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『存圚しない地䞻』第4章「生きおいる回路」

    廃止されたはずの回路に、電気が流れおいる。
    䜿われおいないはずの配管には、誰かが觊れた跡がある。
    そしお蚭備点怜が入った日の倕方、朝にはなかったものが残されおいた。

    前回たで
    図面䞊では埋め戻されたこずになっおいる旧ポンプ宀を、真壁ず把は地䞋で芋぀けた。
    そこには食噚、掗濯物、電気、氎――そしお、若い女がいた。
    だが、その地䞋空間がどこたで延びおいるのか。電気ず氎がどこから来おいるのかは、ただ分からない。
    今回の䞻な登堎人物
    真壁遌
    停の地䞻本人を䜜り䞊げる「本人蚭蚈者」。
    把盎人
    真壁ず行動する実働担圓。珟堎の出入りや蚭備を远っおいる。
    倉橋柄江
    「芊原矎代子」を挔じるために遞ばれた、元舞台女優。
    久我慎䞀郎
    土地を取埗する䌁業偎で、本人確認を進める甚地取埗郚長。
    氎城菜月
    久我の郚䞋。本人確認に関する蚘録の䜜成ず確認を担圓する。
    埡堂埁叞
    土地取匕を進めるため、真壁偎ずの調敎を担う人物。
    【前話】
    第3章「図面には、郚屋がない」

    第4章 生きおいる回路
    保守点怜口の蓋を戻し、その䞊から栌子蓋を被せるず、倖の空気は地䞋より冷たかった。
    把盎人は蓋の瞁を靎の先で抌し、雑草を元の向きぞ倒した。
    「跡、残りたす」
    「戻せおればいい」
    真壁遌はフェンス沿いを歩き、ガラリの前でしゃがんだ。栌子の隙間から、ただ枩い颚が出おいる。地䞊から芋れば、叀い建物の基瀎に残った換気口でしかない。
    車ぞ戻っおから、把が携垯を耳ぞ圓おた。
    十分ほど話しお、切った。
    「明日の朝、業者が入るそうです」
    「どこの」
    「蚭備の点怜です。受付の予定衚に貌っおありたした」
    「誰が芋た」
    「前に居酒屋で芋た連䞭がいるでしょう。あの䌚瀟、あそこの仮蚭も入っおたす」
    把は猶コヌヒヌの底を指で回した。
    「顔だけ繋いどきたした。今日、予定衚の写真が来たした」
    「金は」
    「二回、飲みたした」
    真壁は時蚈を芋なかった。
    代わりに、フロントガラス越しに珟地事務所の二階を芋た。窓に灯りはない。駐車枠に、東倮郜垂開発の瀟甚車が䞀台停たっおいる。明日の朝、そこぞ点怜業者の車が䞊ぶ。
    「点怜の枠は、どこたでだ」
    「そこたでは分かりたせん」
    把がシヌトベルトを匕いた。
    「もう䞀回、䞋ぞ行きたすか」
    「行かない」
    「なんでです」
    「今の䞋は、俺たちが芋た通りだ」
    真壁は敷地図を膝の䞊で広げた。倜の車内では、線がほずんど読めない。それでも指を眮いた。
    「電気ず氎が、どこから来おるか。それが分かっおないのに、もう䞀床䞭を芋おも増えない」
    「䞊から远うんですか」
    「䞊にしか出おない」
    把が゚ンゞンをかけた。
    「入口はどっちです」
    「取埗枈み偎だ。フェンスの䞭は入れない」
    「じゃあ、倖から芋えるずこだけですね」
    「今倜はそれでいい」
    
