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銀行の格付け(債務者区分)とは|要注意先になる基準|銀行取引の教科書 #06

    こんにちは!
    株式会社T&Aフィナンシャルマネジメント代表の齋藤高広です。

    連載「中小企業のための銀行取引の教科書」の第6回をお届けします。

    前回までの第1部では、銀行そのものを見てきました。
    金融機関ごとの役割、保証付き融資とプロパー融資の階段、資金使途の重要性、そして稟議書が銀行の中をどう通っていくのか。
    第5回では、稟議書に盛り込まれる7つの項目をご紹介しました。

    今回から第2部「銀行から見た『自社』を知る」に入ります。

    稟議書の項目のうち、最も重いのが「財務内容の分析」でした。
    そして、その中核にあるのが今回のテーマ、「格付け(債務者区分)」です。

    銀行は、すべての取引先を何段階かに分類しています。
    そして、その分類によって、融資が出るかどうか、金利がいくらになるか、担保や保証を求められるかが変わります。
    自社がどこに位置づけられているかを知らないまま銀行と向き合うのは、点数を知らずに試験の結果を待つようなものです。

    今回は、この仕組みを解き明かします。
    そして後半では、中小企業にとって極めて重要な「中小企業特性」という考え方もお伝えします。

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    銀行は、すべての取引先を分類している

    銀行は、決算書を受け取ると、必ず内部で評価作業を行います。
    この作業は二層構造になっています。

    信用格付

    まず、銀行ごとに独自の「信用格付」があります。
    財務指標を点数化し、10段階前後に分類するのが一般的です。この格付けは、金利の設定や融資方針の判断に使われます。

    債務者区分

    そして、この格付けは「債務者区分」という、より大きな5つの分類に対応しています。

    • 正常先

    • 要注意先(うち「その他要注意先」と「要管理先」に分かれます)

    • 破綻懸念先

    • 実質破綻先

    • 破綻先

    この枠組みは、かつて金融庁が定めていた「金融検査マニュアル」に由来します。
    このマニュアル自体は2019年12月に廃止されましたが、では実務が一変したかというと、そうではありません。
    多くの金融機関は、この債務者区分の考え方を今も自己査定の基礎として使い続けています。
    廃止によって、各行が実態に応じた柔軟な判断をしやすくなった、と捉えるのが正確です。

    したがって、経営者としてはこの5区分を押さえておく価値が十分にあります。

    5つの区分と、それぞれの現実

    区分ごとに、銀行の対応は明確に変わります。

    正常先

    業況が良好で、財務内容にも特段の問題がない先です。
    プロパー融資の対象となり、金利も相対的に有利になります。
    第3回でお話しした「マル保からプロパーへ」という階段を上っていけるのは、基本的にこの区分にいる会社です。
    同じ正常先の中でも格付けの上位にいるほど、条件は良くなります。

    要注意先

    業況が低調または不安定、あるいは財務内容に問題があり、今後の管理に注意を要する先です。

    ここが最大の分かれ目です。要注意先になると、新規融資のハードルが一気に上がります。
    ただし要注意先の中でも扱いは分かれます。

    その他要注意先であれば、正常先に比べて融資は出にくくなるものの、まだ可能性は残されています。
    一方、要管理先——3か月以上の延滞がある、あるいは貸出条件を緩和している先——になると、新規融資は困難になります。

    破綻懸念先・実質破綻先・破綻先

    経営難の状態にあり、返済に重大な懸念がある、あるいは実質的に事業が行き詰まっている先です。
    新規融資は原則として困難で、銀行の関心は「貸す」から「どう回収するか」へ移ります。

    区分の違いは銀行内部の会計処理にも直結しますが、経営者にとって重要なのはその帰結です。
    区分が下がるほど、銀行は前に出にくくなる。
    この一点を押さえておけば十分です。

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    どういう状態だと、要注意先になるのか

    では、実際にどういう状態になると要注意先に落ちるのでしょうか。
    ここが最も知りたいところだと思います。

    実務では、まず形式的な基準で振り分け、そのうえで実態を勘案して調整する、という手順が取られます。引き金となるのは、主に次の4つです。

    1.赤字

    損益計算書の経常利益、あるいは当期利益が赤字であることです。
    赤字の額が大きいほど、そして赤字が連続するほど、区分は悪くなります。

    1期の赤字で直ちに要注意先となるわけではありませんが、2期連続の赤字は一つの節目と見られるのが一般的です。
    3期続けば、かなり厳しい評価になります。

    2.債務超過

    貸借対照表の純資産がマイナスの状態です。
    これも、マイナス幅が大きいほど区分は悪くなります。

    ここで重要なのは、銀行が見るのは決算書の表面上の純資産ではないという点です。
    不良資産や実体のない資産を除いた「実質の純資産」で査定されます。
    この点は後ほど詳しく触れます。

    3.延滞

    返済の延滞です。
    延滞期間が長くなるほど区分は下がり、
    3か月以上延滞している債権は「要管理債権」とされ、それを抱える先は要管理先となります。

    4.条件変更(リスケジュール)

