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融資の資金使途とは|「何に使うか」が審査を決める理由|銀行取引の教科書 #04

    こんにちは!
    株式会社T&Aフィナンシャルマネジメント代表の齋藤高広です。

    連載「中小企業のための銀行取引の教科書」の第4回をお届けします。

    前回は、保証付き融資(マル保)とプロパー融資の違いを取り上げました。
    この2つは優劣の関係ではなく、創業期のマル保から始まり、マル保とプロパーの同額実行を経て、プロパー単体へと進んでいく成長の階段である、という内容でした。

    今回は、その階段を上る以前の、もっと手前にある話をします。テーマは「資金使途」です。

    銀行に融資を相談したとき、担当者が最初に聞くことは何でしょうか。
    「いくら必要ですか」ではありません。ほとんどの場合、こう聞かれます。

    「何にお使いになるご予定ですか」

    この問いに明確に答えられるかどうかが、融資の入口を決めます。今回は、この資金使途という、地味でありながら決定的に重要なテーマを掘り下げます。

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    「何に使うか」で、融資のすべてが決まる

    資金使途は、単なる手続き上の確認事項ではありません。
    資金使途が決まると、融資の中身がほぼ自動的に決まります。

    • どの種類の融資が適切か(短期か長期か、証書貸付か手形貸付か)

    • 返済期間を何年に設定するか

    • いくらまで借りられるか

    • どの金融機関に相談すべきか

    これらはすべて、資金使途から逆算されます。
    つまり、資金使途があいまいなまま「3,000万円ほど借りたい」と相談に行っても、銀行は検討のしようがないのです。

    逆に、資金使途がはっきりしていれば、話は一気に前に進みます。
    「何に使うか」を整理することは、経営者ができる最も効果的な融資準備だと言っても過言ではありません。

    昔のような「枠」は、もう存在しない

    ここで、特に長く経営をされている方にお伝えしたいことがあります。

    かつては、担保があれば、あるいは保証人が十分であれば、資金使途を細かく問われずに借りられる時代がありました。
    不動産の担保価値が右肩上がりだった頃は、「この土地があるから、いくらまでは貸せます」という発想が成り立ったのです。
    いわゆる「枠」という感覚です。

    この感覚は、現在の銀行実務では通用しません。

    金融行政の考え方は、担保や保証に依存した融資から、事業の中身と返済力を見る融資へと大きく舵を切りました。
    今の銀行員は、担保があってもなくても、「この資金が何に使われ、どうやって返されるのか」を稟議書に書かなければ、融資を通せません。

    担保や保証が無意味になったわけではありません。
    それらは審査を後押しする材料として、今も機能します。
    しかし、担保があるから資金使途は不要、という順序にはならないのです。
    順序は逆で、まず資金使途と返済の見通しがあり、そのうえで担保や保証が補強材料として加わります。

    「昔はこんなに細かく聞かれなかった」と感じる場面があるかもしれません。
    それは担当者が疑っているからではなく、そう書かなければ稟議が通らない仕組みになっているからです。
    資金使途の疎明(そめい=根拠を示して説明すること)は、今や融資の必須条件だとご理解ください。

    資金使途の基本は、運転資金と設備資金

    資金使途は、大きく2つに分かれます。
    この分類が、すべての出発点です。

    運転資金

    事業を日常的に回していくための資金です。
    仕入代金、人件費、家賃、外注費、広告費などが該当します。

    運転資金は、事業活動を通じて比較的短い期間で回収され、また次の支払いに回っていきます。
    この性質に合わせて、返済期間も短期から中期(おおむね1年以内から5年程度)に設定されるのが一般的です。

    設備資金

    機械、車両、店舗、工場、不動産、システムなど、形として残る投資に充てる資金です。

    設備は長期間にわたって使われ、その期間を通じて少しずつ収益を生み出します。
    したがって返済期間も長く、5年から10年、不動産であれば15年以上になることもあります。

    期間を一致させるという原則

    ここが最も重要な考え方です。

    資金使途と返済期間は、一致していなければなりません。

    たとえば、10年かけて使う機械を、3年返済の資金で購入したとします。
    機械は10年かけてゆっくり収益を生み出すのに、返済は3年で終わらせなければならない。
    この場合、最初の3年間は返済負担が収益を大きく上回り、資金繰りが確実に苦しくなります。

