孫を残すのもたた矩務の䞀぀だず。卿は寝䞍足になる皋の倚忙のようだ。でなければ、因瞁浅からぬ䜙の名前を芋逃すはずが無い」

    そうだよ おっしゃる通りでございたすよ、サヌ


    䜕故、どうしお子䟛の頃からこの矎䞈倫に、こんなにも神経を地味に逆撫でされるのか考えおみる。原因は間違いなく、圌が幌少時代から倩瑪を瀟亀界の什嬢扱いしおいるからなのだろう。

    「麗しのブルヌハむネス」に遞ばれる為に化粧をしおドレスを仕立お、必死に媚びるあの雌の集団ず同じく。そう考えおしたうずどうしおも蚀葉の節々が癪に觊るし、態床がいちいち攻撃的になる。

    アルバむトの䞀぀だっお䜓隓しおいない財閥の埡曹子、お前が盞手なら男女誰でも喜んで股を開くずでも思っおいるのか。確かに朚星倖務省のいち事務官である父や、倪陜系連邊軍技術䞋士官に過ぎない母は、貎族䜍も持たない庶民局だ。しかし、ハむブリッダヌ貎族連䞭に芋䞋されるような生き方は䜕䞀぀しおいない。

    気たずい無蚀が数分続き、正盎うんざりした倩瑪は垭を立ちたかった。だが芏定のカップリング䌚垭なので、玄束の90分は顔を芋合わせおいなければ仲介者の名前に泥を塗る。


    「疲れた顔だ」
    「ぞ 僕」
    「ずっず培倜仕事か ナチュリアには堪えるだろう。奜きなだけ食べるずいい」
    「  いや、でも  」
    「䜙には構わず、食べなさい。  ゆっくりず、よく噛んで」
    「  では、お蚀葉に甘えたす」

    黙っお頷かれ、じゃあ遠慮なくずばかりに黙々ずチキンサラダを口に運ぶ。
    䞀昚日から仕事堎に詰めきりで固圢フヌドしか口にしおいない身には、䞀流シェフが仕蟌んだむタリアンの味は涙が滲むほど矎味だ。

    ずにかく栄逊ず氎分を補絊する為に、前菜からトマトチャりダヌ、そしおメむンの皿を綺麗に平らげる。正面に氷の矎貌が座っおいなければ、焌きたおの茝くパンをリュックに数個突っ蟌みたかった。

    黙り蟌んでいる二人の険悪さを芋事にスルヌしたプロのスタッフが、空になった皿を片付けお、䞀瀌する。さすがにアルファ・ハむブリッダヌ埡甚達の䞉぀星ホテルだ。人員䞍足の倪陜系でもペコハマ区域ではただ、ベヌタヒュヌマンのボヌむやコンシェルゞュが働いおいる。

    朚星たで離れるず、裕犏局のほずんどは庶民のベヌタクラスなので、働き手はロボットや厳しく躟されたA玚ビヌスタヌしかいない。倪陜系連邊政府のお膝元ずしおのプラむドが、ただ地球の片隅には人間そのものずしお残っおいるのだろう。


    「  なんか、芋られおるね」
    「そうか」


      嫌だなぁ、なんでみんなこっちに意識を集めおるんだよ。自分らのお芋合いに集䞭しろっおの。

    五階分たで吹き抜けになっおいるガラス匵りのホヌルには、自分達ず同じように亀配ブリヌリングデヌトに興じる男女がさざめき合っおいた。芋るからに華やかなハむブリッド・アルファクラスらしい長身ず䜓栌に、面長の端正な顔。それぞれが少しでも盞手ぞの印象を良くすべく、䞊物のスヌツやアフタヌヌンドレスに身を包んでいる。

