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銀行に響く事業計画書の作り方|審査で見られる3つの視点|銀行取引の教科書 #11

    こんにちは!
    株式会社T&Aフィナンシャルマネジメント代表の齋藤高広です。

    連載「中小企業のための銀行取引の教科書」の第11回をお届けします。

    前回は、月次試算表と資金繰り表を取り上げました。
    決算書は過去、試算表は現在、資金繰り表は近い未来を示すものであり、この3つがそろって初めて銀行は会社を連続的に把握できる、という内容でした。
    日本政策金融公庫のフォーマットもご紹介しました。

    今回は、もう少し先の未来を示す資料です。
    テーマは「事業計画書」。
    第2部「銀行から見た『自社』を知る」の締めくくりとなります。

    事業計画書の書き方そのものは、世の中に多くの解説があります。
    ですから今回は、少し角度を変えます。

    銀行員は、計画書のどこを疑い、どこで納得するのか。

    元銀行員として、そして計画書の作成を支援する立場として、この点を中心にお伝えします。

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    事業計画書は、何のために出すのか

    「銀行に求められたので作りました」。
    計画書について、こう説明される経営者は少なくありません。

    しかし、この受け身の姿勢では、良い計画書にはなりません。
    まず、計画書が銀行の中で何に使われるのかを押さえてください。

    第5回でご紹介した稟議書の7項目を思い出していただきたいのですが、そのなかに「返済原資と返済の見通し」という項目がありました。

    銀行員は、ここに「なぜこの会社は返せるのか」を書かなければなりません。
    過去の決算書は、過去の返済力しか示しません。
    これから先の返済力を示す資料は、事業計画書しかないのです。

    つまり事業計画書は、稟議書の最後のピースです。

    特に、次のような場面では必須になります。

    • 設備投資など、まとまった金額の融資を申し込むとき

    • 新規事業を始めるとき

    • 創業期で、過去の実績が乏しいとき

    • 業績が一時的に悪化しており、回復の道筋を示す必要があるとき

    逆に言えば、計画書を自発的に出せる会社は、担当者に武器を渡しているということになります。

    銀行が計画書で見ている、3つのこと

    では、銀行員は計画書のどこを見ているのか。3点に絞ってお伝えします。

    1.返済できるのか

    身も蓋もない言い方ですが、ここが本丸です。

    経営者が計画書に込めたい思いは、たいてい「どう成長するか」です。
    新しい市場、新しい商品、新しい挑戦。
    しかし銀行が最初に確認するのは、その計画を実行したとき、借入を返せるのかという一点です。

    具体的には、次の計算をしています。

    計画上の営業利益 + 減価償却費 = 年間の返済原資

    これが、年間の返済額を上回っているか。
    設備投資を伴う計画であれば、新たな借入も含めた返済額と比べます。

    さらに、第8回でお伝えした債務償還年数が、計画期間を通じてどう推移するかも見られます。
    今が12年でも、計画どおりに進めば5年後には8年に短縮される——そう示せれば、銀行は前向きに検討できます。

    経営者が語りたい「成長の物語」と、銀行が確認したい「返済の裏付け」。
    この2つはズレがちです。
    両方を書いてください。

    2.数字に根拠があるか

    次に見られるのが、売上計画の積み上げ方です。

    「前年比120%」。これだけでは、根拠になりません。

    銀行員が知りたいのは、その120%が何から構成されているかです。

    • 既存顧客からの売上はいくらで、どれだけ伸びる見込みか

    • 新規顧客からはいくらを見込み、その根拠は何か

    • 単価×数量で分解すると、どちらがどう動くのか

    • すでに決まっている受注や契約は、いくらあるのか

    すでに確定している部分があれば、それは最も強い根拠です。
    「来期計画5億円のうち、3億円は既存契約で確定している」と書ければ、計画の信頼性は一気に上がります。

    設備投資であれば、第4回でお伝えした資金使途の話と同じです。
    見積書があり、その設備で生産能力がどれだけ上がり、それが売上にどう結びつくのか。
    この連鎖を示せるかどうかです。

    3.計画と現実が、つながっているか

    3つ目が、最も見落とされがちな点です。

    銀行員は、計画書を受け取ると、直近の試算表や過去の決算書と並べます。
    そして、計画の初年度が現実の延長線上にあるかを確認します。

    ここで、しばしばこういう計画書に出会います。

    直近3期は売上3億円で横ばい、営業利益はほぼゼロ。
    それが、計画では初年度に売上4億円、営業利益2,000万円に跳ね上がる。

    こうしたV字回復のグラフほど、疑われます。

    なぜなら、「なぜ今までできなかったことが、来期から急にできるのか」という問いに答えられていないからです。
    経営者としては、融資を受けたいがために良い数字を書きたくなる気持ちもわかります。
    しかしこれは逆効果です。

