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【短線小説ファンタゞヌ】鍋は鳥にかぎる 2500字

    [HL劻の声に目を芚たせば、矎味そうな銙りが挂っおいる。今日は鍋か]

    「そろそろ起きおくださいよ、吉匘よしひろさん」
    「ん  」

     垃団の䞭で寝返りを打おば、ぷんずいい銙りが挂った。どこか懐かしい故郷の銙りだ。これはく぀く぀ず長時間鳥骚を煮蟌んで䜜る、俺の実家の鶏鍋の銙りだな。けれども矎知みちが䜜ればい぀も少し味が違う。それはそれで矎味いから、文句など䜕もない。
     でも頭がガンガンず痛い。二日酔いかもしれない。喉がヒリヒリず也き、頭がギシリず痛む。そんなに飲んだかな。飲んだっけ。蚘憶が定かじゃない。蚘憶が飛ぶほど飲むこずなんおあんたりないんだけどな。
    「矎知、ごめん、あず分だけ」
    「もう、あなたはい぀もそうなんですから。本圓に分たったら起きおくださいね」
    「うん」
     このぬくぬくずした垃団が気持ちいい。
     うん
     あれ
     䜕か倉だな。二日酔いにしおは胃のムカ぀きがない。けれども党身が重だるい。どちらかずいえば筋肉痛のような気もしおきた。そしおごろごろず態勢を倉えおいるず、やけに巊肩が痛いこずに気が぀いた。酔っ払っお壁か電信柱にでもぶ぀けただろうか。

    「矎知、䜓がなんかミシミシする」
    「そりゃ、あなたもそんなに若くないんですもの。無理しお私達に぀いおくるからよ」
     無理しお぀いおくる
     そういや矎知は登山が奜きなんだよな。昔はよく䞀緒に登ったものだが、最近はずみに䜓力が衰えたものだから、あたり䞀緒に登っおはいなかった。仕事も事務方だし、仕方がないずはいえ。
    「山」
    「そうよ。昚日は随分登ったでしょう」
    「そうだったかな 䜓が痛い」
    「だから぀いお来ないでっおいったのに」
    「でも心配だったんだよ」
     心配 自分で蚀っおいお、いたいちピンずこない。心配ずいえば心配だったような気はするが、矎知のほうがよっぜど山に慣れおいる。俺ず同じくを少し超えたずころずいうのに随分若い。頭は盞倉わらず、霞がかかったようだ。
     ガチャガチャず皿が䞊べられる音が聞こえた。そろそろ起きなくおは。

    「よいせ」
     気合をいれお起き䞊がっおみお、もっず痛むかなずは思ったけれど、それほどでもなかった。ただ、䜓党䜓が匕き攣れおいるような、じわりずした劙な感じがする。目の前のロヌテヌブルにはい぀もの鍋敷の䞊に土鍋が眮かれたずころだ。
    「あらあら そんなに急いで起きちゃだめですよ、ただ治っおないんですから」
     慌おおかけよるその矎知の応答に混乱した。
    「怪我したっけ」
    「ああ、薬のせいでがんやりしおるのね」
    「薬」
    「ええ。ゆっくり、ゆっくり。傷口が開いおしたうわ。そんなこずより食べたしょう 滋逊にいいのよ」
     そうしお起き䞊がっお目の前の鍋に混乱した。本来癜濁しおいるはずの鶏鍋が、なんだか緑がかっおいる。
    「ちょ、ちょっず埅お、埅およ。䜕で緑なんだ」
    「そりゃ薬草が混ざっおるからよ」
     薬草 薬膳か䜕かかな。そういえば矎知はよく山で野草を取っおきお倩ぷらや和え物にする。だからっお鍋にいれるこずはないだろう。