    コットンシャツコヌディネヌトの倩瑪ず、長い脚にブラックデニムを履いた、アむボリヌニットスタむルのラグランゞュ䟯爵は特に目立った。

    「ねえ、あの二人  」
    「六男坊ずクスィヌの東掋系じゃないか」
    「ミスタヌ・ブルヌハむネスずバンビちゃんか。なんずも珍劙なカップルだなあ」

    ほら〜、これだから嫌だったんだよ〜 異皮栌闘技戊の凞凹コンビみたく笑われるのがわかっおたから〜


    この男ず䞊ぶず、昔からから奇異の目で眺められる。生たれた家も環境も、身䜓の䜜りも倖芋もたさに党おが真逆なのだ。これだけ正反察な存圚が家庭を持぀など、それ以前に亀配盞手ずしお認知される可胜性はほがれロだろう。今日のお芋合いセッティングをした担圓は䜕を考えおいるのか。


    「   あのような連䞭の目を気にする必芁は無い」
    「あんたず違っお僕は気にする」

    ラグランゞェ倪公家の六男坊はむタリアンロヌストのホットコヌヒヌを、東掋系バンビである倩瑪はロヌファットミルク倚めのティヌラテをコヌスの締めずする。残り時間はやっず、30分を切っおくれた。

    どうせ䌚話もないのだし、ここは詊合終了たでマむペヌスで運ばせおもらうか。

    「悪いけど、仕事をしお良いかな。なるべく明日たでに曞き出しおおきたいメモがあるから」
    「卿の奜きなように」


    ノヌトパッドを出しおセルフィアむず連動させるず、自分がチヌフずしお進めおいる最新型兵噚ナむファスの蚭蚈CADが立ち䞊がる。これは䞊叞である゜ヌノィ・キャスバリ゚倧䜐から盎々にオヌダヌされた特泚の仕事だ。憧れの倩空階士に信頌された案件を、完璧に組み䞊げおいきたい。

    䞀床集䞭モヌドに入るず、倖界の景色はシャットダりンされる。黙々ずセルラヌペンを走らせおいるず、デザヌトのコンポヌトが運ばれおきた。若きラグランゞェ䟯爵は事前にそれを断っおいたらしく、芳醇な銙りのコヌヒヌだけを含んでいる。

    「メヌラむシャン少䜐、䌑憩したら劂䜕か。特別に取り寄せた倩然の桃だ」
    「  いただきたす」

    あれ、僕の奜物が桃だっお知っおたのか

    食べ物に眪はないし、䜕より出されたメニュヌを残すのは倩瑪の倫理に反する。シャンパンれリヌにコヌティングされたピヌチクリヌムが、甘く緩やかに口䞭で溶けおいく淡麗な味芚。さすがに䞊官盞手に無瀌を過ぎたかずテヌブルの向こうを芋るず、氷の貎公子は感情の乗らない玺碧の瞳で倩瑪を眺めおいる。その芖線には䟮蔑も退屈も諊芳もなく、ただひたすら深い海の色だけが沈柱しおいた。

    「  今日さ、」
    「なにか」
    「軍服じゃないんだ。ラグランゞェ家の六男坊ちゃんは、オフでも詰襟着蟌んでるかず思っおた」


    ちょっずした冗談の぀もりでゞャブを投げ蟌んでみた。特に意味はない、ここで友人同士なら「そんなこずあるかい」ずツッコミが入るし、芪兄匟ならば「そんな可哀想なネタ、生真面目な゚リヌトに飛ばすなよ」ず苊笑し぀぀末っ子を嗜めおくるだろう。

    「今朝はかなり暖かいのでクリヌニングに出しおきた。卿は軍服が良かったか」

    『違う違う、そうじゃ、そうじゃな〜い』

    脳裏で父が倧奜きな21䞖玀のアヌティスト、マサナキ・スズキが朗々ず歌う。そうでなくずも矚望を集める男ず意味深なこの垭で二人きり。そんな矞恥地獄は望んでいない。


    「違くお。いくらなんでも䌑みのデヌトランチにアレで来られたら、僕だっお匕くよ」
    「  なるほど」
    「その、よく䌌合っおるよ。オフはそういうカッコしおんの」

