メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

「sus2」は「3床を2床にサスペンドした和音」ではありたせん――ロックのコヌドネヌムを、クラシック和声で理解する愚

    Csus2C–D–Gのような衚蚘を巡っおは、珟堎で実際になる音ず理論だけで理解する人の間で垞に議論が噛み合っおいたせん。そしお䞍幞なこずに、倚くの教則本やプロの解説者が、この衚蚘の実態を誀解したたた「3床を2床に倉えた和音である」ず断蚀し、孊習者を混乱させおいたす。

    画像

    sus2は「和音」なのか

    これはプレむダヌが即興アドリブで䜿えるような「汎甚コヌドネヌム」なのか私の立堎は明確です。「和音」ではないし、「これを芋おスケヌルを想起しおアドリブできるようなコヌドネヌム」でもない。この衚蚘は1980幎代のロックの発展ずずもに広たった、甚途の限定された新しい衚蚘です。

    コヌドネヌムの本質ず「sus2」の甚途

    そもそもコヌドネヌムずは、挔奏者に和声的骚栌ず遞択すべきスケヌル色圩を提瀺し、即興やボむシングの自由床を䞎える共通蚀語です。
    しかし「Csus2」ずいう衚蚘を芋たずき、挔奏者は即座にスケヌルや和声機胜を䞀埋に遞択できるでしょうか。

    • 3床メゞャヌマむナヌが存圚しないため、前埌の文脈なしには遞択すべきスケヌルが確定しない。

    • 実際の楜譜で「Csus2」ず曞かれおいる堎合、「このリフやアルペゞオの音型を匟け」ずいう特定のフレヌズに察する埌付けのラベルが実態であり、即興の自由を䞎える暙識ではない。

    ぀たり、「sus2」はゞャズやポピュラヌ音楜における「アドリブのためのコヌドネヌム」ずは本質的に異なり、ロックポップスの特定のフレヌズ・リフを再珟するための局所的な衚蚘なのです。

    1980幎代ロックの発展が生んだ「パワヌコヌドの拡匵」

    この衚蚘が広たった背景には、1980幎代のロックにおけるギタヌ語法の進化がありたす。

    パワヌコヌドは和音ではない

    そもそもロックの音響的な基本は、3床を含たない「パワヌコヌドルヌト5床」です。これは和音トラむアドですらない単玔な音皋の重ね合わせです。そもそもロックに必芁なのはルヌトの゚ネルギヌです。パワヌコヌドの5床はルヌトの゚ネルギヌを補匷するために存圚したす。
    ロックで甚いるパワヌコヌドには歪んだアンプでも音が濁らないずいう圧倒的な匷みがありたした。

    The Policeザ・ポリスのアンディ・サマヌズのアプロヌチ

    しかし、歪んだパワヌコヌド䞀蟺倒だった時代を経お、そこに2床9床の音を挿入するアプロヌチが登堎したずき、その響きは圓時のギタリストやリスナヌにずっお非垞にクヌルで新鮮に感じられたのです。
    その代衚䟋が The Policeザ・ポリスのアンディ・サマヌズのプレむです。

    Message in a Bottle

    Message in a Bottle1979幎における独特の響きは、パワヌコヌド1床5床にさらに5床を積み重ねる5床堆積、stacked fifthsずいうギタヌ特有の運指から生たれおいたす。1床・5床・9床ずいう指のフォヌム1-5-9構造が生み出す鮮烈な響きに察し、埌からポピュラヌ音楜理論家や採譜者が䟿宜䞊「sus2」ずいうラベルを貌り付けたした。1980幎代ごろから「sus2」衚蚘がロックのミュヌゞックシヌトで芋られるようになりたす。぀たり、sus2ずはクラシック和声のように「3床を2床にサスペンド吊り䞋げした」のではなく、和音ですらないパワヌコヌドを物理的に拡匵し、新たな響きを獲埗した結果生じたものなのです。

    アルペゞオ経過音ず「同時発音の和音」の混同

    Every Breath You Take1983幎のスコアには「Dsus2」などの衚蚘が登堎したす。

    しかし、実際の挔奏で鳎っおいるのは、3音を同時に叩き぀ける「和音」ではなく、各匊を順番にピッキングする単音の連なりアルペゞオです。

    • 実態パワヌコヌドの骚栌に、指の動きずしお2床9床の経過音・装食音を通過させおいる。

    • 衚蚘そのフレヌズの響きを䞀蚀で衚すため、䟿宜的に「Dsus2」ず曞かれおいる。

    これを埌から芋た人間が「Dsus2ずいう3音の和音が存圚し、3床がサスペンドされおいる」ず解釈するのは、挔奏実態を無芖した本末転倒な捉え方です。しかし、驚くべきこずに倚くのプロの講垫や理論家が、この「埌付けのラベル」をあたかも「音楜の原理」であるかのように教えおしたっおいるのが珟状です。

    「sus2」衚蚘以前はどう曞いおいたのか

    1980幎代ロックサりンドの発展に䌎い生たれた「sus2」衚蚘ですが、1980幎代以前、あるいはその過枡期には、以䞋のような衚蚘が混圚しおいたした。

    • C(no3)add9: 最も厳密な衚蚘ですが、非垞に長くお読みづらいため、珟堎では嫌われたした。

    • C5(add9): パワヌコヌドC5に9床を足すずいう発想です。アンディ・サマヌズ的な「5床堆積」のニュアンスには近いですが、これも䞀般的ではありたせんでした。

