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え、叩き潰すんじゃないの?!《ディスクライブ・メソッド・オンライン》第三話《水曜日のエッセイ by 逢志亭龍》

     
    水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
     

    ◆◆◆
     
    (前回)第二話はこちら

     
    脱字スライムと、誤字スライムたちの群れ。
    潤んだ瞳で……オレを見つめないで!
     
    自分が面白いと信じて必死に書いてきたノート。しかし街の人たちは、読み始めたと思えば、すぐに閉じる人たちが続出した。
     
    その理由、今なら分かる。このノートから現れたおびただしい数のモンスターを見れば。
     
    読んでも読んでも誤字と脱字が続く文章……
    読み手の心は何度も思考のブレーキがかかる、気になって文章世界に入り込めない、余計なストレスが溜まり続ける。
     
    そりゃ途中で読まなくなるわけだ……
     

    さぁ、どうする?
    もう目の前には退路が無い。
    後ろにはある。逃げるべきか。
     
    ひしめくスライムたちのぷよぷよしたお尻(なのか足なのか)の下に、私が落としたノートがチラリと姿を見せている。
     
    あのノートは街の人たちに自分が書いた文章を読んでもらうために必要な「飯のタネ」だ。絶対に拾わないとこの先の旅では生きていけない。

    思案に思案を重ねていると、驚いたことに目の前に「選択肢」が現れた。

     どうぐ「辞書」を
      →使う
       捨てる
       食べる

    いやいや! 捨てないし、食べないし!!(誰が食べるんだよ!)
    なんだかバカにされてるような腹立たしさにモヤモヤしながらも

      →使う

    を選択した。♪ピッ
     

    両腕に力がみなぎってきた気がした。
     

    そうか! この分厚くて重たい「辞書」は、武器……それなら突然現れたことにも合点がいく。
     
    まずは目の前の潤んだ目をしてこちらを見上げる青い「誤字スライム」目掛けて、両手で握った重たい辞書をフルスイングでぶつけて振り抜いた。
     

    どバシュっっ☆
     

    すっとぼけたかわいいスライムの顔は一瞬歪んで、次の瞬間には破裂するようにあたりへ飛び散っていた。
     
    よし! 手応えあり。
     
    誤字なんか、こうやって「力づく」で蹴散らしてしまえばイイ。
    ふふふ、コツが分かればこっちのものだ。
    二匹目、三匹目……次々に振り抜いてスライムたちのカタチを変えていく。
     
    ……十匹目、十一匹目…… 
     
    ハァハァ……しかし、オレよ。よくもこれだけの誤字と脱字を繰り返してきたものだな。でも、待てよ? なんで気づかなかったんだろう?
    「辞書」を本来の使い方とは思えないながらも、振り回すオレ。
    ぶち当てながら考えていた。どうして誤字・脱字に気付けなかったのか、を。
     

    最後の一匹になった!
     
    「どりゃあああー!」
    どバシュっっ☆
     

    ハァハァハァハァ……
    肩で息をする。もう全力を出し尽くした。
     
    あたり一面には、青い誤字スライムと赤い脱字スライムの残骸が飛び散っており、カタチあるものはもういない。
     
    力が入らない身体をヨタつかせて地面に落ちているノートを拾い上げた。
     

    次の瞬間。
     

    ゾワ…
      ゾワゾワ……  
    ゾワ……
     

    蹴散らしたはずの赤と青の残骸たち。
    胎動するミミズのようにグニョングニョンと一定のリズムで小刻みに、一斉に動き出す。
     

    「な、な、な……」恐ろしくなって後退りする。
     

    胎動するリズムは徐々に大きくなり、勢いを増して動き出した。
     
    じわりじわりと飛び散った赤と青の破片たちが近づいて混ざり合い、個体となって大きくなっていく。元のカタチをはるかに上回り、2メートルはあろう大きなかたまりで鬼の形相をした紫色のスライムと化した。
     

    生き物の下にぴょこんと浮いて現れた「キング誤字脱字スライム」の文字。
     

    登場したときのあのすっとぼけた潤んだ瞳のヤツは、もういない。
     
    目の前にいるのは血走った目、並びが悪い牙が大きな口から飛び出し、涎を垂らして唸っているヤバいヤツ。こりゃ相当ヤバい状況になってる……
     

    オレは「辞書」の使い方を間違えた。(ってか、やっぱり?)
     
    誤字や脱字を力づくで叩き潰したところで、いくらでもあとから湧いてくるっていうことか?
     
    もう、この凶暴なスライムに立ち向かうだけの力は残っていなかった。
     

    (つづく)
     
     
    [ライター:逢志亭龍]

    ◆あとがき
    ヤスです。文章MMORPG「ディスクライブ・メソッド・オンライン」の冒険譚。創作物語です。もしも、文章が支配する世界があったら?そういうネットゲームがあったとしたら?無双できるかしらねぇ。あ、龍さん、誤字は直しておきました。

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