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「ERROR“A”」第話

    あらすじ
    謹慎䞭の傭兵、叀掞こどう玡季぀むぎは䞊叞の指瀺で謎の少女毬空たりあず暮らすこずになる。
    独特な雰囲気を醞す毬空ずの先行きに䞍安を芚える玡季だったが、同居を始めた矢先に発芚したその正䜓は、倩䜿アンゞィΗむヌタなる超垞生呜䜓だった。
    聖母の玠質を持぀人間を捜し出し、聖告者倧倩䜿ぞの昇栌を目指す名の倩䜿たち。毬空はその人だった。
    倧倩䜿の垭が残り぀になったこずで、昇栌の儀は血みどろの蹎萜ずし合いず化しおいた。疲匊した毬空は逃げるように日本ぞ来たのだ。
    しかし、運呜は毬空を逃がさない。
    毬空は再び、やがお玡季も、壮絶な聖母争奪戊の枊䞭ぞ身を投じるこずずなる。

    補足
    䞖界芳
    倩䜿アンゞィ
    芳枬倖領域に䜏たう超垞生呜䜓。぀の階玚があり、倩䜿はその最䞋䜍。
    倧倩䜿アンナ
    倩䜿の階玚の䞋から番目。昇栌条件は聖告者ずなるこず。珟圚の空垭は぀のみ。
    聖告者
    受胎告知をした倩䜿。これになるこずは倩䜿にずっお最倧の誉れである。
    倧倩䜿候補
    最も優秀な名の倩䜿。聖母を捜すため芳枬内領域ぞ降りる。匷制参加であり、欠員が出るず次の倩䜿が即補充される。
    聖母パナギア
    神の代理母ずなった人間。凊女であるこず以倖の条件は䞍明。
    幌母おさなが
    聖母の玠質を持った人間。倩䜿にはこれを芋抜く力がある。これを発芋した倩䜿は、来たるべき聖告の時のために保護・拉臎する傟向にある。
    幌母狩り
    他の倩䜿が保護しおいる幌母を殺すこず。自分以倖の倩䜿が聖告者ずなるこずを阻止するために行われる。聖告が完了するたで幌母はただの人間であるため、殺しおも眪にはならない。倧倩䜿の垭が぀しか空いおいないため、倩䜿同士の激しい聖母争奪戊が千幎に枡り続いおいる。
    倩䜿狩り
    倩䜿Χカむが単独で行っおいる倩䜿の虐殺。完党な無差別であり、珟圚たでに玄名が被害に遭っおいる。
    ラッパ
    倩䜿に支絊される道具。か぀おは楜噚の圢をしおいたが、聖母争奪戊が激化しお以来殺傷性の高い歊噚の圢状を取るようになる。぀のグレヌドがある。
    ノむズ
    人間に認識できない事象。人によっお芋え方が異なる。過去の人間には光茪ハロヌなどに芋えおいたらしい。
    TWO WINGS
    バヌゞニア州に本瀟を眮く民間軍事䌚瀟。
    ≠haloノヌ・ハロヌ
    倩䜿を調査・研究する団䜓。䞖界各地に支郚がある。団䜓名は日本語で「光茪を持たぬ者」ず蚳される。

    キャラクタヌ
    毬空たりあ・クロヌバヌ倩䜿アンゞィΗむヌタ
    身長
    歊装ラッパH圢鋌グレヌド
    性栌枩厚。珟圚は鬱気味。昇栌に執着が無く、幌母を芋぀けたこずが無い。
    経緯Χこそ聖告者に盞応しいず信じ、幌母の保護などに協力しおいた。幌母を喪い倉貌したΧを楜にしたいず考えるが、決心が぀かずΘを頌り日本ぞ逃げた。
    叀掞こどう 玡季぀むぎ
    出身日本 北海道
    性別女性
    幎霢歳
    身長
    所属民間軍事䌚瀟『TWO WINGS』
    性栌男勝りで瀟亀的だが、有事の際は極床にドラむになる。本人には自芚が無い。盞棒を手にかけお以来、殺人ぞの抵抗が皆無になった。
    特技裁瞫、狭所戊闘
    来歎総合栌闘技遞手ずなるために歳で枡米。歳で華々しいデビュヌを食るも、枕営業を芁求したスポンサヌを殎り米栌闘界から氞久远攟される。自棄ダケになりストリヌトやバヌで喧嘩に明け暮れる日々を送るが、歳の時に初めお喧嘩で負かされた男ず意気投合。男が所属する民間軍事䌚瀟に勧誘され、䞞幎の蚓緎を経お正匏入瀟する。その男は埌の盞棒バディずなり、ずもに数々の任務をこなすこずずなる。
    カむル・レむ゚ス
    出身アメリカ デトロむト州
    性別男性
    幎霢歳
    身長
    所属民間軍事䌚瀟『TWO WINGS』
    経緯≠haloに譊護面で協力しおいる。玡季の治療も兌ねお毬空の逃亡先に日本を提案した。倩䜿の胜力を事業に圹立おられないかず考えおいる。
    倩䜿Θシヌタ
    身長
    歊装草食獣グレヌド
    性栌平和䞻矩
    経緯聖母争奪戊による地䞊ぞの被害を抑えるため、≠haloに協力しおいる。毬空ず≠haloに枡りを぀けた。
    倩䜿Χカむ
    身長
    歊装十字架グレヌド
    性栌明朗快掻。幌母を我が子のように溺愛しおいた。
    経緯聖告間際に耇数の倩䜿による幌母狩りに遭う。己を含む党おの倩䜿を憎悪し、無差別の倩䜿狩りをしおいる。意図せず抑止力ずなっおおり、Χを恐れ目立぀行動を控える倩䜿が倚い。
    倩䜿Εむプシロン
    身長
    歊装ノコギリグレヌド
    経緯幌母を芪元から誘拐し、病気の治療ず停っお監犁しおいる
    倩䜿Ιむオタ
    身長
    歊装高局ビルグレヌド
    経緯朜䌏しおいたが、Χが死んだこずで行動を開始する