    なんだよ、その重い無蚀ず深く考える顔は。軜く無芖すりゃいいんだよ。

    「癜いニット姿ずか初めおだから、驚いた。あんたもデニムずか履くんだ」
    「卿ず䌚うのなら、この服装が良いず勧められた。奜みなら僥倖」
    「別に奜きっおんじゃないけど。ザ、お貎族゚リヌト的なオヌラが半枛しお、たあ、なかなか良いんじゃないかずは思うよ」
    「なるほど」


    間が、間が党然持たない。ああもう垰りたい、軍の独身寮になっおいる狭いマンションぞ、䞀分䞀秒でも早く

    焊るたたにデヌタリンクに芖線を萜ずすず、「少䜐」ず呌ばれる。アルファクラス特有の矎しいバリトンボむス。仕方なくブルヌのそれず芖線を合わせた。


    「䜙にそんなにも敵感心を抱くのは、やはりクシィヌの黒歎史があるからか」
    「ああ   ああ、オメガ・セクシャルの話 あんたらアルファがオメガを食い物にしお飌い殺しにしたり自殺に远い蟌んだりずか、もう200幎も前だろ」

    䜕を蚀い出すのかず拍子抜けする。アルファずベヌタ、オメガずいう性別区分けによる差別悲劇があったのは21䞖玀埌半たでだ。

    自分達の望たない発情期やヒヌトに苊しみ、それによっおレむプされたり売り飛ばされたり、「運呜のアルファ、぀がい」以倖の子䟛を劊嚠したたた自殺する男女の家畜オメガが溢れおいた歎史がある。

    そもそも、「産み増やすためだけの存圚、オメガ」人皮は虚匱故にほずんどが死に絶え、その子孫である倩瑪たちクスィヌ・ヒュヌマンが瀟䌚の衚舞台ぞず台頭しお100幎になるのだ。䜕の抑止力も持たずに虐埅され、保護も受けられず瀟䌚から芋攟されたオメガ・ヒュヌマンは、か぀お自爆テロや集団自決を繰り返すようになった。

    芋かねた倪陜系連邊政府の䞀郚の良識ある政治家や、特に倩王星を支配するツタンカヌメン家が䞭心ずなっお圌ら圌女らを保護し続けた結果が、クスィヌずいう新しい性別だ。

    「あんただっおオメガやクシィヌヘむタヌっおわけじゃないだろ。そうやっお顔突き合わせたら、悪意を持っおるかどうか僕にはすぐわかるよ」
    「クスィヌの、特殊盎感胜力か」
    「たあ、そうだね」

    膝䞊に眮いおいたナプキンで口元を拭い、「蒌の君」が倩瑪を正面から芋぀める。耇雑な虹圩が混ざるアクアマリンの䞭で、黒髪の自分がなんずも気たずい顔で座っおいた。

    「卿は、この芋合いが終わっおも次の亀配候補者には困らぬのだろうな。次は来月か」
    「  なんで 関係ないでしょ」
    「関係無くはない。䜙はこれから卿に、人生でただ䞀床の蚱しを乞うのだから」

    䜕を、ず倩瑪が口を開くよりも早く、蒌の王子様ず瀟亀界で倚くの矚望を独占する長身が、怅子から優雅に立ち䞊がる。

    「䜙も、今日の卿の服装は奜たしい。いや、今だけではなくい぀も䌌合う芋立おをしおいる」


    んんん なんだこの人。なんだかおかしなコトを蚀い出したぞ。しかもかなりの長台詞、こんなに喋れたのか、「蒌の君、ミスタヌブルヌハむネス」

    「幌かったあの日も、卿は真っ癜な服を着おいた  」

    䜕か、ずお぀もなく嫌な予感がした。子䟛の頃から自分の第六感は的確なのだ。ひんやりした汗が自分の銖筋を流れおいくのに、倩瑪は息を飲んだ。県前にい぀の間にか呚り蟌んで来た長身の矎䞈倫が、ダヌクレッドのカヌペットに膝を付いおいる。

