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銀行融資の金利交渉は可能か|条件を動かす材料と進め方|銀行取引の教科書 #14

    こんにちは!
    株式会社T&Aフィナンシャルマネジメント代表の齋藤高広です。

    連載「中小企業のための銀行取引の教科書」の第14回をお届けします。

    前回は、借りるべきタイミングを取り上げました。融資は申込から実行まで1〜2か月かかること、業績が良いときほど借りやすいこと、調達の基本は決算後の年度調達であり各行のシェアに応じて配分すること、そして季節性のある資金需要は当座貸越の枠で吸収すること。
    そんな内容でした。

    余裕を持って相談できるということは、実は条件を交渉できるということでもあります。

    そこで今回のテーマは、「金利・条件交渉は可能か、どう進めるか」です。

    多くの経営者が気にしながら、なかなか人に聞けない話題だと思います。
    提示された金利は妥当なのか。
    交渉などして、関係が悪くならないか。言い出すとしたら、どう切り出せばよいのか。

    今回は、ここに正面から踏み込みます。

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    結論:交渉はできる。ただし、できる会社とできない会社がある

    最初に結論からお伝えします。

    金利や条件の交渉は、可能です。
    提示された条件を、そのまま受け入れなければならない決まりはありません。

    ただし、重要な但し書きがあります。

    交渉が成立する会社と、しない会社があります。

    そして、その分かれ目は交渉の話術ではありません。
    第6回でお伝えした格付けです。

    格付けが良い会社は、交渉の余地が大きい。
    にもかかわらず、言わないために損をしていることがあります。
    逆に、格付けが厳しい会社は、どれだけ粘っても条件はほとんど動きません。

    なぜそうなるのか。
    まずは、金利がどう決まっているかを分解してみましょう。

    金利は、どう決まっているのか

    銀行の貸出金利は、大まかに言えば次の要素で構成されています。

    貸出金利 = 調達コスト + 経費率 + 信用リスクコスト + 利益

    一つずつ見ていきます。

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    調達コスト

    銀行も、タダでお金を持っているわけではありません。
    預金者に利息を払い、市場から資金を調達しています。
    そのコストです。

    これは市場の金利水準に連動するため、銀行にも動かせません。
    日本銀行の政策や市場環境で決まる部分です。

    経費率

    銀行の人件費、店舗の維持費、システム費用など。
    これを貸出残高で割ったものが、金利に乗ります。

    これも、個別の融資交渉で動く部分ではありません。

    信用リスクコスト

    ここが、最も大きく動く部分です。

    銀行は、貸したお金が返ってこないリスクに備えなければなりません。
    そのコストを、あらかじめ金利に織り込んでいます。

    そして、このリスクをどう見積もるかは、格付けによって決まります。

    格付けが上位の会社は、貸倒れの可能性が低いと評価されているため、この部分が小さくなります。
    逆に格付けが下位であれば、この部分は大きくなります。
    同じ銀行が、同じ日に貸しても、会社によって金利が違うのは、ここが理由です。

    利益

    銀行の取り分です。ここには、ある程度の調整余地があります。

    ただし、銀行が見ているのは融資単体の利益ではありません。
    その会社との取引全体の採算です。
    給与振込、売上の入金、各種手数料、為替取引。これらを含めた総合的な採算で判断されます。
    この点は、後ほど交渉材料のところで詳しくお話しします。

    つまり、金利交渉とは何か

    この構造から見えてくることがあります。

    金利交渉とは、値切り交渉ではありません。

    「もっと安くしてください」とお願いする行為ではなく、「当社の信用リスクを正しく評価してください」「当社との取引全体を見てください」と伝える行為です。

    この認識の違いは、交渉の質を大きく左右します。
    値切りだと思って臨めば、相手も身構えます。正当な評価を求める対話だと捉えれば、銀行も検討しやすくなります。