    倩䜿聖告者候補 䞀芧
    Αアルファ  歊装航空機
    Βベヌタ  歊装鎖
    Γガンマ  歊装鎌
    Δデルタ  歊装シャベル
    Εむプシロン  歊装ノコギリ
    Ζれヌタ  歊装バヌル
    Ηむヌタ  歊装H圢鋌
    Θシヌタ  歊装草食獣
    Ιむオタ  歊装高局ビル
    Κカッパ  歊装時蚈
    Λラムダ  歊装鐘
    Μミュヌ  歊装虫
    Νニュヌ  歊装ギロチン
    Ξクサむ  歊装階段
    Οオミクロン  歊装鉄球
    Πパむ  歊装鳥居
    Ρロヌ  歊装鍵
    Σシグマ  歊装雷
    ΀タり  歊装ハンマヌ
    Υりプシロン  歊装朚
    Ίファむ  歊装肉食獣
    Χカむ  歊装十字架
    Κプサむ  歊装シャンデリア
    Ωオメガ  歊装隕石


    本文


    私たちは倩䜿だった。

    日本 東京郜
    雪の降る日だった。
    カヌナビの日付は月日。
    叀掞こどう玡季぀むぎは車から出るず、倖の寒さに顔をしかめた。
    圌女はゞャケットの襟を立お凍えるような寒さから銖を守り、癜い息を吐きながら空枯ぞ早歩きした。背があり、䞔぀鍛え抜いた筋肉を纏う圌女は、メンズゞャケットを着るず男に間違われるこずが倚々あった。
    タヌミナルは混んでいた。垰省や旅行を目的ずした家族連れ。倖囜人も倚い。誰も圌もが浮かれた顔をしおいる。
    あず少しで倧晊日か。日本で幎越すの久しぶりだな
    玡季は獲物を探すような目぀きで、広倧なタヌミナルを芋枡した。
    圌女が目を留めたのは、売店の近くにあるベンチ。そこに座る人組。人は初老の癜人男性で、もう人は金髪碧県の少女だった。
    玡季が近づくず、男が気付いお立ち䞊がった。
    「やあ玡季。䌑暇はどうだね」
    男はサングラスを倖し、英語で話しかけた。玡季も英語で返した。
    「謹慎の間違いでしょカむル」
    「いいや、䌑暇も立掟な仕事さ。今の君の任務は、故郷でゆっくり䌑んで心の傷を癒すこずだ。銃が無い日本は最適だね」
    「別にシェルショックで病んでるわけじゃないよ。治安の良さは盞倉わらずだけどさ。で、その子が䟋の」
    玡季はベンチに座っおいる少女に目をやった。
    、歳くらいか。矎少女、ず呌んで差し支えない容姿だ。
    芖線に気付き、少女がこっちを向く。玡季はカむルに尋ねた。
    「隠し子」
    「たさか」
    「じゃあ䜕者」
    「気にする必芁は無い。君はただ、暫くこの子の面倒を芋おくれればいい」
    「  蚳アリっおや぀」
    「そう、蚳アリだ。い぀もの仕事ず同じ」
    「この子の身分は」
    「名前は毬空たりあ・クロヌバヌ。アメリカ人ず日本人のハヌフっおこずになっおる」
    「こずになっおるっお  もしかしおパスポヌトも停造倧䞈倫なの」
    「どこを通っお来たず思っおるんだ身分蚌のクオリティは実蚌枈みだ」
    玡季は怪蚝な顔でカむルを睚んだ。
    「厄介事じゃないでしょうね」
    「䜕事も無ければね。でも奜きだろ、厄介事」
    「ふざけんな。少しは情報を寄越しなさいよ」
    「玡季。君は䞎えられた任務をこなせばいい。配達員が荷物の䞭身をいちいち怜めたりしないように」
    「デリバリヌずは蚳が違うでしょう蚳が」
    「やれやれ、気遣いがわからん奎だな」
    カむルは玡季に耳打ちした。
    「これは期間限定の任務だ。盞手のこずは、知れば知るほど別れが蟛くなる。぀い最近、痛感しただろう」
    「  」
    玡季の脳裏にノむズが走り、フラッシュバックが起きた。
    荒い息遣い。明滅する芖界。
    腹に倧きな穎の空いた男が寝そべっおいる。玡季はその男の銃創からはみ出た内臓を元に戻すのに躍起になっおいる。
    青い顔をした男が玡季の頬に觊れる。寒そうに震える唇を動かしお、男が䜕かを蚀う。
    その声が聞こえる前に――玡季の意識は珟圚の、空枯のタヌミナルに戻っお来た。
    無自芚にうちに、玡季は拳を握り締めおいた。毬空ず呌ばれた少女は玡季の拳を芋぀めおいた。
    カむルが玡季の肩に手を眮く。
    「埗る情報を遞別できるのは人間の特暩だ。党おを知るこずが賢いわけではない。君なら共感しおくれるず思うがね」
    「  なんで私なの」
    「それは、圌女が君ず䌌おいるからだね」
    「䌌おる」
    「ああ。圌女もたた䌑息を必芁ずしおいる。今の君ず同じように」
    「  」
    「日本語は話せる。話し盞手にするなり、家事を手䌝わせるなりでもしろ。ずりあえずシヌズンは君の所に眮いお貰うからな」
    「春たで随分長いね」
    「もしかしたらもっず延びるかもしれんが」
    「ちょっず、それっお必然的に私の謹慎も延びるっおこず」
    「これも任務だず蚀っおるだろう。せいぜい仲良く  いや、皋々の方がいいか。かかり぀けの病院の埅合宀でたたに䌚う名前も知らない垞連患者くらいの距離感でいい」
    「䟋えが幎寄りだな」
    カむルはサングラスをかけ、玡季ず毬空に手を振った。
    「良い子にしおるんだぞ。あずはよろしくな玡季、たた連絡する。じゃあな」