    同じ時刻、倉橋柄江は䜜業甚マンションの居間で、䞀人で声を出しおいた。
    テヌブルの䞊に、質問祚が䌏せおある。真壁が眮いおいったものだった。衚に、答えは曞かれおいない。
    「固定資産皎は、どなたが」
    自分で読み䞊げおから、間を眮く。
    「  払っおいた蚘憶がありたせん」
    蚀い終えおから、自分の声を聞き盎すように黙った。
    もう䞀床、質問祚をめくる。
    「南偎の物眮は、い぀頃からありたしたか」
    これは資料にある。建物の完成幎から数えれば出る。
    柄江は答えかけお、止めた。
    幎を答えれば、正確すぎる。
    「建おたのは䞻人です。家より、あずでした」
    蚀い盎した埌で、湯呑みぞ手を䌞ばした。
    䞉問目で、぀たずいた。
    「ご䞻人名矩から、い぀移されたしたか」
    手続きの幎は芚えおいる。䜕床も芋た。
    「亡くなった幎の、暮れです」
    蚀っおから、柄江は顎を匕いた。
    曞類では、名矩倉曎はその二幎埌になっおいる。倫が死んだ幎に動いたのは、預金の方だった。
    誰も蚂正しなかった。郚屋には誰もいない。
    柄江は質問祚を閉じ、しばらく壁を芋おいた。
    それから立ち䞊がり、台所で湯を沞かした。財垃を出しお小銭を数える。折り畳んだ玙が、硬貚の䞋から半分出おいた。抌し戻しお、財垃を閉じた。
    湯が沞くたでの間、柄江はもう䞀床、䞉問目だけを声に出した。
    
    朝の五時前、真壁ず把は珟地事務所の裏手ぞ回った。
    フェンスの倖偎に、现長い管理通路がある。取埗枈み区画の蚭備は、ほずんどがそこぞ集たっおいた。
    散氎栓が二぀。消火栓。壁の高い䜍眮に、旧管理棟から匕き継いだ分電盀の箱が付いおいる。塗装は耪せおいた。
    把が懐䞭電灯を持ち、真壁が箱の扉を開けた。
    䞭は埃を被っおいた。回路のラベルは半分読めない。ブレヌカヌが十二個䞊び、そのうち十䞀個は䞋がっおいる。
    䞀぀だけ、䞊がっおいた。
    ラベルには、地䞋受氎槜ポンプ、ず読める文字があった。䞊から油性ペンで線が匕かれ、その䞋に「廃止」ず曞き足されおいる。
    把が顔を寄せた。
    「これ、生きおたすね」
    「切るな」
    「切りたせんよ」
    把が光を䞊ぞ動かす。
    「ブレヌカヌだけ、色が違いたせんか」
    真壁は箱の䞭を芋た。十䞀個は端が黄ばんでいる。䞊がっおいる䞀぀だけ、暹脂が癜い。
    叀い分電盀に、新しい郚品が䞀぀だけ入っおいる。
    真壁は箱の扉を閉じ、留め金を元の角床ぞ戻した。
    「氎は」
    「あっちです」
    管理通路の突き圓たりに、鉄の点怜蓋があった。把が持ち䞊げる。䞭は浅いピットで、倪い配管が二本走り、脇に现い分岐が出おいた。
    分岐の途䞭に、バルブがある。
    ハンドルが黒く汚れおいた。汚れの䞊に、握った手の圢だけ、汚れが薄い。
    真壁は屈み、バルブの䞋を芋た。継手の呚りに、癜いテヌプの端が出おいる。シヌルテヌプだった。巻き終わりの切り口が、鋏ではなく手で切ったように毛矜立っおいる。
    配管の色も、そこだけ違った。ほかは氎垢で灰色になっおいるのに、分岐から先の䞉十センチだけが癜い。
    「新しいですね」
    把が蚀った。
    真壁は指の腹でその郚分に觊れた。
    埃はある。
    ただし、呚囲より薄い。
    「六幎前のたたじゃない」
    「じゃあ、解䜓のずきじゃない」
    「その埌に誰かが觊っおる」
    把が黙った。
    真壁は蓋を戻し、呚りの砂利を元のように均した。
    「もう䞀぀芋せろ」
    「䜕をです」
    「散氎栓」
    散氎栓の枡を開けるず、底に氎が溜たっおいた。
    珟地事務所の蚘録では、今月の散氎は行われおいない。
    真壁は氎に指を入れた。冷たい。雚は䞉日降っおいない。
    把が枡の瞁を照らした。
    「䜿っおたすね」
    「誰がだ」
    把は答えなかった。
    真壁は立ち䞊がり、管理通路の奥を芋た。フェンスの向こうに、察象地の雑草が続いおいる。その䞋に、通路が東ぞ延びおいる。
    「䞊がっおくるずしたら、どこだ」
    「今の点怜口か、ガラリの近くでしょう」
    「氎を運ぶには」
    「重いですからね。梯子は無理です」
    真壁は管理通路を歩いた。散氎栓、消火栓、点怜蓋。党郚、フェンスの倖偎にある。フェンスの内偎ぞ行くには、正面の門を通るか、隣の雑居ビルから回るしかない。
    「どこかに、もう䞀぀ある」
    「探したすか」
    「今日は間に合わない」
    真壁は空を芋た。
    東の端が、灰色に倉わり始めおいた。
    
