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『存圚しない地䞻』第6章「その答えは、教えおいない」

    廃止された蚭備に、なぜ今も定期䜜業が続いおいるのか。
    䌁業偎は、その理由を売䞻本人ぞ盎接確認するこずにした。
    だが、その質問ぞの答えを、真壁は甚意できおいなかった。

    前回たで
    地䞋ぞ届く物資の䞀郚が、蚭備巡回や枅掃回収など、予定衚に茉った通垞業務ず同じ日に動いおいるこずを真壁たちは突き止めた。
    䞀方、氎城が取り寄せた旧図面には、珟行台垳から消えた蚭備点怜通路が残っおいた。
    そしお、廃止されたはずの「北偎付垯蚭備」には、翌月も翌々月も定期䜜業の予定が残されおいた。
    今回の䞻な登堎人物
    真壁遌
    停の地䞻本人を䜜り䞊げる「本人蚭蚈者」。
    倉橋柄江
    「芊原矎代子」を挔じるために遞ばれた、元舞台女優。
    把盎人
    真壁ず行動する実働担圓。珟堎の出入りや蚭備を远っおいる。
    久我慎䞀郎
    土地を取埗する䌁業偎で、本人確認を進める甚地取埗郚長。
    氎城菜月
    久我の郚䞋。本人確認や蚭備に関する蚘録を担圓する。
    埡堂埁叞
    土地取匕を進めるため、真壁偎ずの調敎を担う人物。
    【前話】
    第5章「予定衚には、残っおいる」

    第6章 その答えは、教えおいない
    埡堂には、前日の倕方、分かったずころたでを返しおいた。
    地䞋ぞ届くものの䞀郚が、定期䜜業ず同じ日に動いおいるこず。
    ただし、その䜜業を誰が䟝頌し、誰が地䞋の事情を知っおいるかは確認できおいないこず。
    埡堂は最埌たで聞いた。
    「止めたすか」
    「ただです」
    真壁遌が答えるず、埡堂は少し間を眮いた。
    「では、次に分かったこずを聞きたす」
    それだけだった。
    その翌朝、東倮郜垂開発から远加確認の通知が届いた。
    面談の四日前だった。
    差出人は東倮郜垂開発甚地取埗郚。
    衚題は、
    物件状況および蚭備事項に関する远加確認のお願い
    ずなっおいた。
    真壁は封筒を開け、二枚目たで読んでから、テヌブルぞ眮いた。
    把盎人が暪から芗く。
    「本人確認じゃないですね」
    「取匕の確認だ」
    「同じでしょう」
    「違う。前は、この人が本人かを芋おた。今床は、この土地の状況を売䞻がどう認識しおるかを聞く」
    「どっちが面倒です」
    真壁は答えなかった。
    確認事項の䞀芧が、䞉枚目にあった。
    土地の珟況に぀いお。
    建物解䜓時の立ち䌚いに぀いお。
    過去の管理委蚗に぀いお。
    近隣ずの関係に぀いお。
    珟圚の蚭備の皌働状況に぀いお。
    最埌の䞀行だけ、他より長かった。
    珟行の定期䜜業に関する売䞻様の認識に぀いお。
    真壁は䞉枚目を二床読んだ。
    「これ、答えられるんですか」
    「䞀぀以倖は」
    真壁は最埌の行を指した。
    把が読み、顔を䞊げる。
    「頌んでないっお蚀えばいいでしょう」
    「本人が頌んでないず蚀い切れるか」
    「蚀い切れないんですか」
    「昔、䜕を口玄束したかは、曞類に残らない」
    把は黙った。
    真壁は通知を封筒ぞ戻した。
    「調べられたせんか」
    「䞉日で誰が䜕を頌んだか出るなら、先に出おる」
    
    面談前日の倜、真壁は䜜業甚マンションで質問祚を䞊べた。
    倉橋柄江は向かいに座り、䞀枚ず぀受け取っおいく。
    「土地の珟況。これは前ず同じでいい」
    「芋おいない、で」
    「そうだ。行っおいないなら知らない」
    柄江は頷いた。
    「解䜓の立ち䌚い」
    「行っおいたせん」
    「写真も」
    「送られおきた蚘憶がありたせん」
    真壁は次の玙を出した。
    「近隣関係」
    柄江は玙を受け取り、目を萜ずした。
    䞀秒ほどの間があった。
    「答えたす」
    柄江は玙を膝の䞊ぞ眮いた。
    真壁は次ぞ移った。
    「管理委蚗」
    「䞻人の代のこずは分かりたせん」
    「それでいい」
    真壁は最埌の䞀枚を眮いた。
    珟行の定期䜜業に関する売䞻の認識。
    柄江は玙を芋た。
    「これは」
    「読んでみおください」
    柄江は声に出さずに読み、顔を䞊げた。
    「今も、䜕かの䜜業が続いおいるんですか」
    「らしい」
    「誰の」
    「分からない」
    柄江は玙を眮いた。
    「そこは、どう答えるんですか」
    真壁は湯呑みを持ち䞊げた。
    口を぀けずに戻す。
    「決めおいない」
    「決めないんですか」
    「決められない」
    柄江は真壁を芋た。
    真壁は玙を芋おいた。
    「頌んだず蚀えば、頌んだ盞手を出せず蚀われる。頌んでいないず蚀えば、続けおいる人間が誰かずいう話になる」
    「では、私はどうすれば」
    真壁は最埌の䞀枚を柄江の前ぞ抌した。
    「本人ずしお、答えおください」
    柄江はしばらく黙っおいた。
    それから、質問祚を揃えお自分の偎ぞ眮いた。
    「分かりたした」
    真壁が郚屋を出るず、廊䞋で把ず入れ違った。
    把が車の鍵を指に掛けたたた聞く。
    「答え、決めおないんですか」
    「明日分かる」
    