    「もう行くの」
    「お前ず違っお倚忙なんでな」
    「悪かったね謹慎䞭で」
    カむルはスタスタず行っおしたった。玡季は肩をすくめた。
    「ご飯くらい食べおけばいいのに。忙しないな」
    「  」
    「ん」
    毬空が玡季をじっず芋䞊げおいた。玡季はため息を吐いた。
    「私は叀掞玡季。あの人の仕事仲間っおいうか、郚䞋だね」
    「  」
    「毬空だっけ本名は  どうせ蚀わないように蚀い぀けられおるか」
    「  」
    「ずりあえず、家に行く」
    毬空はこくりず頷いお立ち䞊がった。身長は皋あり、座っおいる時の印象より高い。
    人圢みたいな子だな
    キャリヌケヌスを積んで毬空を助手垭に乗せ、玡季は車を出した。
    ゚アコンに手を䌞ばし、玡季は尋ねた。
    「寒くない」
    毬空は銖を振る。
    「日本は初めお」
    頷く。
    「ぞえ。日本語は向こうで習ったの」
    頷く。
    「䜕幎生癜人お倧人びおるから、いたいち歳がわかんないんだよね」
    「  」
    ノヌリアクション。
    「日本語は誰に教わったの」
    「  」
    「出身は」
    「  」
    「荷物眮いたら生掻甚品ずか買いに行くけど、぀いでに倕食も枈たせちゃおうか。奜きな食べ物は」
    「  」
    「これも駄目面倒臭いな。䜕なら話せるの」
    「  」
    暫しの間を眮き、毬空は口を開いた。倖芋通りの幌い声だった。
    「玡季はどうしお䌑んでるの」
    「は」
    「カむルが、玡季は私ず同じだっお」
    「ああ、そんなこず蚀っおたね。事実䞊の謹慎食らっお、毎日だらだらしおるよ」
    「どうしお」
    「  」
    ちらっず暪を芋るず、毬空はアヌムレストの䞊に身を乗り出しお玡季を凝芖しおいた。玡季はぎょっずした。
    「ねえ、どうしお」
    この子、自分の詮玢はさせないくせにぐいぐい来るなぁ
    赀信号で停車し、玡季は枋々話した。
    「私が䜕の仕事しおるかは聞いおる」
    「人殺し」
    「蚀い方。誰よそんな雑な教え方したの」
    「カむル」
    「あの野郎」
    玡季は舌打ちした。
    「傭兵だよ。傭兵っおわかる」
    「うん。人を殺す人でしょ」
    「民間軍事䌚瀟っおや぀。カむルは郚長で私は平瀟員。ちょっず前たでは倖囜で任務に就いおたんだけど、たあ、色々あっお」
    「色々っお」
    「色々」
    「お仕事嫌いになったの」
    「別にそういうわけじゃないけど」
    「人を殺すのが嫌になったの」
    眉をぎくりずさせ、玡季は暪目に毬空を芋た。毬空は玡季から芖線を倖しお前を芋おいた。
    毬空は尋ねる。
    「玡季は人、いっぱい殺した」
    「  かもね」
    「どれくらい」
    「さあ」
    「殺し過ぎお嫌になっちゃったの」
    玡矩は咳払いした。
    「ガキなら䜕でも蚊いおいいっおわけじゃない。日本じゃね、そういうのは䞍謹慎っお蚀うの」
    「でも、玡季はわかっおお人殺しの仕事をしおるんでしょう」
    「  」
    「頑匵り過ぎお嫌になっちゃった人を殺すの疲れちゃったの」
    毬空は車窓の倖を眺めお蚀った。
    「なら、私ず同じ。私も疲れちゃった。飛ぶのも獲るのもぜんぶ」
    「飛ぶ」
    信号が青に倉わる。アクセルを螏み、玡季は考えた。
    話し盞手、ね  カりンセラヌの぀もりなのかな、あの男は
    玡季は独り蚀のように呟いた。
    「盞棒バディが死んだの」
    毬空が振り向く。玡季は続けた。
    「この蚀い方はずるいか。私を庇っお助からない傷を負った圌に、私がトドメを刺した」
    玡季の目は道路を芋おいたが、頭の䞭には過去の蚘憶が蘇っおいた。
    「私たちは䜕幎も組んでた。圌は私のこずを私よりわかっおたし、私も圌より圌をわかっおる぀もりだった。民間軍事䌚瀟私たちにずっおは盞棒が党お。互いのために呜を懞けおいれば、どちらも死ぬこずは絶察に無いはずだった」
    「  」
    「でも、圌は死んだ。おかしいね、私が傍にいたのに。いや、私の傍にいたから死んだのかな。なんで私は守るべき盞棒を殺したんだろうね」
    玡矩は苊笑した。
    「盞棒を手にかけるようなろくでなしは謹慎がお䌌合いっおわけ。だからっお、たさかガキのお守りを頌たれるずは思わなかったけどね」
    「  」
    毬空が䜕かを蚀いかけた時、台の察向車が玡季の目に留たった。
    若者が運転するワゎン車。埌郚座垭を芗いおいた助手垭の男が前を向き、䞀瞬だけ玡季ず目が合った。
    「  」
    ぞわりず、寒気が走った。
    「玡季は――」
    「悪い、ちょっず寄り道する」
    玡季は察向車が数台通り過ぎおからタヌンした。
    数台先にいるワゎン車の様子を窺い぀぀、カヌナビを操䜜する。
    亀番は圓然  近くにないか。た、奜郜合か
    カむルの蚀葉が蘇る。
    ――でも奜きだろ、厄介事。
    玡季は埮笑した。
    「うるさいよ」

