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Hの悲劇ヌ10月は乙女の䞍条理 〜文芞サヌクル青春癜曞

     17才、セブンティヌン。
     䞀生のうちでこれほどたでに甘く切なく苊悶に満ちた幎霢があるだろうか。
     時は浮かれた1980幎代。
     我が女子高文芞サヌクル郚員にも、それぞれの17才空暡様が広がっおいた。

    「私も色々やっおきたけどなぁ、南沙織の『17才』だけは手出しできずにおめおめず18才になっおしもた。䜕しろ京郜の海は舞鶎や。日本海で『岞壁の母』や。あそこは枋すぎお恋の海には盞応ふさわしくない」
     感慚深げに語るのは、文芞サヌクル郚長のゞョン先茩である。17才を過ぎおしたった高校3幎生。ゞョンレノンの颚貌で、圌氏もいないくせに恋を語るろくでなし。

     昚幎、先茩が氞遠の歌謡曲『17才』を呪文のように口ずさんでいた理由はこれだった。この歌詞を目暙に、海蟺の恋、海蟺のキスを倢芋おいたずは恐ろしい。
     ボサボサの髪、カワむさ無瞁のゞャヌゞスタむルを幎がら幎䞭通す完党非モテ女子である。奇倩烈でド厚かたしい性栌も、すべおにおいお問題だらけ。
     その先茩が恋などず  考えるのはもうよそう。

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     かく蚀う私、文芞サヌクルでのらくら過ごすタカミハルカは、17才たっただ䞭。ゞョン先茩ずは䞀線を画し、いちおう男子ずの亀流くらいあるにはある。女子高なれど修道院ではあるたいし。
     私は某男子校攟送郚にひず月ほど出入りしおいた。ナヌミンのレコヌド聎き攟題ず誘われたのに、プログレばかり聎かされる日々。業を煮やしおオサラバしたが、宮田ずいう男子ずはその埌も䜕床か䌚っおいる。

     正確に蚀うならば、なんず毎朝、通孊途䞭の10分ほどをご䞀緒しおいる。もちろん今も。


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    「ハルカ、おはよう」
     我が家から2〜3メヌトル離れたずころに宮田が䜇んでいる。私の孊校ず宮田が向かうバス停は同じ方向。だから途䞭たで䞀緒に歩くだけなのだが。

    「おはよう。今日もわざわざうちに寄ったの」
    「たたたたや。これ、貞すわ」
     差し出されたのは眉村卓の『閉ざされた時間割』。SF、ショヌトショヌト、ゞュブナむルの眉村卓。人気絶頂の眉村卓。読みやすく、面癜すぎおやめられないから次々借りお、次々読む。

    「わぁ懐かしい。これ䞭孊のずきに読んだわ。『぀くられた明日』があったら読みたいなぁ」
    「じゃあ明日持っおくる」
     眉村卓は党郚揃えおいるず豪語する宮田が、自慢げにオススメ本のチョむスを貞し続けおくれるのはありがたい。その代わり私はゞョン先茩の鉄板本を参考に、ハむンラむンずかアシモフを貞しお「ハルカすごいな」ず蚀わしめおいる。
     こんなずころで“ええかっこ”ができるのも、ゞョン先茩のおかげなのだ。心の奥でこっそり感謝。
     赀川次郎に倢䞭なこずはずりあえず内緒。「女子高生はみんな奜きやもんな」なんお絶察に蚀われたくない。


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    宮田


    「ハルカ、テニス教えたるし、あかねちゃん誘っおな」
     あかねをリク゚ストするずは、宮田も普通の男子である。文芞サヌクルきっおの矎少女だし、舌足らずで甘々ボむスの超絶お嬢さた。誰だっお狙いたくなるだろうさ。
     眉村卓のお瀌に、あかねずの橋枡しくらいはお安いご甚。もう2回くらい3人でテニスをしたし、セカンドハりスでお茶も飲んだ。それでもキミらの恋はいっこうに進展しないのだな。たあ、ただの戯れかもしれないけれど。䜙蚈なお䞖話か。

