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【短線小説ラむト文芞】毎日ナヌロ分のカフェず旅 4000字

    [HL俺は別に旅が奜きなわけじゃない]

    「ボンゞュヌル、ムッシュヌ。どうか私にカフェを䞀杯、奢っお頂けたせんか」
     たどたどしい声を䞍審に思っお顔を䞊げれば、目の前には奇劙な栌奜のアゞア人が䜇んでいた。誰
     ハンチングに野暮ったいポンチョ、刺繍入りのシャツにゞヌンズ、草臥れたスニヌカヌ、それから山に登るんだろうかずいうような倧きなリュック。党おにちぐはぐで迷子みたいだ。男か女かも、幎霢もよくわからない。若そうな気はするけれど、アゞア人はなぁ  。
     そんな颚に芋぀めおれば目がふよふよず泳ぎだし、プルっず銖を振っおたた俺に向き盎り、ペコリず頭を䞋げた。
    「ここで路銀が぀きたした。パリのカフェに憧れおいたしたので是非。代わりに私の話でもお慰みになりたしたら」
     路銀 お慰み 叀い映画みたいな劙な蚀い回しをする。
     ああ、ひょっずしお自分探しの旅ずいうや぀か。アゞアの人間は䜕かを探しお旅に出るず前にテレビで蚀っおいた。自分なんかここにあるのに倖で䜕を探すんだろうず思ったものだ。そういえば俺はこのパリが奜きだから、あんたり倖に旅行に行くこずもないな。
    「あの、ムッシュヌ」
    「あ、ああ。カフェ」
     おごるっお蚀ったっおなぁ。けどわざわざこのパリたで来たっおいうなら、杯くらいいいじゃないか。たったナヌロだ。ここは俺のお気に入りのカフェで、もう幎ばかりこの時間は毎日この路面の垭に座っおいる。倏になったら汗を拭き、冬になったらコヌトの襟を立おながら。それが俺の生掻で、それがゆずりで、たあ人生だ。

     銎染みの店員におかわりのサむンを送っおアゞア人に座るように促せば、その前に俺ず同じデミタスカップが運ばれる。そい぀はわかりやすく目をキラキラ茝かせ、メルシヌありがずうず唱えお䞀口飲んで顔をしかめお舌を出した。
    「結構苊いんですね」
    「甘いのがいいなら砂糖を入れればいい」
     それで過剰なほど投げ蟌たれる砂糖に少々蟟易する。あの苊いのが食埌の口盎しにいいのに。けれど俺に捕たったのが運の぀きだ。フランス人はたいおいお喋り奜きだ。たったナヌロで暇぀ぶしができるなら、願ったり。
     それに  最近、少々疲れおいた。仕事が忙しすぎお仲のいい友達ず飲む時間もなくお、このカフェで圓おどなくがんやりするくらいしか気分転換できる時間がなかったから。
    「それで話っお 君はどこからきたの」
     そう尋ねるず、なんだか興味たで出おきおしたった。目の前で埅っおたしたずばかりニコリず埮笑んだものだから。
    「日本から来たした。か月月くらい前かな、唐突にドバむに行っおみたくお」
    「ドバむ」
    「そう、ブルゞュハリファ テレビで芋お、行きたくなったんです」
    「ぞぇ」
     ブルゞュハリファっお砂挠の真ん䞭にある䞖界で䞀番高いビルなんだっけな。テレビでみたこずがある。けど行こうず思ったこずは  正盎ない。だっお高いだけだろう なんずなく倖からの映像が思い浮んだけれど、そういえばあの䞭っおどうなっおるんだ オフィスずかがあるのかな。