    「金利のある世界」で、何が変わったか

    第1回で、超低金利の時代が終わり、金利が動く局面に入ったことに触れました。
    これが条件交渉にどう影響するかを整理しておきます。

    金利差が、利益に直結するようになった

    超低金利の時代は、どこで借りてもほとんど差がない状態でした。
    だからこそ、金利に関心を払わない経営者も多かったのです。

    しかし、金利が動く局面では事情が変わります。

    具体的に考えてみましょう。
    借入1億円に対して、金利が0.3%違えば、年間30万円の差です。
    返済期間が10年であれば、残高が減っていくことを考慮しても、累積で百数十万円の差になります。
    借入が3億円あれば、その3倍です。

    これは、純粋に利益から差し引かれる金額です。
    同じ利益を売上で稼ごうとすれば、利益率5%の会社なら年間600万円の売上に相当します。

    受け身の交渉も発生する

    もう一つ、重要な変化があります。

    金利が上昇する局面では、銀行側から既存借入の金利見直しを打診されることがあります。
    「市場金利の上昇に伴い、条件の見直しをお願いしたい」という申し出です。

    このとき、言われるままに受け入れるのか、根拠を確認して協議するのか。
    交渉は、こちらから仕掛けるものだけではありません。
    守りの場面でも、金利の決まり方を理解しているかどうかが結果を分けます。

    交渉の材料になるもの

    では、何を材料に交渉すればよいのか。5つ挙げます。

    1.他行の条件

    最も強力な材料です。

    複数行と取引していれば、同じ時期に同じ案件を相談し、条件を比較できます。
    前回お伝えした年度調達であれば、各行に同じ説明をして回りますから、自然に比較の機会が生まれます。

    第12回でお伝えした複数行取引の意義は、ここにも表れます。
    1行としか取引がなければ、比較対象がなく、提示された条件が妥当かどうかも判断できません。

    ただし、使い方には作法があります。
    これは後ほど「やってはいけない交渉」で詳しくお伝えします。

    2.格付けの改善

    決算の内容が良くなった。
    債務償還年数が短縮した。
    債務超過を解消した。
    自己資本比率が上がった。

    これらは、信用リスクコストが下がる根拠そのものです。

    「前期と比べて債務償還年数が12年から8年に改善しました。金利についてもご検討いただけませんか」。
    これは値切りではなく、評価の更新を求める正当な申し出です。

    第2部でお伝えしてきた指標の改善は、こういう形で実利に結びつきます。

    3.取引全体の厚み

    前述のとおり、銀行は融資単体ではなく取引全体の採算を見ています。

    • 従業員の給与振込をその銀行に集約している

    • 売上の入金口座として使っている

    • 外国為替取引がある

    • 各種手数料を継続的に支払っている

    • 経営者個人や従業員が、その銀行で住宅ローンなどを利用している

    これらは、すべて銀行にとっての収益です。

    「当社は給与振込も売上入金も御行に集約しています。
    取引全体で見ていただけませんか」。この切り口は、意外に効果があります。

    逆に言えば、融資だけを取引している会社は、交渉材料が乏しいということでもあります。

    4.保全の提供

    担保を差し入れる、あるいは信用保証協会の保証を付ける。
    これらは銀行のリスクを減らすため、信用リスクコストが下がります。

    ただし、第3回でお伝えしたとおり、保証付き融資には保証料がかかります。
    金利が下がっても、保証料を含めた総コストで比較しなければ意味がありません。
    また、保証枠を使うことの機会損失も考慮が必要です。

    5.調達額とシェア

    まとまった金額を調達する場合、銀行にとっては魅力的な案件になります。

    前回お伝えした年度調達で、年間の必要額をまとめて提示する。
    そして各行のシェアを示す。
    「当行にこれだけの配分がある」という事実は、条件面での前向きな検討につながります。

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    【Tips】利払い周期で、金利が変わることがある

    ここで、あまり知られていない実務的なポイントをお伝えします。

    変動金利で借りている場合、その基準として「TIBOR」が使われることがあります。
    これは、東京の銀行間取引市場における金利の指標です。

    そして、このTIBORには期間ごとの金利があります。
    1週間物、1か月物、3か月物、6か月物といった具合です。
    通常、期間が短いほど金利は低くなります。

