
【AI時代のキャリア戦略】AIで「作れるだけの人」は、もう選ばれない|最後まで求められる人の3つの力
ここ数ヶ月、急速に職場環境や働き方、求められている人材像が変わり始めました。私自身も体験しているここ数ヶ月での出来事、そして求められている人の人材像についてご紹介したいと思います。
AIで、自分の仕事はなくなるのではないか。そう感じたことがある方に向けて、この記事を書いています。
まぁ皆さんもご存知の通りだと思いますが、AIを使ってそこそこのレベルで作れるものを作ってもあまり価値はありません。今や職種関係なく、誰もがAIでプロダクトを作ってリリースできる時代になりました。
資料もコードも企画書も、新人がAIで数分で出してくる職場で、何年も経験を積んできた自分は、いったい何で評価されるのか。作れるというだけでは、選ばれる理由にも、お金を払ってもらえる理由にもなりにくくなっています。
これは私のまわり、ゲーム、クリエイター、インフルエンサーの界隈でものすごい速さで、起きている現実です。「作れる」だけでは、もう選ばれなくなっています。
ただ、悲観する話をしたいわけではありません。AIで仕事がなくなる人がいる一方で、AIでむしろ強くなっていく人もいます。その差がどこにあるのかを、はっきりさせておきたいと思っています。
では、これから何が強いのか。業界で26年、作る側と売る側を行き来してきた私の答えは、設計技術、営業、問題解決力の3つをバランスよく実行できる人。どれか1つを極める必要はありません。3つが「そこそこ」でそろっていることが、いちばん強い。もちろん突出したスキルがあれば最高。
そして、いちばん強い形を一言で言うと、営業ができる社長が、自分でプロダクトを作って売り込めることだと思っています。
なぜそう言えるのか。順番に見ていきましょう。
※これはあくまで私の界隈で起きている話なので、これが全てだという話ではなりません。
Ⅰ|作ったものに価値が生まれるのは、買われたとき
最初に確かめておきたいのは、「価値がある」とはどういうこと。
作ったものに価値が生まれるのは、作り終えたときではありません。誰かに受け入れられて、いいものだと思われて、使われて、お金を払いたいと思われて、実際に買ってもらえたとき。そこまで行って、はじめて価値になります。
この記事では、これを5つの段階として扱います。
1つ目が、受け入れられる。
2つ目が、いいものだと思われる。
3つ目が、使われる。
4つ目が、お金を払いたいと思われる。
5つ目が、買われる。
ゲームで言えば、こうなります。ストアのページを見た人が「自分向けだ」と思う。遊んだ人が「面白い」と思う。何度も遊ぶ。続きや追加のコンテンツにお金を払ってもいいと思う。実際に買う。
社内の資料でも同じです。
読む人が「自分に関係がある」と思う。
中身がいいと思う。会議で使われる。
それを作った人に、また頼みたいと思う。
次の仕事が来る。
社内の仕事のように直接お金が動かない場合は、「買われる」を「次も頼まれる」「成果に使われる」と読み替えてください。どんな仕事にも、この5つの段階があります。

ここで大事なのは、AIがいちばん短くしてくれたのは「作る」ところだということです。作るのにかかる時間は、たしかに劇的に短くなりました。もちろん、売り込みの文章を書いたり、問い合わせに答えたりするのにも、AIは使えます。
それでも、相手が見て、試して、気に入って、財布を開くかどうかを決めるのは、相手です。選ばれて、買われるところは、AIを使っても自動では進みません。
正直に書いておくと、「価値がない」は少し言い過ぎかもしれません。練習として作ったものには、作った人の中に経験が残りますし、作っては捨てることでしか身につかない感覚もあります。
ただ、ビジネスとして見たときに、売上が立たないもの、将来につながらないものを量産するのは、正直、意味がありません。作ることが目的になってしまうと、この5段階のどこにも進まないものが、手元に積み上がっていくだけです。
Ⅱ|そこそこのものは、数が増えて値段がつきにくくなる
なぜ、そこそこのものには値段がつきにくくなるのか。理由は単純で、数が増えるからです。
スマートフォンのカメラを思い出してみてください。昔は、きれいな写真を撮れること自体が、ひとつの技術でした。今は、スマートフォンを向ければ、誰でもそこそこきれいな写真が撮れます。
そうなると、「きれいな写真が撮れる」だけでは、仕事として成り立ちにくくなります。仕事として残っているのは、何を撮るかを決められる人、撮ったものを必要としている人に届けられる人、そしてお客さんの困りごとを写真で解決できる人です。
AIで起きているのは、これと同じことが、ゲームにも、絵にも、文章にも、プログラムにも、一度に起きているということです。
作る入口が、どれだけ低くなったか。私自身も、ここ数日でこれを体験しました。大ヒットしている『80億分の1』というゲームの構造を把握して、言葉にして、AIで再現してみたところ、面白さのエッセンスはトレースできました。驚くほど早く、それらしいものができます。
でも、それをそのまま出すことはできません。テーマやコンセプトを変えれば、面白さが崩れることもあります。そして何より、ただ真似たものは、その時点で元のゲームより劣化しています。それにお金を払いたいと思う人はいません。そう、思想や思い入れまではコピーできないからです。
AIで「作れる」ようになった分、作れるだけのものは世の中にあふれていきます。同じようなものがあふれれば、その中の1つを選ぶ理由は薄くなり、値段もつきにくくなります。私の界隈で、いま、ものすごい速さで起きているのは、この入口の低下です。
では、5つの段階を進めるには何が要るのか。ここからが本題です。
Ⅲ|何を作るかを決める「そこそこの設計技術」
1つ目は、そこそこの設計技術です。