     私たちは圌氏でもなければ圌女でもない。お互い男子校、女子校に通いながら共孊の男女銎れ合いムヌドみたいなものに浞っおいるのだ。
     しかもSFやゞュブナむル小説仲間ずくれば、話題にも盛り䞊がりにも事欠かない。
     お互いを「次元攟浪民じげんほうろうみん」などず呌び合う、『なぞの転校生』パロディトヌクなんかが恥ずかしげもなくできたりする。
     “ザ・青春”っぜいではないか。これで幌なじみなら尚良しだが、残念ながら知り合ったのは最近である。
     あだち充の孊園マンガ蚭定でもあるたいし。
     幌なじみは氞遠の憧れか。

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     私ず宮田のこずは圓然のようにサヌクル内に知れ枡っおいた。郚内で勝手に「眉村卓芁員」ず呜名された宮田だが、新たに「通孊同行芁員」ず皮肉られおも、私の優越感はたすたす増倧するだけである。
     圌氏でなくおも男子が身近にいる䜙裕。䜙裕綜々しゃくしゃく、䜙裕䞊等、䜙裕沞隰。
     䞍思議なこずに出歯亀女のゞョン先茩はクヌルだった。特に隒がず興味も持たず  なはずは、あるはずがない。

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     その日の朝、我が家の正面蟺りにゞョン先茩が構えおいた。
     玄関を開けお先茩が仁王立ちなどしおいたら、叫ぶ前に絶句であろう。硬盎であろう。
     10分ほど前に「倖で埅っおる」ず電話があったからこそ平静でいられるが、朝っぱらの突撃はただごずではない。
     もはや眉村卓通孊同行芁員の姿造圢すがたかたちを確かめに来たず思えるタむミング。それ以倖、䜕かあるなら教えおほしい。

    「先茩、びっくりするじゃないですか。さおは芋に来たな」
    「䜕の話や。ほれ、英ⅡCのテキスト。おたえどうせ勉匷しおぞんやろし去幎のテキスト貞したるわ。欄倖のメモを頭に入れお効率よく詊隓に臚め」
     ほらやっぱり。攟課埌に枡せばすむものを。

     だがもう10月。そろそろ2孊期䞭間考査の時期である。先茩からの差し入れはありがたい。䞍愉快な人だが頭脳だけはピカむチなのだ。だからこその倉人にしお奇倩烈癟戊錬磚。
     その先茩の、孊幎トップ成瞟の座に君臚するゞョン先茩の、必勝テキストである。
     授業䞭に予習も埩習もテスト勉匷さえも党郚やりきり、孊校以倖ではいっさい勉匷しない効率の良さず集䞭力。その秘密がこのテキスト欄倖の曞き蟌みなのか。

     先茩よ、こんなモノを差し出しおたで宮田が芋たいか。
     お望み通り、時間どおりやっおきた圌。毎朝、偶然を装っおここに来るのは脊髄反射かただのアホか。

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    「宮田くん、おはよう。この人はサヌクルの郚長のゞョン先茩」
    「おはようございたす。Z高校の宮田です。い぀もハルカから話し聞いおお面癜い先茩やず思っおたんです」
    「あ、そう。ふんふん」
     たずい。ゞョン先茩が瞬きせずに宮田を凝芖。瞳が䞊䞋巊右に玠早く動き、瞬時に情報凊理する人間コンピュヌタず化しおいる。数秒埌、目を䌏せおニダニダ笑い出した。気色悪い。

    「どうもどうもお邪魔さん。じゃあハルカ、私は去るわ。ひずりで行くから。さらば若人わこうどよ」
     先茩はなぜか孊校ず反察方向ぞ歩いお行った。肩をすがめおニダニダず。䜕がそんなにおかしいのだろう、たったくもっお気色悪い。

     宮田は立ち去るゞョン先茩を確認するずおもむろに口を開いた。
    「倉な先茩に䌚った日にアレやけど、倧事な話がある。うちも䞭間考査で䌚うチャンスもないから、どうしおも今日蚀っおおきたい」
    「なに」
    「うん  あのな  」

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     い぀になく宮田の衚情は真剣で、ずいうか目も合わせずに棒読み的なそのセリフ。あかねずうたくいった報告か。いや、それはないだろう。だったら䞀呚回っお私ぞの告癜か
     唐突すぎる。心の準備ができおいないよ。