    民家のガレヌゞにワゎン車が入る。
    シャッタヌが䞋り切るず埌郚ドアが開き、拘束した女を男たちが運び出した。
    助手垭から降りた男が仲間に指瀺を飛ばす。
    「スタゞオに運んだら、カメラもセットしずけよ。俺ぁ䞀服しおくる」
    「うヌす」
    リヌダヌ栌の男がシャッタヌ脇の扉を開けるず、目の前に玡季がいた。
    「あ」
    玡季は男をぶん殎っお昏倒させ、ガレヌゞに螏み入った。異倉に気付いた男たちが次々ず怒声を䞊げる。
    「おい䜕だお前」
    「誰だ」
    「䜕しおんだゎラァ」
    運転垭から降りた男が譊棒で殎りかかる。玡季は男の腕を捕らえお関節を極め、譊棒をもぎ取るず、容赊なくうなじを殎り぀けた。倒れた男はビクビクず痙攣した。
    男人が女を眮き、ナむフを抜いた。玡季は手招きした。
    「ほら来い。ビビんな、男だろ」
    「このアマぁ」
    「死ねッ」
    玡季はナむフを持぀男たちの手を譊棒で叩き折り、顔面にフルスむングを济びせた。顎がひしゃげ、県球が飛び出た男たちを芋おも、圌女は眉䞀぀動かさなかった。
    玡季は女の容䜓を調べた。
    治安が良いずは蚀っおも、こういう奎らはどこにでも居るんだな
    扉の方から怒声がした。
    「おいおめぇッ」
    振り向くず、ナむフを持った男が誰かを人質に取っおいた。被害者がもう人いたのかず思ったが、よく芋おみるず  人質になっおいるのは毬空だった。
    「はぁ」
    玡季は目を剥いお仰倩した。
    「お前、車で埅っおろっお蚀ったろ」
    「ここ、玡季の家じゃないの」
    「どう芋おも違ぇだろ」
    男が毬空の顔にナむフを突き぀ける。
    「それ眮け刺すぞ」
    「  このク゜ガキ」
    「ごめんなさい」
    玡季は譊棒を捚おお䞡手を挙げた。降䌏するフリをし぀぀、鋭い目で男を芳察する。
    こい぀に人を刺す床胞があるかはずもかく、動脈にさえ刺さんなきゃいい。最悪、回刺すたでには距離を詰められる。この子には悪いけど  
    毬空は玡季の足元に倒れた男たちを䞀瞥し、がそりず蚀った。
    「ねえ玡季」
    おい喋んなよ。盞手が逆䞊するだろ
    「この人のこず、殺しおいいの」
    「は」
    「あ」
    「ごめんね。私が邪魔した所為で、玡季たで危なくなっちゃっお」
    「気にすんな」
    「シヌタは緊急の時以倖はやっちゃ駄目っお蚀っおたけど」
    「シヌタっお誰だよ」
    「でも  今は緊急事態、だよね玡季が、ピンチだから」
    「うるっせぇぞガキ喋んな」
    「そうだぞ、ちょっず黙っおろ」
    「おめぇもだよッ」
    ザザッ。
    ガレヌゞ内にノむズ音が響く。
    ワゎン車のラゞオかず思ったが、発生源は正反察にあった。
    ザ、ザザザ。
    毬空の頭䞊の空間が揺れ、歪み――ブロックノむズが出珟した。
    「ッ」
    「うわぁ」
    玡季ず男は瞠目した。
    たるで乱れた映像のような、䞍芏則に霞んだノむズ。
    しかしそれが映っおいるのは、珟れおいるのは、確かに珟実の空間だった。
    䜕幻芚じゃない、あの男にも芋えおる  あれはいったい――
    ザザ、ザザず音を鳎らすノむズの䞭に、歪んだ文字が浮かんだ。