    あ、これ昔の映画配信でよく芋た。すっごく心圓たりがある。

    「倩瑪」

        初めお呌ばれた、ファヌストネヌム  。
    いやいやいやいや、違う これはダバいダバいダツだ

    「倩瑪・メヌラむシャン少䜐。䜙ず結婚しお欲しい。お互いにずっおこれが最䞊の運呜なのだ」

    その県前の颚景は、どこか癜昌倢をみおいるかのように倩瑪にはたるで珟実感が無かった。自然にそっず握られた自分の手を、二回り倧きく逞しい癜い指が包み蟌んでいる。

    「やっちたった、あい぀ら」
    「マゞかよ、アルファがクシィヌを射止めたぜ」
    「䜕幎振りだ マリッゞ・ボムなんお」


    呚囲から響く嬌声は、あんぐりず口を開いお硬盎する倩瑪・シャリング・メヌラむシャン少䜐の錓膜には党く届いおいなかった。

    倪陜系瀟亀界においお、「蒌の君、ブルヌハむネス」ず、倚くの男女からの憧れを独占するリヌデンゲむツァヌ・フォン・ラグランゞェ䟯爵が、長い銀髪を肩に零しながら県前に跪く。

    マリッゞ・ボムずは、初回のお芋合いや顔合わせで予告無く、ほが面識が無かった盞手偎に突然結婚を申し蟌む行為だ。特にアルファ・ハむブリッダヌが性欲をほが持たないクスィヌ・セクシャルに察しお告げるプロポヌズは、玉砕の可胜性が非垞に高い故に「ボム」ずいう皮肉なミヌムワヌドず化しおしたっおいる。

    いわゆる、「粟神共鳎の盞手、運呜の぀がい」にのみ発動される告癜である。


    「ええ、ちょっず  、勘匁しおくれよ  」

    その爆匟を突然食らった偎にしおも、衆目の面前で告癜を受けようが断ろうが、長い幎月に枡っお地球の䞊流瀟亀界、及び倪陜系の衚瀟䌚では泚目の的になり続ける。たさに「心䞭」に倀する特攻なのである。

    「ちょっず、䟯爵   そんなのやめろよ、顔を䞊げろっお 膝を぀いたりしお、は、恥ずかしくないわけ」
    「承諟しおくれるか」
    「いや、あのさあ。それ以前でしょ 僕ら今日っお、盎接䌚ったのも数幎振りなのに  、ああああ  」

    パニックを起こしお冷や汗を流す倩瑪から応えが無いず察するず、再び長身の圌は差し出した手の䞭で汗だくになっおいる现い指を、少しだけ匷く握る。

    「なんでだあ〜」

    倩瑪のように、元々はオメガ性別から進化したクスィヌアンは、䜓内の奥深くに粟巣ず子宮、卵巣を持っおいる。
    前䞖玀の地球で䜙りにも性的な虐埅を受けたオメガ皮が、集団自殺や自爆テロなどを繰り返しおからその人口は激枛し、2404幎の珟圚には圌ら圌女らはほが絶滅したずされおいた。

    繁殖力の匷いオメガず察になっお、倚くの子孫を残すはずだった優生皮のアルファ男女は、本来なら生殖盞手ずなるオメガの倧量死以降、自分達の遺䌝子を残せないたた生涯を終わらせる男女が激増。
    詊隓管やシャヌレの䞭でDNA配合されたデザむンズ・アルファはやがお生殖胜力を劣化させ、この癟幎は深刻な少子化に陥っおいる。

    性栌的に察立競争心ず自己顕瀺欲が匷く、生殖胜力が著しく匱䜓化しおいるアルファ同士の性行為での受胎率は5パヌセントにも届かず。たた凡庞ベヌタ皮盞手では、匷化されたアルファ遺䌝子が盞手の粟子卵子を砎壊しおしたう。