    真壁ず把は、立䜓駐車堎の䞉階ぞ車を移した。
    ここからだず、珟地事務所の駐車枠ず、フェンス沿いの北偎が芋える。
    「誰か出おきたすかね」
    把が猶コヌヒヌを開けた。
    「業者が来る前に、䞋は静かにしおおきたいはずだ」
    「電気を萜ずすずか」
    「萜ずせば分電盀で分かる。萜ずさない」
    真壁はフロントガラス越しに、フェンスの北偎を芋おいた。
    「氎は運ぶ。昚日の倜、ポリタンクは半分だった」
    「じゃあ、朝のうちに取りに出たすね」
    六時になった。
    工事関係者の車が二台、正門から入っおいく。ヘルメットを持った男が䞉人、事務所の階段を䞊がった。
    六時半。
    北偎は動かない。
    把が二本目の煙草に火を぀け、途䞭で消した。
    「出たせんね」
    䞃時。
    譊備の亀代があった。前の䌚瀟の車が出お、次の車が入る。その十分の間、正門の脇が無人になった。
    北偎は動かなかった。
    䞃時二十分。
    珟地事務所の裏で、枅掃の軜トラックが停たった。䜜業員が二人降りお、可燃ず䞍燃のポリバケツを台車ぞ茉せる。積み終わるず、そのたた出おいった。
    把が身を乗り出した。
    「今の可燃の方」
    「䜕だ」
    「結んだ袋、芋芚えがありたす」
    真壁は答えなかった。
    䞉日前、草の間にあったコンビニのレゞ袋も、口を匷く捻っおから結ばれおいた。
    「あれ、俺が戻したや぀かもしれたせん」
    「ここからじゃ分からない」
    「でも、フェンスの内偎からゎミが出おるなら」
    「出おきたずころは、芋おない」
    把が座り盎した。
    「どこから出したんですかね」
    真壁は北偎を芋続けた。
    自分が匵っおいたのは、点怜口ずガラリの呚蟺だった。氎を運ぶには、それ以倖の堎所は䜿いにくいず考えおいた。
    その考えは、朝の間ずっず倖れおいた。
    「戻るぞ」
    「ただ点怜が」
    「点怜は芋る。ここからだ」
    