    ERROR、ず。

    恐怖に駆られた男が、「うわぁぁ」ず喚いお毬空を刺した。
    ナむフは毬空の銖に深々ず刺さった。
    したった急所に――え
    出血は無かった。
    それどころか、傷口さえ芋えなかった。
    ナむフが刺さった堎所が、赀いノむズに芆われおいた。
    そのノむズの䞭には、DAMAGEの文字が浮かんでいた。
    「倧䞈倫」
    毬空は淡々ず蚀った。
    「この皋床じゃ、私は死なないから」
    「黙れ死ねッ」
    男は怒号を䞊げ、半狂乱になっお毬空をメッタ刺しにした。が、どこを刺しおもノむズずDAMAGEの文字が珟れるばかりで、ナむフには血の䞀滎も付かなかった。毬空の顔色に倉化は無く、玡季は唖然ずした。
    「な、䜕なんだ䜕なんだよ」
    男は毬空を突き飛ばし、䞀目散に逃げ出した。
    「埅お」
    玡季が远おうずしたその時、毬空の手元にノむズが発生した。
    毬空はノむズの䞭に手を入れ、䞀䞁のリボルバヌを取り出した。
    男が扉に手を䌞ばす。その背䞭に銃口を向ける。
    毬空の瞳にLOCK ONの字が浮かび、匕金を匕く。
    玩具の銃が発射したのは、鉄骚。所謂、圢鋌だった。
    口埄より倪く、圓然シリンダヌより遥かに長い。工事珟堎くらいでしかお目にかかれない、巚倧な圢鋌。
    亜音速で攟たれたそれが、男を壁ごず貫いた。
    「な  っ」
    玡矩は息を呑んだ。圢鋌に撃ち抜かれた男は即死しおいた。
    「お前、いったい  」
    毬空の䜓䞭にある赀いノむズのDAMAGEの字がぶれ、REPAIRに倉わる。皋無く、ノむズは消えた。
    コヌトはズタズタに裂かれおいたが、傷どころか出血の痕すら無かった。
    毬空が玡季を振り向く。毬空は目を䞞くし、玡季を指さした。
    「あ」
    玡季の背埌から゚ンゞン音が蜟いた。
    「ハッ」
    ワゎン車の運転垭に人圱がいた。玡季は舌打ちした。
    ただいたのか車内に隠れおやがったな
    ワゎン車がアクセルベタ螏みで急発進する。
    「ク゜」
    玡季は咄嗟に毬空を庇った。
    「倧䞈倫」
    ず、毬空が耳元で囁いた。
    「  」
    い぀たで埅っおも、芚悟した衝撃は来なかった。
    目を開けるず、毬空が玡季の脇䞋から手を䌞ばし、ワゎン車を正面から止めおいた。
    玠手で。それも片手で、だ。
    「」
    玡季も運転手も、ぜかんず口を開けおいた。
    フロントに指をめり蟌たせ、毬空はワゎン車を軜々ず持ち䞊げた。
    運転垭に銃を向け、撃぀。圢鋌がフロントガラスを砎り、運転手の顔面を朰した。車内が血に染たったワゎン車を、毬空はポむっず捚おお暪転させた。
    「終わったよ」
    空間に珟れたノむズに銃を収め、毬空は蚀った。
    「怪我無かった」
    「あ  え、いや  」
    玡季は毬空の顔ず、頭䞊に浮かぶERRORのノむズの間で䜕床も目を泳がせた。蚀葉に詰たり぀぀、玡季は䜕ずか声を絞り出した。
    「あんた  䜕者  」
    毬空はあっけらかんず答えた。
    「倩䜿。倩䜿アンゞィΗむヌタ」
    「  倩䜿」
    「うん」
    毬空は「あっ」ず声を䞊げお口を抌さえた。
    「秘密だった。忘れお」
    ガレヌゞ内の惚状を芋回しお、玡季は蚀った。
    「  無理でしょ」

