
【旅の栞】子連れ韓国探訪記 #02 仁川空港からソウル駅へ。100年の時を越えて手渡す「言葉の栞」
こんにちは、てるてるです。
10年前、ひょんなことから私のルーツが韓国にあると知りました。
いまここにいる「私」という存在は、かつて海を渡ってきた亡き曾祖父が繋いでくれた命のバトンなのだと、そのとき初めて、すぅっと胸に落ちてきたのです。
いつか、あの国の地を踏んでみたい。その旅は、曾祖父の里帰りも兼ねて――。
胸の奥に灯した小さな約束を抱えたまま月日が流れ、この夏、私は小学3年生と2歳の2人の娘を連れて、少し長めの韓国旅へと出発することになりました。
1. 墓前の報告と、初めてのパスポートに輝く瞳
日本を発つ前、私は曾祖父のお墓へ向かいました。
「行ってきます。一緒に、故郷へ帰ろうね」
ひんやりとした石碑にそっと手を合わせ、心の中で静かに語りかけます。
100年の時を越えてその故郷の土を踏む旅が、いよいよ始まります。
小学3年生の長女(ミニゴジラ)と2歳の次女(よちゴジラ)にとっては、これが人生で初めての海外旅行です。
テレビの知識で「旅の始まり」を知っていた長女は、日本の空港で出国審査を終えるなり、興奮を隠せない様子で尋ねてきました。
「ねぇママ、パスポートにスタンプ、ちゃんと押してある?」
スタンプが捺されたページを開いて見せてあげると、まだ飛行機に乗り込んでもいないのに、パッと弾けるような笑顔がこぼれ落ちました。
2. 仁川国際空港のカフェと、「生きた言葉」の手触り
飛行機は無事に海を越え、仁川(インチョン)国際空港に降り立ちました。
無事に入国審査を通り抜けると、私たちが身を置く空気の匂いが、すっと新しく変わった気がしました。
私と夫が英語で入国審査官とやり取りする姿を、長女はどこか目を丸くして見つめていました。
「うちのパパとママ、英語話せるの!?」と言いたげな、驚きと尊敬が混ざり合ったような表情です。
夫婦揃って流暢というわけではありませんが、意思を伝える程度の会話ならなんとかできます。
韓国語が話せない私たちが頼れる命綱は、英語だけでした。
長旅の緊張をほぐすため、空港内のカフェへ立ち寄ることに。
「何が飲みたい?」と子どもたちに尋ね、カウンターで店員さんに英語でオーダーを伝えます。
そういえば以前、学校で外国語の授業が始まった長女が、首をかしげながらこんなことを言っていたのを思い出しました。
「ねぇ、英語を覚える意味って、ほんとにあるの?」
冷たいコーヒーを口に含みながら、私はあの日の問いかけに答えるように、隣の長女にそっと話しかけました。
「 英語が話せなくても、今は翻訳アプリもあるし困らないかもしれないね。 でもね、英語が話せると、世界の選択肢が少しだけ広がると思わない?
さっきのカフェの注文ね、せっかくだから『このお店だけの特別なおすすめ』を店員さんに尋ねてみたんだよ。単語も文法もめちゃくちゃだったかもしれないけれど 」
長女は「ふーん」と気のない返事をしましたが、その瞳の奥には、教科書の中だけではない「生きた言葉」の手触りが、確かに残ったようでした。
異国のカフェで交わしたこの会話が、いつか彼女の人生のページをそっとめくる小さな「栞」になればいい――そう願いながら、グラスを傾けました。
3. 鉄路の先、ソウル駅へ向かって
手荷物を引き、胸ポケットに忍ばせた曾祖父の面影を探すような心地で、韓国で初めての鉄道(A'REX)へと乗り込みます。
ガタゴトと心地よい揺れを立て始める車窓の向こうには、見たことのない異国の街並みがどこまでも広がっていきます。
「無事に、ソウル駅へ着きますように」
小さな手と手をしっかりと繋ぎ直し、海を越えた私たちの旅は、本格的に走り出しました。
(つづく)
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