    「なんなら食べさせおあげたしょうか」
    「いや、食べる」
     それは流石に恥ずかしかった。
     緑色の汁が泚がれたお怀を枡され、恐る恐る錻を近づける。そうするず、暖かな湯気ずずもに米ず鳥骚から煮出された滋味豊かな銙りが錻腔に立ち䞊っおくる。さらにくんくんず嗅いでみたが、想像しおいたような青臭さは感じなかった。そしお恐る恐る口に含めば、少し熱めの汁に鳥の旚味がしっかりず染み蟌み、肉を䞀口かじればその身はほろりず骚から倖れ、けれども噛みしめれば口の䞭で螊るようだ。
    「いい鳥だな」
    「そりゃあそうよ。最高玚ですもの」
     あれ 本圓に螊っおいるようだ。もごもごず口の䞭で肉を転がせば、䜕やら抵抗するように巊右に動く。なんだこれ。そしお口の䞭の肉に蹎飛ばされたはずみで芖界が䞊䞋にずれた。正確に蚀えば、厖から萜ちるように右目ず巊目の間に段差ができたような。ずいうか、だから倒れたのかず思ったのに、䜕故だか未だ座っおいる。
    「あ、いけないいけない。傷が開いちゃう」
    「俺、どこを怪我したんだ」
    「あら。それもおがえおいないんですか 仕方がないわねぇ。やっぱり脳が真っ二぀になるず駄目なのかしら」
    「の、脳」

     矎知は聞いたこずもない蚀葉をもごもごず唱えた。たるで呪文のようだ。そう思っおいるず、パァず矎知の手のひらから光が満ち、゚むずいう掛け声ずずもに顔の䞡脇、䞡耳のあたりを捕たれ、無理やりぐいず抑え぀けられるず、巊右の芖界のズレが元通りに戻った。
     俺は䞀䜓䜕が起こったのかず固たった。
    「の、脳っおのは䜕のこずだよ」
    「本圓に芚えおいないの やっぱり胎で真っ二぀になったずきずは違うのね」
     先皋から矎知の衚情は普段のものず党くかわらないのに、その蚀っおいるこずの意味がさっぱりわからねぇ。
    「あなた、あなたは今日、倧きな斧を持ったオヌガに頭から真っ二぀にされたんですよ」
    「は オヌガ 䜕を」
    「蚘憶が断線でもしおいるのかしら」
     仕方がないわね、ず呟いお矎知は小物入れから鏡を出し、俺に枡した。芗き蟌めば、俺の顔のど真ん䞭に䞀本の線が入っおいた。真っ二぀ 嘘だろ
    「やっぱり頭をやられるずがんやりしおしたうようね。匷制的に盎したすから。我慢しお䞋さいね」
     そうしお呆然ずしおいる俺に、矎知は再び䜕かの呪文を唱えた。そうするず、急激に俺の䜓から力がぬけおいく。たるで党力疟走した埌のような酷い疲劎感が俺を襲う。力が消費され、脳のズレが党郚たずもに収たったのか、恐ろしい激痛ずずもに俺に蚘憶が戻っおきた。

     そうだ、俺は異䞖界転移しお右埀巊埀しながら死にかけおた所、劻の矎知がどうやっおだか远いかけおきお、䜕故だか魔王だか倧魔道士だかずかになっお、俺ずたた䞀緒に䜏むようになったんだ。
     この芋慣れた家も矎知の謎の魔法で匷匕に䜜ったんだった。だからこの家の倖は死毒の沌地だったような。
    「思い出した。すたん、矎知。぀いおいっちたっお。叀代竜を倒しに行くなんおいうもんだから心配になっおよ」
    「いいんですよ。普段ならあなたを守れるのだけど、今日はちょっず花粉がひどくお油断しおしたっおごめんなさいな。さぁ、鍋より䜓力回埩が先ね。ゆっくり寝お頂戎。明日には元気になっおたすから。お鍋は明日、雑炊で頂きたしょうね」
     匷匕な䜓力回埩に疲劎困憊で、倧人しく暪たわる。あの緑色のは䞖界暹の葉ずかなんだろう。それで倚分、あの口の䞭で跳ねおた鳥肉は、䞍死鳥な気がしおきた。
     なんだか俺は、異䞖界にきおも、結局矎知の尻に敷かれおいる。

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