    倪平掋䞊空
    カむルを乗せた旅客機は、間も無く日本の管制空域を出ようずしおいた。
    ビゞネスクラスの垭を取ったカむルは、適床なサヌビスを受け぀぀プラむバシヌを保ったうえで、空の旅の最䞭も仕事に打ち蟌むこずができた。
    圌は台のノヌトパ゜コンを開き、ある人物ずメヌルのやり取りをしおいた。
    『圌女は無事に日本に到着した。日本は幎以䞊倩䜿の蚘録が無い安息地だ。ゆっくり矜を䌑めるこずができるだろう。文字通りね』
    メッセヌゞをもう䞀方のパ゜コンの暗号゜フトに通すず、日垞䌚話に扮した文章に倉換される。
    『東京は雪が降り積もっおいたよ。空枯にはクリスマスツリヌが食っおあった。売店で面癜い土産を買ったから楜しみにしおくれ』
    受信したメヌルには、党く逆のこずをする。暗号゜フトを通し、本来の文章を開瀺するのだ。
    互いに逐䞀暗号゜フトを介するこずで、圌らは公共のネット環境を利甚しおおきながら䌚話の機密性を保持しおいた。
    『結局、君の郚䞋には圌女の玠性を知らせなかったのか』
    『䜙皋のこずが無ければ、圌女が人間でないこずはバレないだろう。心配するな、私の郚䞋は優秀だ。仮にトラブルが起きおも、盞手が人間である限り埌れを取るこずはない』
    『笑わせるぜカむル、だから心配しおるんだろ。お前が評䟡する兵士なんお、むカれおるに決たっおる』
    『蚀っおくれるな。たあいい、時頃にそっちに着く。他の倩䜿の察策に぀いおは珟地で話し合おう。情報をたずめおおいおくれ』
    『了解』
    メヌルボックス内のログを党お削陀し、カむルはパ゜コンを閉じた。鍵付きのケヌスにパ゜コンを収め、圌は窓の倖に目をやった。
    日本列島は既に遥か埌方に過ぎ去り、雲が芋えるばかりだった。圌は名残惜しそうにがやいた。
    「寿叞くらい食っずきゃよかったな。回るや぀」

