
Hi-STANDARDの楽曲に注入されている"VANDALS感"とは?
KEN YOKOYAMAの新作カバーアルバム『The Golden Age Of Punk Rock』は、90'sのPunk Rockにフォーカスしたコンセプトの作品で、カバーしているバンド数は16。
その16バンドの1つであるTHE VANDALSは、1980年結成の長いキャリアを持つ、カリフォルニアのPunk Bandだ。

VANDALSをあまり知らない方に入門用として最適なのがこちらのアルバム。1998年リリースの『Hitler Bad, Vandals Good』。
こちらの作品、どこ切っても名曲だらけで、他の90's Punkを代表するアルバム作品と比較しても全く引けを取らない、マジで隠れた名盤だと思ってるので是非とも聴いて頂きたい。どシンプルに勧善懲悪!なアルバムタイトルにも注目ねw
このVANDALSなんだけど、実はHi-STANDARDの楽曲にもなかなかの影響を与えているのだ。
Hi-STANDARDといえばNOFXやSNUFFからの影響を受けていることは昔っから公言していたが、VANDALSとなるとあまりピンとこないように思う。なので順を追って説明したい。
まずはこの2バンドにどういったつながりがあるのかについて。
ハイスタとVANDALSの接点
ハイスタとVANDALSの接点は『The Golden Age Of Punk Rock』のライナーノーツにも少し触れられている。
1997年にNOFXとThe Vandalsと3バンドで、ラスベガスでショウを演ったことがある。ショウ自体はあまり覚えてないが(ラスベガスだからということで、ボクがフランク・シナトラを歌ったのだが、若干スベった記憶あり)、深夜のカジノでみんなで遊んだのはとても楽しかった。
KEN YOKOYAMA
ライナーノーツより
このNOFXも含めた3バンドといえば記憶に新しいのは、今年3月に幕張メッセで行われたPUNK SPRING2024。NOFXの日本での最後のステージとなったこの日に、ハイスタとVANDALSも出演しており、同じステージに揃い踏みする形となった。
あとは90年代にハイスタは海外のコンピレーション作品によく楽曲を提供していたが、いくつかのコンピレーションアルバムでこの2バンドが一緒にクレジットされている。
例えばHOPELESS RECORDSから97年にリリースされた『CINEMA BEER NUTS』というコンピ。

この作品は1曲目がTHE VANDALSの『It's a Fact』からスタートする。そしてハイスタは9曲目に『Fighting Fists Angry Soul』を収録。私自身、初めてTHE VANDALSを知ったのはこの作品がきっかけであった。なのでKEN YOKOYAMAが今回のカバーアルバムで『It's a Fact』をチョイスしてくれたのは個人的にだいぶ胸アツだった。
次にLOOKOUT! RECORDSから96年リリースの『PUNK UPRISINGS』という作品。

ハイスタは『Lonely』、VANDALSは『Take It Back』を収録。他にもKen Bandのカバーアルバム絡みだとSatanic Surfersもクレジットされている。
続いてFEARLESS RECORDSから99年にリリースの『PUNK BITES』というコンピ。ハイスタは『New Life』、VANDALSは『His Name Was Joe』を収録。

ジャケのロゴをご覧いただければ分かる通りハイスタとVANDALS以外にNO USE FOR A NAMEの名前も。
そしてこちら。FAT WRECK CHORDSより99年にリリースされている『SHORT MUSIC FOR SHORT PEOPLE』というコンピ。