    ここが重要な点です。

    利払いの周期を3か月にするか、1か月にするかで、適用される基準金利が変わることがあります。

    3か月周期であれば3か月物のTIBOR、1か月周期であれば1か月物のTIBORが基準になるためです。
    そして、銀行の調達コストも周期に応じて変わります。

    提案されたまま、3か月周期になっていませんか

    実務では、特に希望を伝えなければ1か月周期で提案されることが多いと感じますが3か月周期での提案をされるケースも散見されます。
    3か月周期は、銀行にとっては事務手続きの回数が少なく、扱いやすいからです。

    しかし、会社側から見れば、1か月周期に変更することで適用金利が下がる可能性があります。

    借入額が大きければ、この差は無視できません。
    「利払いの周期を1か月にした場合、適用金利はどうなりますか」。
    この一言を聞いてみるだけでも、価値があります。

    なお、1週間物のTIBORを基準とする取引も存在しますが、事務負担が大きく、民間の事業会社で実際に適用するのは現実的ではありません。
    1か月か3か月か、という選択肢で考えるのが実務的です。

    ただし、金利の決まり方は銀行や契約の形態によって異なります。
    すべての借入に当てはまるわけではありませんので、自社の契約がどういう仕組みになっているかを、担当者に確認してみてください。

    金利以外に、交渉できること

    ここも重要な点です。
    交渉の対象は、金利だけではありません。
    むしろ、金利より効果が大きい場合もあります。

    返済期間

    実は、金利より資金繰りへの影響が大きいことがあります。

    5,000万円を5年で返済すれば、年間1,000万円の返済負担です。
    これを10年にすれば、年間500万円。毎年500万円の資金余裕が生まれます。

    金利を0.3%下げても、年間15万円。どちらが効くかは明らかです。

    もちろん、期間は資金使途に応じた適正な長さがあります(第4回)。
    しかし、資金使途から見て合理的な範囲であれば、期間の延長を相談する価値は十分にあります。

    据置期間

    元本の返済を開始するまでの猶予期間です。

    設備投資をしても、その設備が収益を生み始めるまでには時間がかかります。
    立ち上がりの時期に元本返済が重なると、資金繰りが苦しくなります。

    「最初の1年は利息のみ」という条件が取れれば、投資の立ち上がりは格段に楽になります。

    担保・保証の解除

    すでに差し入れている担保の一部解除、あるいは経営者保証の解除。

    経営者保証については、次回詳しくお話しします。
    人生に関わる重要なテーマなので、1回分を使って扱います。

    各種手数料

    事務手数料、振込手数料、そして保証付き融資の保証料率。
    これらも、交渉の対象になり得ます。
    特に取引量が多い会社であれば、振込手数料の見直しだけでも効果があります。

    当座貸越枠への移行

    前回お伝えしたとおり、約定弁済付きの融資が基本ですが、プロパー融資を安定的に受けられる段階に進んだら、当座貸越の枠を設定してもらうことも、条件面での重要な前進です。

    金利そのものより、資金繰りの自由度という形で効いてきます。

    やってはいけない交渉

    ここで、避けるべき進め方を挙げておきます。

    「他行はもっと安い」と繰り返すだけ

    他行条件は強力な材料ですが、これだけを繰り返すのは逆効果です。

    銀行は、「この会社は金利だけで取引先を選ぶ」と受け取ります。
    すると、どうなるか。有事の局面で、真っ先に手を引く対象になります。

    平時に0.2%安くなっても、厳しいときに支えてもらえなければ、失うものははるかに大きい。
    この点は、冷静に考える必要があります。

    事実でない他行条件を持ち出す

    これは絶対に避けてください。

    第12回でお伝えしたとおり、各行の借入残高も金利水準も、おおよそ把握されています。
    借入金残高推移表や勘定科目内訳明細書を通じて、他行の動きは見えています。