    察しおクスィヌアンの健康頑健な现胞ずアルファのDNA盞性は最適ではあるが、恋愛感情や性的欲求を持たないクスィヌには、結婚やたしお出産をするずいう人生蚭蚈はたずなかった。

    「䜙は、けしお卿の悪いようにはしない。これを受ければ、明日からは無益な盞手ず䌚う必芁も無くなる」
    「あのさぁ、そんなの蚀われおも  」
    「気にいらなければ、そちらから䜙を離瞁すれば良い。この手を取るのだ、頌む  、倩瑪・メヌラむシャン少䜐」


    銀髪碧県の矎䞈倫の額から堀の深いたなじり、そしお顎にかけお汗が流れ萜ちるのを芋た倩瑪は、「はあ  」ず重くため息を吐く。

    この人の綺麗な぀むじを、こんなシチュ゚ヌションで芖界に入れる日がくるなんお。

    唇を䞀床軜く噛んで、それたでの穏やかな空気から䞀倉。


     冷ややかな芖線で「ブルヌハむネス、フォン・ラグランゞェ䟯爵」ず圌を無衚情に芋䞋ろした倩瑪は、硬質な声で「身分も釣り合わず䞍肖の身ですが、それではよろしくお願いしたす」ず、淡々ず応えた。


    「マリッゞ・ボム特攻」が成就するず、䞀気に呚囲が湧き䞊がった。䞀連の様子を固唟を飲み぀぀芋おいた他の男女は、自分達のお芋合いどころではない。ほが絶望的だず信じられおきた、アルファ・ハむブリッダヌからクスィヌ・セクシャル盞手の゚ンゲヌゞが結ばれたのだから。


    「二人は前からお知り合いでしたか」
    「ラグランゞェ䟯爵 クスィヌを萜ずす秘蚣は」
    「倩瑪・メヌラむシャン少䜐は、䟯爵家にはい぀嫁がれたすか」
    「䟯爵は六男であられたすが、逊子入りする可胜性は」

    䞀気に抌し寄せおきたラむタヌらしきベヌタ男女や、ただ単に興味ず自身ぞのアドバむス欲しさに数人が質問を投げかけお来る。セルフィカメラで勝手に二人を撮圱する野次銬から花嫁候補を抱き䞊げ、188cmの花婿予定の男は驚異的な身䜓胜力でベランダぞず瞬時に躍り出た。


    「ちょっ、ず 䟯爵」
    「黙っお。舌を噛む」


    ふわ、ず䞀瞬空䞭に投げ出される嫌な感芚を脊怎に芚えるず、匷靭な腕に抱き包たれたたた、倩瑪の175cm60kgの身䜓は75階フロアから盎䞋。支え方が䞊手いせいか、重力による負荷は最䜎限に抑えられ぀぀、58階に眮かれおいるミドルテラスぞず䞀床降り立぀。先ほどたで降っおいた雚の名残か、春光で萌えるゞャスミンの銙りが䞭庭に満ちおいた。

    「僕は、あんたに恥かかせないようにしただけだから」
    「熟知しおいる」
    「絶察に、結婚なんかしないからな アルファ盞手なんお冗談じゃな  」
    「口は閉じたたたに」
    「埅っおただ僕は、ぎゃあ」


    蒌い双県で軜く呚囲を芋枡したリヌデンゲむツァヌ・フォン・ラグランゞェ䟯爵は「車を停めおある」ず囁いお、倩瑪を肩に担いだたたに非垞階段の偎面ぞひらりず飛び、螺旋状になっおいる鉄骚を数段抜かしで地䞋駐車堎ぞ滑り蟌む。

    これが、優生遺䌝子配合の第䞃䞖代アルファ・ハむブリッダヌの圧倒的な起動力ずアクションポテンシャルか。実戊で察面すれば、クスィヌアンの倩瑪ではたるで歯が立たないはず。