    むしろ、現実の延長線上に、着実な改善を積み上げた計画のほうが評価されます。
    そして、変化が起きるなら、その理由を明記してください。
    「新工場の稼働により生産能力が1.5倍になる」「大口の契約が4月から始まる」。
    跳ね上がりには、必ず理由を添える。
    これが鉄則です。

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    計画書に盛り込むべき内容

    では、具体的に何を書くか。6つの要素を挙げます。

    1.現状認識
    自社がどういう状況にあり、何が課題なのか。
    市場環境はどうか。
    良いことばかり書かれた計画書は、かえって信用されません。
    課題を正しく認識していることは、むしろ安心材料になります。

    2.売上計画と、その根拠
    前述のとおり、積み上げで示します。
    年次だけでなく、初年度は月次で示せるとなお良いでしょう。

    3.利益計画
    売上だけでなく、費用の構造まで。
    原価率はどう変わるのか。人を増やすなら人件費はいくら増えるのか。
    売上が伸びているのに費用が横ばいの計画は、すぐに見抜かれます。

    4.設備投資と資金計画
    何にいくら投資し、そのうちいくらを自己資金で、いくらを借入で賄うのか。

    5.返済計画
    本丸です。
    借入金の残高が、各年度末にいくらになるか。
    新規の借入も含めた年間返済額と、返済原資の対比。
    ここまで書いてある計画書は、実はそれほど多くありません。
    だからこそ差がつきます。

    6.実行体制とスケジュール
    誰が、いつ、何をするのか。
    計画が絵に描いた餅でないことを示す部分です。

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    分量は、A4で3〜5枚

    ページ数を競う必要はまったくありません。
    数十ページの立派な冊子より、A4で3〜5枚の密度の高い資料のほうが読まれます。

    銀行員は多数の取引先を抱えています。
    長大な資料は、要点を探すだけで負担です。
    それよりも、稟議書に転記できる情報が凝縮されている資料のほうが、はるかに喜ばれます。

    業績が厳しいときの計画書

    ここで、少し違う場面にも触れておきます。

    業績が悪化している局面で求められるのは、「経営改善計画書」と呼ばれるものです。
    成長のための事業計画書と重なる部分も多いのですが、力点が異なります。

    成長の計画書が「どう伸ばすか」を示すのに対し、改善の計画書は「どう立て直すか」を示します。
    したがって、次の要素が中心になります。

    • 業績悪化の原因分析(第9回でお伝えしたとおり、具体的に)

    • コスト削減など、すでに着手している施策とその効果

    • いつ黒字化し、いつ債務超過を解消するのか

    • その間の資金繰りの見通し

    ただし、共通点のほうが多いことも事実です。
    根拠のある数字を示す、現実とつなげる、返済の道筋を示す。
    この3点は、どちらの計画書でも変わりません。

    そして、平常時から計画を作り慣れている会社は、いざというときにも計画を出せます。
    余裕のあるうちに、計画を作る習慣をつけておくこと。
    これが結果的に、厳しい局面での備えにもなります。

    計画書でやりがちな、5つの失敗

    1.売上だけ伸びて、費用が比例していない

    最も多い失敗です。
    売上1.5倍の計画なのに、人件費も仕入も横ばい。
    これでは利益が出て当然で、計画としての信頼性がありません。

    2.根拠のない「新規開拓」頼み

    増収分のほとんどが「新規顧客の開拓による」とだけ書かれているケース。
    どうやって、誰に、いくら売るのかがなければ、願望と変わりません。

    3.最良のシナリオしか書いていない

    意外に思われるかもしれませんが、保守的な計画のほうが評価されます。

    理由は単純で、達成できるからです。
    第9回でお伝えしたとおり、計画を外し続けることほど信頼を損なうものはありません。
    強気の計画を出して未達を重ねるより、堅実な計画を着実に達成するほうが、長い目で見て圧倒的に有利です。