ここで言う設計とは、何を作るかを決めて、それがどう動くのかを組み立てることです。ゲームなら、どこが面白いのか、そのためにどんな仕組みが要るのか、何を作らないのかを決めること。仕事一般で言えば、お客さんの困りごとに対して、どんな形のものを、どこまで作れば応えられるのかを決めることです。
5つの段階で言うと、設計は「受け入れられる」と「いいものだと思われる」を狙って作るための力です。何を作るかがずれていれば、どれだけきれいに作っても、最初の段階で止まってしまいます。
ゲームの現場では、これがいちばん高くつく。作り始めてから「やっぱり何を作るかを変えよう」となると、それまでに作ったものの多くが無駄になります。仕様と設計を把握しておくこと、そして自分たちが作っているものはどこが面白いのか、どこに価値があるのかをブラさないこと。これができていないと、間違いなく沼にはまります。
なぜ「そこそこ」でいいのかというと、極めるところはAIや専門家に任せられるようになったからです。細かいところをすべて自分で作れる必要はありません。その代わりに、仕様と構造を自分で把握できていて、AIや人に「これを、こう作ってほしい」と渡せること。これが「そこそこ」の中身です。
逆に、ここがまったく分からないと、AIが作ってきたものが良いのか悪いのかも判断できません。AIに丸投げしたものは、AIが一番作りやすい形になって返ってきます。それが自分のお客さんに合っているかどうかを判断するのは、設計を分かっている人だけです。
Ⅳ|届けて、買ってもらうまで運ぶ「営業・仕切る力」
2つ目は、営業・仕切る力です。
営業というと、電話をかけたり、商談に行ったりする仕事を思い浮かべるかもしれません。ここで言う営業は、もう少し広い意味です。作ったものを、それを必要としている人に届けて、使ってもらい、買ってもらうところまで運ぶ力。そして仕切る力は、そのために人を巻き込んで、段取りを組んで、話を前に進める力です。
5つの段階で言うと、営業・仕切る力は「使われる」と「お金を払いたいと思われる」「買われる」を担います。どれだけいいものを作っても、届かなければ、使われることはありません。
私はプロデューサーとして、数億円規模の資金を集めてゲームを作り、リリースまで持っていく仕事をしてきました。未経験の海外事業を立ち上げたこともあります。どちらも、作る力だけでは一歩も進みませんでした。お金を出してくれる人に、何を作って、なぜ売れるのかを説明する。関わる人を集めて、段取りを組んで、期日までに出す。これが、ここで言う営業・仕切る力です。
ゲームの世界では、収益化したいなら集客からは逃げられません。どれだけ面白いゲームでも、知られなければ遊ばれませんし、遊ばれなければ売れません。私も、第一報の反応が悪くて、メインビジュアルやタイトルを変えたことが何度もあります。売る前から反応を見て、届け方を変えるのも、営業の仕事です。
そして、営業をしている人は、お客さんが何を求めているかを一番よく知っています。何に困っていて、何にならお金を払って、何には払わないのか。これは、作る側の机の上にいるだけでは、なかなか分かりません。この「お客さんを知っている」ことが、そのままⅢの設計の材料になります。
Ⅴ|止まったところで打ち手を出す「問題解決力」
3つ目は、問題解決力です。
5つの段階は、たいていどこかで止まります。作ったけれど受け入れられない。使われたけれど、お金を払うほどではない。買われたけれど、続かない。どこかで必ず詰まります。
問題解決力とは、どの段階で止まっているのかを見つけて、そこに効く打ち手を出す力です。受け入れられていないなら、何を作るかがずれているのかもしれません。使われているのに買われないなら、値段か、届け方か、払い方に問題があるのかもしれません。止まっている場所が分かれば、直すべきところも分かります。
問題を解くときにいちばん大事なのは、大きな問題をそのまま眺めないことです。「売上が上がらない」をそのまま考えても、打ち手は出てきません。どの段階で、誰が、どこで止まっているのかまで分けていくと、自分が手を出せる大きさになります。
そして、問題を見つけたら、自分で決めて、自分で動かせること。ここまでできて、はじめて問題解決です。問題を見つけて、誰かに報告して終わりでは、5つの段階は前に進みません。
私がいま運営に関わっているサービスで、決済の障害が起きたことがあります。そのとき大事だったのは、チーム全体で原因が全部分かるのを待たずに、まず分かっていることだけで第一報を出し、詳しいことが分かってから詳報を出す、という順番を決めて動くことでした。
全部が分かるまで待っていたら、使ってくれている人の不安は膨らむ一方です。止まっている場所を見つけて、いま打てる手を、自分で決めて打つ。問題解決は、この繰り返しです。
Ⅵ|3つとも自分から動く力。受け身の人は、どの職業でも難しくなる
ここまでの3つには、共通点があります。どれも、自分から動かないと使えない力だということです。
何を作るかを決めるのも、届けに行くのも、止まったところを見つけて直すのも、誰かに言われてから動くのでは間に合いません。そして、言われたことを、言われたとおりに作る仕事は、まさにAIがいちばん得意なところです。
ですから、受け身の人は、これからはおそらく、どんな職業であっても厳しくなります。
例外はあります。とんでもない身体のスキルや技術を持っていて、その人にしか生み出せない価値があるなら、受け身でも成り立つでしょう。ただ、そういう人はごく一部です。一般の市場で、言われたことを待つ受け身の仕事をしているのは、かなり厳しいと言わざるを得ません。
誤解のないように書いておくと、これは性格の話ではありません。おとなしい人が不利だという話でもありません。言われる前に一つ決めてみる、頼まれる前に一つ届けてみる、という姿勢の話です。姿勢は、今日から変えられます。