    「黒字なのにお金が残らない」という状態の原因が、この期間のズレにあるケースは少なくありません。
    利益は出ているのに現金が足りない会社の多くは、長期で使うものを短期の資金で賄っているのです。

    銀行が資金使途を細かく確認するのは、このズレを防ぐためでもあります。
    適切な期間を設定することは、会社を守ることでもあるのです。

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    運転資金には、いくつもの顔がある

    運転資金とひとくちに言っても、その中身はさまざまです。代表的なものを整理します。

    経常運転資金

    事業を続けている限り、常に必要となる資金です。
    次の式で計算できます。

    経常運転資金 = 売掛金 + 在庫 − 買掛金

    たとえば、売掛金が6,000万円、在庫が3,000万円、買掛金が4,000万円の会社であれば、5,000万円です。
    この5,000万円は、事業を続ける以上、常に立て替えている状態にあります。

    ここで大切なのは、この金額は借りていて当然の資金であるという点です。
    銀行もそう考えます。
    売上が同じ水準で続く限り、この資金が回収されて手元に残ることはないからです。

    ぜひ一度、自社の数字で計算してみてください。
    必要な運転資金の額を把握している経営者は、銀行との対話が明らかに変わります。
    「当社の経常運転資金は5,000万円ですので、この水準の借入は継続して必要です」と説明できる会社は、銀行から見て話が早いのです。

    増加運転資金

    売上が伸びているときに追加で必要になる資金です。
    売上が増えれば、売掛金も在庫も増えます。
    入金より先に支払いが来るため、成長している会社ほど資金が必要になります。

    業績が良いのに資金繰りが厳しいという状況は、決して珍しくありません。
    これは前向きな資金需要であり、銀行にも説明しやすい資金使途です。

    季節資金

    季節性のある業種で、繁忙期の前にまとまった仕入が必要になるケースなどが該当します。
    回収後に返済する前提なので、短期の資金が適しています。

    つなぎ資金

    入金が確実に見込めるものの、それまでの間の支払いに充てる資金です。
    補助金の入金待ち、大型案件の検収待ちなどが典型です。
    入金時期の根拠を示せるかどうかが鍵になります。

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    銀行が慎重になる資金使途

    一方で、銀行が説明を求めてくる資金使途もあります。

    赤字補填資金

    赤字によって不足した資金を補うための借入です。
    銀行が慎重になるのは当然で、赤字が続く限り返済原資が生まれないためです。

    ただし、赤字だから絶対に借りられない、というわけではありません。
    大切なのは、なぜ赤字になったのか、それは一時的なものか構造的なものか、そして今後どう改善するのかを説明できることです。
    原因と対策を示せれば、銀行は検討の余地を持ちます。この点は、第2部の回で詳しく扱います。

    他行への返済資金

    「A銀行への返済のためにB銀行から借りる」という形です。
    銀行から見ると、自行の資金が他行の回収に使われることになるため、そのままでは受け入れられません。
    借換えとして整理する場合には、条件や全体の返済計画をきちんと説明する必要があります。

    社外への流出を伴う資金

    関連会社への貸付、経営者個人への貸付、実態の見えない支出などです。
    融資した資金が事業以外に流れることを、銀行は強く警戒します。
    決算書に「役員貸付金」が計上されている場合、ほぼ確実に質問を受けると考えてください。

    資金使途違反が、信頼を根こそぎ失わせる

    ここは、強くお伝えしておきたい点です。

    設備資金として借りた資金を、設備を購入せずに運転資金に回す。
    あるいは、申請した内容とは別の用途に充てる。
    これらは「資金使途違反」と呼ばれます。

    多くの場合、金銭消費貸借契約には資金使途に関する条項が含まれており、違反は契約違反にあたります。
    最悪の場合、期限の利益を失い、残高の一括返済を求められることもあります。