    可能であれば、「計画どおりに進まない場合はこう対応する」という備えも一言添えてください。
    リスクを認識している経営者は、それだけで信頼されます。

    4.出しっぱなしで、進捗を報告しない

    これについては、次の章で詳しくお話しします。

    5.経営者が、中身を説明できない

    これが最も致命的です。

    税理士やコンサルタントに作ってもらった計画書を、経営者が内容を把握しないまま提出する。
    そして面談で質問され、答えられない。

    この瞬間、計画書の価値はゼロになります。
    それどころか、「この会社は自分で計画を立てていない」というマイナス評価が残ります。

    作成を支援してもらうこと自体は、まったく問題ありません。
    私たちもそれを仕事としています。
    しかし、完成した計画書は、経営者が自分の言葉で語れなければ意味がありません。
    数字の一つひとつについて「なぜこの数字なのか」を説明できる状態にしてから、銀行に持っていってください。

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    出した後が、本番です

    最後に、第2部の締めくくりとして、最も大切なことをお伝えします。

    事業計画書は、出すことがゴールではありません。

    計画を出したということは、銀行に対して「こうします」と約束したということです。
    当然、その後どうなったかが見られます。

    四半期ごとに、進捗を報告する

    おすすめするのは、四半期ごとの報告です。
    前回お伝えした月次試算表と組み合わせれば、難しいことではありません。

    「計画では第1四半期の売上1億2,000万円に対し、実績は1億1,500万円。やや下回っていますが、要因は◯◯で、第2四半期で挽回する見込みです」

    これだけで十分です。

    計画どおりでなくても、信頼は維持できる

    ここが重要な点です。

    計画を下回ったからといって、即座に評価が下がるわけではありません。
    銀行が不安に思うのは、下回ったことではなく、下回ったのに何の説明もないことです。

    乖離が生じたら、その理由と対応策を説明する。
    それができていれば、「状況を把握し、手を打っている会社」と評価されます。
    第9回でお伝えした「悪い情報ほど先に伝える」という話と、同じ構造です。

    この一巡を回せる会社が、最も信頼される

    計画を出す。
    実績を追いかける。
    乖離を説明する。
    次の計画に反映する。

    この一巡を回せている会社は、中小企業ではまだ少数派です。
    だからこそ、できている会社は際立ちます。

    そして第10回でお伝えした試算表・資金繰り表の定期提出と組み合わせれば、報告のサイクルが完成します。
    決算書(過去)、試算表(現在)、資金繰り表(近い未来)、事業計画書(先の未来)。
    この4つがそろって回っている会社を、銀行が放っておくことはありません。

    第2部のまとめ

    今回で、第2部「銀行から見た『自社』を知る」は終わりです。

    格付けの仕組みと要注意先の線引き(第6回)、決算書が読まれる順番(第7回)、債務償還年数という物差し(第8回)、赤字・債務超過でも道はあること(第9回)、試算表と資金繰り表の力(第10回)、そして事業計画書(第11回)。

    第2部を通じてお伝えしたかったのは、銀行から見た自社の姿を、経営者自身が知っておくことの大切さです。
    相手がどう見ているかがわかれば、何を伝えるべきかが決まります。

    次回から第3部「実践・銀行との付き合い方」に入ります。
    第12回のテーマは「メインバンクの選び方と、複数行取引のバランス」です。

    第2回で金融機関の種類を学び、第2部で自社の立ち位置を知った。
    それを踏まえて、では実際にどの銀行とどう付き合っていくのか。
    いよいよ実践編です。ぜひ続けてお読みください。

    お問い合わせ・ご相談について

    「銀行との交渉にいつも不安がある」「自社の財務戦略や資金繰りの体制をプロの視点で見直したい」とお考えの経営者様へ。

    弊社、株式会社T&Aフィナンシャルマネジメントでは、貴社の財務部門を強化し、銀行取引の最適化からキャッシュフロー管理、資本政策までを総合的に手厚くサポートする「社外CFO」サービスを提供しております。

    単なる顧問にとどまらず、銀行員が「稟議書を書きやすい」状態を貴社の中に構築し、円滑な資金調達と持続的な成長を伴走支援いたします。
    事業計画の策定から、銀行への説明、そしてその後の進捗報告まで、一連のサイクルが社内で回るようになるところまでご一緒します。
    経営者様が自分の言葉で計画を語れる状態をつくることが、私たちの目指すゴールです。

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    私たちは、中堅・中小企業の経営者様のいちばん近くで、同じ目線に立って考えるパートナーでありたいと考えています。
    「こんなことを聞いてもいいのだろうか」という小さな疑問で構いません。資金繰りや銀行取引、財務戦略に関するご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。ご連絡を心よりお待ちしております。

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    社長の「右腕」になる社外CFO。メガバンク出身。プライム上場企業執行役員経験。中堅中小企業には銀行との付き合い方を、ベンチャー企業には資金調達と成長の財務戦略を。銀行・コンサル・上場企業の現場で見てきた「お金の勝ち筋」をnoteで発信中。

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