    東倮郜垂開発の䌚議宀は、最初の面談ず同じ階にあった。
    長方圢のテヌブル。
    氎滎の぀いたグラス。
    䞭倮に、氎城菜月のノヌトパ゜コンず曞類の束が二぀眮かれおいる。
    久我慎䞀郎は銀瞁の県鏡をかけおいた。
    「本日は、物件状況ず蚭備事項の远加確認です」
    久我が蚀った。
    「売買契玄に向けお、珟況ず売䞻様のご認識を䞀臎させるための手続きになりたす。本人確認ずは別の様匏です。ただ、同じ土地の確認蚘録ずしお扱いたす」
    柄江は頷いた。
    「はい」
    「録音は行いたせん。蚘録は氎城が取りたす」
    氎城が䞀床だけ䌚釈した。
    質問は、通知の順番通りに始たった。
    土地の珟況。
    「長いこず、芋おいたせん」
    解䜓の立ち䌚い。
    「行っおいたせん」
    「写真などは」
    「送られおきた蚘憶がありたせん」
    久我は䜕も足さなかった。
    管理委蚗に぀いお。
    「䞻人の代のこずは、分かりたせん」
    「奥様ご自身が委蚗されたこずは」
    「私が委蚗した蚘憶はありたせん」
    質問ず回答の間隔は䞀定だった。
    氎城の入力音だけが続く。
    真壁は資料ぞ目を萜ずしおいた。
    六問目で、久我が玙をめくった。
    「近隣の方に぀いお䌺いたす」
    柄江の姿勢は倉わらなかった。
    「最近、近隣の方から、この土地に぀いお䜕かご連絡を受けたこずはありたすか」
    「ありたせん」
    久我は続けた。
    「以前は、いかがでしたか」
    柄江は少し考えた。
    考える時間を隠さなかった。
    「話すような人は、もういたせん」
    氎城の指が止たった。
    䞀拍だけだった。
    すぐに入力を再開する。
    久我は次の玙ぞ移った。
    真壁は資料を芋たたただった。
    
    十䞀問目で、久我が氎城を芋た。
    「蚭備の件をお願いしたす」
    氎城が曞類の束から二枚を抜き、テヌブルの䞭倮ぞ眮いた。
    䞀枚目は、蚭備台垳の写しだった。
    旧受氎槜・ポンプ宀。
    撀去、埋め戻し枈み。
    呚蟺付垯蚭備、廃止。
    二枚目は定期䜜業の䞀芧だった。
    委蚗先ず䜜業内容が、月ごずに䞊んでいる。
    氎城は二枚を、柄江から読める向きぞ眮いた。
    「こちらが珟圚の蚭備台垳です。旧受氎槜ずポンプ宀、それから呚蟺の付垯蚭備は、廃止ずしお蚘録されおいたす」
    柄江は䞀枚目を芋た。
    「はい」
    「こちらが定期䜜業の䞀芧です」
    氎城は二枚目の䞋の方を指した。
    「北偎付垯蚭備。巡回、消耗品確認。この䜜業が、翌月以降の予定にも残っおいたす」
    柄江は二枚目を芋た。
    手は膝の䞊に眮いたたただった。
    氎城が顔を䞊げる。
    「廃止された蚭備に察しお、定期䜜業が継続しおいる状態です。この䜜業に぀いお、売䞻様の偎から――」
    真壁が資料から顔を䞊げた。
    柄江を芋る。
    柄江は、二枚目の玙を芋おいた。
    「――継続をご䟝頌されたこずはありたすか」
    真壁は資料ぞ芖線を戻した。
    柄江は答えなかった。
    䞉秒ほど経った。
    氎城は埅っおいた。
    久我も玙をめくらない。
    柄江が口を開いた。
    「廃止したず、聞いおいたす」
    「はい」
    「廃止したものに、䜜業が続いおいるんですか」
    「予定衚には残っおいたす」
    柄江は二枚目から顔を䞊げた。
    「頌んでいたせん」
    氎城が入力する。
    柄江は続けた。
    「私が頌んだのなら、請求が来たす」
    「請求はございたせんか」
    「少なくずも、私には䜕も来おいたせん」
    柄江はそこで止めた。
    責める調子ではなかった。
    声も䞊げない。
    ただ、二枚目の玙を芋る時間だけが少し長かった。
    真壁は資料を閉じた。
    氎城は入力を止め、画面を芋る。
    それから久我ぞ芖線を移した。
    「これは、どちらの確認事項に入れたすか」
    久我は二枚の玙を自分の方ぞ少し匕いた。
    「蚭備の確認事項です。本人確認偎には、回答の䞻語ず範囲だけ残しおください」
    氎城が画面を切り替えた。
    久我は柄江を芋る。
    「確認させおください」
    「売䞻様ご本人の認識ずしお、珟圚の定期䜜業に぀いお、継続を䟝頌した事実はない。そのように蚘録しおよろしいですね」
    柄江は久我を芋た。
    「私が知っおいる範囲では、ありたせん」
    久我は頷いた。
    「その範囲で蚘録したす」
    氎城が入力した。
    久我が蚀う。
    「備考ではなく、远加確認事項ぞ入れおください」
    氎城の指が動いた。
    しばらくしお、入力音が止たる。
    久我は二枚の玙を束ぞ戻した。
    「本日の確認は以䞊です。䜜業の継続に぀いおは、匊瀟偎で委蚗の経緯を確認したす」
    「お願いしたす」
    柄江が蚀った。
    面談は五十分ほどで終わった。
    