    蚈噚類をチェックしおいた副機長は、ふず顔を䞊げおフロントガラスを芋た。
    「  ん」
    十時の方向、数先に黒い点が浮かんでいる。
    レヌダヌに反応が無い。  䜕だ
    黒い点は埐々に近付き、茪郭を倧きくしおいく。副機長は目を芋匵った。
    あっちからも近付いお来おるしかも速いマッハいく぀だ
    もう䞀床蚈噚類をざっず怜める。異垞は無い。しかし確かに、目の前に䜕かが迫っおいる。
    「機長あれを」
    「んどうした」
    「所属䞍明機が接近䞭物凄いスピヌドです」
    機長は目を凝らした。
    「航空機にしおは小さいな、ドロヌンかレヌダヌに反応は」
    「ありたせん」
    「たずいな、激突コヌスだ。冗談じゃないぞ。盎ちに管制に連絡し  あ」
    「あれ」
    数癟たで近付いたその時、謎の飛行物䜓が応然ず消えた。
    「どこに行った」
    「蚈噚には䟝然、異垞無し」
    「幻か確かに芋たよな」
    「はい」
    「おいおい䜕だかパむロット歎幎で初めお遭ったぞ」
    「ひずたず管制に報告したす」
    「頌む。俺はに異倉が無いか聞いおみる」
    機長は安堵のため息を吐いた。
    「しかし良かったな。あのスピヌドでぶ぀かられたら排萜にならない」
    「ドロヌンであんなに出るもんなんですかね戊闘機かず思いたしたよ」
    「䞍気味だな。レヌダヌにかからない蟺り、ステルス機の類だろう。や幜霊じゃないずしたらな」
    「そっちの方がただマシですね。宇宙人よりもテロの方が怖い」
    「たったくだ」
    束の間の恐怖䜓隓が笑い話になろうずしおいた、その時である。
    圌らの目の前――フロントガラスの倖に、人が降り立った。
    機長ず副機長は、衝撃のあたり凍り぀いた。
    「  え」
    機䜓の先端。ノヌズレドヌムの䞊に珟れたのは、人の少女だった。
    身長は前埌。端正な顔をしおいるが、敎い過ぎお人圢じみた䞍気味さがある。
    修道女のりィンプルのようなものを被っおいるが、やけに䞈が長くマントのように党身を芆っおいる。そしお驚いたこずに、りィンプルの䞭は裞だった。
    奇劙な䜓だった。乳銖や性噚が無く、異様に痩せ现っおいる。肋骚が浮き、手足は骚ず皮だけだ。
    よく芋るず、骚栌も人間のそれずは僅かに異なっおいる。
    胎䜓に察しお四肢が長い。脚は身長の割に匹敵し、腕の長さは指先が容易に膝に達するほど。
    そのアンバランスな䜓型も盞たっお、より人圢のように芋える。
    もう䞀぀、圌らが気付いた異垞。
    少女の頭䞊に癜黒のスノヌノむズが発生し、その䞭に、乱れたERRORの字が浮かんでいた。
    機長は冷や汗をかき、枇いた声を出した。
    「な  なんだ、あれは  」
    副機長は口をぱくぱくさせおいる。機長は少女に目を釘付けにされ぀぀、副機長の肩を掎んだ。
    「か、管制に連絡を  報告、しろ。珟状を」
    「な  䜕ず、蚀えば  」
    「いいから、早くしろ。早く。俺があい぀を芋おるから  早くやれ」
    「う、動いおも平気なんですか」
    「知るか。いいからやれっお」
    少女の傍にスノヌノむズが珟れる。少女はノむズの䞭に手を入れ、䜕かを取り出した。
    氎平連ショットガンだった。
    少女がコックピットに銃口を向けた。機長ず副機長は戊慄した。
    「あっ  」
    「埅お。嘘だろ、ちょっず埅お」
    小銖を傟げた少女が、ニコリず埮笑んだ――倩䜿のような笑顔だった。
    匕金を匕く。
    ショットガンが攟ったのは、巚倧な十字架の散匟だった。
    党長を超す玔癜の十字架が、同時に本。
    口埄の小ささを無芖しお発射したそれが、コックピットを蹂躙した。
    音速を超えた十字架はフロントガラスを易々ず砎り、機長らを座垭もろずも貫き、機䜓の操瞊システムに臎呜的なダメヌゞを䞎えた。
    「くすり」
    少女は柔和な笑みを浮かべたたた、機䜓の錻面から飛び降りた。

    コックピット偎で起きた衝撃は機内たで響いおおり、異垞事態を察した乗客は慌おふためいおいた。
    「揺れたぞ」
    「どうかしたのか」
    「倧䞈倫なんだろうな」
    「只今確認臎したすので、乗客の皆様は安党のためご着垭䞋さい」
    が慌ただしく走り、乗客の憶枬や䞍安の声が飛び亀う。
    カむルは冷静に状況を分析しおいた。
    機長のアナりンスが無いな。さっきの衝撃は尋垞ではなかったし  たさか既にコックピットが消えおいるなんおこずは無いだろうな
    コントロヌルを倱った機䜓が埐々に前傟し始めた。カむルは急いでシヌトベルトを締め、肘掛けに掎たった。
    「おいおい、マゞで墜ちるんじゃねぇだろうな  」
    ちらりず、窓の倖を䜕かが飛んでいるのが芋えた。
    りィンプルを被った少女。
    背䞭に昆虫の翅のような――筋の通った半透明の翅を生やした少女が、機䜓のすぐ傍を自圚に飛翔しおいた。
    少女を目撃したカむルは、目を血走らせた。
    「銬鹿な」
    圌は愕然ず呟く。
    「倩䜿アンゞィΧカむ  どうしおここに  たさか――」
    少女が――倩䜿Χがこちらを振り向き、カむルず目が合った。
    Χが旅客機に銃を向ける。カむルは「あっ」ず声を䞊げた。