    金利の減免、元本の返済猶予など、貸出条件を緩和している状態です。
    これも要注意先以下と判断される要因になります。

    ただし、赤字=即・要注意先ではない

    ここは誤解されやすいので、はっきりお伝えします。
    これらの基準は機械的に適用されるわけではありません。

    たとえば創業期の赤字です。
    当初の事業計画に合理性があり、実績が計画から大きく乖離していない場合は、正常先と判断して差し支えないとされています。
    具体的な目安としては、黒字化までの期間がおおむね5年以内であり、売上高や当期利益が計画のおおむね7割以上確保されていることです。

    債務超過も同様です。
    土地の売却損や高額な退職金など一時的な要因によるもので、短期間で解消される見込みがあるなら、それだけで区分が下がるとは限りません。
    銀行が見ているのは、なぜそうなったのか、そしていつ解消されるのかです。

    つまり、数字が悪いこと自体より、それを説明できるかどうかが分かれ目なのです。
    ここでも、第1部でお伝えした「銀行員が稟議書に書ける材料」という話につながります。

    債務償還年数という物差し

    格付けを左右する指標のなかで、特にウエイトが大きいのが「債務償還年数」です。

    計算式はシンプルです。

    債務償還年数 =(借入金 − 現預金)÷(営業利益 + 減価償却費)

    分母は、返済に充てられるキャッシュフローを表しています。
    銀行によっては、当期利益に減価償却費を足したもので計算する場合もあります。

    たとえば借入金が1億円、現預金が1,000万円、営業利益が500万円、減価償却費が400万円の会社であれば、9,000万円÷900万円で10年となります。

    一般的な目安として、8年から10年を超えると黄色信号です。
    多くの業種で、適正値は10年以内とされています。
    20年を超えるような水準になると、追加融資の扉は相当に閉じてしまうとお考えください。

    ここで一点、実務的な注意を。
    業績が厳しいときに、減価償却費を計上せずに無理やり営業利益を出している決算書を見かけることがあります。
    しかし、これは銀行対策としては逆効果です。
    分母は「営業利益+減価償却費」ですから、償却をやめても分母はほとんど変わらず、むしろ実態が見えにくくなって印象を悪くします。

    この指標については、第8回で改めて詳しく取り上げます。
    まずは「銀行が最も重く見ている物差しの一つである」ことを押さえてください。

    格付けは、実態で見られる

    格付けの評価は、財務指標に基づく定量評価が中心です。
    安全性(自己資本比率など)、収益性、成長性、そして返済能力(債務償還年数など)が点数化されます。
    加えて、業界動向、市場での位置づけ、経営者の資質、後継者の有無といった定性評価が加味されます。

    ここで、経営者の方に最もお伝えしたい点があります。

    銀行は、決算書の数字をそのまま信じるわけではありません。

    決算書を「実態」に引き直したうえで評価します。
    具体的には、次のような調整が行われます。

    • 売れる見込みのない不良在庫は、資産から差し引く

    • 回収の見込みが乏しい売掛金も、差し引く

    • 役員貸付金は、事業用の資産ではないため、資産価値を認めない

    • 投資有価証券やゴルフ会員権などは、時価に引き直す

    この調整後の姿を「実態バランスシート」といいます。
    決算書上は資産超過でも、実態では債務超過という会社は、決して珍しくありません。

    つまり、格付けを考えるうえでは、税務上の決算書をどう作るかではなく、実態としてどういう財務状態にあるかが問われるのです。

    中小企業特性は、プラスにも働く

    ここまで読んで、「実態で見られるなら、中小企業は不利ではないか」と感じられたかもしれません。

    しかし、そうとは限りません。
    実態で見るということは、マイナス方向だけでなく、プラス方向にも修正されるということです。
    この考え方を「中小企業特性」といいます。

    大企業と中小企業では、そもそも財務の姿が違います。
    中小企業は会社と経営者個人が一体で運営されていることが多く、決算書だけを大企業と同じ物差しで測ると、実力を正しく捉えられません。
    そこで銀行は、中小企業ならではの事情を加味して評価します。

    代表者からの借入金は、資本とみなされる

    最も代表的なのがこれです。

    多くの中小企業では、経営者が会社に資金を貸し付けています。
    決算書上、これは「役員借入金」という負債として計上されます。
    負債ですから、そのままでは自己資本を圧迫し、債務超過の原因にもなります。

    しかし実態を考えてみてください。
    経営者が自分の会社に貸したお金を、明日返せと迫ることはまずありません。
    会社が苦しいときに引き揚げられる性質のものでもありません。これは実質的に、資本と同じ性格を持っています。

    そのため銀行は、役員借入金を実質的な純資産(自己資本)とみなして評価するのが一般的です。
    これによって、表面上は債務超過に見える会社が、実態では資産超過と判断されることがあります。