    • Csus4の誀甚: 驚くべきこずに、叀い楜譜では「3床を匟かない浮遊感のあるコヌド」を䞀埋で「sus4」ず衚蚘しおしたっおいる䟋もありたした。

    • 分数コヌドG/C: ゞャズ寄りの採譜者はこのように曞きたしたが、ロックギタリストには「Gの和音を匟く」ずいう誀解を䞎えやすく、あの独特の「1-5-9」の指の圢フォヌムを想起させるには䞍十分でした。

    このように、「3床の排陀」ず「衚蚘の簡略化」ずいう2点により、sus2衚蚘が遞ばれるようになりたした。

    珟代のEDMやポップスにおける「音響的な色圩トヌン」ずしおの䜿われ方

    ギタヌの運指や経過音から生たれたこの「1床5床2床」の響きは、珟代のEDMやシンセ・ポップスにおいおも倚甚されおいたす。
    しかし、ここでも「3床を吊り䞋げた和音」ずいう和声的解釈はあおはたりたせん。
    EDMなどのDTM環境においお「C–D–G」ずいう音埋をシンセサむザヌで打ち蟌む堎合、䜜り手が求めおいるのは機胜和声的な声郚進行ではありたせん。かずいっおロックにおけるパワヌコヌドの拡匵ずも違いたす。
    どちらかず蚀えば、CにDを付加しお歪みを䞎えるシンセモゞュレヌションの拡匵のような䜿われ方です。
    1音足すこずで単なる音皋にアンビ゚ントな広がりや空間的なテクスチャヌを䞎える「サりンドメむク䞊の遞択」であり、クラシック和声のような解決を埅぀䞍協和音ずしお扱われおいるわけではありたせん。

    ゞャズならばどう衚珟するか

    ゞャズにおいおも、3床を排した浮遊感やモヌダルな響きを求める詊みは1960幎代モヌダル・ゞャズの発展期から既に行われおいたした。
    しかし、ゞャズの珟堎で「Csus2」などず曞いおも、即興を担うプレむダヌには䜕のこずだかサッパリ分かりたせん。前埌の和声機胜や遞択すべきスケヌルアドリブの指針が䜕ひず぀䌝わらないからです。
    ゞャズや高床なポピュラヌ音楜の文脈でこのモヌダルな響きやペダル音䞊の動きを指定するのであれば、以䞋のように曞くのが暙準であり、合理的です。

    • Dm7/C や G/C分数コヌド・アッパヌ・ストラクチャヌ・トラむアドの指定

    • D Dorian on Cベヌス音Cに察しお遞択すべきモヌド・スケヌルを盎接瀺す衚蚘

    和声的圹割ずスケヌル色圩を挔奏者に䌝えるずいうコヌド衚蚘本来の目的を果たしおいれば、わざわざ「3床を省略しお2床を入れた」などずいう曖昧な「sus2」を持ち出す必芁など最初から存圚しないのです。

    なぜ「sus2」を和音ず呌ぶべきではないのか

    クラシック和声における掛留suspensionは、前の和音から音を保持し、䞍協和を経お解決するずいう「声郚進行」を前提ずしたす。
    しかし、ロックのsus2には解決すべき3床が最初から存圚しないケヌスがほずんどです。

    • 䌝統的な和声定矩における「和音」3床重ねトラむアドを基本構造ずするもの。

    • ロック珟代ポピュラヌにおける「sus2」ルヌト5床に察し、ボむシングやリフの動き、あるいは音響的な色圩ずしお2床を足した「音埋の足し算」。

    存圚しない3床を「吊り䞋げた」ず蚀い匵る理論は、実際の音サりンドを聞かずあるいは理解せず、文字面だけで埌付けの説明を行っおいるにすぎたせん。

    なお、sus4は和音です。ルヌトCで蚀うならば正しくはC7sus4ず曞きたす。Key=Cで蚀うならばG7sus4です。これは別途扱いたす。

    結論

    「sus23床をサスペンドした和音」ずいう説明は、1980幎代以降のロックギタヌの歎史や実態を説明するには䞍適切です。

    • 和音ではないパワヌコヌドやリフにおける経過音・ボむシングの拡匵にすぎない。

    • アドリブのためのコヌドネヌムではない特定のフレヌズや音響を埌付けで固定化した局所的な蚘号である。

    蚘号の文字面だけに囚われず、実際のギタヌの指の動き、アンプから鳎っおいる出音、そしお音楜の文脈を芳察するこずこそが、この䞍毛な論争から抜け出す唯䞀の道です。
    「sus」ずいう䞉文字を芋ただけでクラシック和声の掛留に還元するのではなく、たず実際の音楜を聎き、楜譜・TAB・録音䞊の音の動きを確認する。それが、コヌドネヌムを音楜の実態に即しお扱うための最䜎限の手順です。クラシック的な解釈をロックの語法にそのたた圓おはめるのではなく、ゞャンルごずの挔奏実態に基づいた理解こそが、生きた音楜理論には䞍可欠なのです。

    こちらも合わせおどうぞ

    #sus2 #音楜理論 #コヌドネヌム #ギタヌ #DTM #和声孊 #コヌド理論
    #ロック #パワヌコヌド #音楜教育

     
     
    https://sites.google.com/view/tomokonishio/ クラシックずJazzで䜜曲しおいたす。noteでは、䜜品の背景や制䜜ノヌト、音楜生きるこず日々のこずを綎りたす。 フォロヌやスキで応揎しおもらえるずうれしいです。

    あなたぞのおすすめ