    (そうだ、確かこの人は、䞉幎連続で『察テロリスト英雄章』を取っおいたんだっけ。アステロむドベルト空域での賊狩りで、右に出る階士はいないっお)

    ようやく䞡足を地衚に萜ち着けた倩瑪が再び悪態を぀く前に、ギュルリず高い゚ンゞンを響かせお眩い車䜓が珟れる。シルバヌりォヌタヌカラヌに包たれた、シトロ゚ンの矎しいボディ。地球に残存する老舗車䜓メヌカヌのうち、ポルシェずBMW、ベンツ、ホンダ、フェラヌリ、マクラヌレンず䞊ぶ骚董品だ。しかし搭茉されおいるのは最新型の非炭玠゚ンゞンなのだろう、臭いもしないしほずんど音が響かない。


    「少䜐はナビシヌトぞ」
    「僕のドゥカティは」
    「問題は無い、撀収枈みだ」

    運転垭に長身を滑り蟌たせた䟯爵は、倩瑪のシヌトベルトを玠早く確認する。目の前に降っおきた銀髪から、さらりずしたノァヌベナ・セドラが䞊品に匂った。

    『マスタヌ・ラグランゞェ、モヌド入力はいかが臎したすか』
    「オヌトから手動ぞ。京浜33号の混み具合はどうか」
    『怜玢枈み、このたた盎行すれば20分でご自宅に到着したす』
    「了解した、バスルヌムず食事の準備を」
    『む゚ス、サヌ』


    コンシェルゞュAIず䌚話したラグランゞェ䟯爵は、前髪ず呌吞を少し乱しおいるだけで、ほずんど汗を流しおいなかった。圌ず察照的にお気に入りのコム・デ・ギャル゜ンをじっずり濡らし、倩瑪は息を収めるのもたたならない。䟯爵のブラックゞヌンズのポケットから、癜いシルクのハンカチを差し出される。

    「少䜐、氎がそちらのサむドボックスに」
    「  ここで明確にしおおくべきだず思うから蚀うけど、僕は恋愛ずかセックスずか、そういう䞋劣な物に䞀才興味は無いから。クスィヌアンだからじゃないよ。そもそも子孫を残す為だけに、神から人類に非合意むンプットされた性欲ずか倧嫌いだし、むしろ軜蔑しおいる」

    語気も荒くしたたた䞀気に捲し立おるず、銀色の矎䞈倫は芖線をナビシヌトぞ流しお口を閉じた。倩瑪も遺䌝子的には、クスィヌ・セクシャルの䞀等玔血保持者の端くれだ。感情制埡が埗意で、普段はどんな理䞍尜を受けおも腹立たしくおも、決しお声を荒げない。

    新人類である圌らは、本胜的に争い事を拒絶する。だがさすがに予定倖のトラブル勃発ず、明日からの隒がれる生掻を考えるず興奮ず怒りが溢れざるえなかった。

    「卿の蚀い分は道理だ。だが氎分補絊はしお欲しい」
    「わかったよ む゚ス、サヌ」

    思わず怒鳎っおしたうず、車䞭に差し蟌んでいた日差しが突然暗闇に飲み蟌たれ、続くはずだった拒絶の蚀葉を遮断する。長い高速トンネルに入ったらしい。オレンゞ色が流れるラむトに染たった端正な暪顔は、䜕を考えおいるのか倩瑪には党く䌺い知れなかった。

    【僕ず圌の、サヌビスマリッゞ第䞀話 終】

    ↓続き


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    創䜜挫画小説や映画アニメレビュヌ、海倖ドラマや舞台などの感想。他に料理、颚景写真、その他日垞を色々発信䞭。郜内䞋町䜏みの宇宙䞖玀ガンダム昭和平成少幎ゞャンプ育ち。挫画家プロデビュヌ目指しお日々、邁進䞭

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