     気が付けばそう声に出おいたらしい。
    「展望台があるんです。結構チケットが高いんだけど階の展望台はオヌプンデッキになっおいお、すっごい遠くたで芋えるんです。海の向こうなんおふわっず霞んでいお」
     アゞア人はポンチョの内偎からスマホを取り出す。そこに移るビュヌはなんだか確かに、ずおも広かった。海っお地面に匵り付いおるんだ、そう思えた。けどやっぱり、あんたり䟡倀があるずは思えなかった。
    「飛行機から芋た景色みたいだ」
    「たぁ、確かにそうですね。けど盎に目で芋えたす。これずか」
     その写真に肝が冷える。真䞋を映した写真はたるで萜っこちそうだ。これは  むしろ盎に芋たくない。高い建物かぁ。パリにはあんたりないな。モンパルナスタワヌが䞀番高いのか。あれも確か階だけれど、なんだか画角が違うず感じる。䞀床前の圌女ず行ったこずがあるけれど、飛行機に乗っおるみたいな感芚にはなれなかった。
    「でも予玄しおいかなかったせいで結構䞊んだんですよね」
    「ぞぇ。入堎料も高そうだ」
    「入堎料はえっず䞇円くらいだから  ナヌロくらいかな。たあレヌトによるけど」
     日本人はスマホを蚈算機に切り替えた。
     ただ芋るだけなのに、結構するなぁ。
    「興味ありたすか、ドバむ」
    「いや、俺はいいかな。他にはどこに行ったの」
    「ええず、そのあずはお隣のカタヌルに行っお、ドヌハでザ・パヌルっおいうずころに行きたした。人工で䜜られた島で、灣を䞞くビルがかこっおいるんです」
    「ぞぇ」
     そのザ・パヌルずいうずころは面癜いようには思えなかった。芳光のHPの航空写真を芋お、挞く玍埗する。これだずHPを芋おるのずあんたり倉わらなくお぀たらない。
    「ご飯も矎味しかったんですよ、䞭東料理ずかポルトガル料理ずか」
     そこで芋せられたどこか茶色い料理は、あんたり興味をそそられなかった。やっぱフレンチが䞀番だ。パリでもケバブ屋ずか倚いけれど、食べなれたものが䞀番だず思う。
     そこからトルコに飛行機で枡り、俺でも知っおるカッパドキアを芳光した写真なんかを眺めながら東欧の叀城を蚪れたりしお、次第にフランスに近づいおきお、だんだん芋慣れた景色になっおきおホッずするず同時に、なんだかむマむチ぀たらなくなっおきた。ノむシュバンシュタむン城なんかだず半日匱くらいはかかるけど鉄道で行ける。

    「ごちそうさたでした」
     気が付けば分ほどは話し蟌んでいお、目の前のアゞア人のカップは既に空になっおいた。ナヌロで随分時間を朰せたものだ。
    「それにしおもよくこれだけ䌑暇がずれるね。バカンス」
    「いえ、仕事をやめお飛び出したんです」
    「は」
     日本人は盞倉わらずにこにこしおいる。アゞア人は䜕を考えおいるかよくわからない。だから少し譊戒した。バカンスじゃなく、仕事を蟞めお 突然 キャリアは それずもこれが、自分探しずいうや぀
    「無蚈画すぎる」
    「あはは、そうなんですよね。実はお金ももうなくなっおしたっお。日本を出るずきは結構持っおたんですけど」
     聞けばそれなりの金額だ。確かにこの日皋を考えればそれくらいはかかるだろう。それで確かにこの日本人がカフェを奢っおくれずいっおいたのを思い出し愕然ずした。
     䜕、じゃあこい぀は䞀文無しなのか その金があれば、なんでもできただろう 将来のために資産を圢成するずか投資をすべきじゃないか。俺にずっおはこの旅皋は無駄にしか思えない。確かに芋たこずもない景色を芋たけれど、そんなもの今はVRがある。自分で行くほど、だろうか。
    「そんなにお金を䜿っお旅をしお、䜕か埗られたの」
    「䜕も」
    「䜕も」
    「ええ。こんなにお金がかかるずは思いたせんでした」
     酷くあっけらかんずしたその蚀葉に、あきれ果おる。
    「私も最初は途方にくれたんです。今あるお金党郚぀かっちゃったらどうしようかなぁっお」
    「その結果の䞀文無しなんじゃないの」
     日本人は肩をすくめた。
    「そうなんですよ。でもお金っお結局、なくなっちゃうじゃないですか。䜕かに倉わっおいくもので、お金自䜓には意味がない、きっず」
    「意味」
    「そう。私はお金を䜿っお自分がしたいこずをするこずにしたした」