    経営者個人の資産も、勘案される

    経営者が個人で不動産や有価証券、預金を保有している場合、それらも会社の返済力を補う要素として考慮されることがあります。
    経営者が会社の借入を保証しているのであれば、その個人資産は実質的な担保に近い意味を持つからです。

    ただし、これは銀行が把握していなければ評価のしようがありません。
    個人の確定申告書や資産の一覧を提示することで、初めて材料になります。

    定性面も、中小企業ではより重く見られる

    中小企業の場合、財務指標だけでは会社の実力を測りきれません。
    そこで、次のような要素も評価に織り込まれます。

    • 技術力や品質、取引先からの評価

    • 特定の取引先との長年にわたる安定した関係

    • 経営者の資質、業界での経験

    • 後継者の存在や、事業承継の準備状況

    • 従業員の定着率

    大切なのは、こちらから伝えること

    ここが肝心です。
    これらの中小企業特性は、自動的に加味されるわけではありません。

    役員借入金が実質的な資本であることは、決算書を見ればわかります。
    しかし、経営者個人にどれだけ資産があるか、なぜこの会社が取引先から選ばれ続けているのか、後継者の育成がどこまで進んでいるのか——これらは、こちらから伝えない限り、銀行員は稟議書に書けません。

    第5回でお伝えしたとおり、本部の審査部門は貴社の経営者に会ったことがありません。
    紙に書かれた情報だけで判断します。
    中小企業特性という「加点の余地」を活かせるかどうかは、情報を出しているかどうかで決まるのです。

    自社の位置を、どう推測するか

    銀行は、格付けを取引先に開示しません。
    「御社は当行で第6格です」と教えてくれることはまずありません。

    しかし、銀行の扱いから推測することはできます。
    次の項目で自己点検してみてください。

    • プロパー融資を受けられているか。それとも保証付きばかりか

    • 金利の水準は、周囲の会社と比べて高くないか

    • 融資を相談したときの反応は速いか。それとも回答までに時間がかかるか

    • 追加の担保や、経営者保証を新たに求められていないか

    • 銀行から「事業計画書を出してほしい」と言われていないか

    • 過去に条件変更(リスケ)をした履歴がないか

    • 担当者の訪問頻度が、以前より減っていないか

    プロパー融資が出て、金利も低く、反応も速い——この状態であれば、正常先の上位にいる可能性が高いといえます。

    逆に、保証付きしか出ない、追加担保を求められる、回答が遅いという状況が続いているなら、要注意先に近い位置にいるのかもしれません。

    もちろん、これはあくまで推測です。
    正確な位置を知るには、実態バランスシートを作り、中小企業特性による修正も含めて、各指標を銀行の基準に照らして検証する必要があります。

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    格付けを上げるために、できること

    最後に、方向性を5つお示しします。

    1.利益を出し、自己資本を厚くする
    王道です。
    節税を意識しすぎて利益を圧縮し続けると、自己資本が積み上がらず、格付けは上がりません。
    税金と格付けは、トレードオフの関係にあることを意識してください。

    2.実態バランスシートを意識して整理する
    不良在庫の処分、回収不能な売掛金の整理。
    表面を取り繕うより、実態を良くすることです。

    3.役員貸付金を解消する
    銀行が最も嫌う項目の一つです。
    「融資した資金が社外に流れるのではないか」という懸念に直結します。
    なお、経営者が会社に貸している「役員借入金」は逆にプラスに働きます。この2つは名前が似ていますが、評価はまったく逆です。

    4.中小企業特性を活かす
    役員借入金の性格、経営者個人の資産、後継者の状況。
    加点の材料は、伝えて初めて材料になります。

    5.定性面を、こちらから提供する
    技術力、取引先との関係、シェア。
    決算書に表れない強みは、説明しない限り評価されません。

    まとめ

    銀行は、すべての取引先を分類しています。
    そして、その区分によって融資の可否も条件も変わります。

    要注意先になる引き金は、赤字の連続、債務超過、延滞、条件変更。
    ただし機械的に適用されるものではなく、原因と解消見込みを説明できるかどうかで結果は変わります。
    そして評価は決算書の表面ではなく実態で行われ、その実態には、中小企業ならではの加点要素も含まれています。

    まずは、自社の債務償還年数を計算してみてください。
    そして、役員借入金がある場合は、それを資本とみなしたときに自社の純資産がどう変わるかを見てみてください。
    そこに、銀行から見た自社の本当の姿があります。

    次回は「融資審査で見られる決算書のポイント」をお届けします。
    格付けを決める決算書を、銀行員はどこから、どういう順番で読んでいるのか。
    具体的な勘所をお伝えします。ぜひ続けてお読みください。

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    社長の「右腕」になる社外CFO。メガバンク出身。プライム上場企業執行役員経験。中堅中小企業には銀行との付き合い方を、ベンチャー企業には資金調達と成長の財務戦略を。銀行・コンサル・上場企業の現場で見てきた「お金の勝ち筋」をnoteで発信中。

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