
シロクマ文芸部「月を見る」〜月を見続ける楽団〜
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エッセイ
〜月を見続ける楽団〜
「月を見る」活動を約五十年間続ける楽団がある。彼らの名前は、「架空楽団」
彼らが見続ける“月”は長年日本のロック界を牽引し続けてきた、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャンの代表格「ムーンライダーズ」そして「あがた森魚」だ。
ロック界のスターである「サザンオールスターズ」や「B'z」が太陽とするならば、「ムーンライダーズ」や「あがた森魚」は、まさに“月”のような存在といえる。
今夜は、そんな「ムーンライダーズ」と「あがた森魚」の曲だけを長年演奏し続けるアマチュアバンド「架空楽団」にスポットライトならぬ“月光”を当ててみようと思う。
「架空楽団」は、1979年、岡山県の長谷川楽器ホールで産声を上げた。
彼らにはオリジナル曲はない。CDなどの音源も残さない。ただライブの場で、「ムーンライダーズ」と「あがた森魚」の1980年前後の曲とその空気を丁寧に蘇らせる。
ギターを弾く黒瀬尚彦は歯科医であり、ベースの石原真はかつて放送の現場に身を置き、ボーカルの山田雅義は映像の仕事を抱える。彼らは正真正銘のアマチュアバンドなのだ。
社会人としての日常を生きながら、夜になると彼らは「架空」の世界へと浮遊する。流動的なメンバーが加わり、バイオリンやデジタル楽器が彩りを添えることもあるが、核になるメンバーは変わらない。
いつしか、彼らの活動は、そのカッコよさから、「ムーンライダーズ」や「あがた森魚」のファンから広く認知されるようになり、なんと、「ムーンライダーズ」や「あがた森魚」本人達からも認知されるようになる。
そして驚くべきは、1997年、「架空楽団」のライブに「ムーンライダーズ」のメンバー3人が初めてゲスト出演し、セッションが実現する。
それ以来、たびたび本家のメンバーや「あがた森魚」そして彼らの周辺の大物ミュージシャンがゲスト出演をするようになる。
それは、本家参加のアマチュアトリビュートライブという、とんでも無く稀有な光景である。
メンバーの矢吹申彦がロゴを描き、日比谷の野外音楽堂で本家の前座を務めたこともある。
アマチュアを貫く彼らの活動は決して派手ではない。
しかし、「ムーンライダーズ」のリーダーである鈴木慶一が『ムーンライダーズが解散しても「架空楽団」を続けてほしい』と語ったという逸話は、彼らの活動の誠実さを物語っている。
演奏されるのは、もっぱら1970年代から80年代にかけての楽曲だ。新しい時代の音を追うのではなく、あの頃の空気を、今この場所に呼び戻す。
2024年の岡山ペパーランドでの復活ライブ、2026年の大阪でのミニマム編成公演と、現在もソールドアウトを記録しながら、彼らは淡々とライブを続ける。
アマチュアでありながら、プロ以上に純粋な情熱をたたえる彼らの姿は、音楽が単なる消費ではなく、人生の一部であることを教えてくれる。
岡山の地で、彼らは今夜も頑なに、あの時代のあの夜の「月」を眺め続ける。
了
深山紗夜さん、マガジンに収録していただきありがとうございます😊