     その蚀葉に、俺は衝撃を受けた。
     俺は毎日働いお金は通垳のなかにたたっおいる。けれど、したいこず
     改めお考えるず、よくわからない。俺の生掻は毎日カフェに通っお、倜には矎味いワむンを傟ける以䞊に䞊等なこずがあるだろうか。
     けれどそれは今の生掻で皌ぐ金で十分賄えおいる。それを超える、したいこずなど、特にないな。そう思うず目の前の日本人は䜕か自分より幞犏そうにみえお少し癪になっおきた。
    「ムッシュヌには欲しい䟡倀はありたせんか」
    「  特にはないな。俺は旅がしたいずは思わないが、そういう考え方もあるだろうずは思う。けれどそれはやっぱり、金があるからこそだろう」
     そう答えるず、日本人はゎクリず喉を鳎らし、少しためらいがちに目を泳がせた。
    「では  私ずサブスクしお頂けたせんか」
    「なに サブスク」
    「ええ。埡存じの通り私は今お金がありたせん。泊るずころは  そろそろ凍死しそうですが、䞀晩くらいはなんずかなりたす」
    「安いホステルでもあるだろ」
     そのくらいの費甚なら出しおやっおもいい。その皋床には面癜かったから。そう思えば日本人は胞の前で腕を組んだ。
    「月に回ほどカンパを頂ければ、これから回った堎所を写真付きでメヌルしたす。配信もしおいたすから、様子をご芧いただけたす」
    「えぇ  」
    「次はスペむンからアフリカにわたる予定です」
    「アフリカ   興味ないな。スペむンも行こうず思えばいけるし  」
     でも断れば、こい぀は野垂れ死ぬのか さすがにそれは寝芚めが悪いが、こい぀のスポンサヌになれるほどの金はない。金はあっおのものだねで、金がなければしたいこずなどできないのだ。
    「ムッシュヌはカフェを奢っおいただけたした。毎日杯皋床の金額を月に床ほど頂ければ、旅を続けられたす」
    「そんな銬鹿なわけがあるか」
     そんな倀段じゃせいぜい安いホステル泊分くらいにしかならん。
    「他に支揎しお頂いおいる方がいらっしゃるので  あず日したら他の方サブスク頂けるはずなんですが  」
     日本人の目は盞倉わらず泳いでいる。日ナヌロ、月にナヌロ。安いホステルはナヌロくらいからあるな  。
     確かにこの䌚話にはナヌロの䟡倀はあった、ずは思う。それにそのくらいなら、さしお負担にはならない。ナヌロ、か。
    「月ナヌロならいいよ。それで日も぀だろ」
    「ありがずうございたす」
    「けどあきたら蟞めるから」
    「もちろんです」
     そんなわけで財垃からナヌロだしお日本人に枡す代わりにDiscordのアドレスをもらった。確かに過去ログを芋るず、旅行蚘が写真や動画付きでUPされおいた。実際に行くよりはよほど安いし、芳光料金付きでリク゚ストすれば期埅に沿っおくれる。
     それで、その日本人は今、スペむンのタリファからモロッコに枡るフェリヌの䞭にいお、俺はい぀ものカフェでがんやりその実況を芋おいる。

    了

    #私のお金の䜿い道

    ★䌌た系列の話

    コペンハヌゲンのトランゞットで人ず出䌚う話。

    ★短線小説のマガゞン

    #小説 #短線小説 #ショヌトショヌト #私の䜜品玹介


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