    銃口が火を噎き、十字架の矀れが客垭に突き刺さった。
    「くすくす、くすくす」
    Χは口に手を入れ、「おえっ」ずショットガンシェルを吐き出した。
    銃身を折っお薬宀を開き、シェルを装填する。銃身を戻しお撃鉄を起こすず、Χは旅客機の呚りを飛び回りながら続け様に銃撃を济びせた。
    無数の十字架が、機䜓の䞊に墓暙のように乱立する。Χは緩やかに降䞋する機䜓の䞋をくぐり、すれ違いざたに぀の゚ンゞンを撃ち抜いた。
    十字架に貫かれた゚ンゞンが火を噎き、翌から脱萜する。機䜓の傷から挏出した燃料が匕火し、たちたち爆発が起きた。
    黒煙を䞊げお墜ちおいく旅客機を芋送り、Χは蚀った。
    「Ηむヌタは乗っおいたせんでしたねぇ」
    螵を返し、マッハを遥かに超える速床で降䞋する。雲を突き抜けるずΧは停空し、県䞋に浮かぶ列島を眺めた。
    「いた行きたすよ、Η。どこに逃げおも、どこたで行っおも、私たちは出遭う運呜なのですから」

    日本 東京郜
    玡季の自宅

    毬空がボロボロになった服を脱ぐず、玡季は愕然ずした。
    痩せ现った、手足の長い、人間離れした䜓躯。
    「ち、乳銖が無い  」
    「倩䜿だから」
    「こ、この䜓は改造でもされたの」
    「ううん。倩䜿だから」
    「虐埅ずか」
    「されおない」
    「痩せ過ぎでしょちゃんず食べな」
    「倩䜿は䜕も食べないよ」
    わなわなず震える玡季に、毬空は少し申し蚳なさそうに蚀った。
    「ちゃんず人間のフリしお食事も摂ろうず思っおたけど  もうバレちゃったからいいや。さっきの質問答えるね。奜きな食べ物は無いよ。食べないから」
    「だめいっぱい食べお」
    「意味無いよ。぀いでに蚀うず肛門も無いから、食べたらその分吐かなきゃいけないし」
    「あんた䜕なの」
    「倩䜿」
    玡季は顔を手で芆った。
    「倩䜿っお䜕  」
    「ひみ぀」
    「䜕で秘密なの」
    「  ひみ぀」
    「  」
    玡季は恐る恐るずいった調子で、指の隙間から毬空の䜓を芗いた。銖を傟げる毬空にそっず手を䌞ばし、驚くほど现く小さな肩に觊れた。
    「  」
    「玡季」
    玡季は毬空の銖や肋骚の浮いた胞、腋を撫でた。内臓が無いのかず疑うほど薄い腹をさすり、安堵したようにため息を吐く。
    「玡季、どうしたの」
    「よかった」
    「」
    「  本圓に、怪我しおないんだね。あんなに刺されおたのに。わけわかんないけど、本圓に良かった」
    「――っ」
    急に、毬空が玡季に抱き぀いた。
    「えっ」
    玡季は目をぱちくりさせる。
    毬空はハッずしおすぐに離れた。
    「ごめんなさい。぀い  」
    「別にいいけど  急にどうしたの」
    「その  今、Χずすごく䌌おたから」
    「カむ」
    「本圓に䞀瞬だけ。よく考えたら玡季はゎツいしデカいし、党然違ったけど」
    「ゎツくおデカくお悪かったな」
    毬空が俯く。
    玡季は暫し逡巡しおから、尋ねた。
    「そのカむっおのも、倩䜿なの」
    「  うん」
    「友達」
    「  たぶん」
    毬空は脱いだ服をぎゅっず握り締めた。
    「Χはね、すごく優しくお、話が面癜くお  ずっおも匷くお  い぀も䞀緒にいおくれたの」
    「  ぞえ」
    「でもね、Χは倉わっちゃった」
    「倉わった」
    「うん。別の人みたいに」
    寂しそうに、悌むように、毬空は蚀った。
    「倉わっおしたったの」


    第話

    第話


     
     

    闘骚

     
     
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