なんと総勢101バンドが参加しており、それぞれ30秒前後のショートチューンだけを収めているというPunk Rockだからこそ成り立つ圧巻な企画。
ハイスタはここでしか聴けない『Asian Pride』、VANDALSは『To All The Kids』という曲を収録。
といってもこのコンピは101バンドも参加しているので、ハイスタとVANDALSどころかNOFX、SNUFF、BAD RELIGION、Descendents 、ALL、RANCID、LAG WAGON、NO USE FOR A NAME、Blink-182、LESS THAN JAKE、Satanic Surfers、BODY JARなど、 Ken Bandのカバーアルバムに収録されているバンドも多数クレジットされている。あとTHE OFFSPRING、GREEN DAYなど90's PUNKを代表する世界的なメジャーバンドもいれば、THE DAMNED、THE MISFITSなど70'sオリジナルPunkの時代から活動してるレジェンドバンドまでもが揃っていて、マジで壮観のひとこと。
90年代にPunk Rockが世界的に同時進行でムーブメントを広げていった要因の1つには、こうしたレコード会社の枠を超えたコンピレーション作品が数多くリリースされていたことが挙げられるだろう。ハイスタとVANDALSは、多様な企画に対して柔軟かつ積極的に乗っかっていく姿勢が通底していたのだ。
ハイスタの楽曲に注入されている
"VANDALS感"
で、ここからが本題。
以前ラジオ番組で難波くんが言及していたのだが、ハイスタが2017年にリリースしたアルバム『THE GIFT』のレコーディング時、曲のアレンジで試行錯誤している際に難波くん、健くん、ツネちゃんの3人の間では"VANDALS感"というワード、共通言語がやりとりされていたそうだ。
といってもこの"VANDALS感"とはご具体的にどういうことを示しているのか?については言及がなかった。
しかし重要なヒントとして、ある2曲の曲名が挙げられていた。
その2曲とは『All Generations』と『Time To Crow』。
All Generations
Time To Crow
まず『Time To Crow』なんだけど、この曲でピンときたのがVANDALSのこの曲。これ結構わかりやすい。
『People That Are Going To Hell』
初っ端から裏声でハミング気味に「Tu lu lu lu 〜」と歌う声で始まり、これと同じフレーズがサビで何度も印象的に出てくるこの曲。
これ、ハイスタ『Time To Crow』のラストでけたたましく鳴くニワトリよろしく「Cock Doodle Doo〜」とやるところっぽい!ってまず思うよね。
次に『THE GIFT』のトップを飾る『All Generations』。この曲に対しては、VANDALSの2曲をピックアップ。
I Have Date
If The Gov't Could Read My Mind
『I Have Date』はサビに至る前の、全員で「Ah〜」のコーラスで高めていくところや、サビのワンフレーズをブレイクでキメるところ、『If The Gov't Could Read My Mind』は全体的にメロディの持って行き方が、『All Generations』ぽくない?
ただ、あえてここまで色々と自分で言っといて身も蓋もないんだが、どの曲とどの曲のココとココが似てる…、みたいなディテールはそんなに重要じゃないと思ってて。
もっとざっくり、VANDALS特有のエッセンスのようなもの。
例えば美メロでありながらもどこかコミカルでヤンチャなノリ。前のめりにつんのめってる落ち着きのなさ。どこかせわしなくてチャキチャキしてるサウンド。
こうしたVANDALSっぽさを感じさせるエッセンスが、ハイスタの曲にもどことなく感じられること自体そのものが既にもう味わい深いのだ。
芸事とかクリエイティブな仕事に就くと、まず自分の好きな表現スタイルを模倣しようとするじゃない。「アイツの鳴らしたあの音を自分でも鳴らしたい」って思っちゃもうダメなんだよぉ。アイツがあの音を鳴らした時の〝気持ち〟をコピーするんだよ。衝動を。そうやっていくとオリジナルで一生現役でいられるんだぁ。音をコピーしたり再現したりだと形骸化するだけでさ。もし、その衝動がなくなった時は終わりなんだぁ。 -甲本ヒロト
唐突に甲本ヒロトのことばを引用したが、"VANDALS感"とはつまり、この"気持ち"や"衝動"のことなんじゃないだろうか。
ハイスタの面々、VANDALSのこと好きすぎだろ!!!
尚、『THE GIFT』はハイスタにとって17年ぶりのアルバム作品だった。レコーディング中は3人の間で相当綿密に意思疎通を図っていたはず。バンドとしての一体感やグルーヴを生み出すためにはそれぞれが脳内にある感覚やフィーリングを言語化して、互いに理解して共通認識を持つ必要があるわけで。
"VANDALS感"とはその共通言語のひとつであり、ハイスタの3人がそのようなワードでやりとりしながら、気持ちや衝動をひとつにして演奏する…。その光景を想像するだけで、もう超エモいでしょ…。
"VANDALS感"が注入されているのは楽曲だけではなかった…
尚、"VANDALS感"が注入されているのは、なにもハイスタの楽曲だけではないのだ。
以前こちらの記事で、『The Golden Age Of Punk Rock』のアルバムジャケットについて書いた。
この記事を書いてる時にどうしても思い出せなかったことが一つあって。


イラストの右の方に立てかけてあるスケートボードに描かれたライフルとVのロゴ。コレ絶対どっかで見たことある…ってモヤモヤしてて、その時は結局何なのか最後までわからなかった。それで記事では触れなかったのだけど、今回ようやく判明した!
これVANDALSが82年にリリースしたアルバム『Peace Thru Vandals』ジャケットに描かれたロゴだった!!!

Kenくん(とジャケットのイラストを手がけたTM Paintさん)、VANDALSのこと好きすぎだろ!!!
ということで、ハイスタとKenBandに注入されている"VANDALS感"を存分に味わって頂くためにも、本家THE VANDALSを是非聴いてね。