    八時四十分、蚭備郚門の車が正門を入った。
    氎城菜月は、確認䟝頌の写しず、旧蚭備台垳の抜粋を持っお䞀階で埅っおいた。
    蚭備郚門の担圓は、五十代の男が䞀人ず、若い瀟員が䞀人だった。
    「未蚈䞊の䜿甚があるずいう話でしたね」
    「電気ず氎の䞡方です」
    氎城は写しを枡した。
    「倜間の電気䜿甚が、防犯蚭備の分を匕いおも残っおいたす。氎道は、芪メヌタヌず仮蚭事務所の子メヌタヌに差がありたす」
    「散氎は」
    「今月は蚘録がありたせん」
    担圓者は写しをめくり、頷いた。
    「たずメヌタヌから芋たしょう」
    芪メヌタヌの怜針倀を確認し、子メヌタヌを確認する。数字は氎城の資料ず䞀臎した。
    「挏氎の可胜性もありたす。地䞭で挏れおいれば、この皋床は出たす」
    「地䞭ですか」
    「配管が叀いですから。ただ、この量だず倧きな挏れではない」
    若い瀟員が、電気の方を芋おいた。
    分電盀の箱を開ける。
    「ラベルが読めたせんね」
    「旧管理棟から移した蚭備です」
    「回路図はありたすか」
    氎城は台垳の抜粋を開いた。
    「珟行台垳には、この分電盀の回路䞀芧が入っおいたせん」
    「じゃあ、どれが䜕かは分からないず」
    担圓者が来お、箱を芗いた。
    「䞀぀だけ入っおたすね」
    「地䞋受氎槜ポンプ、ず読めたす」
    若い瀟員が指を差した。
    担圓者はしばらく芋おいた。
    「受氎槜は撀去枈みですよ。台垳ではそうなっおたす」
    「はい」
    氎城が答えた。
    「撀去枈みの蚭備に、回路が生きおる」
    「生きおいたす」
    担圓者は箱の扉を半分閉じ、たた開けた。
    「切っおもいいですか」
    氎城は、その質問の意味を考えた。
    自分が出したのは、未蚈䞊の䜿甚があるずいう確認䟝頌だった。原因の陀去は頌んでいない。切れば、䜕が消えたかは分かる。しかし、䜕が䜿われおいたかは分からなくなる。
    「䜿甚量を先に枬れたすか」
    「クランプを圓おれば分かりたす」
    「では、それをお願いしたす」
    若い瀟員が枬定噚を回路ぞ挟んだ。
    「流れおたす」
    「どのくらいですか」
    「小さいです。小型の冷蔵庫か、照明がいく぀か動いおるくらいですね」
    担圓者が氎城を芋た。
    「事務所の䞭に、蚘録しおない冷蔵庫はありたすか」
    「ありたせん」
    「倖にコンセントは」
    「管理通路に䞀぀。䜿甚蚘録はありたせん」
    担圓者は箱の扉を閉じた。
    「どこぞ行っおる回路なのか、远わないず分かりたせんね。旧管理棟の図面を出しおもらえたすか。うちの倉庫にあるかもしれたせん」
    「取り寄せに、どのくらいかかりたすか」
    「䞉日か、四日」
    氎城は手垳ぞ曞いた。
    「確認結果は、そのたた残しおください」
    背埌から声がした。
    久我慎䞀郎が、階段の䞋に立っおいた。い぀からいたのかは分からない。
    「原因が分かっおからたずめる、ずいうこずはしないでください」
    「はい」
    久我はそれ以䞊蚀わず、二階ぞ䞊がっおいった。
    担圓者が氎城ぞ聞いた。
    「点怜口はどこですか。図面䞊、地䞋があった堎所です」
    氎城は台垳を開いた。
    区画図には、旧受氎槜の䜍眮に斜線が匕かれおいる。撀去、埋め戻し枈み。点怜口の蚘茉はない。
    「台垳にはありたせん」
    「珟地には」
    「探しおみたす」
    
    午埌䞉時前、把は管理通路ぞ回った。
    蚭備郚門の車は、すでに出おいる。
    ピットの蓋を開けた。
    朝ず同じ配管。
    同じバルブ。
    底のコンクリヌトにも、倉わったものはなかった。
    把は蓋を戻した。
    
    埡堂埁叞が指定したのは、午埌の区民䌚通だった。
    この日は盞談䌚がなく、䌚堎は畳んだ長机が壁際に寄せおあるだけだった。埡堂は名札を䞋げおいない。窓際の怅子に座り、猶の茶を飲んでいた。
    真壁が向かいぞ座る。
    「䞉日で、䜕が出たしたか」
    「察象地の地䞋に、旧蚭備が残っおいる可胜性がありたす」
    埡堂は猶を眮いた。
    「埋め戻し枈みでは」
    「蚘録ではそうです。珟地には、ガラリず保守点怜口が残っおいたす。旧ポンプ宀から、点怜通路が東ぞ延びおいる」
    「東」
    「察象地の方向です」
    「越境しおいるず」
    「未確認です。枬っおいたせん」
    埡堂は指で猶の瞁をなぞった。
    「ほかには」
    「地䞋で、未蚈䞊の電気ず氎の䜿甚がありたす。旧分電盀の回路が䞀぀生きおいお、絊氎の分岐にも手が入った跡がありたす。解䜓埌に誰かが觊っおいたす」
    「誰がやったかは」
    「分かりたせん」
    「調べたしたか」
    「調べおいたす」
    真壁はそれ以䞊蚀わなかった。
    埡堂は猶を持ち䞊げ、傟け、䞭身が残っおいないこずを確かめおから、机の端ぞ眮いた。
    「東倮偎は」
    「今朝、蚭備の点怜が入りたした。メヌタヌず分電盀たでです。旧管理棟の図面を取り寄せるそうです」
    「䜕日」
    「䞉日か四日」
    埡堂は怅子の背ぞ䜓を預けた。
    「止めたすか」
    「ただです」
    「理由を」
    「今の段階で越境を䞊げれば、察象地は占有ず珟況の確認案件になりたす。売䞻が確認に応じられない案件は、決枈たで行きたせん」
    「それはあなたの郜合ですね」
    「買䞻の郜合でもありたす」
    埡堂は真壁を芋た。
    「向こうが先に芋぀けたら」
    「芋぀けたら、こちらから出す材料が枛りたす」
    「では、四日ですか」
    「䞉日で芋たす」
    埡堂は立ち䞊がり、壁際の長机の䜍眮を少し盎した。
    「地䞋に、人がいる圢跡は」
    真壁は䞀床、間を眮いた。
    「䜿甚の圢跡がありたす」
    「䜿甚」
    「電気ず氎です」
    埡堂はそれ以䞊聞かなかった。
    䌚堎の扉たで歩き、鍵を確かめおから振り返る。
    「䞉日埌に、聞きたす」
    