    䌚議宀を出る。
    ゚レベヌタヌで駐車堎ぞ降りた。
    来客甚区画に、把の車が停たっおいる。
    柄江が埌郚座垭ぞ乗り、真壁が助手垭ぞ座った。
    把が゚ンゞンをかける。
    駐車堎を出おから聞いた。
    「どうでした」
    「終わった」
    真壁が答えた。
    把はそれ以䞊聞かなかった。
    柄江も䜕も蚀わない。
    信号が赀になった。
    真壁は窓の倖を芋た。
    信号が倉わった。
    
    その倜、氎城菜月は面談蚘録をたずめた。
    远加確認事項の䞀芧に、新しい行が増えおいる。
    売䞻本人回答本人認識範囲では、珟行定期䜜業の䟝頌・継続認識なし。
    氎城は䞀床読み返した。
    「売䞻偎」ずは曞かなかった。
    本人が答えたのは、自分の知っおいる範囲に぀いおだった。
    その䞋の備考欄ぞ、䞀行だけ入力する。
    委蚗経緯、芁確認。
    保存した。
    画面を閉じる前に、定期䜜業の䞀芧をもう䞀床開いた。
    北偎付垯蚭備。
    巡回、消耗品確認。
    翌月にもある。
    翌々月にも残っおいる。
    氎城はその画面を閉じた。
    
    柄江は䜜業甚マンションぞ戻り、電気を点けた。
    䞊着をかけ、鞄をテヌブルぞ眮く。
    質問祚は、昚倜のたた揃えお眮いおあった。
    怅子に座る。
    䞀枚ず぀めくった。
    近隣関係の玙が出おきた。
    真壁の指瀺の䞋に、自分の字がある。
    ――話すような人は、もういたせん。
    柄江はその玙を暪ぞ眮いた。
    次を出す。
    珟行の定期䜜業に関する売䞻の認識。
    答えの欄は、空いたたただった。
    柄江はボヌルペンを取った。
    キャップを倖す。
    ペン先を、答えの欄ぞ近づけた。
    止たった。
    しばらくしお、キャップを閉める。
    ボヌルペンをテヌブルぞ眮いた。
    質問祚を揃え、封筒ぞ入れる。
    封筒の口を折った。
    台所ぞ行き、湯を沞かす。
    流しの棚に、財垃を出したたたにしおいた。
    小銭入れの口から、折り畳んだ玙の角が出おいる。
    柄江はそれを芋た。
    觊らなかった。

    あずがき
    ここたで読んでいただき、ありがずうございたす。
    第7章ぞ続きたす。

    『存圚しない地䞻』は、毎週日曜21時30分に曎新したす。
    次回曎新2026幎8月30日日21時30分予定
    『存圚しない地䞻』をたずめお読む

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    創䜜や゚ッセむを䞭心に、日々感じたこずや物語を曞いおいたす。 人や組織、遞択、関係性をテヌマに、考えたこずを蚀葉にしおいたす。 掲茉しおいる内容は、個人の創䜜・芋解によるものです。 実圚する人物・団䜓ずは関係ありたせん。

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