    しかし、それ以上に重いのは信頼の問題です。

    銀行の担当者は、貴社の資金使途を稟議書に書き、社内で説明して融資を実現させています。
    それが事実と違っていたとなれば、担当者自身が社内で責任を問われます。貴社を応援してくれていた人ほど、深く傷つくのです。

    そして、この記録は残ります。担当者が代わっても、支店に、そして銀行に残ります。
    一度失った信頼を取り戻すには、何年もかかります。

    もし当初の計画が変わってしまった場合は、隠さず事前に相談してください。
    正直に伝えれば対応の余地はありますが、事後に発覚した場合はそうはいきません。

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    資金使途を「説明できる」状態にする

    では、実務として何を準備すればよいのでしょうか。

    設備資金の場合
    見積書、契約書、図面やカタログなど、購入対象がわかる資料。
    そして、その設備によって売上や生産性がどう変わるのかという見通し。
    「この機械で月産が2割増え、年間で◯◯万円の増益を見込む」という形で示せると、説得力が一段上がります。

    運転資金の場合
    経常運転資金の計算根拠、売上の推移、資金繰り表。増加運転資金であれば、受注の状況や売上計画。つなぎ資金であれば、入金予定を示す契約書や注文書。

    共通して大切なこと
    金額に根拠があることです。
    「だいたい3,000万円くらい」ではなく、「設備が2,400万円、付帯工事が400万円、予備費が200万円で合計3,000万円」と積み上げで示せるかどうか。

    これらの資料は、担当者が稟議書にそのまま書き写せる材料です。
    連載を通じてお伝えしている「銀行員が稟議書を書きやすい状態をつくる」という考え方が、資金使途においても、そのまま当てはまります。

    まとめ

    資金使途は、融資の出発点です。
    何に使うかが決まって初めて、融資の種類も期間も金額も決まります。

    そして、担保や保証があれば資金使途を問われない「枠」の時代は終わりました。
    今の銀行員は、資金使途と返済の道筋を書けなければ稟議を通せません。資金使途の疎明は、融資を受けるための前提条件です。

    まずは、自社の経常運転資金がいくらなのかを計算してみてください。
    そして、次に資金が必要になる場面を思い浮かべ、それが運転資金なのか設備資金なのかを整理してみてください。
    その一歩が、銀行との対話を変えます。

    次回は「融資はこうして決まる:稟議の流れと銀行員の視点」をお届けします。
    ここまで整理した資金使途が、銀行の内部でどのように扱われ、誰の判断を経て融資として実行されるのか。
    銀行の「内側」をご案内します。ぜひ続けてお読みください。

    お問い合わせ・ご相談について

    「銀行との交渉にいつも不安がある」「自社の財務戦略や資金繰りの体制をプロの視点で見直したい」とお考えの経営者様へ。

    弊社、株式会社T&Aフィナンシャルマネジメントでは、貴社の財務部門を強化し、銀行取引の最適化からキャッシュフロー管理、資本政策までを総合的に手厚くサポートする「社外CFO」サービスを提供しております。

    単なる顧問にとどまらず、銀行員が「稟議書を書きやすい」状態を貴社の中に構築し、円滑な資金調達と持続的な成長を伴走支援いたします。

    また、貴社の銀行取引の現状を銀行の目線で点検する「銀行取引ドック」と、銀行取引の基本から実践までを体系的に学べる「オンライン勉強会」も始めました。
    「自社に必要な運転資金の額がわからない」「この投資に対して、どう借りるのが適切か判断がつかない」という方は、ぜひドックをご活用ください。
    資金使途の整理から、銀行への説明資料の作り方まで、一緒に組み立てていきます。

    私たちは、中堅・中小企業の経営者様のいちばん近くで、同じ目線に立って考えるパートナーでありたいと考えています。
    「こんなことを聞いてもいいのだろうか」という小さな疑問で構いません。資金繰りや銀行取引、財務戦略に関するご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。ご連絡を心よりお待ちしております。


     
     
    社長の「右腕」になる社外CFO。メガバンク出身。プライム上場企業執行役員経験。中堅中小企業には銀行との付き合い方を、ベンチャー企業には資金調達と成長の財務戦略を。銀行・コンサル・上場企業の現場で見てきた「お金の勝ち筋」をnoteで発信中。

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