    倕方、真壁ず把は管理通路ぞ戻った。
    点怜業者はすでに匕き䞊げおいた。
    把が分電盀の箱を開ける。
    ブレヌカヌは、朝ず同じだった。十䞀個が䞋がり、䞀぀だけ䞊がっおいる。
    「觊っおたせんね」
    「枬っただけだ」
    真壁はピットの蓋を持ち䞊げた。
    朝ず同じ配管。
    同じバルブ。
    把が懐䞭電灯を䞋げ、ピットの底を照らした。
    「あれ」
    真壁が芗き蟌む。
    底のコンクリヌトに、癜い茪が萜ちおいた。
    シヌルテヌプの芯だった。
    䜿い切ったあずの、玙の巻き芯だけが残っおいる。
    把が手を䌞ばしかけ、止めた。
    「拟いたすか」
    「觊るな」
    真壁は屈んで、䜍眮を芋た。
    芯は分岐バルブの真䞋にある。
    䞊から萜ずしたなら、その堎所ぞ萜ちる。
    継手のシヌルテヌプを芋る。
    朝ず同じ、手で切った毛矜立ち。
    新しく巻き盎された様子はない。
    真壁は立ち䞊がり、管理通路の䞡端を芋た。
    正門偎ず、フェンスの角。
    どちらからも、この堎所は建物の陰になる。
    「䞉時前は」
    「ありたせんでした」
    把が蚀った。
    「俺が芋たした」
    真壁は芯ぞ目を戻した。
    「䞉時から今たでか」
    「そうなりたす」
    芯には觊れなかった。
    「眮いおいくんですか」
    「動かせば、次は来ない」
    車ぞ戻る途䞭、把が振り返った。
    「あれ、䞋から出おきた人が萜ずしたんですかね」
    「分からない」
    「䞊から来たずしたら、フェンスの䞭を通っおたす」
    真壁は歩きながら、フェンスの瞊線を数えおいた。
    数えおも、答えは出なかった。
    車に乗っおから、把が゚ンゞンをかけずに蚀った。
    「テヌプ、䞉時から倕方の間ですよね」
    「そうだ」
    「その間、䞋は䜕を盎したんです」
    真壁は答えなかった。
    把がキヌを回しかけお、止めた。
    「今倜、入りたすか」
    「入る」
    「昚日の今日ですよ」
    「䞉日しかない」
    把ぱンゞンをかけた。
    フェンスの向こうは、もう暗い。
    地䞋の灯りは、地䞊のどこからも芋えない。

    あずがき
    ここたで読んでいただき、ありがずうございたす。
    第5章ぞ続きたす。

    『存圚しない地䞻』は、毎週日曜21時30分に曎新したす。
    次回曎新2026幎8月16日日21時30分予定
    『存圚しない地䞻』をたずめお読む

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    創䜜や゚ッセむを䞭心に、日々感じたこずや物語を曞いおいたす。 人や組織、遞択、関係性をテヌマに、考えたこずを蚀葉にしおいたす。 掲茉しおいる内容は、個人の創䜜・芋解によるものです。 実圚する人物・団䜓ずは関係ありたせん。

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