    事実と違う話をすれば、いずれ露見します。
    そして失うのは、金利差では取り返せない信頼です。

    メインバンクのシェアを削って、安い行に移す

    第12回でお伝えしたとおり、メインバンクは有事に最初に動いてくれる存在です。

    金利がわずかに安いという理由で、そのシェアを削っていけば、メインバンクは「当行はもうメインではない」と受け取ります。
    保険を解約して、目先の保険料を節約しているようなものです。

    担当者個人を責める

    金利は、担当者の裁量で決まるものではありません。
    行内の基準と、格付けと、稟議の結果です。

    担当者を問い詰めても、何も変わりません。
    むしろ、担当者を味方につけて、社内で動いてもらうほうが、はるかに建設的です。

    業績が悪いときに、強く出る

    業績が悪化している局面では、交渉の余地はほとんどありません。
    この時期に強く出れば、関係を損なうだけです。

    交渉は、晴れているときにするものです。

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    交渉の進め方

    最後に、実際の進め方をお伝えします。

    タイミングは、年度調達の相談時

    前回お伝えした年度調達のタイミングが最適です。

    決算説明をして、今期の計画を示し、必要な調達額を伝える。
    そのうえで条件の話をする。
    改善した指標を示しながら話せるので、最も根拠が整った状態で交渉できます。

    切り出し方

    身構える必要はありません。
    たとえば、こういう言い方があります。

    「今期は債務償還年数も改善しましたので、金利についてもあらためてご検討いただけないでしょうか」

    「他行からは◯%でご提示をいただいています。ただ、当社としては御行と長くお付き合いしたいと考えております。ご検討いただくことは可能でしょうか」

    後者のポイントは、他行条件を示しつつ、関係を続けたい意思を明確に伝えていることです。これがあるかないかで、受け取られ方はまったく変わります。

    担当者が、上司を説得できる材料を渡す

    この連載で繰り返しお伝えしてきたことが、ここでも当てはまります。

    担当者は、金利を下げるためにも行内で説明しなければなりません。
    「お客様が下げてほしいと言っています」では通りません。

    「格付けが改善した」「他行がこの条件を提示している」「取引全体の採算はこれだけある」——担当者が稟議や上申で使える材料を渡してください。

    即答を求めない

    その場で答えが出る話ではありません。
    「持ち帰ってご検討ください」と伝え、時間を与えてください。
    急かすほど、良い結果は出にくくなります。

    下がらなくても、関係は壊さない

    交渉した結果、条件が変わらないこともあります。
    そのときは、素直に受け入れてください。

    「ご検討いただき、ありがとうございました」と伝えておけば、関係は何も損なわれません。
    そして、来期また状況が変われば、改めて相談すればよいのです。

    交渉は一度きりの勝負ではなく、毎年の対話の一部だと捉えてください。

    まとめ

    金利は交渉できます。ただしそれは値切りではなく、信用リスクの評価と、取引全体の採算を正しく見てもらうための対話です。

    材料は、他行条件、格付けの改善、取引全体の厚み、保全、調達規模。
    そして交渉できるのは金利だけではなく、返済期間、据置期間、担保・保証、各種手数料にも及びます。
    変動金利であれば、利払い周期の確認も価値があります。

    一方で、金利だけを追って関係を損なうのは得策ではありません。
    平時の0.2%より、有事に支えてもらえる関係のほうが、はるかに価値があります。

    まずは、自社の借入一覧を開いて、各行の金利がいくらになっているかを並べてみてください。
    そして、前期からどれだけ指標が改善したかを確認してみてください。
    それが、次の対話の出発点になります。

    次回は「経営者保証を外すための条件と進め方」をお届けします。
    条件交渉のなかで、金利以上に経営者の人生を左右するのが、この経営者保証です。
    外せる可能性は、以前より確実に広がっています。ぜひ続けてお読みください。

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    社長の「右腕」になる社外CFO。メガバンク出身。プライム上場企業執行役員経験。中堅中小企業には銀行との付き合い方を、ベンチャー企業には資金調達と成長の財務戦略を。銀行・コンサル・上場企業の現場で見てきた「お金の勝ち筋」をnoteで発信中。

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