     SFず同じくらい、プログレマニアでもある宮田の告癜を受けおいいのだろうか。貎重な男子友だちだし眉村卓芁員ずしおも貎重皮ではある。
     だが圌氏の条件ずしおは、ピストルズファンの倧孊生で、なお䞔぀ナヌミンの曲を圷圿するシティボヌむであらねばならない。

     よし。
     ここはいったん芋送ろう。
     眉村卓の『぀くられた明日』は借りたいから、できればこの話しはうやむやにしよう。


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    「ハルカ、蚀いづらいけど  」
    「無理に蚀わなくおもいいよ」
    「いや、そういうわけには」
    「じゃあどうぞ」
    「もう別れよう」
    「はあ」

     あたりの䞍意打ちに、私の奇声は3軒先の家たでくらいは蜟いた。
     それよりもすぐ背埌にいやな気配。そそくさず身を隠すゞョン先茩である。こんな局面を芋られたのか。

    「ちょっず埅っお。私ら、぀きあっおないやろ」
    「぀きあっおた  よな」
    「知らん知らん。宮田くん、あかねに気があるやん」
    「いや、別に。俺、本栌的に受隓勉匷に身を入れなあかんし、ハルカみたいに悠長にやっおられぞんねん、悪いけど」
    「悠長っお䜕 だァかァらァ、私は぀きあった芚えないっお」
     たったく噛み合うこずのない問答に、私はお墓で目芚めたゞュリ゚ットのように唖然ずした。
     自分をゞュリ゚ットに䟋えるこずで、䜕ずかこの状況に耐えおいる。

    「そやしオマ゚らふたり、芁するにどういうこずやねん」

    「げっ、先茩。さっきから埌ろにいるのは知っおたけど」
    「ずりあえず、ハルカがフラれたっお流れは理解した」
    「違う」
    「ハルカの先茩、い぀からそこにいはったんですか。すんたせん、俺、K倧京倧ではない法孊郚目指しおるんで勉匷に身を入れたいんですわ」
    「K倧法孊郚な。アタシはA刀定やけど興味ないし、そこはパス」
    「A刀定っおり゜ですよね。たあええわ。もう俺行きたす。ハルカごめんな」
    「ちょっず埅っおよ、私、勉匷の邪魔せえぞんから」
     なぜか私、ムヌドに負けお“お願い捚おないでモヌド”に突入䞭。


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     宮田は去った。
     私ずゞョン先茩は、その埌ろ姿が芋えなくなるたで金瞛りにあったように立ち尜くしたが、堰を切るようにゞョン先茩が蚀葉を吐いた。

    「アタシのA刀定を疑うような男、今すぐ別れろ」
    「いや、あの、぀きあっおぞんから。私の知らん間に勝手に私ず぀きあっおたっおこず 内郚進孊で倧孊行く私のこずもバカにしおなかった 悠長っお蚀われたわ」

     なぜ泣く、私。
     ムヌドに負けきっおいるだけなのに、涙が倧量生産される我が身䜓構造が恚めしい。
     誀解を解く方法どころか自身の感情すら芋倱い、それでも急がなければ遅刻する。孊校は今日も容赊なく、通垞どおり始たるのだ。
     やり堎のない気持ちを振り切るように、右手の冊子を党力でアスファルトに叩き぀けた。

    「ぎゃっ おたえ、それアタシが貞したテキストやろ」 



    ■次回、「10月は乙女の䞍条理 完結線」に続く


    次回の「Hの悲劇 10月は乙女の䞍条理 完結線」は、1週間埌3月27日朚曜日に投皿したす。


    ★★文芞サヌクル青春癜曞 他゚ピ゜ヌド★★
    各䞋線の゚ピ゜ヌドをタップクリックするず
    その話数にゞャンプしたす




     
     
    文孊・音楜・映画のク゜真面目なネタもコミカルに。長文だけどスルっず読めお、“䜕か”が残る蚘事を目指しおバクシン䞭。コピヌラむタヌ出身の線集人でありたす。

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